ペンタゴナ『
急な変更ですが、そちらの方が都合がいいことが判明しまして、申し訳ありません。
組み合わせの変更で数合わせで難航しています。投稿していてもこれでよかったのか……。なので今回はいつもよりも自信がありません。
『第三試合、なんと始まって数分での決着! 最速の決着です! アザゼル総督、日鳥誇銅選手はラードラ・ブネ選手に何をしたのでしょうか?』
実況者がアザゼル総督に訊くと、アザゼル総督は難しい顔をなががら答えた。
『正直に申しますと、私も驚いています。グレモリーチームのコーチをしていましたが、誇銅選手があのような戦い方は初めて眼にしました。もちろん私が教えたものではありません。誇銅、どこであんな技を……』
日本妖怪からです。まあ、絶対に教えないけど。
「でかした誇銅!」
陣地に帰ってきた僕に最初に投げかけられたのは一誠の言葉だった。
「けど、勝ち方がなんかちょっと……卑怯って言うか」
一誠が言葉を続ける。言葉を濁すようであまり濁せていない。けどまあ、言いたいことはわかる。あれは不意打ちの部類でも賛否両論ありそうな部類だからね。戦闘中の相手の隙を突くのではなく、戦闘中に戦闘外で隙を突くものだから。
「試合の開始はちゃんとされてたよ? それに、相手も言ってたように試合中に握手に応じるのは迂闊」
「でも、う~ん……」
僕が説得するも一誠は悩み顔。理屈でわかっても気持ち的には割り切れないものがあるんだろうね。
「不意打ちが通じるのなんて最初の一回だけ。次からはもう引っかかってくれない。なら、勝利に貢献するなら使わない手はないじゃないかな」
「……誇銅、おまえって案外したたかなんだな」
何かを無理矢理納得させたようにつぶやき、自己完結させる一誠。そうそう、それでいいんだよ。
「ところでさ、あれって何をやったんだ? 先生もわからないみたいだったし」
先程の不意打ちに使った技の疑問を訊かれる。すると、他の眷属の皆も興味ありと僕の方を見た。
「何って、ちょっとした柔術と仙術の混合技だけど」
「仙術!? 誇銅も仙術が使えるのか!?」
「うん。シトリー眷属だって使えたんだから、僕が使えてもおかしくはないよね?」
こんなやり取りをしている間に、両『
作戦タイムに移行しようとした時、サイラオーグさんが審判に告げた。
「こちらは『
即座にバトルフィールドに出す選手を宣言したサイラオーグさん。観客もどよめいていた。モニターの前に相手『
ウェーブの掛かったロングの金髪にOLの様なビジネススーツを着込んだ、一誠好みなグラマーな女性。
『これは出場宣言でしょうか! サイラオーグ選手、その理由は?』
実況がそう訊くと、サイラオーグさんが一誠の方に視線を向けた。
「兵藤一誠のスケベな技に対抗する術を彼女が持っているとしたら、兵藤一誠はどう応えるだろうか?」
一誠のスケベ技に対抗する術? それも彼女が? なんだか悪い予感がして来たぞ。
サイラオーグの言葉に観客がざわめき、アザゼル総督がその宣言に一番に乗った。
『ほお! 面白い宣言じゃねぇか! イッセー選手は女に対して無類の強さを発揮する。その理由は「
『兵藤一誠選手は面白いですね。聞いた話では、毎回新しい技を閃いてくるとか』
皇帝も興味津々の様子だった。もう少し違う形だったら僕も素直に賞賛できるんだけどね。
『あれは頭がスポンジなので吸収率がとても良いんだ。元がカラカラに乾いたスポンジなせいか、教えた分すぐに吸い取ってな。頭の中にエロ以外余計な知識が入ってなくて空っぽってのがここまで恐ろしいものかと思ったよ』
「「「「「アハハハハッ!」」」」」
アザゼル総督の解説に会場内の観客が爆笑した。言うとおり一誠の吸収率もとい成長率は意外と高い。変態思考で単調で単純ではあるが、一般人の一誠がここまで短期間でここまで成長したのは、神滅具のおかげだけと断定するべきではないだろう。
