理由としましては、そうした場合に誇銅が出てない場面で原作を変える必要性が皆無となり、つまり原作をそのまま引用せざる得なくなるからです。
今までは例え大きく引用する時も誇銅が絡む話としては必要だったのですが、今回は全く必要がありません。
なので話の流れは変えずに書き方だけ変えます。
今回の部分も誇銅の出番はありませんが、誇銅が存在することによって変化がある部分なので投稿します。
なおこの話は原作11巻の頭に相当する部分なので後日移動させます。
学園祭が終わってすぐのことだった。
その話を持ちかけられた時、アザゼルは生涯でもそうないであろう間の抜けた声を出してしまった。
「……そいつは本気なのか、ヴァーリ」
ヴァーリ・ルシファーからアザゼル宛てにプライベート回線が開かれる。
通信用の小型魔方陣を介してヴァーリの元気そうな顔が見える。
『ああ、彼―――今は彼女か。彼女はそれを望んでいてね。俺としても興味があるので便宜を図はかりたい』
ヴァーリから出されたのはとんでもない提案であり、それは勢力図が塗り替えられてもおかしくないレベルだった。
「……お前の事だ。それだけじゃないんじゃないか?」
アザゼルの言葉にヴァーリは苦笑する。
『相変わらず鋭い。ゆえに他の勢力からも疎うとまれ始めている訳か』
「余計なお世話だ」
『その「余計なお世話」を振り撒き過ぎて「何かを企んでいるのではないか?」と思う者も少なくないと聞くが?』
ヴァーリの言うとおり、アザゼルは各勢力の上層部に疎まれている。堕天使の総督と言う肩書きだけでも胡散臭い上、各勢力との和平・和議を持ち掛けてきたのだから。
お節介な性格も疑いに拍車をかけている。
「……性分だ。それで背中を狙われるのなら、それはそれで受け入れるさ」
アザゼルは嘆息しながらそう言う。ヴァーリも呆れた様な表情をした後、不意に呟いた
『……彼女を狙う者がいてね』
「そりゃな、当然だろう。それこそ星の数だ。だが、滅する事が叶わないからどいつも歯痒い思いをしているんだがな」
『それはそうなんだが、身内から出そうでね。いや、そろそろ仕掛けてくるかな』
アザゼルの脳裏に聖槍を持った男が過よぎる……。
「―――いぶり出す気か?」
『俺の敵かどうか、ハッキリさせるだけさ。まあ、敵だろうな。―――ケリをつけるには頃合いか』
最高に楽しそうな笑みを浮かべるヴァーリ。
元の居場所を裏切ってまで戦いの場に身を置く彼はどうしようもない程のバトルマニア。
◆◇◆◇◆◇
その日の朝、兵藤一誠の一日は寝床での一戦から始まった。
一誠が目を覚ますと、ベットの近くで一誠を起こすための目覚めのキスを巡って牽制しあっている制服姿のリアスと朱乃の姿が飛び込む。
リアスがフッと余裕の笑みを浮かべる。
「私はイッセーに朝のキスだなんて! ……と、言いたいところだけれど、昨夜はたっぷりと甘えさせてもらったから許してあげる」
「あら、それは結構なことですわね。イッセーくんったら、さっそくすごいことをしていたのね?」
口元に手を当てながら興味深そうに訊く朱乃。しかし朱乃が想像しているようなことは特に起こってはいなかった。
それでもただ単にリアスに甘えられるだけで今の一誠は破壊力抜群の幸せを感じていた。その幸せを噛み締め、魔王に、特に
リアスの反応に朱乃は若干つまらなそうに息を吐いた。
「リアスったら、意外と冷静なのね。もっと嫉妬の炎を燃やしてくれるものだと思っていたのだけれど……。ちょっと反応が面白くないですわ」
「それはゴメンなさいね。けれど、彼は私のイッセーだから、それだけは揺るがないわ」
サイラオーグ戦前の不安定な様子は一切無く、いつもの自信に満ち溢れた調子。
「あらあら、正妻の余裕ってものを見せつけられてしまいましたわ」
