無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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 戦闘シーンが上手く描けているか。期待している読者の皆様に満足していただける出来か、非常に心配な今日此の頃。
 しかし、臆してもこれ以上良い出来にはなりそうにない。ならば、この早さで今の精一杯を投稿しよう! それが良くも悪くとも今後の成長に繋がるのだから。全てを受け入れよう。(作者は何かに影響されています)


若手な悪魔の最強決定戦(上)

『それでは、両「(キング)」の選手、台の前へ』

 

 審判(アービター)に促され、リアスさんとサイラオーグさんがダイスの置かれた台の前に立つ。

 

『第1試合を執り行います。出場させる選手をこれより決めます。両者共にダイスを手に取ってください』

 

 リアスさんがダイスを手に取る。

 

『シュート!』

 

 審判の掛け声を合図に両者がダイスを振った。

 台の上で転がり、ダイスの動きが止まる。2つのダイスの賽の目は―――。

 

『リアス・グレモリー選手が出した目は―――2! 対するサイラオーグ・バアル選手が出した目は1! 合計3となり、その数の分だけ眷属を送り出す事が出来ます! さあ、両陣営最初に出す眷属は誰なのか!?』

 

 最初の出目は最小の3か。まあ、滑り出しとしては控えめでいいんじゃないかな。

 

『作戦タイムは5分。その間に出場選手を選出してください。なお、「兵士(ポーン)」のプロモーションはフィールドに到着後、昇格可能となります。試合ごとにプロモーションが解除されますので、その都度フィールドでプロモーションを行おこなってください』

 

 審判の宣言後に作戦タイムが始まり、両陣営が謎の結界に覆われる。

 

「防音対策。作戦が外に漏れないようにするためのものだね。さらに外部の口元を読心術で読まれないよう、各選手の顔に特殊なマークがつくように加工されるんだ」

 

 木場さんの言うとおり巨大モニターを見てみると、顔に眷属の魔法陣が覆っているように加工されていた。

 そこまでの配慮をされてるとは。基礎程度の仙術ではこの結界を抜けて盗聴などはできそうにない。だが、(さとり)など心を読む妖怪や、高レベルの仙術なら突破できそうだ。まあ、僕にできないなら意味ないか。

 待機用の椅子に座る僕たち、リアスさんが見渡すように言った。

 

「あちらはこちらが祐斗を出すと既に読んでいるでしょうね」

「ど、どうしてですか?」

 

 一誠がそう訊くと、答えたのは木場さんだった。

 

「3が出た以上、こちらが出せる選手は四名。『騎士(ナイト)』の僕とゼノヴィア、『僧侶(ビショップ)』のアーシアさんとギャスパーくん。サポートタイプのアーシアさんとギャスパーくんを初っ端から単独で出せるはずもないだろう? 二人はもともと前衛になる戦士と組んでこそ真価を発揮する後衛タイプだ。ダイスの合計数字が6以上から出すべきメンバーさ。そうなると―――」

「……木場とゼノヴィアしか選択肢がなくなるわけか。それで木場になるってのは―――」

「ゼノヴィアはパワータイプの『騎士(ナイト)』だから、あちらの『騎士(ナイト)』二名、『僧侶(ビショップ)』二名と単独で戦う場合、テクニック―――ハメ技を貰うリスクが高いのよ」

 

 一誠の言葉にリアスさんが続く。

 それを聞いてゼノヴィアさんは頷く。

 

「……うむ、無傷で勝利は厳しそうだな。だが、テクニックタイプに後れを取るつもりはないぞ」

 

 自信満々なゼノヴィアさんだが、リアスさんが告げる。

 

「けれど、勝ったとしても手の内を知られて動きを読まれる可能性が高いわ。そこで祐斗なのよ。相手に手の内を知られていても臨機応変に戦える能力ならゼノヴィアよりも祐斗だわ」

「むっ、イッセー。おまえ、私が何も考えていないとか思っていないか?」

 

 ゼノヴィアさんが異を唱え、一誠は口元をひくつかせて首を横に振った。思ってるのが顔に出てるよ……。

 正直なところ僕も大して考えてないと思うけどね。

 

「読まれていても行かなきゃね。―――行くよ」

 

 木場さんが襟元を直しながら1歩前に出る。

 

「初戦から負けるんじゃねぇぞ?」

 

