の部分を二人に修正しました。ちゃんと読み返してみたら人数ミスってた!
明くる日の放課後。
一誠は部室でため息をついていた。理由は知らないけど、この冥界の新聞が原因なのかな?
『おっぱいドラゴン、スイッチをぶちゅううううっと吸う!?』
予想通り酷い見出しだ。見事に対岸の一誠が燃えている。なんだろう、苦笑も出ない。変態な一誠もこれでため息をついていたとしても不思議ではない。
僕の眷属離脱の話も小さくだが載っているようだ。カットされてないか実は不安だったからね。
これからアザゼル総督とレーティングゲームに関するミーティングがある。けど部室に来ているのは僕と一誠、木場さん、ギャスパーくんの4人だけ。
他の皆はまだ来ておらず、教会組の三人は学園祭の準備作業に使う布地を求めて新校舎の方に行っている。
リアスさんと朱乃さんもいない。ここにいるのは男子のみ。
「よー、ギャスパー。クラスでの2人の様子はどうだ?」
「は、はい……。小猫ちゃんとレイヴェルさんは事ある度に口喧嘩ばかりでしたが、今はそんなこともなくなりました」
初日の口喧嘩から心配していたけど、
「で、ですが、やっぱり二人共どこか距離があると言いますか、仲良くとは言えないですぅ」
杞憂ではなかった。どうやら初日の喧嘩が尾を引いているみたいだね。
「う、うーん。わからん。乙女心は複雑怪奇だな……」
そんなふうに天井を仰ぎながら一誠がつぶやくと―――。
「どっちも意中の相手に気づいてはいるんだろうさ。まあ、片方は勘違いだったみたいだが。それでも、一度始めちまったもんだから気まずいんだろう。同学年だから余計だな」
入室してきたばかりのアザゼル総督が一誠の顔を覗き込みながら言った。
「……ど、どういうことですか、先生」
「ま、小猫もおまえの言うことを聞き続けてクラスでの面倒を見るだろうし、レイヴェルもクラスメイトの小猫を頼って人間界での生活に慣れていこうとするだろうってことだよ」
抜いた刀は鞘に収めるのが難しい。特に第一印象であれだったから。何かわだかまりを解消するきっかけがあれば……。
「はぁ……そういうもんですか」
気のない返事をする一誠。この件は一誠も浅からない関わりがあるんだけどね。
「……ぼ、僕は小猫ちゃんのようにレイヴェルさんのお役に立てそうにないです。と、というか、プライベートでも戦闘でも皆さんのお役に立てそうにもなくて……」
ギャスパーくんが落ち込み気味に言う。
「おまえの眼は今回のゲームで解禁されているし、俺の血を入れた瓶も携帯できるようになったじゃないか。それでも不安か?」
一誠が訊くと、ギャスパーくんはうなずく。
「……僕はイッセー先輩のように勇気も力もありませんし……祐斗先輩のように剣も使えません……。誇銅先輩のような感知能力もありません。せめてサポートだけでもお役に立てたら幸いなのですが……ぼ、僕、男子として恥ずかしい気持ちでいっぱいで
すぅぅぅっ!」
女装していても、ギャスパーくんも男だってことか。
こういうことは本人に自信を付けさせるのが一番の方法だと思う。だけど、ギャスパーくんには
僕が知ってる日本術式を教えてあげられれば少しは自信がつくかもしれないが、悪魔側に教えるわけにはいかない。信用はしていてもギャスパーくんは完全に悪魔勢力所属だからね。
そんなギャスパーくんを見て、一誠が檄を飛ばす。
「ギャスパー! 俺が今から言う事を胸に刻め! 『グレモリー眷属男子訓戒その一! 男は女の子を守るべし』! ほら復唱!」
「お、男は女の子を守るべし!」
「よし、次! 『グレモリー眷属男子訓戒その二! 男はどんな時でも立ち上がる事』!」
「お、男はどんな時でも立ち上がる事!」
「最後! 『グレモリー眷属男子訓戒その三! 何が起きても決して諦めるな』!」
「な、何が起きても決して諦めるな!」
「よしよし、それを胸に刻んでグレモリー男子らしく戦えば良いのさ」
「は、はい! ぼ、僕、これらを胸に刻んで頑張りますぅぅぅっ!」
一誠の激励のおかげでギャスパーくんに気合が入る。
こう言っては悪いが、これで膨れ上がった気合は風船のようなもので一時しのぎくらいにしかならない。が、今のギャスパーくんには例え一時しのぎでもこれが必要だったかもしれない。