朱乃がそう言う。リアスは小さく笑むと一誠の頬にキスをし、「ご飯よ、下に下りて来なさい」と一言だけ残して退室していった。
「ああ、見えて、少し無理をしているところもあるのよ、彼女」
朱乃がベットに腰をおろしてつぶやく。
「……無理? ぶ、じゃなくて、リ、リアスに何かあったんですか?」
「実はレーティングゲーム、最終戦であまり活躍出来なかったのがリアスにとって尾を引く結果になってしまったようです」
サイラオーグとの一戦、リアスは自律する
「……あなたの枷になってしまったのがとても許せないと、リアスは凄く悩んでいるのです」
「……そ、そんな、あれは相手が悪かっただけで……リ、リアスも決して弱い訳じゃないし、戦術面でもいろいろ前もって作戦を考えていましたし……」
「……戦術面では、同時期に行おこなわれたソーナ会長とアガレスの戦いの方が注目されましたわ。あっちの旗取り合戦―――スクランブル・フラッグは派手さや認知度こそ低かったものの、批評家から見れば隠れた名勝負として高い評価を得たそうです」
当然、最近出た冥界雑誌で大きく報道されたのは一誠達とサイラオーグチームとの一戦だが、批評家が書いた記事では長々とシトリーVSアガレスに対するゲームの感想が高評価で掲載されていた。
シトリーチームのあっという間に盤面の有利を取る展開力、相手の逆転を許さぬ制圧力。終始翻弄され何もできなかったアガレスも戦術自体は非情に優れたものだったと。
「リアスとしてもこれから『
「……修行とはまた違うんですか?」
「リアスとサーゼクスさまの滅びの力は同じ魔力でも性質―――性格とも言うのかしら。それが違うのです。サーゼクスさまの力はテクニック、ウィザードタイプの究極と言われています。あれだけ絶大な消滅魔力を手足の様に自在に操るのですから、その技術は悪魔の中でも1、2を争うとまで言われます。逆にリアスの力はウィザードタイプのパワー寄りだから、技術的なものよりも威力に恵まれていると言えます。けれど……」
朱乃は目を細めながら言う。
「決定打が不足している―――簡単に言えば『必殺技』と呼べる一歩先に進んだ滅びの力が無いのよ」
「ただ、放つだけでも十分に威力があると思いますけど……。確かに、俺達がよく遭遇する強者が相手だとぶちょ……リ、リアスは必殺となる技を持ってもいいかもしれませんが……」
「それを模索しているようですわよ。……私もバアル戦では情けない姿を見せてしまいましたし……」
朱乃が沈んだ声音でそう漏らすが、一誠は首を横に振って言う
「いえ、相手の『
『
しかしその意味では朱乃も悪魔が持ち得ない雷光を使える。相性の差があったとは言え、朱乃の
「イッセーくんは彼女を相手に一瞬で勝負を決めてしまったけれど……」
一誠もあの時にキレてトリアイナで撃破したが、今ではやり過ぎたかなと思い反省している。朱乃にギリギリまでトリアイナは使うなと言われたとに使ってしまったわけで……。
「……私のことは今後どうにかしないとダメね。―――それはともかく、まだリアスのことを『リアス』って、ハッキリ呼べませんの?」
「え、えっと……。よ、呼べる時は呼んでますけど……。まだ慣れないというか、恥ずかしいというか! 呼びたくないわけじゃなくて、俺が恥ずかしいだけです!」
一誠がそう言うと、朱乃がクスクスと微笑んだ。
「まあ、それはご馳走様。では、そろそろ私のことも『朱乃』って呼んでもらわないといけませんわね。それに思いを遂げてすぐに浮気なんて、燃えると思わない?」
「う、う、う、う、浮気ですか!?」
「そう、私は浮気相手に立候補だって、以前から言っているでしょう? 本格的にイッセーくんと浮気したくて体がとても火照りますわ」
朱乃が自分の体を手で官能的になぞっていく。そして一誠に顔を近づけ、鼻先にキスをした。
