無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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邪険な協力者の脱出作戦

 説得を手伝ってもらうため、僕たちはレイヴェルさんがいる部屋に訪れた。

 部屋にはレイヴェルさん意外にも塔城さんとベッドに横になっている黒歌さんもいた。

 この部屋の中では絶対に話せないので、レイヴェルさんだけ部屋の外に来てもらい事情を説明した。

 

「わかりました。お役に立てるかわかりませんが、私の方から説得してみます」

 

 こちら側(悪魔陣営)の事も含めるとかなりややこしい事情なのだが、レイヴェルさんは快く引き受けてくれた。

 

「ありがとうございます。こっちの事情にレイヴェルさんまで巻き込んでしまい申し訳ありません」

「いえ、現状を打破するために必要なことなら私も協力させていただきます」

 

 必要なことだと引き受けてくれたが、それでも二重に巻き込んでしまったことが後ろめたい。

 

「本当ならレイヴェルさんだけ先に出してあげられたらいいんだけど……」

「私は不死身のフェニックス家の者です。そう簡単に死ぬことはありませんわ」

 

 気丈に振る舞うレイヴェルさん。流石は不死身の一族なだけあって肝が座ってる。だけど相手が相手だ、一切の油断はできない。

 

「実は嬉しかったんです。誇銅さんが私を頼ってくださったことが。こんな状況で私に出来ることがあるんだって」

 

 不安そうにする僕にニッコリと笑顔を向けるレイヴェルさん。

 

「それに私は誇銅さんの(キング)なんですから、もっと私を頼ってくださってもいいのですよ」

 

 そう言って胸を張るレイヴェルさんはとても頼もしく見えた。

 

「それに……もしもの時は、誇銅さんが助けてくれますよね」

 

 最後に少し自信なさげに、いたずらっぽく笑うレイヴェルさん。先程とのギャップの可愛さに思わずキュンとなってしまった。

 

「も、もちろんです! レイヴェルさんのことは僕が絶対に守ってみせます!」

 

 あの日、レイヴェルさんに誓ったことを、レイヴェルさんの手を握りもう一度誓った。この力はレイヴェルさんを守るためなら全力を尽くす!

 

「レイヴェルさんは僕の大切な人なんですから!」

「あ、ありがとうございます……」

「え、あぁ……」

 

 勢いとはいえ冷静になると恥ずかしくなってきた。レイヴェルさんも顔を赤くしたまま固まっている。とても恥ずかしいけれども目をそらせない……。

 お互い見つめ合ったまま動けずにいると、部屋から塔城さんが飛び出していった!

 

「小猫ちゃん!」

 

 部屋の中には一誠の姿もあり、どうやら話してる最中に来ていたようだ。

 一誠が追おうとするのを、黒歌さんが腕を引いて引き留めていた。

 

「私が追いますわ。誇銅さん、先程の件はお任せください」

 

 そう言い残し、塔城さんのあとをレイヴェルさんが追って行った。

 

「この非常時の真っ只中に大丈夫かよ」

 

 フリードが塔城さんが走り去って行った方を見ながら言う。ぶっちゃけ何があったのかわからないから何とも言えないけど、大丈夫だろうと思いたい。

 目的を終えた僕達は一度部屋へ戻り待機することに。

 

「お互い見つめ合っちゃって、なんかいい雰囲気だったじゃない?」

「おい、フェニックスの姫と一体どういう関係なんだい?」

 

 帰路の道中、フリードとヴィロットさんにレイヴェルさんとの関係をめっちゃイジられた。

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 しばらくしてレイヴェルさんが話を通してくれたことを伝えに来てくれ、僕達はアザゼル総督、リアスさん、朱乃さんがいる部屋へと向かった。

 僕達が部屋に入ると案の定警戒されていた。特にフリードの姿を見たリアスさんと朱乃さんは一層警戒心を強めていた。

 この空気でどんな話し合いになるのか胃がキリキリする気分で臨んでいたが、話し合いが始まってほぼすぐに部屋を追い出された。

 

「ま、そう時間は掛からないだろうし、大人しく待ってようぜ」

 