「いいね、それ。僕も胸に刻もうかな」
「そうしとけそうしとけ。何があっても諦めないのがグレモリー眷属の男子だぞ」
木場さんも小さく笑う。僕も元気になったギャスパーくんを見て安心した。
「暑苦しいねぇ」
一誠のやり取りを見ていたアザゼル総督は半目でぼやいていた。
そんな風に盛り上がる中、リアスさん達が入室してきた。
全員が集まったところでアザゼル総督は僕達を見渡すように言った。
「じゃあ、ミーティングを始めるぞ」
開口一番にアザゼル総督は険しい顔つきで言った。
「ゲームのミーティング前に各勢力の情勢について話したいことがある。―――ちょいと神器に関して厄介なことになりそうでな」
「どういうことですか?」
木場さんが訊くとアザゼル総督は続けた。
「英雄派の連中が禁手の研究をして、実際に結果を出しているのはおまえらも認識しているはずだ。身をもってその力を食らったわけだからな。あいつら、英雄派に属していない一般人に紛れている神器所有者や、悪魔に転生している神器所有者に禁手に至る方法を伝え始めているって話だ」
伝えたところでそう簡単にはいかないんじゃないかな? やり方がわかっても強い力を得るためには相応のリスクは必要。難しいからこそ禁手と呼ばれてるわけだし。
「それがどういう結果を生むか。不遇な人生を送っていた者が一転して、世界の均衡を崩すと言われる力を得れば、そいつの価値観が変わる。知っての通り、神器を持った奴が必ずしも良い人生を送れたわけじゃない。人とは違う異能ゆえに迫害、差別された者も少なくない。悪魔に転生した所有者も理不尽な取引で眷属になったケースもある」
「……すべての悪魔が良心的なわけではないものね……。上級悪魔に心無い者が少なからずいるわ。人間界の影響で多様な考え方の悪魔が増えてきたけれど、本来は合理的な思考を持つのが悪魔だもの」
アザゼル総督の言葉にリアスさんが続く。
リアスさんの言うとおり、全ての悪魔が良心的なわけではない。それはよく知っている。
アザゼル総督は話を続けた。
「そう、理不尽な思いで暮らしている神器所有者もいるってことだ。それらが力の使い方、圧倒的な能力―――禁手を得たらどうなるか?」
皆、シンと静まり返る。アザゼル総督は表情に影を落としてながら言う。
「使う、だろうな。その力を。人間ならば、他者への復讐、世俗の逆襲に使うかもしれないし、神器持ちの転生悪魔なら己を虐げてきた主への報復を考えるだろう」
間違いなくそうなるだろうね。特に、禁手に至る環境が作りやすいであろう虐げられてきた転生悪魔は。強い力を突然手に入れれば普通の人間でもタガが外れる危険がある。転生悪魔というもともと普通から逸脱した場所にいる人なら余計簡単に外れるだろうね。
冥界、もちろん人間界でも暴動が起きる。それも憎しみで固められた禁手で。
「……怖い、ですね」
一誠がそう言葉を漏らすと、アザゼル総督も頷いた。
「ああ、いろいろな意味で怖いことだ。人間がやれることの限界、超常の存在への挑戦、禁手の研究をしてきた英雄派の連中にとって、これから起こることかもしれない事象はある意味でひとつの成果だろう。人間界、冥界のどこかで不満を抱える神器所有者が暴動を起こすのは時間の問題だ。してやられたってわけだ。テロリストであるあいつらの結果がどうなるかまだわからないが、現時点で大きな一発をもらったのは確かだ。今後に影響は出る。悔しいが、見事だよ。人間の恐ろしさを改めて思い知った」
それはある意味仕方のないこと。人と違うとのことで人間社会から弾かれる特別はあの時代でも見てきた。僕が知ってるそういう人たちはしっかりと受け入れてくれるところがあったが、全員が等しく受け入れられて幸せになれたなんて楽観はしていない。
この時代でだってそうだ。京都で戦った影使いも、今までの自分たちの人生を悲観していた。
誰が悪いとかの問題ではないが、何事も使い方次第で良くも悪くも、便利にも不便にもなる。毒だって薬になれるし、薬も用法を間違えたり過剰に摂取すれば死ぬ。
空気が重くなった室内で、アザゼル総督は咳払いした。
「―――と、悪かったな。今日、ここに俺が来たのはサイラオーグ戦へのアドバイザーとしてだったな」