 一誠が煽りを入れる。

 

「当然勝つよ」

 

 木場さんは笑顔で返事をした。

 

『時間制限の五分になろうとしています。試合に出場する選手は魔法陣のもとに足を進めてください。魔法陣は移動式のものとなっておりまして、そこから別空間に用意されたバトルフィールドへ転移されます。試合はそのバトルフィールドで行われます。各種用意されたフィールドはランダムで選ばれます。なお、フィールドに転送されるまでの間、両陣営の陣地は結界によって不可視の状態になります。その状態が解かれるのは一つの試合を終えた後です』

 

 バトルフィールドは別次元に用意されて、ここが戦場にはならないというわけか。それなら世界遺産を破壊することはないね。

 両陣営の陣地が不可視になるのは相手の出場選手を見て、直前で相性のいい眷属に変更しないため。要するに後出し不正を防ぐためだろう。

 これだけ用心されてるということは、もしかしたら他にも不正対策がいくつかあるのかもね。

 そうこうしていると、陣地を覆う結界が濃くなり外と遮断される。

 

「では、行ってまいります」

 

 耳にイヤホンマイクを付けた木場さんが魔法陣の上に立つ。魔法陣が光だし、木場さんがバトルフィールドへ転移された。

 陣地上空に映像風景がいくつも現れる。一つは観客の様子を映したもので、一番大きな映像に広大な緑の平原が映し出された。

 

『おおっと! 第一試合の出場選手がバトルフィールドに登場です! フィールドは見渡す限りの広大な平原! この緑広がる原っぱが第1試合の舞台となります! 合計数字3によって両陣営から選ばれたのは―――グレモリー眷属の神速の貴公子! 木場祐斗選手です! リアス姫のナイトが登場です!』

「「「「「「「キャァァァァァァァァッ!木場きゅぅぅぅぅぅんっ!」」」」」」」

 

 実況に煽られ観客の女性達から黄色い歓声が上がる。

 

『対するバアル眷属は――――』

『英国生まれの転生悪魔、シャルル・ヴィッカース! サイラオーグ・バアル様の「騎士(ナイト)」デース! ヨロシクオネガイシマース!』

 

 なんともハイテンションな金髪の男性が、バネが異常に大きなホッピングのようなものに乗って実況よりも先に自己紹介した。

 若手悪魔の会合で紅茶盗んで両足ロープで縛られて引きずられてた人だ。

 ホッピングでぴょんぴょんと跳ね回りながらこちらに向かって笑顔で手を振る。

 

『僕はリアス・グレモリーさまの「騎士(ナイト)」、木場祐斗です。どうぞ、よろしく』

 

 相手の名乗りに木場さんも応えた。

 

『Hay! 聖魔剣の木場祐斗の噂は聞いてマース。剣士としてとても楽しみデース!』

『こちらこそ、貴殿との一戦を楽しみだと思えます』

 

 相手のハイテンションに崩されることなく木場さんも不敵に返す。

 

『第一試合、開始してください!』

 

 その合図と共に、木場さんは距離を取り、相手の騎士シャルルは逆に詰め寄った。

 

『Hi!』

 

 開始の合図とほぼ同時にホッピングの足を乗せている部分を強く蹴り、回転させながらバネの部分で木場さんに斬りかかった。

 

 ギィィィィン!

 

 鳴り響く金属音。とっさに作り出した聖魔剣で防ぎ、剣を弾き飛ばされはしたがなんとか防ぎきった。

 

『Oh あわよくば今ので決めたかったデ~ス』

 

 バネのパワーと回転が加わり威力とスピードが上がった一撃。だが代償に()めの予備動作と直線的な動きしかできない。だけど相手(木場さん)がそれを認知できていなかったのでそこは問題ではない。

 木場さんが助かったのは、距離を取ったことだ。それにより僅かだが余裕ができたことが大きい。でなければ不意打ちで終わっていた。

 実戦の緊張感を知っていた成果と言うべきか。

 

『かなり変則的な剣士とお見受けしました』

『Yes! ワタシの実力、まだまだ見せてあげるネ!』

 

 よく見るとバネの部分は刃、足を乗せてる部分は巨大な鍔、掴んでる場所は異様に長い柄。ホッピングのように見えたそれは、異様な形をした長刀だった。あまりにも異様すぎて画面越しではわからなかったよ。

 

『それじゃ、勝負再開デース!』

 

 腰の剣を抜き、溜めの一拍後に姿を消した。

 

『―――速いッ!』

 

 僕も木場さんと同じ感想だ。高速に目が慣れている木場さんでも追いきれない速さ。いや、読みきれない速さと言ったほうが正しい。

 木場さんは気配を感じ取るような姿勢で聖魔剣を構える。

 

 ギギィン! ギィィン!