 フリードと一緒に。というかフリードの自主退室に僕も強制的に付き合わされただけなんだけれど。というかなんで僕まで? 一人で外で待ってればいいのに。

 

「俺が一人で出歩いたら袋叩きにされてつまみ出されちまう」

 

 確かにここにいる面子の殆どはフリードと面識がある。フリードのことは凶悪な狂人との認識なのでまともに取り合わず攻撃されるだろう。僕も事前情報がなければ似たようなことをするだろうし。

 

「それにあの場から誇銅を引き離す必要があったしな」

 

 僕を話し合いの場から引き離す? 僕があの場にいた理由としては仲介以上の理由はなかった。口利き自体はレイヴェルさんにやってもらったが、それでも僕がいてはいけない理由はわからない。

 

「どういうことですか?」

「堕天使総督が誇銅を通じてこっちの真意を読み取ろうとしていた」

 

 追い出される前にヴィロットさんはこちらの経緯を説明する際、その大部分を省いて適当に話していた。要点は抑えていたので話の辻褄や整合性は取れていたが、事が大きいだけに何か隠してる感は否めなかった。

 なるほど、だからあの中で一番隠し事が出来ない僕を通じて探りを入れようとしていたのか。

 

「俺も長いこと教会に身をおいていたからな」

 

 聖書陣営の腹の探り合いはわかるということか。本人以外の様子から真意を読み取る手法は案外よくある。幻術などを術なしで見抜く時とかも似たようなことをする。

 

「それに間接的に探らなくても向こうが誇銅に直接聞いて確かめるって方法もあるしな。誇銅も俺たちとあまり親しく思われるのは面倒だろ?」

 

 確かにアザゼル総督やリアスさんに直接聞かれたらどう答えればいいかわからない。問い詰められても知らないで押し通せばいいんだろうけど、それで押し通せる自信がそもそもない。話し合いの最中で実はいろいろ知ってるような反応をしちゃってるだろうから。

 

「だからこうやって蚊帳の外で、出来るだけ巻き込まれた体裁でいたほうがいい」

 

 そう言われると連れ出してくれたことはとてもありがたい。

 そんな話をしていると目的の場所に着いた。

 

「……本当にいいんですか?」

「後回しにしてもゴタゴタが長引くだけだ。さっさと済ませて時間の余裕を作りたい」

 

 目的の場所―――現在一誠がいる部屋。フリードの加入に反対姿勢を見せるのはグレモリー眷属の面々だ。その中でも一番難色を示すであろうが一誠。逆に一誠さえ納得させてしまえば他のメンバーも渋々ながら納得するだろう。

 だけど一誠は軟派(なんぱ)な性格だが悪い意味で堅物だ。きっと安安とは理解してくれないだろう。しかも今一誠がいるこの部屋って確かヴァーリさんが休んでる部屋じゃなかったっけ。

 けど先延ばしにしても仕方ない。ノックをしてからまず僕だけで部屋へ入る。

 部屋の中には一誠と上半身だけ起こしているヴァーリさんがいた。

 

「ん、誇銅か。どうしたんだ?」

「うーんと……」

 

 一体どうやって切り出すべきか……。チラチラと視線を動かしながら考えていると、ふとヴァーリさんに視線を止める。ヴァーリさんは怪我は完治してるようだが、顔色は悪い。呼吸も荒いし、呪いの苦痛は現在も続いてるようだ。

 

「ちょっといいですか」

 

 僕はヴァーリさんに近づきそっと触れる。

 

「特定の条件にのみ反応し、部位ではなく気脈に流れていくタイプの呪いだね」

 

 観察と触診によって呪いの種類を特定する。

 呪いというのは大きく分けて二種類あり、僕はそれを毒と(やまい)と分けている。部位に感染し瞬発的な殺傷力があるのが毒、気脈に流れてジワジワと全身を蝕むのが(やまい)

 

「わかるのか誇銅!?」

「え、あっ……!」

 

 考え事に夢中になってついやっちゃった! 今更誤魔化すこともできない。

 

「もしかしてサマエルの呪いを解呪できるのか!?」

 

 一誠が一筋の期待に満ちた表情で訊いてくる。

 