「朝はこれで十分ですわ。うふふ、アーシアちゃんも来てしまったことですし」
朱乃の言葉を聞いて一誠が部屋の扉の方へ視線を移すと、そこにはエプロン姿のアーシアが。笑顔を浮かべたまま表情を凍らせていた。
それからゼノヴィアやイリナまでもややって来て教会トリオが揃う。
そういった朝の展開が終わり、一誠は異界のリビングにいた。朝食の時間。一誠の母を筆頭に兵藤家に下宿している女子の多くがテキパキと動いてテーブルに朝のメニューを置いていく。
「イッセーのお弁当はこれね♪」
満面の笑みを浮かべながらリアスが昼の弁当を一誠の前に置く。
兵藤家の弁当の用意はローテーションだが、最近は一誠の弁当だけはリアスに限定されている。
「イッセーだけリアスさん限定の弁当とは……。やるもんだな、イッセー」
うんうんと頷きながら言う一誠のお父さん。
アーシアや朱乃が作っていた時の弁当も松田や元浜に「愛妻弁当かよ!」とよく言われていたので、さしずめこれは『正妻弁当』といったところである。
笑顔が絶えないでいる一誠の視界に、弁当箱に料理を詰め込むレイヴェルの姿が。それはレイヴェルがいつも持っている弁当箱じゃない。
「おっ、レイヴェル。その弁当箱は誰のだ?」
「これはギャスパーさんへの差し入れですわ。お一人で朝練をしているそうですから」
「朝練!? ギャー助が!?」
一誠は素っ頓狂な声を上げると、リアスが一誠の隣に腰を下ろしながら言う。
「先日の一件で、自分の力不足を強く感じてしまったと言って、あなたと祐斗との合同訓練の他にも自主メニューでしているようなのよ。ハードワークにならない程度に体を1から鍛え始めたの」
先日の一件―――つまりバアル戦のこと。一般人の兵藤の父母の前では詳しくは話せないので言葉を濁す。
それに朱乃も続く。
「力を使いこなして、あの領域に至りたいと気合を入れてましたわ。その為には体を1から作り直すと、朝から筋トレと走り込みをしているそうです」
あの領域―――つまり
サイラオーグ戦での試合を相当気にしているからこそ、自分の力量の足りなさを許せなかった。一誠はそう認識した。
ゼノヴィアも真剣な眼差しで言う。
「うん。あいつは男だ。きっと強くなるに決まっているさ」
身近でギャスパーのサポートを受け実感したゼノヴィア。
「……小猫さん? 顔色が優れませんわよ?」
レイヴェルが小猫の顔を覗き込む。言うとおり、小猫の顔色はあまり良くなかった。顔が赤く、若干ツラそうな顔をしている。
「……なんでもない」
子猫は簡素に返す。それでもレイヴェルは心配そうに小猫の額に手を当てる。
「でも、ちょっとお顔が赤いですわ。風邪ではなくて? そうですわね……、フェニックス家に伝わる特製のアップルシャーベットを作ってあげますわ。実家から地元産のリンゴが届きましたの。それを使って特別にこの私が作ってあげますわね!」
小猫はレイヴェルの手を除のけると一言告げる。
「……ありがた迷惑」
それを聞いてレイヴェルは頭の縦ロールを回転させる程の勢いで怒り出した。
「んまー! ヒトの好意を即否定だなんて! 猫は自由気ままで良いですわね!」
「……鳥頭には言われたくない」
「……と、鳥頭って! 確か日本では鳥頭とは物忘れの激しい方を指しましたわよね……?」
「よく勉強しているようだから、褒めてあげる」
「んもー! この猫娘は……ッ!」
今でも時々起こる小猫とレイヴェルの口喧嘩。それでも仲が悪いわけではなく、日常面ではレイヴェルを助けていて、レイヴェルも頼ることが多い。
二人の微笑ましい喧嘩を見てる一誠側では、兵藤のお母さんの「孫はいつ見られるの?」からまだ見ぬ孫の話題へと発展していった。
そこからさらに一誠とリアスのバカップルぶりを発揮し事態が収まる。
その際、一誠とリアスをじっと見つめる小猫が途端にうつむく。
「……孫……赤ちゃん……幸せ……」