 

 鳴り響く金属音。木場さんはその場をあまり動かずに、高速で仕掛けられる攻撃を受け流した。速い代わりにジャンプでの高速移動という弱点をうまく捉えられている。

 何度か受け流した後、木場さんも高速で動き出した。既に両者の姿は認識できず、金属音と火花でぶつかり合っているのがわかるくらい。

 だが、木場さんだけが度々足を止めていた。おそらくフェイントで動きを制限されてしまってるのだろう。よく見ると、地面の移動跡から木場さんは常に円の内側で動いていることがわかる。

 相手は直線的な攻撃で受け流しやすいが、うまい動きで木場さんの足が封じられている。これではいずれジリ貧だ。

 だが、二刀の聖魔剣のオーラで受け止め、ついに両者がつりばり合う形で姿を見せた。

 

『Oh shit! 着地時に合わせられてしまいました。リアス・グレモリーのナイト、恐るべしデース』

『そちらこそ、凄まじいスピードにこちらの動きを封じる巧みなフェイントの数々……恐ろしいですね。カウンターを狙おうにも、防いでる間にあなたは間合いから離れてしまう。足場を消し去るしかないか!』

『How?』

 

 そう言った木場さんは体にオーラを纏わせ、周囲の地面から聖魔剣の刃を幾重にも発生させた。

 だが、シャルルはバネで大きく距離を取り回避する。

 間髪入れずに木場さんが新たな聖魔剣を振りかざす。

 

『雷の聖魔剣よッ!』

 

 天が光り、雷がシャルル目掛けて降り注ぐ。朱乃さんが使っていたように、木場さんも似たように雷を降らせた。

 しかし、シャルルはホッピングの剣を上空に蹴り上げ、避雷針代わりにして雷をやり過ごす。

 対空中だったシャルルは空中で回転し両足でうまく着地した。

 躱されたはしたがこれで相手の得物と機動力を削ぎ落とした。

 

『チッチッチ。聖魔剣がどれだけ悪魔にとってweak (弱点)でも、当たらなければどーってことありまセーン!』

 

 シャルルは余裕そうに笑顔で言う。

 

『ですが、貴殿のあの剣を奪えれば十分な成果です。これで先程までの速さは出せませんから』

 

 木場さんも負けじと余裕そうに返す。

 実際に今の攻防でダメージこそ与えられなかったものの、あの厄介な機動力の源を奪うことができたなら上々の出来だろう。

 それでもあの一芸だけで追い詰められる程木場さんは弱くはない。一番の問題はあの癖の強そうな剣を手足のように扱っていたシャルルの技量にある。それでもあの機動力が問題だったのは間違いない。これで聖魔剣を作り出せる木場さんの方が優位。

 

『ノンノン、問題ナッシング』

 

 だが、それを問題ないと言い切った。

 シャルルは体にオーラを纏わせると、先ほどと同じ異様な長刀を創り出した。

 

『まさか、その能力は……ッ!』

『yes! ワタシの神器はアナタと同じ「魔剣創造(ソードバース)」デース』

 

 自分と同じ神器だと言われて驚く木場さん。

 同じ神器と言われても、シャルルが使う『魔剣創造(ソードバース)』は木場さんが今まで使ってきた魔剣と違いすぎる。

 そもそも刀身をバネ代わりにして飛ぶなんて。

 

『自由で柔軟な心で創れば、魔剣もこんなにも自由で柔軟な形になりマース。ワタシの魔剣は魔剣の特性に加え、バネの特性も持ち合わせているのデース』

『まさか今まで使ってきた自分の神器にそんな可能性があったなんて』

 

 これは木場さんが神器の可能性を引き出せなかったと言うよりも、シャルルが魔剣創造(ソードバース)の新たな可能性を生み出したと言ったほうが正しいだろう。刀身がバネの性質を併せ持つなんて普通はありえないことなんだから。

 僕の予想としては、魔剣が持つ属性を付与する能力を変質させた。属性ではなく性質を付与するって、もはや亜種じゃないかな?