「で、出来ないこともないかもしれない」

「じゃあ!」

「でも無事な状態で解呪出来る保証はないから。もしかしたら神器ごと再起不能になるかもしれない」

 

 僕の解呪方法は僕の神器の特性を使用する。自分自身にならなんの問題もないのだが、他人にするとなるといろいろ保証が出来ない。最悪の場合呪いは解けても解呪の影響で神器が破壊され死亡ってこともありえる。そうでなくとも大きく破損する恐れがお大きい。

 

「それでは本末転倒だな」

 

 僕の説明を聞き、ヴァーリさんは苦笑した。

 

「だがもしもの時はそれに賭けてみるのも悪くない。いざとなったら頼むかもな」

 

 その時は頼まれてもしないかな。それで殺してしまったら多方面から物凄く恨まれそうだし、現状ですらヴァーリさんが命を残す確率の方が低い。申し訳ないけど、その時がもし来たら準備不足と言っておこう。

 

「ありがとな誇銅。わざわざヴァーリにかけられた呪いを見に来てくれて」

「いや、僕が来たのは解呪のためじゃないんだ」

 

 言いにくそうにする僕に首を傾げる一誠。

 僕は意を決して話すことにした。

 

「僕がヴィロットさんと英雄派の人と一緒にいたでしょ?」

「あ……!」

 

 僕が話を切り出すと、そう言えばと言った感じに反応する一誠。もしかして、忘れてたの?

 

「そうだぞ誇銅! なんで英雄派の奴と一緒にいたんだよ!?」

「まあまあ、その説明もするから。それよりもまず僕がここに来たのは、もう二人新しく来たってことを伝えに来たんだ」

「もしかして、そいつも英雄派の構成員なのか」

「一人はね。ヴィロットさんと英雄派の二人は今アザゼル総督やリアスさん達と話し合いの最中。そして残りの一人は外で待ってる」

 

 そう言ってドアを開けてフリードを呼ぶ。もうこの時点からややこしい事になるのが目に見えてて気が進まない。

 

「やっほー、久しぶり」

 

 ふ開けたドアからひょっこりとフリードが顔を出してフランクに挨拶した。その瞬間、一誠の警戒度が跳ね上がる。

 

「フリードッ! 誇銅、なんでコイツがここにいるんだ!?」

「それは……!」

 

 説明しようとすると、フリードが僕の肩を掴んで後ろに下がらせる。

 

「そいつに訊いても無駄だ。なにせ俺はついさっき来たばかりの飛び入り参加だからな。道案内兼見張りってところだな。ま、ここにいるからには今回は敵じゃなく味方だ。だから安心してくれ」

 

 ニッコリと笑顔を浮かべるフリードと対象的に一誠は険しい表情。フリードが握手を求めるも一誠はそれに応じようとはしない。するとフリードは手を引き、わからないほど小さくため息を吐く。

 

「確かに俺とお前たちの間にはいろいろあったさ。常に敵対関係で利害が一致したことなんて一度もなかった。だが今回ばかりは違う。考えてみろ、敵ならわざわざこんなところで姿を表したりなんかしないだろ? それにこんな危機的状況だ。猫の手も借りたい状況だろ。だから仲間なんて思ってもらえなくてもいいからさ、味方だってことだけは信じてくれよ」

「うるせぇ! お前みたいな奴、信用できるか!」

「酷いなぁ、流石の俺も傷つくぜ」

 

 と言いつつも全く傷ついてる様子のないフリード。だけどそれが一誠の強い敵対心を煽っていると思う。

 

「そもそもお前は『禍の団(カオス・ブリゲード)』の仲間だろうが!」

「そんなこと言ったら後ろの白龍皇だって『禍の団(カオス・ブリゲード)』のメンバーだぜ?」

「残念だったな、ヴァーリ達は禍の団(カオス・ブリゲード)から裏切り者扱いされてるんだよ」

「本当? 奇遇だな、俺もだよ。これで俺が信頼できない理由がなくなったな」

 

 一誠はうまい反撃をしたと思っただろうけど、簡単にいなされてしまった。というか今回の助っ人の殆どが『禍の団(カオス・ブリゲード)』関係の人達なんだけどね。

 理詰めで説得するフリードだが、一誠は全く納得してない。全くの逆効果と言ってもいいだろう。

 