本題のミーティングが始まったところで、重い空気を変えるためか、一誠は挙手して質問する。
「サイラオーグさんにも先生みたいなアドバイザーがついてるんですか?」
「ああ、一応あっちにもいるぞ。
「―――っ! ……ディハウザー・ベリアル」
アザゼル総督の一声に一番反応したのはリアスさんだった。
その名前が出たのはつい最近なので覚えている。現レーティングゲームの王者。
「まあ、リアスやイッセーが上級悪魔としてゲームに参加するのならば、正式参戦後の大きな目標と見ておいて良いだろう。眷属のメンバーも主がゲームに参加する以上は避けて通れない相手だろうしな。さて、お前達、サイラオーグ眷属のデータは覚えたな?」
アザゼル総督の言葉に全員が頷いた。まあ、データと言っても能力がいくばかわかった程度だけど。
アザゼル総督は立体映像を部室の宙に展開、バアル眷属の面々がパラメータ付きで表示されていった。アザゼル総督がそれを見ながら言う
「あのグラシャラボラス戦では能力を全部見せていない者もいたようだ。まあ、あの試合は途中でグラシャラボラスのガキ大将がサイラオーグ相手にタイマンを申し込んだしな。実質、サイラオーグが勝負を決めたようなものだ。それにサイラオーグ達はお前達と同じ、悪魔では珍しい修行をするタイプだ。グラシャラボラス戦の時とは明らかにレベルアップしているだろう」
そこに少しばかり僕は驚いた。悪魔としては珍しい修行をするタイプ。力を価値観とする悪魔なのにそれを磨こうとするタイプがなぜ稀なのか。そこにいくらか悪魔社会のチグハグな考え方を感じた。
いや、だからこそあんな社会が形成されたと言うべきか。
「あいつら、『
アザゼル総督は苦笑いしながらそう言う。
今までの相手は北欧の悪神や最強の神滅具などと強大な相手が多かった。それも狙い撃ちされたかのように巻き込まれることが。何者かの陰謀すら感じてくる。
データを見て、僕はあることに気づく。
「……この『
他の皆が視線を一点に向けた。そこにはサイバーな作りの仮面を被った者が映し出されていた。名前もただ『
サイラオーグさんの陣営は『
「記者会見でも記者がこのヒトの事であろう質問をサイラオーグ・バアルに向けていましたね」
木場さんが言う。
話はあまり聞いてなかったから覚えていないが、この仮面の『
するとアザゼル総督が言う。
「……そいつは滅多な事ではサイラオーグも使わない『
『6つ!? 7つ!?』
異口同音で皆が驚愕の声音を出した。一誠が『
アザゼル総督は話を続ける。
「データが揃っていない以上、この『
その後はリアスさんが先頭に立ってゲームの戦術と相手への対策を僕達に話し、それを皆でひとつひとつ詰めていく。ぶっちゃけ、対策と言えるほど対策の話ではなかったけれど。
議題がひとつ終わったところで、一誠は挙手してアザゼル総督に疑問をぶつけた。
「先生、俺達が正式なレーティングゲームに参加したとして、王者と将来的に当たる可能性は……? 先生の目測でも良いですから」
「お前達はサイラオーグと合わせて、若手でも異例の布陣だ。と言うのも正式に参戦もしていないのにこれだけの力を持ったメンツが集まっているんだからな。しかも実戦経験―――特に世界レベルでの強敵との戦闘経験がある。その上、全員生き残ってるんだからな。そんな事滅多に起こらないし、久方ぶりの大型新人チームと見られている。本物のゲームに参戦してもかなり上を目指せるだろうよ。トップ10入りは時間の問題だろうな」
太鼓判を押すアザゼル総督。実戦経験があるのとないのではわかるが、世界レベルの強敵……? ま、まあそうか。日本の高い技量に慣れたせいで敵の技量がお粗末に見えるだけで、その力は決して侮れるものではないか。それを五体満足で生き残れば色眼鏡でも見られるか。
アザゼル総督は話を続ける。
「だが、その分、冥界からの注目も大きい。今度のゲームは冥界中がお前達を見ているぞ。悪神ロキ、テロリストを止めているお前達はただでさえ有名人だ。更に記者会見であれだけの盛り上がりも見せたんだからな、冥界の住人は新しい息吹に悪魔の未来を見ている。勿論、ゲームの現トップランカーもお前達やサイラオーグ達に注目し、将来の敵になるであろう者の研究を始めるだろう。良い傾向だ。殆ど動かなかったゲームのランクトップ陣、遠くない未来にお前達やサイラオーグが差し込んでくれるかと思うと今からワクワクしちまうよ」