皆の爆笑に一誠は恥ずかしさで顔を赤くしていた。日常の変態言動から恥知らずに見えるが羞恥心は人並みにあるんだよね。
『スポンジドラゴン!』
観客の誰かが新たなニックネームを叫ぶ。
「うるさーい! 誰っスか!? 今スポンジドラゴンって言っただろう! 何でもかんでも○○ドラゴンって付けるんじゃなーいッ!」
一誠は異を唱えても観客の爆笑の中に消えるだけ。
『いいっスよ! 俺、其の挑戦受けます!」
一誠が独断と勢いで了承してしまう。
リアスさんは額に手を当てて困り顔。
「……まったく。罠だろうけれど、どうなの? 実力的には貴方のほうが圧倒的に上でしょうけれど、おそらく相手は何かを企んでいるわ」
「興味あります。俺の技に対抗できる女性だなんて。それにこれ、サイラオーグさんからの挑戦状でもあるんだろうし……『これを超えられるか?』って。あんまり酷いハメ技はしてこないんじゃないでしょうか?」
一誠の言うとおり、これはサイラオーグさんからの挑戦状だと思う。そうなれはあの性格上そういうことはしないかも。
しかし、そうでなかったら。ああ見えても追い詰められて切羽詰まっていたなら。負けられないために泣く泣くそういう手段に出ることも。そもそもあからさまに一誠が得意な女性をぶつけてくるところから相当怪しい。
リアスさんは息を吐いた。
「……行ってきなさい。私もあなたのあの技を破るという相手の術が気になるわ。でも、決して気を抜かないで」
グレモリー眷属の気質から受けないなんて選択肢はそうないだろう。
「はい! 兵藤一誠、行ってまいります!」
一誠は敬礼して魔法陣へ向かう。
『おっぱいドラゴンがどうやら戦うみたいです!』
「「「「「「おっぱいッ! おっぱいッ! おっぱいッ!」」」」」
実況が叫ぶと、子連れの客席が今までに無いほどに沸いて揺れた。
『見てください! 子供たちのあの元気な笑顔! 冥界のヒーロー! 子供たちがおっぱいドラゴンの登場に大興奮しております!』
実況者の言うとおり、モニターに映る子供たちは皆笑顔だった。顔の下に悪魔文字で『おっぱいドラゴン』と表示され、入場曲として「おっぱいドラゴンの歌」とか言う、一誠の覇龍を静めた歌まで流れ出した。ある意味ヒーローの不祥事だよ!
僕がそんなことを思っていても、一誠はいい笑顔でバトルフィールドに転送されていった。
映像に映し出されるフィールドは、ただっ広い花畑。色鮮やかな花々が一面に咲き誇る綺麗な場所だ。
前方にいる『
『第四試合、開始してください!』
試合開始の合図がなされた。とりあえずといった感じで籠手を出現させ、『
それに応じて相手の『
『やるわね、坊や』
淡々と言う『
一誠は氷の魔力を躱し、次の魔力攻撃もやり過ごす。鎧を纏ってない状態を狙われることを危惧していた一誠は敵の攻撃から逃げる特訓もしていた。
魔力を避けながら花畑を逃げ回ってるうちにカウントダウンが終わり、籠手からの赤い閃光に包まれ、禁手の鎧を形成し禁手化状態となった。
『出ました! おっぱいドラゴンです! 会場では子供たちがさらに興奮の一途!』
実況が叫び、バトルフィールドの上空に映像が現れて子供達の姿が映し出される。
『おっぱいドラゴ―――-―ンッ! 頑張って――――ッ!』
子供たちの無邪気で明るい声援。こんな子供たちが悪い影響を受けなければいいんだけど。
一誠の魔力が高まり、何かしら準備に取り掛かる。
「きたきたきた! 広がれ、俺の―――」
一誠が
本気を出すために脱いだと考えたが―――違った。上着だけでなくスカートも脱いでいく。
あまりの展開に一誠は攻撃の手を止めた。
『おおっと! これは! バアルチームのコリアナ・アンドレアルフス選手が、突然脱ぎ出した! 男性のお客さんも無言でガン見している状態です! アザゼル総督、これはいったい!』