 

『確かに驚かされたけど、僕は負けないよッ!』

 

 今度は木場さんの方から飛び出していく。あのバネが動き出せば捉えるのは困難。ならば先手を取ってしまおうと言うわけか。相手が止まってる今は絶好のチャンス。

 おそらく木場さんの思惑通り、溜めのタイミングが無くバネを十分に活かせなくなった。―――だが、木場さんの顔は険しい。

 確かにバネの加速はなくなったが、シャルルは空中でアクロバティックに剣を振るい木場さんを翻弄した。表情もカメラに向けるほど余裕がある。

 まるでサーカスの曲芸のようだ。例え実際の戦況が五分だとしても、相手は遊びを入れる余裕がある。心理的優位は圧倒的に向こうだ。

 最初こそ、剣で受け流すものの、縦横無尽に飛んでくる攻撃に翻弄され、木場さんもたまらずその身にダメージを受けていく。

 

『HayHay! もうバテて来ましたか?』

『くっ!』

 

 木場さんは二振りめ聖魔剣を創り出し、二刀で大きくオーラを弾けさせた。

 その勢いで周囲の平原が吹き飛ぶが、シャルルは長刀に乗ったままうまく避けて距離を取った。

 

『……初手からあまり勢い良く手の内を見せるのは嫌だったんだけどね……。どうやら、出し惜しみしていたら必要以上の体力を失いそうだ。ゼノヴィアの事を言えないな』

 

 自嘲気味に木場さんが言う。……あれを使うつもりか。まあ、力を温存して負けたなんて本末転倒だし。

 聖魔剣を消して聖剣だけを創り出し、堂々と宣言する

 

『僕はあなたよりも強い。この勝負、いずれは僕があなたの動きを捉えるだろう。けど、その為にはスタミナをかなり消耗する。今後の戦いを考えると短期決戦(ブリッツ)で仕留めた方が効率が良い』

『HaHaHa! 言ってくれますネ。まあ、確かにこのまま続けてればそのうち捉えられるかもしれません。ですが、ワタシだって全てを見せたわけではアリマセン! 例え負けても、後続に繋げるため、四肢を全部切り落としてやるネ!』

 

 一方でシャルルの方も已然底は見えない。冗談っぽいセリフだがその目は意外にも結構マジだ。

 

『そう、だからこそ、あなたが怖い。覚悟が完了した使い手ほど怖いものはありませんから。僕は―――もう1つの可能性を見せようと思います。―――禁手化(バランス・ブレイク)

 

 聖剣を携え、静かに呟いた。―――その瞬間、木場さんが聖なるオーラに包まれる。すると、地面から聖剣の刃が幾重にも出現。甲冑姿をした異形の存在が創り出されていき、地面に生えた聖剣を手に取り、木場さんの周囲に集まる。

 甲冑騎士の兜はドラゴンがモチーフとなっている。

 甲冑騎士達に囲まれた木場さんは、さながら騎士団を仕切る団長。

 

『Why!? 禁手化(バランス・ブレイク)!!? アナタは既に「双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)」に禁手化(バランス・ブレイク)してました! なのになんで違う禁手(バランス・ブレイカー)に!?』

 

 それを見てシャルルは大袈裟に表現しながら驚愕していた。

 木場さんの禁手は『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』で間違いないが、それは『魔剣創造(ソードバース)』の禁手化。だが、木場さんには後天的にもう一つ神器を持っていた。

 

「……ッ! まさか、『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の禁手化ですか……ッ!?」

「―――『聖覇の龍騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)』、『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の禁手にして亜種です」

 

 いつのことかは覚えてないが、元同胞の魂から聖剣使いの因子を譲り受けた時、聖剣を生み出す神器も得たらしい。

 その結果、『魔剣創造(ソードバース)』と『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の2つの神器を持つ剣士となった。

 そこで木場さんは京都での一戦で『聖剣創造』の禁手の発現を思い付き、一誠に協力してもらい、組手を繰り返し完成させたと。

 この禁手の能力は使い手と同じ速度と技量を龍騎士団に付与出来る。現状だと速度までらしいけども。

 一誠の禁手と違い1つの神器を極めようとして生み出された禁手なだけあって伸びしろを感じた。この禁手自体の能力上限以外のね。

それが活かされるかは木場さんがどれだけ極めようとするかにかかっているだろうけど。

 