アザゼルが愉快そうに笑んだ後に言った。
「―――変えてやれ、レーティングゲームを。ランキング10以内も
王者を倒してレーティングゲームを変える……か。
……いや、このメンバーならできてしまうかもね。グレモリー眷属の潜在能力は、聖書勢力では一級品だ。
それが日本の頂点に通じるかは別だけどね。
◆◇◆◇◆◇
ミーティングも終えた放課後。
アザゼル総督はまだ教師としてやる事があるからと先に抜けていき、残った面々で学園祭の準備に取り掛かる。
学園祭の準備を始めようとすると、テーブルの上に光が走る。光は円を描き、どことなく見覚えのある紋様をした魔方陣へと。
「……フェニックス?」
塔城さんがそう呟いた。どこかで見たことがあると思ったら、フェニックスの魔法陣だったか。
テーブルに収まるサイズの魔方陣。転移はちょっと無理があるから、連絡用とかかな?
怪訝に思っていると、魔方陣から立体映像が投写され、高貴そうな雰囲気と面持ちをした若い女性の顔が映し出されていく。
「お母さま!」
レイヴェルさんが素っ頓狂な声を出した。
二十代ぐらいの顔つきでキレイな女性。このひとがレイヴェルさんのお母さんか。
『ごきげんよう、レイヴェル。急にごめんなさいね。なかなか時間が取れなくて、こんな時間帯になってしまったわ。人間界の日本ではまだ学校のお時間よね』
「は、はい、そうですけれど、突然どうされたのですか?」
『……リアスさんと赤龍帝さんはいらっしゃるかしら?』
指名を受けたのはリアスさんと一誠。
リアスさんが映像の前に立つ。
「ごきげんよう、おばさま。お久しぶりですわ」
『あら、リアスさん。ごきげんよう。久しぶりですわね。それと……』
キョロキョロと見渡すフェニックス夫人。一誠を探しているのだろう。それに気づいた一誠は急いで視界に入る位置へと移動。
「あ、どうもはじめまして。兵藤一誠です」
『こちらこそ、ごきげんよう。こうしてお会いするのは初めてですわね、赤龍帝の兵藤一誠さん。このようなあいさつで申し訳ございませんわ』
「い、いえ。そ、それで俺に何かご用があるのでしょうか……?」
『ええ、改めてごあいさつだけでもと思いまして……。本来なら娘のホームステイ先の兵藤家と学園を取り仕切っているリアスさんのもとにごあいさつに行くべきなのですが、何分、こちらも外せない事情がありまして……』
「……ほら、フェニックスの涙の需要が高まっているから、それで時間が無いんじゃないかなって……」
木場さんががコッソリと耳打ちする。
フェニックスの涙の需要が高まっているのは何度も聞いた話しだ。テロリストの影響で特需で生産が追いつかなくなったとか。フェニックス夫人も駆り出されているのだろうな。
リアスさんは微笑みながら返す。
「そんな事ありませんわ、おばさま。お気持ちだけで充分です。レイヴェルの事はお任せください」
『……本当にごめんなさいね、リアスさん。うちのライザーのゲーム後のケアから、レイヴェルの面倒まで見ていただいて……」
次にフェニックス夫人の視線が一誠に向けられる。
『それと兵藤さん。特に娘をよろしく頼みますわ』
一誠に「特に」と強調して言うフェニックス夫人。
「え、ええ、もちろんです。けど、部長もいますし、俺よりももっと面倒見の良い人が部にもいるんで……」
『はい。もちろん、リアスさんをはじめ、皆さんに任せておけば娘のレイヴェルはなんの不自由もなく人間界の学舎で過ごせるでしょう。しかし、それとは別にあなたへお願いしたいのです。人間界で変なムシがつかないようどうか守ってやってくれないでしょうか? 数々の
「へ、変なムシですか……」
どうやらこれは……話が変な方向に流れていっているようだ。そのズレに気づいた皆(一名を除く)はどう反応したらいいかわからず酷く微妙な表情となった。
当事者のレイヴェルさんに至っては非常にバツが悪そうな困り顔だ。
「わかりました。俺がどこまでできるかわかりませんけど、娘さんは俺が守ります!
