無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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 感想欄でも宣言したことですが、本来ならこの章は中章の初めから中間辺りでしたが、中章の後半から終わりとします! つまり、次か、遅くてもその次を三大勢力崩壊の終章の幕開けとします!
 だからと言っていきなり三大勢力が崩壊とかはありません。しかし本格的な他神話の介入で見えない崩壊が見える崩壊に変わっていきます。
 例えば、この章のラストではそのきっかけを起こす予定です。
 まだ何章か続ける予定ではありますが、もうしばらく我慢して見ても良いと考えてくださるのならこれからもこの作品をお願いします。


禍事な町中の作戦会議

 ヴィロットさんのお店を出た僕は思った以上に早く終わったのでそのままぶらぶら散歩をすることにした。

 それにしてもアメリカ勢力が本格的に参入してきたのか。

 今回は全くの別件での訪問だが今後そうではなくなるだろう。アメリカ勢力だって三大勢力を良くは思っていない。もはや三大勢力の膝下となりつつある駒王町に拠点を置くなら何かしらの

 もしかしたら今後も日本と協力体制を取ってくれる希望もある。そうなればかなり心強い。

 

 しかし他力本願な考え方をしていればどう転ぼうともろくな結果にならないだろう。

 まあ、天照様やスサノオ様を見ていればそのあたりは大丈夫かな。

 それよりも今一番懸念しなきゃいけないのは、この町が戦場になってしまい一般人に大きな被害が出ることだ。

 今までもこの町が三大勢力絡みの戦場となってしまったことはあった。はぐれ悪魔の時には死者すら出してしまう事態に。

 現在事件もそうだが、小規模だが禍の団との戦闘がこの町で起こっていた。

 裏世界の不文律のようなもので表に被害がバレないようにしてるのかもしれないけど、それがどこまで守られるか保証はない。そもそもバレなければいいじゃ三大勢力がやってきた悪事と同じだ。

 

 結局は天照様たち日本神話の皆さんや、ヴィロットさんたちアメリカ勢力の人たちの行動と頑張り次第。

 そのどちらとも関わりのある僕だがこれといって大きな影響力があるわけではない。

 知っていて行動できないってのは辛い。例え行動しないことが正解だとしても。

 

「ま、どうにかなるかな?」

 

 僕が変に深く考えても仕方ない。もしも僕が力になれる時は全力を尽くすまでだ。

 仮に最悪の事態には邪神としての権力を行使することも視野に入れておいた方がいいかも……?

 ……って、僕はなんでそんな黒いこと考えたの? うわっ自分で自分が怖い! 

 なにもしもの時はって。その時は代わりに世界の支配者になろうって? 勇者に退治される魔王一直線な発想じゃん。ちょうど邪悪な神と書いて邪神だし。

 このままではいけない! そう思って水に映った自分の姿を見直そうと池を覗き込むと。

 

「うわぁ―――ッ! 人が池の中に沈んでる―――!」

 

 大人の男性が沈んでるのを発見してしまった!

 子供でも溺れられないくらいの浅い池なのに!

 見た感じ完全に溺れた様子だったので、周りに人気がなかったのもあり炎の手を使って救出した。

 

「うぅ……」

 

 水から引き上げると蘇生作業を行うこともなく男性はすぐに目を覚ました。

 よかった、なんともないようだ。けどどうしてこんな浅い池で溺れてたんだろうか。

 

「大丈夫ですか」

「はぁ……はぁ……」

 

 まだ完全に意識が戻りきってはいない様子だが問題はなさそうだ。

 男性は頭を振って意識をハッキリさせると突然周りを警戒しだす。

 

「君は一人か?」

「え、はい?」

「ここに来るまでに何か怪しい人影のようなものは見なかったか?」

「え、ええ、特には」

 

 突然変な事を聞き出す男性。一体どうしたんだろうか?