「実はヴァーリチームが裏切り者扱いされた経緯(いきさつ)は知ってるんだ。そもそもそいつらがそっちに加担した時点では『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属していたじゃないか」

 

 フリードの言う通り、ヴァーリさんだって『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属していた状態で何度もこちらと好意的な接触をしていたし、裏切り者扱いされたのも三大勢力と協力を結んだ後だ。

 

「だけどヴァーリはオーフィスを助ける為にやったんだ!」

「俺だってお前らを助ける為にわざわざこんな危険地帯に駆けつけたんだぜ? 他ならぬお前らのピンチを救うために」

 

 懸命に自分は敵ではなく味方だと訴えかけるが、説得を試みる度に信用を失ってるように見える。てか間違いなくそうだ。

 過度にフリードを信用しようとしない一誠だが、自分の正当性を押し売りするような言い方にも問題があると思う。ヴィロットさんと話してる時はそんな感じじゃなかったのに。

 

「そんな邪険に扱わないでくれよ。それに聞いてないのか? 次元の狭間でアーシアを助けたのは俺だぞ」

 

 そういえばディオドラの時にアーシアさんを助けたのはフリードだって話を聞いたような。仲間の命を助けられたとあっては一誠も今までのように邪険にしずらいようで苦々しい表情を浮かべる。

 

「自分が今まで何をしたかわかってるのかよ」

 

 それでも絞り出すように不信を口にする。

 

「ああわかってるさ。俺が今までやってきたことはあまりにも罪深過ぎた」

 

 睨みつける一誠に対しフリードは真摯に答えた。先程までとは一変しおちゃらけた雰囲気など消え去った。

 

「人間のアーシア・アルジェントの殺害に協力し、コカビエルの際にも君たちの仲間と町の人々全員の命を奪おうとした。ディオドラの時にも君たちを傷つけようとした。それ以外にも俺は多くの悪行を重ね、多くの尊い命を奪ってきた。それらは決して許されることではない」

 

 懺悔するように自らの罪を説いた。その姿は自らの罪に許しを請うのではなく、ただ罪を認め裁きを待つ。僕にはそう見えた。

 

「なるほど、さしずめ罪滅ぼしというわけか」

「これは償いなんかじゃない。俺はやるべきことの為にここにいるんだ」

 

 ヴァーリさんが言うも、フリードはそれを否定した。

 

「最後にもう一度だけ言っておく。俺はお前らの敵じゃないし、お前らは俺の敵じゃない」

 

 それだけ言ってフリードは背を向け出口へと歩いていく。しかし一誠への説明は出来ても説得はこれっぽちも出来ていない。これではここに来た意味が殆ど無い。

 ドアに手をかけたところで手を止め、今度は聞こえるくらい大きくため息を吐いた。

 

「俺はお前らの味方ってわけじゃないが、お前らを助けようとしてる奴らの味方だ」

 

 そう言って今度こそドアを開けて出ていった。僕もさらに居心地の悪くなった部屋からいそいそと出て行く。

 僕らは部屋の外の少し進んだところで合流し、元々いた部屋へと戻った。

 

「本当に正気に戻ってます……?」

 

 さっきのフリードは前半は昔のフリードっぽかった。道すがらそのことを思い切って訊いてみた。

 

「ん~ぶっちゃけ自信ないな。本来俺はこんな性格だったのか自分でもわからない」

 

 見た感じ本当に自信がなさそうだ。

 

「だが少なくても記憶と信仰は取り戻してる。それだけは間違いない」

 

 先程とは違い自信を持ってそこだけは間違いないと断言する。ヴィロットさんとも親しげに話していたしそれは間違いないだろう。

 深刻な顔で自分の胸をグッと掴む。

 

「正気ではなかったが覚えている。自分が一体何をしていたのか。喜々として行ってきた全ての感触が残っている。ドロリとした気持ち悪いものが体中に染み付くこの感覚……」

 