『…………』
アザゼル総督もガン見だ。
『
映像の一誠は隠しきれない程興奮しながら、それでも技を発動した。
一誠を中心に謎の空間が広がっていき、コリアナを捉えた。悪魔がこの類の術を防ぐ手段はあまり多くはないだろう。
相手の次の行動がわかったであろうハズなのに、一誠は行動を起こさない。
「イッセー、何をしているの! 胸の内を聞いたのでしょう? なら、次の攻撃に備えて行動に移るのよ!」
リアスさんがイヤホンマイクで指示を送るが。
『出来ませんッッ! だって、お姉さんのおっぱいは次に脱いでいく箇所を宣言してくれるんですッ!』
「―――っ! なんてこと! 胸のうちはそんなことを教えてくれたの!?」
あまりの結果にリアスさんも驚いていた。
「それなら、ドラゴンショットを撃ち込めば決着はすぐに―――」
『それもできませ、部長! だって……だって! 今から脱ごうとしているお姉さんを攻撃することなんて、俺には無理です! 脱衣してくれているお姉さんを前にドレス・ブレイクで全裸って選択も俺の中でありません!』
一誠は断固として攻撃を拒否。一誠の気持ちもわからないではないし、それがどれだ素晴らしい光景か男として理解できる。そんなことをされれば僕だって思わず目を逸して隙きを見せるかもしれない。そのくせチラチラ見てしまうだろうね。
ある意味一誠の行動も許される可能性すらある。だがそれは自分のために戦っている場合に限る。誰かのために戦っているのなら、少なくても行動できる状態で何もしないは論外。
……けど、負けさえしなければ、一誠に限っては黙認されるだろうな。
そこでアザゼル総督が力説を始めた。
『これがサイラオーグ眷属の用意したイッセーの技封じか! なんて、恐ろしい術だ! 目の前で美女美少女が1枚1枚脱いでいく。男にとっちゃ、目の前で1枚1枚服を脱いでいく女ってのは最高の状態だ。ストリップショーと言うジャンルが確立する程、男ってのは服を取り払っていく女性に夢中になっちまう生き物だ。ドレス・ブレイクで一気に裸にするなんて事は愚行に等しい!スケベの心理を捉えた的確で正確な攻め手! これ程のものか、バアル眷属!』
わかるけど、なんとも頭の悪そうな解説だ。
それにしてもこれがサイラオーグさんの一誠対策なのか。よっぽど迷走したんだろうな……。
『ちなみに、このストリップショーですが、お子様も見ているのでそろそろ特殊な加工を施して放送しますのでご了承ください』
うん、それじゃ子供向け番組で「おっぱい」を連呼したり女性の胸をつつくシーンを入れるのはいいの? まあ、悪魔も流石にストリップはマズイと考えるか。でもまあ、悪ノリが過ぎるのは否めないけど。
ちなみに僕はもう見ないように目を閉じているけど。
するとしばらくしてから突然―――。
『ブラジャー外してから、パンツでしょッッ!』
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
怒りの叫びに目を開けて映像を見た。すると映像では、一誠が怒りに任せた極大のドラゴンショットをコリアナに放っていた。
『えっ!? ウソ!? キャァァァァァァアッ!』
『サイラオーグ・バアル選手の「
第四試合はある意味僕より酷い勝利に終わった。
それにしても自分の好みと少し違ってたかと、一方的な怒りで吹き飛ばすとはね。なんというか、いろんな意味で酷い。
◆◇◆◇◆◇
陣地に戻ってきた一誠に特に誰も絡むことなく次の合計数字が発表される。今度の合計は8。また連続で同じか。
「8か。私が出よう」
ゼノヴィアさんが一歩前に出た。
「ええ、そうね。そろそろゼノヴィアに任せようかしら」
『
リアスさんが決めかねていると、ギャスパーくんが恐る恐る挙手した。