一誠がそう言ってしまうと、フェニックス夫人はパァッと明るい表情となる。
その時、なぜかリアスさんの顔が悲しげなものになっていた。
『感謝致しますわ。……レイヴェル』
「は、はい! お母さま」
『あなたのすべき事は分かっていますね? リアスさんを立て、諸先輩の言う事を聞いて、その上で兵藤一誠さんとの仲を深めなさい。フェニックス家の娘として、家の名を汚さぬよう精一杯励むのですよ?』
「も、もちろんですわ!」
言葉をつまらせながらも、急場で用意したような気合が入った返事をした。
『最後に兵藤一誠さん』
「は、はい」
『上級悪魔になることが目標と聞きました』
「は、そうです……けど?」
『よーく、覚えておいてくださいまし。娘はフリーですわ。『
「は、はい! わ、わかりました!」
眷属いるんですけど……。だが、ここでそれを発表する勇気は誰も持ち合わせていない。
それを聞いて満足そうにうんうんとうなずくフェニックス夫人。
『こちらの用事は済みました。リアスさん、兵藤一誠さん、皆さん、突然のご挨拶を許してくださいましね。それではもう時間ですわ。レイヴェル、人間界でもレディとして恥ずかしくない態度で臨みなさい』
「はい、お母さま」
『それでは、皆さん。ごきげんよう』
光がいっそう輝き、弾けて淡い粒子となって消える。
嵐のようなフェニックス夫人のあいさつ。娘が心配だったんだろうけども……。僕はフェニックス夫人にとってレイヴェルさんの悪いムシ扱いになるんだろうか……? いや、なりそうだね。
「……ぶ、部長、どこに行くんですか?」
一誠がそう訊くと、リアスさんは足を止めて、振り返らずにぼそりとつぶやく。
「……イッセー、私の事、守ってくれる?」
「もちろん、部長のことを守ります!」
「……アーシアのことも?」
「え? ええ、もちろんアーシアを守ります!」
「朱乃のことも?」
「朱乃さんですか? それは当然です。けど……。どうしたんですか、いきなりそんなこと訊いて?」
ヘラヘラと笑いながら答える一誠。
リアスさんは低い声音でさらに話しかける。
「…………ねぇ、イッセー」
「は、はい……」
「………あなたにとって、私は『何』? 『誰』?」
「……えっと、俺にとって部長は部長で―――」
その
一誠がそう言った瞬間―――。
「―――っ! バカッ!」
涙混じりの罵声と共に、リアスさんはその場を飛び出し、部室を後にした。
「リアスお姉さま!」
アーシアさんがリアスさんを追いかけていく。
扉の前で一誠の方を振り返り、涙に濡れた瞳を一誠に向けた。
「イッセーさん! 酷いです! あんまりです! どうしてそこで……! お姉さまの気持ちをわかってあげられないんですか!」
それだけ言い残し、アーシアさんはリアスさんを追いかけていく。
言われた一誠はキョトンとしていた。
「いまのはマズいよ、イッセーくん」
嘆息する木場さん。
「……マ、マズいって何がだよ?」
「それが、だよ。まったく、キミときたら……女性陣の苦労がよくわかるよ」
「本当ですわ。リアスとアーシアちゃんが怒るのも当然です」
朱乃さんも怒気を含んで言った。
「こういうのに鈍い私でもいまのはさすがにどうかと思ったぞ、イッセー」