『これに至る為に自前の聖剣のみで赤龍帝と戦ったけど……ふふふ、胆が冷えたよ。死さえ覚悟した。だって、イッセーくんは本気で殺しに来てくれたからね。そのお陰で二度めの禁手(バランス・ブレイカー)になれたんだけど』

 

 別の映像風景では実況席のアザゼル総督が面白そうに顎に手をやっていた。

 

『本来、「聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)」の禁手(バランス・ブレイカー)は聖剣を携たずさえた甲冑騎士を複数創り出す「聖輝の騎士団(ブレード・ナイトマス)」と言うものだ。木場選手の能力はそれを独自のアレンジで亜種として発現出来たようだ。しかも龍の騎士団! かーっ! 木場、お前な、イッセーの影響受け過ぎだぞ! 大きなお姉さん達が喜ぶ展開だな!』

 

 嬉々として実況するアザゼル総督。

 良くも悪くも木場さんも一誠の影響を強く受けている。やっぱり二天龍の影響力は噂通り、関わった神器所有者は異質な状態に目覚める傾向が強まるのかな?

 

『シャルル殿! いざ参ります!』

 

 木場さんが騎士団と共にその場を駆け出すと、シャルルは背を向けて逃げ出した。

 

『戦略的撤退デ―――ス!』

 

 地面に単純な魔剣を出現させ、長刀で魔剣を騎士団へ弾きながら逃げる。逃走と攻撃を同時に行うよい逃げ方だ。創造系の神器だから弾数の心配もない。

 問題は狙いが適当で、騎士団に当たってもダメージがほぼない。創造された魔剣は騎士団の足元に散らばるばかり。

 しばらくの抵抗虚しく、騎士団はシャルルに追いついた。

 

『No~~~~~~~~~!!』

 

 追い詰められたシャルルは長刀のバネを最大限まで発揮させて空高く飛び上がる。

 だが着地地点に木場さんの騎士団が待ち受ける。

 

『上空に逃げたのは失敗でしたね。もう、逃げ道はありません。チェックメイトです』

 

 苦し紛れの最後のあがきで、着地と同時に騎士団によって詰み。誰もがそう思っていたが―――。

 

禁手(バランス・ブレイク)デース!』

 

 シャルルが大声で宣言するが、シャルルに変化は見られない。―――変化が起こったのは()ではなく、地面()だった。

 

『なんだ!?』

 

 突如、地面から這い上がってきた何かによって拘束された木場さん。その正体は大蛇、魔剣が変化した大蛇だった。一匹の大蛇が木場さんを螺旋状に締め上げると、他数匹がさらに締め付け木場さんの動きを完全に封じ込めた。

 

『これがワタシの禁手化(バランス・ブレイク)! 「魔剣獣の曲芸団(ソード・パーサニファイ・サーカス)」ッ! ワタシの魔剣はワタシの禁手(バランス・ブレイカー)によって動物に擬獣化しマース!』

 

 騎士団の下に散らばった魔剣も蛇や大蛇となり、その周りの魔剣はライオンや鷹が騎士団を取り囲む。

 創造した魔剣を飛ばしていたのは逃げる時間を稼ぐためじゃなく、本命は魔剣を散らばらせ魔剣獣を敵懐に配置するのが目的だったんだ。

 身動きを封じられ一箇所に固められた騎士団へ、シャルルは乗っていた長刀を蹴り込んだ。

 長刀は徐々にその姿を変化させ、長刀は象へと変化し騎士たちを踏み潰す。残った騎士たちも剣の鼻に一掃された。

 シャルルは剣の鼻の上に見事着地して見せ、騎士団を失った騎士団長(木場さん)に言った。

 

『残念ですがチェックメイトデース。リタイアしてくださーい。今なら穏便に済ませマース』

『生憎、僕もリアス・グレモリーさまの「騎士(ナイト)」として諦めるつもりはない』

 

 この状況でなお木場さんは戦う姿勢を見せる。例えこのまま負けても後続に繋げるつもりだ。だが―――。

 

「そうですか。でも残念ながら、これでFinish』

 