「……ぼ、僕が行きます。え、えっと、そろそろ
皆、ギャスパーくんの意見に目を丸くしていた。ギャスパーくんが自主的にそんな意見をするとは誰も思わなかったのだろう。
確かにギャスパーくんの言うとおり、僕が強い弱いどちらにせよ、僕の手の内も実力も知らない。端的に言えばお互いに信頼関係がない。それよりもコンビネーションが取りやすいギャスパーくんが出たほうが得策と言えるだろう。
何より、ギャスパーくんの瞳が決意に満ちていた。
「じゃあ、ギャスパー、ゼノヴィアをサポートしてくれるかしら? あなたの邪眼やヴァンパイアの能力でゼノヴィアをサポートしてほしいの」
リアスさんにそう言われ、頷くギャスパーくん。
「……ぼ、僕、男子だし、気合を見せなきゃ!」
全身を震わせながらも気迫は十分。これなら大丈夫そうだ。
「うん、頼りにしているぞ、ギャスパー」
「は、はい、ゼノヴィア先輩!」
これで第五試合の出場選手が決まった。
第五試合、二人が転移されたバトルフィールドは、ゴツゴツした岩だらけの荒れ地。
足場はあまり良くない。木場さんを残していたらちょっと支障があったかも。柔術家の僕にとっては割りとありがたいんだけどね。
2人の眼前にバアルチームの相手が現れる。
第二試合で塔城さんを圧倒したバッボと、不気味なデザインの杖を
『グレモリーチームは伝説の聖剣デュランダルを持つ「
「「「「うおおおおっ!ギャーくぅぅぅぅんっ!」」」」
実況の言うように観客席の一部からギャスパーくんに応援を送る男性ファンが。ちなみにゼノヴィアさんも異性より同性からの支持が多いみたい。
『対するバアルチームは、第二試合で圧倒的な力差で押した、「
互いに使命感に燃え、固い信念のようなものを感じる。
『第四試合、開始してください!』
「ギャスパー、コウモリに変化して!ゼノヴィアはその後に攻撃!」
リアスさんが陣地から指示する。
ギャスパーくんが無数のコウモリに化けてフィールド中に散らばり、ゼノヴィアさんが早々に幾重ものアスカロンの波動を相手の『
聖剣の鋭い切れ味の波動が、岩肌を大きく削りながら飛んでいく。
その攻撃を『
『させません!』
フィールド中に飛び回る無数のコウモリの眼が赤く輝き、炎の魔力を停止させる。宙に浮かぶ炎を、ゼノヴィアさんがアスカロンの波動で振り払い、相手の攻撃を打ち消した。
『バッボ! サイラオーグさまの指示が届いた! 先に剣士だ! 僕は準備する!』
『了解』
ミスティータが後方に下がり、全身に禍々しいオーラを
バッボはミスティータを守るように前に立つ。塔城さんを圧倒し、ゼノヴィアさんの今の攻撃を受け止めた防御力なら壁としては申し分ない。
『おまえはあのマスコットよりは盛り上げてくれよ』
バッボの挑発からゼノヴィアさんとバッボの攻防が始まった。
ゼノヴィアさんは聖剣の波動と共に直接攻撃もバッボに放つが、堅牢過ぎる防御力の前に少しもダメージがあるように見えない。例えアスカロンより攻撃力の高いデュランダルでも結果は同じだろう。
『ギャスパー! あれを撃つ! 時間を稼いでくれないか!』
後方にゼノヴィアさんが下がり、ギャスパーくんのコウモリがバッボを包み込む。
バッボは両手を振るって鬱陶しそうに払うが、僕にはどこかわざとらしく見える。
その間にゼノヴィアさんがアスカロンを天高く掲げて、パワーを溜め始めた時! 相手の『
「ここだッ! 聖剣よッ! その力を閉じよッ!」
ミスティータの手にした杖が怪しく光り、不気味な光がゼノヴィアさんを包み込む。体に不気味な紋様が浮かび上がり、ゼノヴィアさんの手元が震える。そしてゼノヴィアさんはアスカロンを下におろした。
『……これはなんだ……。アスカロンまでもが反応しない……!』
ゼノヴィアさんの体に起こった現象に一誠も驚いている。