 一安心した様子の男性はすぐに気を引き締めて立ち上がる。

 

「助けてくれてありがとう。でも早くここから離れたほうがいい。まだこの辺にいるかもしれないから」

 

 そう言って走り去る。まだこの辺にいるかもしれない? どういう意味かさっぱりわからない。

 曲がり角で男性の姿が見えなくなると。

 

「ヒィィッ!」

 

 悲鳴と共に尻もちをつく男性の姿が見えた。

 何事かと思い近づくと、そこには倒れる男性と鳥人のようなロボットが立っていた。

 鳥のようなマスクを付け手足の先端は動物の爪のように鋭い。骨格はかなり人間に近い姿をしている。

 倒れる人の下からはおびただしい量の血が。ピクリとも動く気配のないその人はもう完全に手遅れだろう。

 側に立つロボットのアームからは血が滴り落ちる。

 直感だが確信できた。このロボットは以前僕たちを襲った機械兵と同じものだと。

 

「う、ううっ……うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 男性は声を上げて逃げ出した。

 一般人がこんな状況に遭遇すれば無理もない。このまま逃げてもらった方が僕としてもやりやすい。

 機械兵は立ちふさがる僕よりも逃げた男性の方を見ていた。そして僕を無視して男性を追いかけようとする素振りを見せた。

 

「待てッ!」

 

 隙きだらけの機械兵の横腹に炎の打撃を与えた。

 かなり力を入れた打撃だっただけに転倒させて足を止めさせることはできたがダメージはない。

 攻撃を受けたことで機械兵は僕を敵として認識した。

 

「そうだよ、僕は敵だよ」

 

 軽く挑発するように言ってみる。もしも操縦者がいるなら反応があるかもしれない。

 だが機械兵は特に反応を示すことなく、僕の目の前で徐々に透明になっていく。

 

「透明化。なるほど、それでこんな町中で活動ができたってわけか」

 

 おそらく密偵や暗殺を得意とするタイプの機械兵なのだろう。

 敵の姿は完全に見えなくなっても近くにいることはわかる。

 潜伏を得意とするのもあってか生物としての視線や気配は全く感じない。が、機械的な殺意は何度も経験して覚えた!

 

「そこ!」

 

 背後からの見えない一撃を躱し透明な腕を取って地面に叩きつけた。

 相手の呼吸はわからないからその分は悪魔(ルーク)の力でカバーする。

 

「でも手応えはないか」

 

 痛覚のない機械相手では凌ぐ程度の効果しかないか。

 痛覚がないのはゾンビと戦った時と同じだが肉体の強度が違う。簡単に破壊とはいかない。

 手応えからして僕の力でこの機械兵を破壊することは難しい。僕の技は殆どが小技で大技も見た目ほどの威力はない。

 さっきの人が逃げるくらいの時間稼ぎは十分にできそうだけど、その代わり他の人が集まって来てしまったら元も子もない。さてどうしたものか。

 そう考えながら隠密機械兵と対峙していると。

 

 バヂン!

 

 突然コンクリートの向こうからオーラのようなものが飛び出し機械兵を吹き飛ばした。

 突然のことに驚いているとそこへボサボサ髪に無精髭を生やした男が現れる。

 

「これで壊れてくりゃ楽だったんだがな」

 

 出てきた場所と言動を見るに今の攻撃はこの人のものなのだろう。

 倒れる機械兵は僕の時と同じように傷一つ無く立ち上がる。

 立ち上がった機械兵は素早い動きで襲いかかる。

 さっきは透明化で姿自体が見えなかったが滑らかで早い。普通に騎士(ナイト)ぐらいはある。

 

「よっと」

 

 しかし男は機械兵の動きを読みきって懐に潜り込み、掌底一発で軽々と弾き飛ばした。

 気配から察するに普通の人間なのに凄い。何より驚くのは纏うオーラ。纏う質だけなら七災怪に匹敵するかもしれない。

 だけどあれではいくら打っても決定打にはならない。

 しかし予想に反して外傷ことないものの、機械兵はバランス感覚を失ったかのように立ち上がっては転んでを繰り返す。

 

「やっぱそういうタイプか」

 

 男はうまく立ち上がれず倒れる機械兵に跨りまるで打診するかのように叩く。

 

(コア)はここか」

『ギギギギギ』

 

 いくら感覚が狂っていても手が届く位置への攻撃はできる。

 だがその攻撃が届く前に男は機械兵の胸の中心に手の平を付けて。

 

「フンッ!」

 

 バジィン!