「もう! イッセーくんって、ホントにダメダメだわ! リアスさんがかわいそう!」
ゼノヴィアさんは半目で見つめ、イリナさんはぷんすか怒る。
「……最低です」
塔城さんはシンプルに冷たく言い放った。
これだけ言われても一誠の様子はいつもとそう変わらない。せいぜい変態行為がバレた時程度。
その場を駆け出そうとする一誠だったが、僕が腕を掴んでそれを制止させた。そして黙って首を横に振る。
「いまのイッセーくんでは追いかけてもあちらに深手を与えるだけですから、お止めなさい」
僕の行動に朱乃さんが説明を入れる。
「……なあ、ギャスパー。俺ってそんなにダメか?」
後輩のギャスパーくんにまで聞き出す一誠。ギャスパーくんはもじもじしながら、申し訳なさそうに言った。
「……えーと……。はい、とてもダメかなと……」
ギャスパーくんにまで言われ落ち込む一誠。
「あ、あの……わ、私の、私とお母様のせい、ですよね……? すみません……」
レイヴェルさんはハラハラしながら気まずそうに言う。
タイミングはフェニックス夫人のせいと言えなくもないが、根本的な原因は一誠にある。レイヴェルさんが責任を感じる必要はない。もしもここで責任をレイヴェルさんたちに押し付けようものなら、一誠は救いようのないクズだ。
「レイヴェルちゃんは気にしなくてもいいのよ。いままでリアスとの大事なところを考えてあげなかったイッセーくんが一番悪いのですから」
先に朱乃さんに言われてしまった。
どうやら、眷属脱退を前にこんなもつれに巻き込まれることになるとはね……。
◆◇◆◇◆◇
あの後、朱乃さんの指示のもとで、学園祭の準備作業を進めることとなった。飛び出していったリアスさんとアーシアさんは朱乃さんが責任をもって探しに行くことであの場の空気は一旦落ち着いた。
そして僕は旧校舎の空き部屋で一誠と二人で作業を続けることに。木場さんとギャスパーくんは外へ買い出しに。買い出しに乗じて逃げてもよかったのだが、生憎タイミングが悪くてついて行けなかった。
ここは擬似的なお祓いのような出し物をする場所になる予定だ。本格的なお祓いは悪魔としてどうかとのことで、それっぽい様式にするらしい。いろいろ矛盾も感じるがまあいっか。
和の雰囲気に模様替えで畳を敷いて、神棚のようなものを設置する。もしもこれが本物の神棚なら、日本神によって祟られていた可能性があったね。
黙々と作業しているせいか、一誠がさっきのことを考えているみたいで、どことなく空気が重い。
「……なあ、誇銅」
一誠が僕に話しかける。なんだかとっても嫌な予感がする……。
「……俺、そんなに部長のこと考えてなかったのかな」
やっぱりその手の話題だったか。まったな、デリケートな問題だけにあまり関わりたくないと言うか、関わるべきじゃないというか。正直に言ってどうでもいい。数年前(数ヶ月前)なら親身に相談に乗ったかもしれないんだけど……。
数秒間とは思えないほど脳内で思考を巡らせた結果―――。
「一誠はどう思う?」
今回だけは乗ってあげることにした。おそらくだが、原因はきっと“あの事件”だろう。その時はまだ僕と一誠は正真正銘の友達だったからね。グレモリー眷属として最後にこのくらいのお節介を焼くくらいならいいかな?