 ここまで追い詰められてしまえば、木場さんに打つ手はない。

 シャルルの一言で木場さんの締め付けられてる部分から血が噴き出した。動物化させた魔剣に剣の要素を戻すこともできるのか。動物も哺乳類に鳥類に爬虫類まで、幅も広そうだ。

 宣言通り、木場さんは出来たての血溜まりの中に倒れ込み、リタイアの光に包まれフィールドから消えていく。

 

『リアス・グレモリー選手の「騎士(ナイト)」一名、リタイアです!』

 

 騎士団の団長とサーカス団の団長。勝利したのはサーカス団長。

 初戦はバアルチームが制することとなった。

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

『初戦を制したのはバアルチーム! さあ、次の試合はどうなるのでしょうか!』

 

 実況が煽り、再び両者の『(キング)』がダイスを振る。出目は―――リアスさんが3、サイラオーグさんが2。合計は5となった。

 

『合計数字は5! 両陣営、5までの選手を出せることになります! さあ、次に出す眷属は誰なのか!?』

 

 今度の出目も選択肢は広がったものの出場可能なのは一人。

 作戦時間を利用してリアスさんが選手を選ぶ。

 

「小猫、あなたにお願いするわ」

「……了解」

 

 選ばれたのは『戦車(ルーク)』の塔城さん。僕を戦力外と考えれば選べるのは、塔城さんとゼノヴィアさん。駒価値3で他と組みやすいゼノヴィアさんを残したか。

 気合の入った塔城さんが魔法陣で転送されていく。映像に映し出されたフィールドは巨大な柱が林立する薄暗い神殿内らしき場所だった。

 対戦相手は、全身マントで巨体を隠している。

 

『俺はサイラオーグさまの「戦車(ルーク)」の一人、バッボ・オーブ。相手が小さな女だからって容赦はしねえ、大暴れしてやるぜ』

『……望むところです』

 

 相手の名乗りに塔城さんも強気に返す。

 

『第二試合、開始してください!』

 

 審判が試合開始を告げる。

 

『……初っ端から本気で行きます』

 

 塔城さんは全身に闘気を纏わせ、猫耳と2つに分かれた尻尾が出現させる。(いわ)くこれが新技、『猫又モードレベル2』らしい。仙術で、全身に闘気を纏わせることで一時的にパワーを爆発させる。―――一つ言うなら、改善するべき点が大量にあるね。

 塔城さんは素早く飛び出し、バッボの顔面に一撃加えた。

 

 ゴロン……。

 

 なんと、塔城さんの一撃で首が地面に落ちた。これには観客席も騒然となる。

 

『カラカラカラ! 問題ねぇよ』

 

 バッボから声が発せられ、マントを取った。

 そこにはなんと、落ちた首はただの鉄球で、左手首からは手ではなく鎖になっており鉄球とつながっていた。

 

『俺はデュラハン。昔、戦いで頭部を失ってから義頭なんだ。左手も同じく』

 

 バッボは鎖を操って鉄球をけん玉のようにトンガリのある所定の位置に戻す。

 

『さあ、続けようぜ。さあ、遠慮なく攻撃して来な。真正面から全て受けきってやる』

 

 指をクイクイと動かして塔城さんを挑発。挑発を受けた塔城さんは今度はボディを狙いにいく。

 

 ドゴンッ!

 

 豪快な音が鳴り響くが、バッボは直立不動で意にも介さない。鉄球で表情が分からないが、見た目からダメージは伺えない。

 塔城さんは反撃を危惧して距離を取るが、バッボは宣言通り塔城さんの次の攻撃を棒立ちで待つ。

 それから塔城さんは闘気を纏わせた拳でバッボにパンチを与え続ける。何十発か打ち込んだところでバッボが打ち込まれた拳を掴んだ。何十発も宣言通り無防備に受け続けた相手が突然動き出した事に驚く塔城さん。相手が宣言したことを守ってたからって油断大敵だよ。

 しかし、それは幸運にも誰もが想像した理由と違った。

 

『おいおい、もうちょっと本気出してこい。俺がこんなにもわかりやすい悪役(ヒール)やってんだからよ。遠慮することなんてないんだぞ?』

 

 バッボは心配するかのように優しく塔城さんに語りかけた。

 

『それともなんだ? ヘルキャットには荷が重かったか。善玉(ベビーフェイス)が巨体の悪役(ヒール)に善戦するなんて盛り上がる構図だったんだけどな。所詮マスコットか……』

 

 すると今度は手のひらを返すように煽りを入れる。挑発され怒りで塔城さんは闘気が増していく。

 バッボが手を離すと、さらに威力が増した拳で再び殴り続ける。そろそろ塔城さんも気づいてるかな?