 

 機械兵の体内で何かが壊れた音が響く。

 その音を最後に機械兵の動きが完全に停止した。

 

「鎮圧完了」

 

 おそらく氣か何かを飛ばして内側のみを破壊したんだ。

 弾き飛ばした掌底でも同じことをして、バランス感覚を失ったのはそれで機械兵にとって大事な何かにズレが生じたからか。

 もしかしたら最初の不意打ちも同じ原理だったのかも。

 

「え~と……おまえさん悪魔だよな?」

 

 男は僕を見て訊く。

 敵ではないだろうけど一応距離を取ったまま小さく「はい」と答えた。

 

「悪魔にここまでオーラを使いこなさせる奴がいたとは驚きだ。それも能力にまで昇華させてるとは。……ん? もしかしておまえさんが日本が言ってた悪魔か?」

 

 今の質問の仕方でこの人が何者なのかだいたいわかってきた。

 いくつか気になる単語が出てきたけどそれは後にしておこう。

 

「はい、日鳥誇銅です。なぜ僕が日本の関係者と?」

「そういう悪魔がいると日本側から話を聞いてたからだ」

「つまり貴方はアメリカ勢力の人なんですね?」

「自己紹介がまだだったな。俺はジル。今日本に滞在しているアメリカ側のリーダーを任されている者だ」

 

 やっぱり。このタイミングでこんな強い人で尚且つ若干悪魔を下に見ると言えばアメリカ勢力の人間だと思ったよ。

 流石に隊長格だとは思ってなかったけど。

 

「助けてくださってありがとうございます。それと向こうに殺された人が!」

「うちの構成員だ。心臓を一突きにされてる。もう手遅れだ」

 

 あんなに強いアメリカ勢力の人がそんなあっさりと。

 

「そんじゃそこらの奴よりかは強ぇが全員が腕利きってわけじゃない。殺された奴も非戦闘員側だ」

 

 そうだったのか。そう言われるとあんなに強かったヴィロットさんも機械兵の視線には気づいていなかった。

 それが非戦闘員になれば透明になってる相手に遅れを取ってしまうのは仕方ない。

 

「既に遺体は回収済みだ。さっき逃げた一般人もな」

 

 え、あの人も!?

 

「こんなとこ見られて簡単に帰せっかよ」

 

 そう言われるとそうだ。だけど直接非日常な現場を見られたとなると……。

 

「記憶の操作ですか?」

 

 マズイ現場を見られたり不都合な事実を捻じ曲げる時に悪魔などが使う手段。

 

「それが一番手っ取り早いけどな。けど脳をいじるのは相手への負担が大きい。うち(アメリカ)では推奨されない方法だ」

 

 その言葉を聞いて少しホッとした。何となく想像してたけどやっぱり記憶操作って危険だったんだ。

 

「回収したのは保護するためだ。犯人が目撃者を消しに来るかもしれないからな」

 

 そう言うとジルさんは動かなくなった機械兵へと視線を落とす。

 

「ま、こいつを確保出来たのは大収穫だ。殺されたあいつと、時間を稼いでくれたおまえさんのお手柄だ」

「そんな僕は大したことはなにも」

 

 ジルさんは機械兵を担ぎ上げる。

 

「こいつを調べるのは部下に任せるとして。ちょうどいい、明日一度日本のと会談するからおまえも来い」

「えっ!?」

「場所はおまえんとこのリヴァイアサンが知ってるから聞け」

「ちょ…」

「じゃあな」

 

 一方的に言ってジルさんは行ってしまった。

 というかあんなに重い機械兵を担いでもうあんな遠くへ。オーラを使ってはいるけど凄いパワーだ。やっぱり日本が使ってるものとは根本的に質感が違うのだろうか。

 まあ急に決まりはしたが特に予定があるわけじゃないしいいか。仮にあったとしてもこっちを優先させるしね。

 疲れたのでこのまま真っ直ぐ家に帰ることにした。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

 

 次の日。約束通りにヴィロットさんのお店へ行った。

 僕が来た時には店の隅の方にジルさんともう一人、頭にバンダナを巻いた小柄な男性の姿が。

 小柄ではあるが筋肉はガッシリとしている。それと同族でないとわからない程度に隠された妖気。おそらく悪魔には、塔城さんもギリギリ気づくことはできないだろう。

 

「おーこっちこっち」

 

 僕に気づいたジルさんが手を振って僕を呼ぶ。

 二人の方へ近づきまず挨拶と自己紹介をする。

 

「はじめまして。僕は…」

「日鳥誇銅くんだね。須佐之男様と陰影()から聞いてるよ。僕は二代目火影、多摩。よろしく」

 

 この人が二代目の火影。つまり昇降さんの後任者。

 現火影様から感じる妖気は昇降さんと比べてかなり穏やかだ。

 

「出所不明の戦闘用ロボを確保と聞いたが、今回の犯人はそのロボットだったと見ていいのかい?」

 

 出所不明の戦闘用ロボ。それは昨日僕が対峙した機械兵のことを指してるのだろう。

 そして犯人とは罪千さんも調査に協力したというこの町での事件。

 