「どう思うって……」
「リアスさんが出ていった時、自分がダメだったことはもうわかってるよね? それで一誠自身は何がダメだったと思ってるの?」
僕が答えを教えるのは簡単だ。だが、それではダメ。あくまで自分で答えを探させないと、一誠はきっと僕の答えに甘える。
「…………いや」
長めの思考の後、一誠の返答はまさかの否。あれだけ露骨な好意で気づかない……? いや、鈍くて無神経な一誠でもそれはないハズ! まずはそれを自覚させる必要があるね。
「わからないなんてことは無いだろう?」
「いや、本当にわからないんだ」
僕が訊いても一誠はそう答えるばかり。だがそれが嘘なのは明らかだ。
質問した時、一誠は真剣な表情でしばらく考えた後、顔を青くして、手も震わせた。自分で確信に迫って恐ろしくなったんだ。
「一誠はリアスさんの愛情表現に疑問を感じたことはない?」
「疑問……?」
「そう、
「ま、まあ……」
目線を外らしながら肯定する。そこはわかっているようだ。
「具体的にはどんなところが違うの?」
「―――俺にキスしてくれる」
「へーそうなんだ。―――どこに?」
「そ、それは関係ないだろ!」
「ないことないかもよ? 男二人、人間だった馴染みで腹を割って話そうよ」
おそらく、これが一誠と友達として接する最後。これからは本当の意味で昔のように仲良くはしないだろう。だから、最後にリアスさんのために本気を出すように、親友のように尽くそう。
僕の説得に一誠は恥ずかしそうにしながらも話してくれた。
「―――口と口。しかもベロチューまで。それも一回じゃなくて何回も」
「それはすごいね! まさかそこまでとは思わなかったよ。進んでるね~」
「茶化すなよ」
「本当のことじゃないか。だって客観的に考えてみてよ。他の人がそんなことをしてたら一誠ならどう見えるよ」
一誠が常日頃から嫉妬している対象に見えなくて何に見えると言うんだ。それを否定しようものなら一誠は何に嫉妬しているのかわからなくなる。
僕の言葉で想像に入る一誠。すると、再び顔を青くさせて震えだす。ああ、これはやっぱり間違いないね。
一誠はもともと無神経だ。それは普段の変態行動からも疑いようのない事実。だからと言ってあれだけの好意的行動に気づかないほどではない。絶対に気づいている。
さあ、僕の言葉にどこまで反論し続けられるか……。
反論ショーダウン 開始
「ま、まあな。けど部長は眷属想いで情愛が深いから、眷属男子へのスキンシップとしてのサービスじゃね?」
「他の眷属男子と愛情表現が違うんでしょ? 自分にだけキスしてくれるって言ったじゃないか。もちろん僕はそんなことされたことないし、ギャスパーくんや木場さんがされてるとこも見たこと無い」
狼狽を見せる一誠。過去の自分の言葉で論破されちゃせわないよね。
それでも負けじと反論する。
「け、けどよ! 部長は恋愛というのにこだわっていた。純情な部分が多々あって、とても年頃の乙女らしい気持ちを抱いている。だからこそ、ライザーとの婚約も解消したんだし」
「そう言えばその辺だよね、リアスさんが一誠の家に同居したのって」
今度は過去の事実が逃げ道を塞ぐ。一誠の動揺が増していく。表情からも先程までの空元気な余裕すらなくなってきた。
「ま、待てよ誇銅。何言ってんだよ。それじゃまるで―――ありえないだろ?」
「でも、そうすると辻褄が合うと思わない?」
僕がそう言うと、一誠は怒りの表情で僕に叫んだ。
「そんなわけないだろ! 主だぞ! 俺は下僕! 眷属悪魔! リアス・グレモリーの『
触れられたくないものに触れられ感情を爆発させた一誠。その爆発した感情が全て僕に向けられる。
顔中から汗を噴き出し、身体中を振るえさせる。同時に恐ろしさで顔は青くなっても怒りで表情だけは険しい。そう、これを待っていた。こうなればもう自分の感情に蓋ができず、必ずや意識的に避けていたことを―――。
「部長が俺のことが好きなハズなんてないだろ!」
「ほら、やっぱりそう思ってるんじゃない」
BREAK!!!