そんなことをぼそりと呟いた。
◆◇◆◇◆◇
その日、深夜に訪問してきたのは―――サーゼクスとグレイフィア、そしてアザゼルというお偉い方ばかりだった。兵藤家上階のVIPルームに終結。
そのメンツが真面目な顔で、グレモリー眷属を全員集める。サーゼクスは一誠と木場、朱乃とリアスを前に座らせて正面から切り出した。
「先日も話した通り、イッセーくん、木場くん、朱乃くんの3名は数々の殊勲を挙げた結果、私を含めた四大魔王と上層部の決定のもと、昇格の推薦が発せられる」
目標であった昇格がこんなにも早く告げられたことに興奮する一誠。
悪神ロキや『
「昇格なのだが……本来、殊勲の内容から見ても中級を飛び越えて上級悪魔相当の昇格が妥当なのだが、昇格のシステム上、まずは中級悪魔の試験を受けてもらいたい」
一誠は自分たちが上級悪魔相当と言われたことに驚く。隣りに座る木場と朱乃も驚いているが、一誠程の狼狽ではない。一誠だけ表情豊かに百面相となっている。
アザゼルがグラスの酒をあおりながら言う。
「イッセーと木場と朱乃は殊勲だけ考えれば上級悪魔になってもおかしくないんだが、悪魔業界にも順序があるらしいからな。特に上がうるさいそうでな。お前らに特例を認めておきながらも順序は守れと告げてきたそうだ。―――とりあえず中級悪魔になって、少しの間それで活動しろ。その内、再び上から上級悪魔への昇格推薦状やらが届く筈だ。なーに、中級の間に上級悪魔になった時の計画を練り出せば良い」
「ちゅ、中級とか、じょ、上級悪魔……っスか! お、俺にそんな資格があると……?」
一誠の問いにサーゼクスが笑顔で頷く。
「うむ。テロリストと闇人やみびと、悪神ロキの撃退は大きな功績だ。そしてバアル戦でも見事な戦いぶりを見せてくれた。何よりもイッセーくんは冥界の人気者『乳龍帝おっぱいドラゴン』でもある。昇格の話が出てもおかしくないのだよ。いや、寧ろ当然の結果だろう」
まさかの特撮番組がポイントになっていたことにも驚かされる。一誠はこれを単にグレモリー家が金づるを得たぐらいにしか思っておらず、この間の試合後にも新商品として『スポンジドラゴン』という洗い場用スポンジを売り出した商魂を知っていた。
そう言う意味では神滅具の存在と今までの功績、これだけ冥界で光を浴びる一誠を特別扱いせざる得ない。
「昇格推薦おめでとう、イッセー、朱乃、祐斗。あなた達は私の自慢の眷属だわ。本当に幸せ者ね、私は」
リアスも心底嬉しそうな笑みを浮かべる。自慢の眷属が評価されて最高の喜びを感じていた。
「イッセーさん、木場さん、朱乃さん、おめでとうございます!」
「うん、めでたいな。自慢の仲間だ」
「中級悪魔の試験とか、とても興味があるわ!」
アーシア、ゼノヴィア、イリナの教会トリオも喜ぶ。
「ぼ、僕も先輩に負けないように精進したいですぅ」
ギャスパーもどこか引きつり気味だが前向きなコメントを発する。
「ライザーお兄さまのチームではもう太刀打ち出来ない程の眷属構成になってしまいましたわね」
レイヴェルも賛辞の言葉を贈る。
「フェニックスの所は長男がトップレベルのプレイヤーじゃないか。あそこのチームはバランスが良い」
「うちの長兄は次期当主ですもの、強くなくては困りますわ。それはともかく、流石リアスさまのご眷属ですわ。短期間で3人も昇格推薦だなんて。ね、小猫さん?」
レイヴェルが小猫にそう投げ掛けるも。
「……当たり前。―――おめでとうございます、イッセー先輩、祐斗先輩、朱乃さん」
笑顔を見せる小猫だが、心なし若干テンションが低い。
「ま、その3人以外のグレモリー眷属にも直に昇格の話が出るさ。お前らがやってきた事は大きいからな。強さって点だけで言えばほぼ全員が上級悪魔クラス。そんな強さを持った下級悪魔ばかりの眷属チームなんざレア中のレアだぜ?」