「そうかもしれないがそうじゃないかもしれん」

「曖昧だね」

「まだ調査不足なんだ。下手な安心はさせられねぇ」

 

 確か事件が起きたというのがほんの数日前。機械兵に至ってはつい昨日のこと。結論はまだ出せないってことか。

 

「調査も進んでないわ俺達が来てから二度も殺人を許しちまうわで、表への被害を防ぐために来たのに情けねぇ」

「いや、こちらも一度目の事件後には警戒していたのに安々と許してしまった。半分悪魔に侵略されてるとは言え僕たちが守らなくてはいけないのに」

 

 え、二度も? 僕は一度しか聞いてないんですけど。それともこの短期間で二度目が起こったってこと?

 疑問に思っている間に今度は僕に火影様が訊く。

 

「それにしてもこの町はいつもこんな感じなのかい? 悪魔に侵略された土地の中でも厄介な問題を起こすと聞いてはいたが」

「まあそれなりに起こってます」

 

 確かにスケールの大きい問題を引き込んでる。聖剣事件の堕天使幹部や三大勢力会談、ロキ様の襲撃とか。

 比較的穏便な英雄派構成員の襲撃も下手をすれば無視できない被害が出ていただろうし。

 

「それと現場に居合わせた一般人がいたらしいじゃないか」

 

 火影様は今度はジルさんに話しかける。

 

「あ、そうそう。あいつ保護した時びしょ濡れだったんだけどなんでか知ってるか?」

 

 すると思い出したようにジルさんが僕に訊く。

 

「あの人が溺れてたところを助けた直後に敵と対峙したのでそれが原因でしょう」

「溺れてた? 確かあの時近くにあった水場と言えば浅っさい池くらいしかなかったように思うんだが」

「信じられないですけどそこで溺れてました」

 

 僕も目撃した時は目を疑いましたよ。そして肝心のなんで沈んでたのかは不明。

 ジルさんも想像のギャップに訝しげな表情をしている。

 

「ところで僕からも一つ訊きたいことがあるのですが。もしよければ事件について詳しく教えてもらえませんか?」

 

 今回起こった事件についての詳細を僕は何も知らない。だからせっかくリーダー格の話し合いに参加させてもらえたのだから訊いてみる。

 

「僕もまだ大まかな報告しか訊いてない」

「わかってるよ。元々本題はそれだったし」

 

 そう言うとジルさんは火影様にタブレットを差し出した。

 火影様が手にとって見てしまってるため僕は見えない。後で見せてもらうことにしよう。

 

「次僕にも見せて貰えませんか?」

「あーやめといた方がいいぞ」

 

 僕が言うとジルさんがやめたほうがいいと忠告する。

 

「そうだね。これは誇銅くんはやめたほうがいい」

 

 その意見に火影様も賛成のようだ。そのタブレットにはどれだけ凄惨な現場が映ってるんですか!?

 

「でも、僕も転生悪魔として、昔の日本でそれなりに見てきました」

 

 僕は大丈夫だと二人に伝えて見せてもらえるように交渉する。

 その時ちょうどヴィロットさんが人数分のコーヒーを持ってきてくれた。

 するとジルさんが来たばかりのヴィロットさんに言う。

 

「おまえはどう思う」

「やめときなさい」

 

 完全に子供扱いされてるよね!? まあこの人達からすれば僕なんて立場も実力も子供同然なんだろうけど。見た目も相まって。……うるさいよ!

 確かに狼を殺した時には気持ち悪くなったのは事実だし。そんな僕が殺人の現場を見るのを止められるのは当然っちゃ当然のことか。

 子供扱いされてることが少々悔しく頬を膨らませてしまう。

 

「見たところ同じ犯人だな。一般人が相手とは言えこの人数を一人も逃してない。遺体の状態から凶器はその場にあったものを巧みに利用している。実戦慣れしているな」

 

 火影様はタブレットの写真を見ながら推測を口にする。

 写真を見ただけでそれだけの情報を得られるものなのか。

 

「しかしこれだけ手慣れた感じなのに逃走は非常に素人的。二度目の現場と同じく痕跡を残している」

「血の足跡を追いかけてみたが川岸で血まみれの迷彩服と靴を発見し追跡不可となった」

「やっぱりな。最初の現場も同じだ」

 

 話から察するに二人は二度目の現場で会ったことがあるらしい。

 二人はさらに話を続ける。

 

「被害者の殺され方は凄惨かつ多様。かなりの凶暴性が見える」

「それでいて緻密な殺しぶり。ただの快楽殺人鬼じゃねぇ。もしかしたら戦場経験者かもな」

 