ミスティータがやつれた表情で言う。
『……僕は人間の血も引いていてね。―――
『「
アザゼル総督から説明が入る。
あの急激な消耗は能力封じの代償というわけか。特定とはいえ相手の主要な能力を封じる代わりに自分の行動を封じる。デメリット分のリターンはあるね。
『……本当なら聖剣を封じた余波で、彼女自身にも聖剣のダメージを与えさせようと思ったんだが……。聖剣使いとしての才能は思った以上に濃かったようだ……』
ミスティータはふらつきながらも苦笑する。自傷ダメージはなかったとは言え、アスカロンを封じられたのは致命的。なにせ相手を倒す手段が無きに等しい。
無数のコウモリがゼノヴィアさんを包む。それと同時に相手の視界を遮る。敵がコウモリを払うとそこには誰もいない。
ギャスパーくんのフォローででゼノヴィアさんを何処かの岩陰に避難させたようだ。
『……すまない、ギャスパー。だが、どうやら、私は役立たずになりそうだ』
『そ、そんな事無いです!ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!』
ギャスパーくんはゼノヴィアさんを励まし、腰の小さなポシェットから小瓶やチョークなどの道具を取り出した。
『ぼ、僕、この手の呪いを解く方法をいくつか知ってます!』
ギャスパーくんは手元に小さな魔法陣を展開させ、ゼノヴィアさんの体に当てる。魔法陣を通してゼノヴィアさんにかかった
『逃げても無駄だ! すぐに見つけ出してやる!』
バッボが周りの岩場を破壊しながら、ゼノヴィアさん達を探し回る。
見つかるのは時間の問題だ……。
「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」
リアスさんが訊く。
『……分かりました。はい、僕流の解呪方法なら手持ちの道具で何とかなりそうです』
ギャスパーくんはそう言ってゼノヴィアさんを中心にチョークで魔法陣を描いていく。
見慣れない紋様を描くと、最後に血の入った小瓶―――本来ならギャスパーくんの力を底上げするための道具を持った。
『今描いた魔法陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませる事で、呪いは解けると思います。ただ、解呪出来るまで少し時間が掛かりそうですけど……』
『ま、待て、ギャスパー。その血を使えばお前は―――』
困惑するゼノヴィアさんにギャスパーくんは満面の笑みを見せた。
『ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました』
『ギャスパー……?』
訝しげな表情をするゼノヴィアさん。
魔法陣を完成させたギャスパーくんは岩陰から飛び出していった。
『ぼ、僕が時間を稼ぎます! 呪いが解けたら、そのままアスカロンをチャージしてください!』
ギャスパーくんが見つけた役目、それは囮になること。それも力の底上げも無しに。
「無謀よ! ギャスパー! 隠れなさい!」
リアスさんが叫ぶが、ギャスパーくんは決意に満ちた表情で走り出した。
『ダメですぅっ! ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですぅっ! 部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!』
「いいから、早く逃げてッ!」
リアスさんの叫びを無視し、ギャスパーくんはシャルルとミスティータの前に飛び出す。
『見つけたぜ!』
『あ、暴れさせるわけにはいきませんっ!』
『はぁ~、またマスコットの相手かよ。いくら俺でも弱い者いじめで心が痛む。けど、ボロボロにされる覚悟はできてるっつうことだよな!』