アザゼルが言うように他のメンバーにも昇格が大いに有り得る。実際は大した活躍ができてなかったと言ってもグレモリー眷属のレベルは高く、あの死線を生き残ったというだけでも意味がある。
木場と朱乃は立ち上がり、サーゼクスに一礼した。
「この度の昇格のご推薦、まことにありがとうございます。身に余る光栄です。―――リアス・グレモリー眷属の『
「私もグレモリー眷属の『
木場と朱乃はしっかりと厚意を受け取った。
「イッセーくんはどうだろうか?」
サーゼクスに問われ、イッセも立ち上がり深々と頭を下げた。
「勿論、お受け致します! 本当にありがとうございます! ……正直、夢想だにしなかった展開なので驚いてますけど、目標の為に精進したいと思います! リ……部長の期待にも応えられて満足です!」
リアスの兄であり魔王であるサーゼクスの手前、名前で呼ぶのは失礼かもと判断する。だが、サーゼクスはイタズラな笑みを浮かべて言った。
「おやおや、イッセーくん。私の手前でもリアスのことは名前で呼んでくれてもかまわないよ」
「いえ、しかし……」
「ハハハ、むしろ呼んでくれたまえ! 私も嬉しいし、見ていて幸せな気持ちになれる」
サーゼクスは嬉々として言う。
「も、もう! お兄様! 茶化さないでください!」
リアスは顔を赤く染め、ぷんすかと怒る。
「ハハハ、いいではないか。なあ、グレイフィア」
「私風情が分に過ぎた事など言えません。……ですが、この場の雰囲気ならば名前で呼び合っても差し支えないかと」
「……グレイフィア……お義姉さままで」
そう言われリアスも顔を赤くしたまま黙るしかなかった。それを見てうんうんと頷くサーゼクス。
「よしよし。それならばついでに私の事も義兄上と呼んでくれて構わないのだよ! さあ、呼びたまえ、イッセーくん! お義兄ちゃんと!」
しかしグレイフィアによって、その頭部をハリセンで激しく叩かれる。
「サーゼクスさま、それはこの場ではやり過ぎですよ。―――いずれでよろしいではありませんか」
「……そ、そうだな。性急過ぎるのがグレモリー男子の悪いところかもしれない……コホン」
一連の流れを見て隣でゲラゲラ笑っていたアザゼルは息を吐くと改めて言う。
「てな訳で来週、イッセー、朱乃、木場の3人は冥界にて中級悪魔昇格試験に参加だ。それが1番近い試験日だからな」
「来週ですか、早いですね」
想像以上に早い日程に木場がそう言い、朱乃も続く。
「中級悪魔の試験って、確かレポート作成と筆記と実技でしたわよね? 実技はともかく、レポートと筆記試験は大丈夫かしら」
レポートと筆記試験の存在に不安になる一誠。アザゼルが言う。
「心配するな。筆記は朱乃と木場なら全く問題無いだろう。悪魔の基礎知識と応用問題、それにレーティングゲームに関する事が出されるが、今更だろうしな。レポートは……何を書くんだ?」
アザゼルがグレイフィアに訊ねると、グレイフィアは1歩前に出て説明し始めた。
「試験の時に提出するレポートは砕いて説明しますと、『中級悪魔になったら何をしたいか?』と言う目標と野望をテーマにして、『これまで得たもの』と絡めて書いていくのがポピュラーですね」
「何だか、人間界の試験みたいですね」
一誠がそういうとアザゼルがサーゼクスの方に視線を向ける。
「ま、
サーゼクスは頷く。
「中級悪魔に昇格する悪魔の大半は人間からの転生者なのだよ。その為、人間界の試験に倣った物を参考にして、昇格試験を作成している」
現魔王の政策により急増した人間の転生悪魔。その人数が多ければ自然とそちらに寄ってくるもの。
アザゼルが膝を叩くとイッセー達を見渡す
「何はともあれ、レポートの締め切りが試験当日らしいから、まずはそれを優先だ。だが、イッセー!」
「は、はい?」