 火影様の言葉にジルさんが続けて言う。何も反応がないところを見るに火影様もジルさんも同意見らしい。

 二人の会話から犯人像が徐々に絞られていく。

 火影様がタブレットから目を離してジルさんを見る。

 

「こういう動きは捕獲したロボットに可能か?」

「たぶんな。俺は速攻で鎮圧したがそれぐらいのスペックはあったな」

 

 僕も戦った感じでは多数の一般人を手早く殺害するぐらいの性能はあったと思う。

 ただ被害者数も現場も時間も殺害方法も知らないから憶測もいいところだけども。

 でも僕より実戦経験豊富な二人が同じ意見を出したのならそうなのだろう。

 

「はぐれ悪魔って可能性はないんですか?」

 

 自分でも絶対に無いだろうと思う質問だ。

 だけど今言われた犯人像が一般的なはぐれ悪魔のそれに被った気がしたので訊いてみた。

 

「ねぇな。これははぐれ悪魔みたいな人外の殺し方じゃねぇ。間違いない。本職の奴らなら詳しく説明できるんだろうけどワリィな」

「いえ、大丈夫です」

 

 ジルさんの中では説得力のある確信があるのだろう。それなら僕は信じるだけ。

 それに目的はわからないけど機械兵が町に侵入してたんだしそっちを疑った方がいい。

 火影様がタブレットを返すと、ジルさんは次に地図を広げた。

 

「最初の被害現場がここ。次がここだ」

 

 ジルさんが地図上で赤く丸が付いてる場所を指さしながら説明する。

 二人は慣れたように難しい作戦会議をグイグイ進めていった。

 単独で動くことばかりだった僕にはついていけない。専門用語のようなものは少なかったので何となくはわかるが。

 

「と、まあこんな感じだ」

「厳しいね。できればそのロボットが犯人であることを祈るよ」

「全くだ。仮にアレが犯人だとしても一機だけとは限らねぇし、再投入されることだってある。警戒は解けない」

 

 以前僕たちを襲撃した機械兵は旧式だと言っていた。それでも僕たちからすればい今まで対峙して来た敵の中でも上位に食い込むほど強かった。

 今回の機械兵は隠密能力に長けてはいたが戦闘能力は低め。

 機体は全く違うがあれも量産機と見たほうが無難だろう。

 そうなれば送られて来たのが一機だけとは思わない方がいい。

 

「後はテロリスト共やはぐれ悪魔が侵入して問題を起こさないこともな。そうなった場合三大勢力の要人が広く動き出してしてこっちが動きにくくなっちまう」

「彼らも一応は表へ被害を出さないようにはしてるんだけどね。だが表沙汰にならなければって思ってフシがある」

 

 それは僕もリアスさんたちといて思ったことがある。

 古い記憶で定かではないけど、堕天使が町に侵入することを許し被害者が出ても積極的に動く姿勢はなかったと記憶している。

 堕天使幹部が町に来た時だって種族間の問題を重視するばかり。それに堕天使幹部の行為が確定した時点ですら魔王への打診を躊躇していた気が。

 修学旅行の時は少し事情が違うから省くとして、悪魔そのものがどれだけ人間側への被害防止に努めているかは知らないが、リアスさんの周りでは表沙汰さへ防げれば良いと思ってるように見える。

 

「まあその辺りはこちらがさっさと対処してやれば防げるだろうよ。散らばってる部下も非戦闘員とは言えはぐれ悪魔や下っ端テロリストぐらいは追い返せる力はある」

 

 それはもはや非戦闘員と言っていいものか?

 けど本国から離れ任務をするとなると最低限の戦闘能力は必要かも。

 単に基準が高いだけかもしれないけど。

 

「この町にいる悪魔や堕天使総督とかがよっぽど変なもん持ち込んでなきゃ大丈夫だろ」

 

 ッ!! ジルさんが何気なく言った言葉にビクッとしてしまう。

 今まさにその堕天使総督がとんでもないものを持ち込んでることを僕は知っている。

 僕の露骨な反応に既に嫌な予感を悟るお二人。

 

「……何があったんだ?」

「実は……」

 

 僕はアザゼル総督が多方面に内緒で禍の団(カオス・ブリゲード)のトップであるオーフィスを匿っていること。そのついでにヴァーリチームの面々を招いてることを明かした。

 念のためにアザゼル総督がどんな考えでオーフィスを匿うことにしたのかも説明しておいた。

 