バッボは鉄球を振り放ち、ギャスパーくんは防御魔法陣でそれを防ごうとするが……。
『うわああぁぁぁぁぁああがあっ!』
防御魔法は破られ、鉄球の衝撃で吹き飛ばされていく。
今の一撃でボロボロになりながらも、ギャスパーくんはよろよろと立ち上がった。
『……まだ、まだ大丈夫です!』
『ギャスパー! 無理はよせ!』
ゼノヴィアさんが堪らず叫んでしまう。
『なるほど、あっちか』
バッボがゼノヴィアさんの声がした方を向いた。今の声でだいたいの場所がバレてしまった。
「あああああああっ!」
ギャスパーくんが悪魔の翼を展開して飛び出し、バッボの腕に食らいつく。
『まだやるか、ナイスガッツ。けどな、あの呪いは有限なんだ。マスコットの相手をしてやるほど暇じゃねーんだよ!』
ギャスパーくんに掴まれた腕を岩や地面に叩きつける。手を離すまで何度も何度も。破壊音に紛れて聞こえてくる人体が破壊される鈍い音。破片で傷つき血も流れる。
『がぁっ! がぁぁッ! がはぁっ! がぁぁぁぁっっ!!』
叩きつけられる度にギャスパーくんが激痛に絶叫した。
あまりの光景にリアスさんは目を背けてしまう。
「……もうやめて!」
アーシアさんも顔を手で覆い、絶叫する。
叩きつけられた衝撃でついに手を離すギャスパーくん。激痛で息も出来ない状態でもがくも、それでも這って、バッボに食い下がる。
「……痛い……痛いけど……。まだ……僕は……グレモリー眷属の……男の子だから……。……ゼノヴィア先輩、待っていてください……」
ギャスパーくんの覚悟を知り、映像のゼノヴィアさんは声と気配を完全に押し殺す。その目には涙が込み上げていた
『邪魔』
邪魔くさそうに蹴られるギャスパーくん。それでもまだ這いつくばる。
『……グレモリー眷属男子……訓戒……その1……男は女の子を守るべし……ッ!』
震える体を持ち上げて言ったその言葉は、部室で一誠がギャスパーに教えていたものだった。
『……グ、グレモリー眷属男子……訓戒……その2、男はどんな時でも……立ち上がること……ッ!』
手元に再び魔方陣を展開させようとするが、ミスティータはフラフラになりながらもギャスパーを杖で横殴りにする。
『諦めろ、キミでは我々には勝てない』
無情な一声を聞いても、ギャスパーくんは岩につかまり、立ち上がろうとしていた。
『……グレモリー……眷属……男子……訓戒……その3……』
うわごとをつぶやきながら、ギャスパーくんは腫れ上がった顔を前に向けた。
『何が起きても……決して諦めるな……。……ゼノヴィア先輩は……僕が守らないと―――』
ズンッ!
『がはッ!』
非情な一撃……バッボが容赦無くギャスパーを踏みつける。
立ち上がろうにも、もう絞り出す力すらなく、なかなか立ち上がれないでいる。戦うどころか足掻くことすらもう難しい状態。今すぐリタイアになってもおかしくない。
あまりの光景にリアスさんは映像からも目を背けるが、そこに一誠が溢れるものを抑えられずに言った。
「……部長、お願いです。背けずに見てやってください。あいつはあなたの為に死ぬ覚悟であそこで頑張っているんです……。引きこもりで、誰よりも怖がりなあいつが、今誰よりも一生懸命頑張ってるんです……! 見てやってください……!」
一誠の訴えにリアスさんは涙を溢れさせようとしたが―――それを我慢して映像に視線を送った。
「分かったわ。ゴメンなさい、イッセー、ギャスパー……」
アーシアさんと朱乃さんは嗚咽を漏らし、僕も気づけば腕組みしている両腕を痛いほど強く握り締めていた。
『まだ動くのかよ。その執念、恐れ入ったよ。けどこれ以上の遅延はゴメンだ。次で確実にリタイアさせてやるから、死ぬなよ?』
バッボは右拳を強く握り思いっきり振りかぶろうとした時―――。
『―――そうはさせない』