アザゼルが一誠に指を突きつけて言う。
「お前らはレポートの他に筆記試験の為の試験勉強だ! 基礎知識はともかく、1週間で応用問題に答えられる頭に仕上げろ! 安心しろよ。お前らの周りには才女、才児が何でもござれ状態だ」
一誠の肩に手を置くリアス。
「任せない、イッセー。私が色々と教えてあげるわ」
「イッセーくん、僕も改めて再確認したいから一緒に勉強しよう」
「あらあら。じゃあ、私も一緒に勉強ね」
試験勉強で心強い味方に安堵する。一誠は残りの試験について考える。
「えーと、じゃあ実技の方は?」
一誠がそう言うとサーゼクス、グレイフィア、アザゼルがキョトンとした表情で見合わせる。
「それは必要ないんじゃないか?」
「え……でも、俺的に1番得点を稼げそうな所なんで是非ともトレーニングとか欲しいところなんですけど!」
一誠がそう言ってもアザゼルは手を横に振るだけ。―――あまりにも短期間に大きな変化を伴ってしまったのもあり、一誠は自分という存在を正しく認識できていない。
「だから、いらないって。ぶっつけ本番にしとけ。そこは試験当日じゃないと分からないかもな。朱乃、木場、お前らも実技の練習はいらんからレポートに集中しとけよ」
アザゼルの言葉に朱乃と木場は返事を返す。
不安に駆られる一誠が恐る恐る手を上げて質問する。
「あのー、最後に1つだけ。……まことに恥ずかしい話なんですけど、もし落ちたらどうなるんですか?推薦取り下げですか?」
サーゼクスは首を横に振る。
「いいや、そんな事は無いよ。1度挙げられた推薦は、仮に来週の試験で落ちても受かるまで何度でも挑戦出来る。よほど素行の悪い事でも無い限りは推薦の取り下げは起こらないよ」
そのことにとりあえず安堵する一誠にサーゼクスが力強く言う。
「それに私はイッセーくんが次の試験で合格すると確信している。突然の事で不安かもしれないが、全く問題無いのではないかな」
魔王からの太鼓判を貰った一誠は期待に応えようと気合を入れ直す。
「俺、頑張ります! 絶対に中級悪魔になります! そして、いずれ上級悪魔にもなります!」
気合を入れて宣言する。そしてハーレム王への夢を再燃させた。―――相思相愛の相手にも気恥ずかしがるばかりの現状だろうとも。
「昇格試験もそうですが学校もテストがあると聞いたのですが」
レイヴェルが思い出したようにつぶやくと朱乃がうなずく。
「そうでしたわね。学校でもそろそろ中間テストの時期ですわ」
立ち上がって叫ぶ一誠。
自分の頭が良くないことを自覚している一誠は、どうしようどうしようと慌てる。
頭を抱える一誠をよそにサーゼクスがレイヴェルに言う。
「やべぇ! そうだ、中間テストもあるんだった! べ、勉強あんまりしてねぇぇぇっ!」」
頭を抱える一誠をよそにサーゼクスがレイヴェルに言う。
「レイヴェル、例の件を承諾してくれるだろうか?」
サーゼクスがそう言うもレイヴェルは渋い顔で「う~ん……」と唸るばかり。
「例の件ってなんですか?」
気になった一誠はサーゼクスに訊く。
「レイヴェルにイッセーくんのアシスタントをしてもらおうと思っているのだよ。いわゆる『マネージャー』だね」
バアル戦前に少しだけアザゼルに言われたことを思い出す一誠。
「イッセーくんもこれから忙しくなるだろう。人間界での学業でも、冥界の興行でも。グレイフィアはグレモリー眷属のスケジュールを管理しているが、それでも身は1つだ。どうしても賄えきれない部分も今後増えるだろう。特に細かい面で。それならば、今の内からイッセーくんにはマネージャーを付けるべきだと思ってね。そこで冥界に精通し、人間界でも勉強中のレイヴェルを推薦したのだよ」
一誠も今後そういったものが必要になってくるのは理解している。「おっぱいドラゴン」を応援しに来てくれた子供の数を見てどれだけ人気があるか、それにともない需要が高まるのも想像できる。
