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今回は少し短めですが、お待たせしました。
「誇銅、外の様子はわかる?」
ホテルの室内でヴィロットさんが僕に聞く。
「う~んあっちの方……駐車場辺り? その辺りに相当な数の気配を感じます。これは人間でも悪魔でもないですね」
「協力者はハーデスだから恐らく死神でしょうね。それより他の気配はないかしら? 例えば機械兵とかの」
「それなら今のところは。でも機械兵の種類によっては僕では感知が難しいのもあるので」
「それでも心強いわ。私達では種類問わず感知できないもの」
曹操との戦いの後、怪我人続出だらけのグレモリー眷属達は擬似空間のホテル上階に陣取った。60階まであるホテルの真ん中―――30階まで移動し、その階層を丸ごとルフェイの強靭な結界で
同じ階層の別室に僕達を除く怪我人を休ませ、アーシアさんの治療を待つ。一誠、ゼノヴィアさん、アザゼル総督は既に完治している。
僕達は一誠達と比べて傷が浅いので別室で自分で治療することにした。と言いつつもヴィロットさんが治癒の魔道具を持っているのでそれで治療するだけだ。
ただフョードルさんの腹の傷がそこそこ深いのと、魔道具の性能があまり高くないらしく効きが悪い。なので代わりに僕が仙術で治療している。
黒歌さんは治療を終えたが、大事を取って別室で休んでいる。レイヴェルさんと塔城さんも一緒にそっちにいる。
サマエルの呪いを受けたヴァーリさんは怪我が治っても呪いが解けず、別室で激痛に耐えていた。話によれば解呪かいじゅの術はかけたが、サマエルの呪いはあまりにも強力な為―――並大抵の術では解けないらしい。
アーシアさんは連続での治療で疲労が溜まり、一誠達のいる隣の部屋で仮眠を取っている。その間に僕が変わりに怪我人の治療とかするわけではない。たぶん僕がアーシアさん程ではないが治療できること忘れてるね。
アザゼル総督の話によればこの空間は
治療中のフョードルさんが携帯を眺めて一言「フム」と呟いた。
「同士から
フョードルさんがヴァーリチームの現状を報告するも特に僕らが思うようなことはなにもない。
「ま、テロリスト共からすれば白龍皇の行動は裏切り行為に違いない。多少事実が違ってようとも結果は同じでしょうね」
ヴィロットさんは軽く方をすくめた。今回の1件でヴァーリチームは『
「ヴァーリチームは私達が知る所では、グレートレッドのことや世界の謎を調べたり、伝説の強者を探し回ったりしていました。そして時々オーフィスの願いを叶えたりなど。組織内では高い実力は持っていましたが、とにかく好き勝手に動き回ることが多かったですね。英雄派の主流な意見としてはかなり目障りに思っていたのでこれを機に排除したかったのでしょう」
大変そうないざこざだが、正直なところ経緯としては自業自得な気もしないこともない。
「なんだかテロリストらしくないですね」
「そうですね。我々が把握してるもので次元の狭間を泳ぐグレートレッドの秘密、滅んだ文明―――ムー大陸やアトランティスの技術、それと異世界の事について調査していたようです。北欧神話勢力の世界樹ユグドラシルへも行っていたらしく。他にも伝説の強者とは逸話だけを残して、生死不明となっている魔物や英雄の探索なども。そして時折、組織の仕事としてテロ行為を行うといった感じですね」
「テロがついでなんだけど……」
「普通に冒険家でもやってなさいよ」
ヴィロットさんはため息混じりに言った。最初っから冒険家とかじゃだめだったのかな? そっちの方が縛られることなく自由に動けたのに。でも強者と戦うのが第一目標ならテロ組織に身を置くのも選択の一つかもしれない。守られぬ者は縛られないからね。
今の状況は好き勝手してきたツケの一部ってところかな。それを僕らも払わされてるのは不服ではあるけどね。
「彼の探究心は決して悪いものではないとは思うのですが……」
探究心が先行しすぎて突っ走ってる感じだね。探究心が強いと言えばアザゼル総督もだが、何だが自分の考えで突っ走るところは似てる気がするよ。
「そんな馬鹿はどうでもいいとして―――あいつのマントに
「……ええ」
話を振られたフョードルさんは言い淀みながら答える。確か卍を逆にして傾けたようなマークだった。
「ハーケンクロイツでしたね」
「ハーケンクロイツ?」
僕が疑問を口に出すとフョードルさんが説明してくれた。
「ハーケンクロイツとは20世紀以降にドイツで民族主義運動のシンボルとされていたものです。第2次世界大戦までは国旗にもなっていました」
20世紀以降ということは大体100年前ぐらいか。今まで関わってきた伝説や神話と比べるとだいぶ最近のことのように感じてしまう。
「今でも当時のドイツ国の呼称であるナチス・ドイツのシンボルマークとして広く知られています」
「それじゃ英雄派に強力しているのはそのナチス・ドイツということでしょうか?」
「恐らくは。今の表世界でもネオナチとして当時のナチズムを復興しようとする運動があります。ただしそれらはオリジナルに近いものや相違点が大きいものまであり、曹操達に協力してるのがどの部類なのかまではわかりかねます」