「よりによってこのタイミングでそんなことしてやがったのかよ……」

 

 その事実にジルさんは頭を抱え、火影様も気だるそうにため息を吐く。

 

「若干関わりがあるから何となくで呼んだだけだったけど、あとから別に呼ばなくてもよかったなと思ったけど呼んでおいてよかった」

 

 そんな風に思われてたんだ僕! まあそりゃそうか。

 僕個人で持つ有益な情報と言えば悪魔側にいることからの三大勢力の情報。だけどこれも向こうからすればさほど時間をかけず入手できる。

 もしかすると場当たりでも対処できる程度のものかもしれない。

 

「けど唯でさえ警戒度が上がってんだ。これ以上の警戒事項を増やすと連れてきた人数じゃキツイ。わかった、いざとなったら俺がオーフィスを対処する」

 

 ジルさんはそう言うが、僕にはジルさんがオーフィスに勝てるビジョンが全く見えない。

 そりゃ僕もジルさんの力量を満足に知っているわけではないが、ジルさんとオーフィスから感じるものの総量が圧倒的に違う。

 その辺りは何かしら秘策があるのだろうけどいざという時に対処できると言える程のものなのだろうか疑問に思わざる得ない。

 

「その時はどうするのですか?」

 

 不安と疑問を解消するべく僕はそれを訊いて見た。

 

「俺じゃどうやっても無限は殺せねぇ。けど殺せる奴ならいる。もしもの時はそいつが来るまで俺がオーフィスを抑えつけておく」

 

 抑えつけておくか。それなら幾分可能性が見えてくるだろう。

 しかし無限の存在ともなればそう長い時間拘束してはいられない。それも個人の力となると。

 果たして殺せる人物が来るまでに足りる時間があるのか。

 

「そうだな、相手が無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)となりゃ一週間が限度ってとこだな。不眠不休を計算に入れてもそれ以上は無謀だ」

 

 間に合うかどうかのレベルじゃなかった! しかも不眠不休前提!? 大国アメリカ勢力のリーダー格半端ないね!

 

「言っとくけど能力、オーラ込みでそれだけに全能力を割いた場合だからな。素でそんなことできる程人間辞めてねぇよ」

 

 あ、やっぱり素でそういうのは無理なんですね。ちょっと安心。

 それでも半端ないのは変わりないですけどね。

 

「そうですよね。そんな無茶できるわけ」

「そうだよ。できるあいつらがおかしいんだ」

 

 できる人いるんだッ!?

 でも確かにジルさんの上、メイデンさんとかはできそう。けどジルさんはあいつらと複数形だった。

 邪神の件もあるしどちらにせよアメリカがとんでもない人材を多数確保してることは間違いない。

 けどそれが三大勢力の悪徳に気づき、日本に協力してくれるということは間違いなく頼もしいことだ。

 

「おまえさんもそれでいいか?」

「こちらの戦力では不可能なことだ。やってくれると助かる」

 

 ジルさんが火影様に確認を取ると、火影様は頼むように了承した。

 するとジルさんは地図へと視線を落とす。

 

「話を戻すがこちらが連れてきた人員でカバーできるのはこの場所を中心としたこことこの辺りが限度ってとこだ」

 

 地図に新たに書き足しながら言う。

 

「残念ながらこちらには腕の立つ人員はいない。そちらの非戦闘員にも確実に劣るだろう。それでも広範囲の索敵カバーを可能にする人数と能力はある。そちらは任せてほしい」

 

 火影様も積極的に協力する姿勢を見せる。

 それから二人はさらに細かい連携についての話を始めた。

 ちょっと驚いたこともあったけど、話し合いは順調に進んでいく。

 

「と、こんなものかな」

「だな」

 

 二人の話し合いが終わり会談は終わりな雰囲気となる。

 火影様が席を立ち一度背伸びをすると、少し早足で出口へと向かう。

 出口手前で立ち止まり一度こちらに手を振って店を出た。

 僕も帰ろうと出口へ向かおうとするとジルさんに呼び止められる。

 

「おまえさんの住んでる地域も警戒範囲に入っている。そうでなくてもあいつらに目をつけられたかもしれない。夜出かける時とかは十分に注意しろよ」

 

 地図に記された次の予測危険地帯には僕が住んでる辺りも含まれていた。

 だけど僕はあいつら(機械兵)に直接狙われたこともあるし、親玉であろう人物とも機械越しだけど会っている。

 残念ながらとっくに目は付けられてるだろうね。




 
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