「『
サーゼクスがレイヴェルにマネージャーとなることをお願いする。
それを断れなこともないが、魔王直々のお願いとなればそれ相応の理由がなければお願いされた当人としては難しいものがある。
悩んだ結果、レイヴェルは渋々といった感じで引き受けた。
「ありがとう。早速で悪いのだが、レイヴェル、中級悪魔の試験についてイッセーくんをサポートしてあげてほしい」
サーゼクスの言葉にレイヴェルは立ち上がり、一呼吸おいて手をあげた。引き受けたからには責任を持ってやりきる。そんな気持ちが見て取れる。
「分かりました。このレイヴェル・フェニックスめにお任せくださいませ。必ずやイッセーさんを昇格させてみせますわ! 早速、必要になりそうな資料などを集めてきます!」
渋々でも受けたからには責任を持ってその役割を果たす。
言うや否やレイヴェルは部屋を飛び出していく。
「そう言えば
サーゼクスがふとリアス眷属を見渡したと際に誇銅の姿がないことに気づいた。
「サーゼクスさま、彼はバアルチームとのゲームを最後にと」
グレイフィアが言うとサーゼクスは思い出す。
誇銅はあの試合で活躍と言ってもそれまでの影が薄すぎる。よってサーゼクスのような関わりの薄い者にとって誇銅の活躍は新参の初披露に等しい。
誇銅のリアス眷属脱退のニュースなど一誠VSサイラオーグ戦の記憶にすっかり埋もれてしまっている。
「ああ、そうだったね。残念だよ」
「リアスの眷属は圧倒的に火力が高いが、全体的に見ると防御面が薄く、テクニック―――ハメ技にやられやすい。過去、実戦でもゲームでもそれにつけ込まれているからな。要はチーム全体的に脳みそまで筋肉傾向なんだよ。『やられる前にやれ』ってな」
アザゼルの評価に眷属側の全員が苦笑い。リアスも恥ずかしそうに顔を赤く染めた。
アザゼルの評価は妥当であり、本人たちも特攻ばかりでテクニックに翻弄されてきたことは自覚している。
そこへアザゼルは「将来的には苦手となる相手チームが必ず生まれるタイプのチーム構成だろう」と付け加えた。
「だが、そちらの方が好みだと言うファンはとても多い。戦術タイプのチームやテクニック重視のチームだと一目では判断が付きづらく、派手さも少なめな為か、玄人のファンが好むからね」
サーゼクスが言うと、アザゼル総督もうなずいて言う。
「だな。リアスとサイラオーグのチームは派手さを売りにしつつ、戦術を高めた方が将来のプロ戦で盛り上がるぞ。何はともあれ、そのパワーを補う力は必要だ。そう言う意味ではあの試合の誇銅はまさに適任だったんだけどな。他にもいろいろ器用なことができるみたいだったし、テクニックチームのハメ技にやられるリスクを下げてくれただろう」
しかし無い物ねだりをしたところで誇銅は戻らない。現在の誇銅の主であるレイヴェルも返す気はさらさらない。
「小猫、あんまり油断してるとおまえの大好きな先輩がレイヴェルに取られるなんてことになっちまうかもよ?」
アザゼル総督が小猫を煽る。
レイヴェルの恋愛対象が一誠ではないことは周知の事実となっているが、最初の確執から小猫はレイヴェルをライバル視してしまう。普段なら―――。
「…………」
しかし当の小猫は顔をうつむけ、心ここにあらずの状態だった。
『……?』
小猫の無反応ぶりに皆一様に首を傾げていた。
「やはり小猫ちゃんの様子が変だ」そう思う一誠は小猫が病気ではなければと願う。
しかし一誠も小猫のことばかり気にしてるわけにもいかず、まずは目先の試験だ! と、昇格試験と中間テストの二つの問題に大いに頭を抱える。
お楽しみにしてくださる読者の方々には大変申し訳ないのですが、繋ぎ繋ぎの部分がなかなか固まらずまだお待たせいただくことになってしまいます。ですので今しばらくお待ち下さい。