英雄派だって言ってしまえば『英雄』を名乗っているだけだ。本物である確証は正直な所ない。ヴィロットさんが続くように言う。
「本物かどうかはともかく、実力は間違いなく本物。それが重要なことよ。―――あいつらが扱う機械兵もアルベルトとか言う奴も聖書勢力あたりではありえないわ」
名は偽であろうと実力は本物。それだけは真実だと僕らもこの目で見て体験している。そうなれば本物だろうが偽物だろうが関係ない。本物の実力を兼ね備えた敵がいる事実のみ意味がある。
「こんな厄介事にそちらを巻き込んでしまい申し訳ない」
「こうなってはそっちだけの問題では収まらないわ。それにこちらとしても調査中の事案の手掛かりになるかもしれないし」
ロキ様がウイルス兵器でゾンビ化させられた時にあの機械兵は密かに現れていた。つまりナチスは間違いなく盗まれたウイルス兵器について重要な情報を持っているはず。アメリカ勢力としても協力を拒む理由はないだろう。それに……そんな組織が危険極まりないウイルス兵器を所持していることも。
と考えていると、結界内に誰かが侵入したのを感じた。
「誰かが結界内に侵入しました!」
ルフェイさんの防御結界は破壊されていない。となるとアザゼル総督達は気づいてはいないだろう。なにせ
緊張した様子のヴィロットさんと対照的に妙に落ち着いてるフョードルさんが僕に聞く。
「その侵入者というのは二人ではないですか? 片方は人間でもう片方は純粋な人間ではないです」
フョードルさんの言ったことは的中している。確かに間違いなく人間と魔獣っぽい人間の気配。しかしなぜわかったのか。
「それなら心配ありません。先程の連絡と一緒に同士が二人こちらに来ると連絡が入っていました。同士が一人と今回の協力者が一人。お伝えするのが遅くなって申し訳ありません」
そう言ってフョードルさんは僕達に緊張を解くように促す。その言葉を信じつつも念のためすぐ動けるぐらいの緊張感は残しておく。
侵入した気配が部屋の直ぐ側まで近づく。静かな部屋にノックの音が響きドアが開かれる。
「失礼するだで」
麦わら帽子をかぶった長身の男性が部屋に入ってきた。純粋な人間の気配なのでこの人はフョードルさんが言う同士で間違いないだろう。
問題なのは次に現れた人物。その人物は僕も知っている人物だった。その白髪の男性は部屋に入ると礼儀正しく自己紹介をした。
「始めましてフリード・セルゼンと申します」
「フリード……!」
「……! ヴィロット!! どうして君がここに!?」
まさかのヴィロットさんとフリードに面識が!? お互い顔を見合わせた状態で暫く固まった後に歩み寄る。
「任務に失敗して死んだって聞いたのに……!」
近づきフリードの肩に手を置いたヴィロットさんはなにかに気づいたように深刻そうな顔をした。
「運悪く死に損なってしまってね。それからまあいろいろあって」
「……どういう理由にせよまた会えて嬉しいわ」
ヴィロットさんがまるで同級生のようにフリードの背中をバンバンと叩く。あの様子からして二人はかなり前から友人関係にあったようだ。
「まさかお前さんの知り合いだったなんてな」
そんな二人へ英雄派の男性が近づきヴィロットさんに握手の手を出しだす。
「ルディール・ハルロだ。この度の協力に感謝ずる」
「ヴィットリーオ・ヴィロットよ」
しっかりと握手を交わすと次に僕の方へ来て同じように握手を求めた。
「日鳥誇銅です。微力ながら力にならせていただきます」
「いや頼もしいど。君の試合は見させてもらった。近年類を見ない素晴らしい戦い方だった。協力感謝する」
そんなに褒められると照れてしまうよ。でもこうやって面と向かって評価してくれるのって凄く嬉しい。
ハルロさんがまだ完治はしていないフョードルさんに目線を移す。
「怪我したって聞いたから心配しとったが大丈夫そうだな」
「ええ、彼らのおかげで。まだまだ前線で戦うことは出来ます」
「そっが。あんま無茶すんじゃねぇぞ」
二人はそう言ってお互い頷く。
「しっかしおまえさんに深傷を負うとは。曹操以外に誰かいたな」
「例の協力者に遅れを取りました。それと協力者の素性が少しわかりました。彼らはハーケンクロイツをシンボルマークにしていました」
「ハーケンクロイツか。フリード、お前さんがくれた情報と類似しているな」
その場の全員がフリードの方を向いた。
「フリード、どこでその情報を? ていうか今まで一体何をやっていたの?」
ヴィロットさんが訝しげに聞く。
何やら事情があるようだがフリードは確かに僕らの敵だった。今では見る影もなくなった快楽殺人鬼のような雰囲気も演技には思えなかった。一誠の話では実際に一般人を惨殺したらしい。様子がガラリと変わったからといっていきなり信用できるような人物ではない。
「そうだな。それじゃ質問の答えになる部分から話そう。俺はとある事情で正気を失っていたんだが、グレモリーの
確かに以前のフリードは正気を疑う程にまともではなかったが本当に正気を失ってたんだ。というか一体何があってあそこまで錯乱していたのだろうか。
それとアメリカから盗まれ持ち込まれた兵器ってデッドウイルスのことだよね? なんでフリードがそのことを知ってなおかつ探っていたのだろうか?