一誠の失言にすかさず突っ込んだ。すると一誠は一気に怯んだ。
「本当は気づいてるんでしょ? リアスさんの気持ちに。そして自分の気持に」
「うぐぐ……」
「……レイナーレのことだよね」
あの事件のことは今でも覚えている。なんせあれが僕と一誠が悪魔の世界に足を踏み入れるきっかけだったのだから。
レイナーレ―――その言葉を訊いて一誠は先程噴き出したのと同じ嫌な汗をかき、涙まで流しす。
一誠は涙を拭いながらゆっくりと話す。
「……初めての彼女だったんだ……。告白された時、本当に嬉しかった。……あいつと付き合って、俺、すげえ頑張ったんだ。初めてのデートとか、念入りにプラン立ててさ。将来の事だって真剣に悩んだ。バカみたいにクリスマスとかバレンタインの事まで妄想して、1人で脳内お花畑満開だった」
一誠は心の奥底にしまい込んでいたであろう感情を吐き出す。誰にも言えなかったであろう感情を。
「でも、あいつ、敵でさ……! 俺の事殺してさ……! 悪魔になった俺をすげえ冷たい目で見てきてさ……! あれらの事が本当に芝居だったって分かって……、それでも良かったんだけど、本当に悪い奴でさ! アーシアを殺して、俺、戦って! キレてさ! 初めて女をぶん殴って、それが俺の初めての彼女で……! そのあと、命乞いまでしてきてさ、けど、部長にやられちまって……」
話すたびに痛烈な表情をする一誠。共感はできないが理解はできる。―――裏切られた傷の痛みは深く心を抉る。
「……俺、怖いんだ。本当は女の子と仲良くなるのが怖いんだ……。また、またあんな事になっちまうんじゃないかって……! アーシアも、皆も優しくしてくれるけど……1歩踏み込んで仲良くなろうとしたら、拒否られてバカにされるんじゃないかって……! 皆が悪くないって頭じゃ分かってる! 皆、良いヒトばかりだ! だけど、ダメなんだ! もっと知ろうとするとブレーキが掛かる!」
一誠は手で顔を覆った。
「……あんな思いは2度と……嫌なんだ……っ」
こんな時、誰かの優しい言葉を聞きたい。僕だったらそう思う。辛さと寂しさに耐えきれず八岐大蛇さんに電話した時、僕を思いやってくれる優しい言葉に救われた。
僕は優しく一誠の手を下げさせて顔をこちらに向けさせた。
「一誠の
僕はあえて厳しい言葉をかけることにするよ。
「一誠が心に深い傷を負っているのはわかる。だけどそれとこれは話が別だよ。リアスさんは一誠の本気で気持ちを伝えたのに、一誠はそれをわかってて無視したんだ」
気持ちに気づいて誰にも応えない僕よりも、応えようとしている一誠の方が誠実に見えるかもしれいな。まあ、僕も大概なのはこの際棚に上げとく。
一誠は何か言いたそうにするが、何も言わせずに続ける。
「日頃の自分の行いを思い返してみなよ。自分の欲望に正直過ぎる行為の数々。伝説のドラゴンだって疲弊するレベルだ。どれだけの女子が一誠の欲望を満たすためだけの犠牲になったことか。まあ、その事は遺憾ながら周りがもう受け入れてるから何も言わない。が、そんな一誠だから自分もそれと同じと思われたって仕方ないと思わない?」
「違が……」
「相手に真摯に向き合わなくて、好きな人に愛されようなんて虫が良すぎる。この件はいつものように都合よく神器が突然パワーアップして助けてくれたりしないから。過去の不幸で現在の幸福を失っても僕は知らないからね」
僕は言いたいことだけ言って一誠の弁解を何一つ耳を貸さずに、一誠の横を通り過ぎて扉へと向かう。
閉じられた扉の前に立つ。
「あとはよろしくおねがいします」
そう扉の前で言ってから扉を開けた。そこにはいつもの女子メンバーたちが。最初から立ち聞きしていたのは気づいていたよ。
僕から鞭は与えた、だから次は女子たちから飴をもらうといい。
ここはやるべきだと悪魔の声に従い、ダンガンロンパ要素をちょこっと混ぜちゃいました。不思議とやりきった感で後悔はしてません。が、雰囲気を壊してると感じさせてしまったら申し訳ありません。
ダンガンロンパの二次創作も書きたいんだけどな~。いろいろ考えて後二枠埋まらない……。
超高校級の警備員
超高校級の海兵
超高校級の
超高校級の考古学者
超高校級の歌舞伎役者
超高校級の秀才
超高校級の牧師
超高校級の???
超高校級の数学者
超高校級の医者
超高校級の新聞部
超高校級の怪盗
超高校級のデザイナー
超高校級の巫女
超高校級の剣闘士
超高校級の???
???が決まってない才能。具体的には主人公枠と褐色枠。ちなみに、上八人が男で下八人が女。ちょうど???で区切ってあります。
Ps:あとがきに関してだけの感想はお控え下さい。もしもこちらに感想がある方は、活動報告の方にも掲載しますのでそちらにお願いします。まあ、ハイスクールD×Dの二次創作を読みに来てダンガンロンパの感想をガッツリ書き込む酔狂な人はそういないと思いますが(笑)