 塔城さんはパンチの際に、仙術で練った気を内部に送り込んでいる。そうすることでパンチの効果が望めなくても、何発か当てていけば内部から破壊することができるようになる。本来はそれで魔法に対する防御を展開できなくしてサポートもできる。

 だが、バッボの鎧の体には仙術で練った気が通っていない。相当効きづらい体質なのだろう。塔城さんにとってバッボの体は絶縁体に等しい。

 

『これがただの興行ならこっちでもう少しなんとかしてやれたんだがな。レーティングゲームで見せ場重視の八百長はできねぇ』

 

 そう言うとバッボはゆっくりと動き出した。

 一度目の失態から学んだ塔城さんは、バッボが動き出すと同時にきちんと反応した。

 塔城さんは大振りなバッボの攻撃を掻い潜りながら素早く一発、もう一発とパンチを入れるが、一向に効いていない。

 これでは拳を痛めるだけと塔城さんは一度距離を取ろうとすると。

 

 ドガガガガガガガガガァァァァァァァッ!

 

 バッボは左手の鎖で頭の鉄球を横薙ぎに追撃。鉄球と鎖が柱を薙ぎ倒しながら半円を描く。

 舞い上がる塵芥(じんかい)の中、塔城さんが倒れる柱を避けていると、バッボは倒れる柱を力で無理矢理突破して急接近。落ちてくる柱を掴んで塔城さんに叩きつけた。

 

『うぐっ……!』

 

 闘気を纏わせ『戦車(ルーク)』の特性を持つ塔城さんなら柱の一撃くらいなら耐えられる。だが問題は別にある。

 刹那、衝撃で塔城さんは身を硬直させてしまう。つまり、防御態勢で回避行動ができなくなった。

 その隙きをバッボは見逃さなかった。

 

『オォラァ!』

 

 ブゥゥゥゥゥンッ!

 

 風を殴る音と共に巨大な拳が小柄な塔城さんに突き刺さる。

 塔城さんはリタイアの光に包まれ転送された。

 一誠は唇を噛み、怒りと悔しさを表情に表すが、その感情をグッと押し殺す。

 

『リアス・グレモリー選手の「戦車(ルーク)」1名、リタイヤです』

 

 審判が告げる。

 第二試合もバアルチームが制した。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

 

『第二試合を終えて、グレモリーは2名リタイヤ。バアル優勢ですが、まだ分かりません! ゲームは始まったばかりだからです!』

 

 実況がそう煽る。

 

「冷静だね。塔城さんがやられても感情を押し殺した」

 

 僕がそう言うと一誠は言う。

 

「……悔しいさ。木場がやられた時だって。だけど、溜めようかなって思ってよ。こういうのは後で爆発したほうがいいだろう?」

「その意見には賛成かな」

 

 第三試合を決めるダイスを両『(キング)』が振った。―――合計はまたまた5だった。

 作戦タイム時に僕は手を上げて言った。

 

「僕が出ます」

 

 すると一誠が心配そうに訊く。

 

「大丈夫か?」

「僕だってグレモリー眷属の『戦車(ルーク)』なんだから。それに、このルールならどのみちいつかは出ることになる」

 

 駒価値5の『戦車(ルーク)』となれば単体で出る確率が高いだろうし。ゼノヴィアさんを残した方がいいだろう。

 まあ、最終的な決断は『(キング)』のリアスさん次第なんだけど。

 僕はリアスさんの最終判断を待った。

 

「……そうね、誇銅の言うとおりだわ。あなたにお願いするわ」

「はい!」

 

 リアスさんの決断に僕は元気よく返事する。

 

「そうだよな、誇銅だってグレモリー眷属の男なんだからな。よし! 行って来い誇銅!」

 

 一誠は僕に激励を飛ばしてくれる。もちろんさ、グレモリー眷属最後のレーティングゲームなんだから。

 魔法陣の上に立ち、光に包まれ転送されていく。日鳥誇銅、推して参る!