「その過程で兵器を『
ロキ様がデッドウイルスを撃ち込まれゾンビ化した時にそのナチスの機械兵は現れた。ディオドラの時に現れたウイルスの感染体も同じ経緯で持ち込まれたのだろう。
そしてフョードルさん達とフリードは目的は違えど探す対象が同じということで協力しあっていたというわけか。内部の人間と外部の人間が協力し合えばとても効率が良いだろうし。
「しかし得られた情報はそう多いもじゃなかった。英雄派には機械兵にいくつかを、魔王派に兵器の一部を実験的に提供していたこと。それと英雄派の幹部のみと多少多めの接触があったこと。それによって彼らが完全に独立した組織だということぐらいしか」
ということはそのナチスってのは
そこまで聞いたヴィロットさんが「なるほど」と頷く。
「そしてハーケンクロイツについてだが、ほんの少し前に英雄派の拠点にハーケンクロイツを身に着けた紫髪の女性が入っていくのを目撃したからだ」
女性と言えば僕達の目の前でフーリッピを連れて行ったあの人もナチスの関係者に違いないだろう。ただフーリッピを連れて行った女性の髪色は緑。ということはまた別の女性ということか。
でも英雄派内の情報を外部のフリードが知れて内部のハルロさん達が知れなかったのだろう。
「ハルロさん達はその女性について何か知らないんですか?」
「俺たちの不審な動きに薄々気づいとったのか俺たちはもう曹操達からあまり信用されてねぇで。そういった内部の事情はもうほどんど知らざれねぇ」
そいえば機械兵についても協力者からの贈り物としか伝えられていなかった。その協力者のこととなれば知らされないのも当然か。
「その女性は監視していた俺にピースしたんだ。気付かれないように遠くから監視してた俺にな。本当はもう少し監視するつもりでしたがそこで断念し彼らに情報を伝えた」
監視に気づかれて早々に切り上げたというわけか。フリードがどのくらい離れていたかわからないが監視の目に気づいたその女性も只者ではないだろう。監視相手にピース出来るほどに精神的余裕もあるみたいだ。
ヴィロットさんは目を閉じ考え込み、息を吐く。
「ま、事情は一通りわかったわ。それでここからどうする? 外の死神だってオーフィスの抵抗も予想して来てるだろうし。何かしらの策は用意してるでしょう」
ヴィロットさんがハルロさんに訊く。
「外の死神に気づかれずここまで侵入できたんでしょ。じゃあ逆に気づかれずに脱出も出来るんじゃない?」
「出来んこともねぇ。―――だが、気づかれずはこの包囲網じゃ無理だ。オデらがこの空間に侵入したのは半場力技だ。内側で同じごとをやれば必ずバレる。そもそも二人だからここまで気づかれずに来れただけだで」
脱出は出来る。ただし、隠密でという最高の条件は不可能か。
「それでは死神と戦いながら脱出するんですか?」
僕がそう訊くも、ハルロさんは首を横に振る。
「いんや。この空間オーフィスを捕らえる特別な結界だ。その方法ではオーフィスだけは脱出できん。オーフィスを死神に連れて行かれては困る。結界を破壊して脱出が一番確実だ。それに死神も甘く見ないほうがいい。死神の
ダメージと共に生命力を刈り取る攻撃か、生命に直接干渉する攻撃って受けるとゾワッとして気持ち悪いんだよね。
傷を短時間で回復させても生命力は時間を掛けて回復させないといけないし、さっきの戦闘で重傷を負った人たちには余計に危ない相手だ。
「この一件はこちらとしても急を要することだし、仕方ない」
ヴィロットさんが十字架が刻まれた拳銃を取り出すが、フリードがそれを止めた。
「ちょっと待て! 確かに
「あーそれもそうね」
そう言われ拳銃を懐へ戻す。一体その拳銃は何なのだろうか? なんか凄い聖なる気配がしたんだけれども。
「とにかく俺達のことをグレモリーやヴァーリ達に了承してもらわねぇと。あいつらを脱出させるためにもあいつらとも連携を取る必要があるし。都合上あいつらに死なれたら困る」