極大で異様なオーラを放ちながらゼノヴィアさんが岩陰から姿を現した。アスカロンから
呪いの紋様が体からすっかり消えている。ゼノヴィアさんは意識があるかないか不明なギャスパーを抱き寄せた。
『―――よくやったぞ、ギャスパー。男だな。―――すまなかった、私が不甲斐ないばかりにお前にこんな―――』
ゼノヴィアさんは涙を流してギャスパーくんに謝る。
『呪いが解けたか!』
呪いが解かれた事を知ったミスティータが杖の先端を向ける。バッボも腕を回してやる気を見せた。
ゼノヴィアさんが静かに立ち上がり、ボソリと呟く。
『……足りなかった。私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あんなものに捕らわれた。仲間の為に、部長の―――主の為に持つべきだった死ぬ覚悟がギャスパーよりも足りなかった。こいつの方が私なんかよりもずっと覚悟を決めてこの場に立っていた! 自分があまりにも情けない……ッ! 私は自分が許せなくて仕方がないんだ……ッ!』
ゼノヴィアさんの言葉はグレモリー眷属の皆に突き刺さった。リアスさんへの忠誠心も仲間への信頼もない僕にさえも。
あれだけの覚悟で戦ったギャスパーくんと、なんの覚悟もない僕が同じ舞台に立ってもいいのか? ―――心が揺れ動く。
『なら、どうすれば良い? どうすればこいつの思いに応えられる?』
呪詛のように呟きながら涙を拭うゼノヴィアさん。
『そうだな。それしか無いだろう。すまない、ギャスパー。―――せめてお前の為にこいつらを完全に吹き飛ばしてやろう! それがお前への応えだと思うからなッ!』
ゴオォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
アスカロンから生み出された極大のオーラが、聖なる光の柱となり天高く立ち上る。
『そうはさせるかッ! 今度はこの命を代償にもう一度あの『
ミスティータが杖を構えて
バッボがギャスパーくんに視線を向けると、ギャスパーくんはリタイヤの光に包まれながらも、
『停止の
落ち着いた様子でつぶやくバッボ。回避は無理だと覚り一人防御態勢に入る。
ゼノヴィアさんはアスカロンを大きく振り上げた。
『お前達はギャスパーに負けたんだッ!』
ゼノヴィアさんはアスカロンをバッボと停止したミスティータ目掛けて解き放った。
大質量の聖なるオーラの波動が相手二人を飲み込んでいった。
こうして第四試合は終わりを―――
『サイラオーグ・バアル選手の「
―――告げなかった。リタイアのアナウンスにバアルチームの『
『ふぅ~! すげぇ一撃だったぜ!』
光の波動が収まった跡地に、バアル眷属の『
『………何…………だと…………!?』
ゼノヴィアさんも今の一撃を耐えられたことがショックだったらしく、その場で固まる。
『―――っ。真正面からあの攻撃で無傷。……バケモノめ』
『良い覚悟の一撃だった。これが個人的な興行試合なら
バッボは頭の鉄球を外し、外した鉄球を右手にグローブのように装着。鉄球の拳となった右の拳を、ゆっくりと引いていく。
『倒れたグレモリーの「
ボワァ……。
なんとバッボの体が薄っすらと闘気を放ち始めた。いや、纏始めた! それは塔城さんの放った闘気と比べる程なく小さく、映像越しでは詳しくない人が見れば見落とすレベル。しかし、その質は比べる程なく高い! 悪魔が質が高い闘気をあの薄さで纏うだと!
右拳の闘気のみが少しだけ多くなり、映像越しでも観客にもなんとか見える程度にまでになる。
闘気が纏われた右ストレートが解き放たれる! それと同時にゼノヴィアさんも斬りかかった! バッボの右腕へ!
剣は拳とぶつかり合わず、闘気と衝撃に吹き飛ばされ、岩を破壊しながらフィールドの奥へと消えていった。
『リアス・グレモリー選手の「