 

 

 

 転移の光が止み、僕が到着したのは―――広い砂漠地帯だった。辺り一面砂だらけの場所。障害物なんて何もないや。

 僕の対戦相手は、長身の男性。資料で見たもう一人の『戦車(ルーク)』だ。

 

「リアス・グレモリーさまの『戦車(ルーク)』、日鳥誇銅です」

「サイラオーグ・バアルさまの『戦車(ルーク)』のラードラ・ブネだ」

 

 僕の自己紹介に向こうも返してくれる。

 

『バアル・チーム、「戦車(ルーク)」のラードラ・ブネ選手は断絶した元七十二柱のブネ家の末裔です! アザゼル総督、バアルチームには複数の断絶した家の末裔が所属しておりますが……』

 

 実況に訊かれたアザゼル総督が答える。

 

『能力さえあれば、どんな身分の者でも引き入れる。それがサイラオーグ・バアルの考えだ。それに断絶した家の末裔が呼応したと言う事でしょうな。断絶した家の末裔は現悪魔政府から保護の対象でありながらも一部の上役に厄介払いと蔑まれているのが実情。他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の悪魔なんて上に行けばたくさんいますからね』

『ハハハハ、全くその通りです』

 

 アザゼル総督の皮肉なコメントに実況者は困り顔。皇帝は笑っていたけども……。

 

「その通り、我が主サイラオーグ様は人間と交じってまで生き永らえた我らの一族を迎え入れてくれた」

 

 その瞳は使命感に燃えており、固い信念の様な物も感じられる。同じ悪魔に厄介者として蔑まれるなんて……。でも、同情はしても手加減はしないよ!

 

『第三試合、開始してください』

 

 試合が始まると同時に僕は歩いてラードラさんに近づき―――友好的な笑顔で握手の手を差し出した。

 

「どうぞよろしくお願いします」

 

 試合中の対戦相手からの握手。さて、どう出るかな。

 ラードラさんは僕の顔を手を見て、しばらくしてから握手に応じてくれた。

 

「こちらこそよろしく頼む。冥界での会合で、グレモリー眷属でキミだけが殺意に満ちたオーラに平然としていた。それで是非戦ってみたいと思っていた」

「やはり見られていましたか。でも、光栄です」

「しかし、こういうのは試合の開始前にするものだ。礼儀正しいのは良いが、迂闊だな」

 

 僕を逃すまいと握る手を強めるラードラさん。わかっていますよ、自分より体格の大きい人にみすみす近づいて手を掴ませるなんて愚の骨頂。いかに友好の握手でも迂闊。―――ですが、それはあなたも同じです。

 

 ドサッ……。

 

 力を込めて先制攻撃を入れようとしたラードラさんの両膝が崩れて地面に付く。ふふっ、何が起こったのか本人もわからず驚いているね。

 

「試合中に握手に応じるなんて、迂闊過ぎますよ?」

 

 先程言われたことをそっくりお返ししてみた。

 手を握り合わせた状態からわざわざ力まで入れてくれたんだから、相手の力を操って動けなくしたり脱力させるなんてお茶の子さいさいだよ。

 

「くっ……!」

 

 ボゴッ! ドンッ!

 

 ラードラさんのひょろ長い体が突然盛り上がり、異様な体つきに変化していく。これはちょっとマズイかも。―――けどね。

 

「させませんよ」

 

 手のひらから仙術を体内に流し込み、肉体の変化をやめさせる。あぶないあぶない、何かしらの変身能力を持っていたみたいだ。でもまあ、こうやって封じてしまえば意味はない。

 最初に、体の自由を九尾流柔術で封じ、仙術で能力を封じ、相手の全てを手中に収めた。握手の体制のままラードラさんをゆっくり仰向けに寝かせる。

 

「不意打ちで申し訳ありませんが、一勝いただきます」

 

 仙術で闘気を纏わせた左掌(ひだりてのひら)(あご)掌底(しょうてい)を打ち込み脳震盪を起こさせる。だがこれでもまだ気を失ってないみたいなので、手を離し素早くオーラを左手から右足に移動させ蹴りを入れ完全に失神させた。

 ラードラさんは光に包まれ転移されていった。

 

『サイラオーグ・バアル選手の「戦車(ルーク)」1名、リタイヤです』

 

 第三試合をグレモリーチームが制することができた。やっとこれで一勝目。だけど、客受け最悪だろうな~。

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