そっか、ハロルさんとフリードの参加をリアスさん達に説明しないといけないのか。敵側の協力はヴァーリチームもそうだったがそれと同じようにおいそれとはいかないだろうな~。しかもフョードルさんとヴィロットさんのこともまだ説明していない。戦いが始まる前から前途多難だよ。
フリードが僕の肩にポンと叩く。
「だからグレモリー眷属としてそれは頼む」
「えっ!?」
指名されて驚いたけど、冷静に考えてみたら必然だよね。なにせこの中で唯一僕だけが悪魔側の人間なんだし。他は三大勢力とすら関わりがなく、四人の内三人が敵対勢力。フリードに至っては何度か直接敵対してきた過去がある。
「いえ、僕はもうグレモリー眷属ではありません。でも今の主のレイヴェルさんに話を通してもらえるようお願いしてみます」
レイヴェルさんに迷惑は掛けたくないが、現状レイヴェルさんも既に巻き込まれてる。なら現状を打破するためにも協力を頼むしかない。少なくとも僕がするよりはスムーズに話が通るだろう。
ハルロさんが嘆息する。
「本来ならオデらだけで片を付けるにゃならねぇごとなのにすまねぇ。それにしても今代の
「どちらかと言うと歪みが戻り始めてるといった方が正しいでしょうね」
ヤレヤレと頭を抱えるハルロさんに、ヴィロットさんがつぶやくように言った。
それを聞き逃さなかったハルロさんがそのことについて訊く。
「歪みが戻り始めている? それは一体どういうごとだ?」
「
ヴィロットさんがそう言うと、フリードとフョードルさんが俯いた。
ハルロさんは質問を続ける。
「じゃあ
「今教えても混乱するだけよ。事態が落ち着いたら私かフリードもしくは
凄く意味深な言葉を残して話が閉じられた。
「ゴホゴホッ!」
突然苦しそうに咳き込みだし片膝を着くフリードは、注射器を取り出し自分の腹に刺す。するとその表情はまだ少し苦しそうだが先程よりはだいぶマシになった。
「大丈夫だ、心配ない。そんなことより時間が惜しい、さっさと話をつけようぜ」
こうして、僕はレイヴェルさんにこの事を伝えに行くこととなった。
ややこしい事情なため僕では納得できる説明ができないかもしれないので、ヴィロットさんとフリードも一緒に行くこととなった。フリードは休んでたほうがいいんじゃないかと言うも大丈夫の一点張り。まあ話をしに行くだけだからいいか。
後になってこの部屋を出た後に一誠達にバッタリ出会わないか凄く不安になった。いろいろ考え事をし過ぎて考えが回らなかったよ。
「そういえばヴィロットさんはフリードと親しそうでしたがお二人はどこで知り合ったんですか?」
部屋を出て周りに僕達だけになったので思い切って訊いてみた。
「そうね……前に私が北欧に居た事情を説明したのを覚えてる?」
「はい」
「大体はそれと同じ事情よ。私とフリードは同じメイデン・アイン様の信徒であり、メイデン様をトップとするアメリカ組織の一つ
ヴィロットさんはアメリカから北欧神話へのスパイ活動をしていた。つまりフリードはアメリカ勢力の人間で天界でスパイ活動をしていたというわけか。しかもヴィロットさんと同じ派閥所属で。それであんなに親しげだったというわけか。
そこまで説明されたところで、フリードが少し不安げに訊く。
「一応確認しとくけど言って大丈夫なんだよな?」
「正式に協力してもらうにあたって事情は一通り説明したわ。それに前に一度この子とは共闘した。個人的にもこの子のことは信頼できると思ってるわ」
フリードは一言「そっか」と言い、ヴィロットさんの説明に続くように言った。
「正確には天界と直接繋がりのある教会だけどな。そこで
その魔道具というのは、ヴィロットさんがヴァルキリーのフリをしていた時のと同じものか。
最初の出会いはイカレた神父。二度の撃退を経て三度目のディオドラの時に様子が変わり憑き物が剥がれたかのようだった。あの後にもう一度一誠達の所に現れたらしいけど僕はその時いなかった。
そんな彼が紆余曲折を経て僕らの味方になっちゃうなんてね。本当に人生って不思議だね。