 フリードの顔色がどんどん悪くなっていく。そして苦しそうに大きく咳き込み、少量だが血を吐いた。もしかしてフリードの体と心はもう限界に近いのではないだろうか。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

 

 ホテルの一室の窓から外を観てみると、漆黒のローブを着込んだ不気味な雰囲気の集団が多数見上げていた。フードを深く被っていて顔は見えないが、眼光だけはギラギラと輝かせている。この殺意と敵意は僕でなくても感じ取れるだろう。

 手には髑髏やモンスターの手などの装飾が施された大鎌が握られている。お世辞にも趣味が良いとは言えない、いかにも悪役って感じの武器だ。

 ―――死神(グリム・リッパー)。それを率いる存在は冥府を司つかさどる骸骨神ハーデス。そんな人物が英雄派に力を貸し、僕達に襲い掛かろうとこの疑似空間にやって来た。

 ハーデスの行動は完全な越権行為。状況的にはロキ様の時と似ている。……一体どんな理由でこんなことをしたのだろうか。それを教えてくれる人はこの場にいない。

 それを考えるのは後、このフィールドをどうにか脱出するのが優先だ。

 ゲオルクによって創られた疑似空間を抜け出すには3つの方法。アザゼルがその説明を始める。

 

「3つの方法とは、1つ、術者―――ゲオルクが自ら空間を解除する事。これは京都での戦闘が例だ。2つ、強制的に出入りする。これはルフェイがやってのけた事だ。さっきも説明したが、こいつは相当な術者でなければ不可能。ルフェイの場合は現状1度が限界で連れて行けるメンバーも限られる。ルフェイの術での3度目の出入りは無理だ。―――ゲオルクが結界を更に強固にするだろうからな」

 

 2つ目の案は一部採用されることとなっており、イリナさんとその護衛にゼノヴィアさんが先に脱出し助けを呼びに行く。

 

「最後は単純明快。術者を倒すか、この結界を支えている中心点を破壊する事だ。アーシアが捕らえられた時にイッセーが結界装置を破壊したが、あの様に結界の中心となっている装置を壊す」

 

 結界の核とも言える部分が破壊されれば、当然ながら空間は崩壊してしまう。問題はその装置が何処にあるか。

 その装置についてはルフェイさんと黒歌さんが魔法や仙術で探りを入れている。部屋

の床に紙に描いたホテルの見取り図を置き、そこに駒となる物を複数置いて、外部に『目』を作り出す。

 見取り図に魔術文字を書き、謎の呪文を唱え、謎の灰を撒けば術式は完成。

 瞑目するルフェイさんが手を見取り図に向けると、駒がカタカタと動き出し、魔術文字が光り、灰が独りでに動いて見知らぬ紋様を描いていく。

 

「駐車場に1つ、ホテルの屋上に1つ、ホテル内部の2階ホール会場にも1つ、計3つの結界装置が確認出来ました。それらは蛇……いえ、尾を口にくわえたウロボロスの形の像です」

 

 ルフェイさんが紙に描いた像のデザインをアザゼルは受け取る。円を描くように尾を喰らう蛇の像。

 報告を受けたアザゼル総督が言う。

 

「壊すべき結界装置はウロボロスの像か。しかも3つ。相当大掛かりだな。この空間はオーフィスを留める為だけに作られた特別な専用フィールドって事だ。本来のオーフィスなら問題は無かった。力が削がれたオーフィスを封じる前提で結界空間を作ったんだろうな。それでルフェイ、装置の首尾はどうだ? 死神の数はさっき調べた時より増えているか?」

「はい、総督。どの結界装置にも死神の方々が集結してます。と言うか、駐車場が1番敵が多いです。曹操様はこの空間から既に離れてますが、代わりにジークフリート様がいらっしゃってますし、ゲオルク様も当然駐車場にいらっしゃいますね」

「駐車場にある装置は、3つある中で1番の機能を発揮しているんだろう。それを直ぐに壊せれば良いんだが……」

 

 リアスさんがアザゼル総督に言う。

 

「アザゼル、先程話した作戦通りに行きましょう」

 

 リアスさんの提案にアザゼルも頷く。

 

「ああ、ったく、えらい方法を考えるもんだぜ、お前もよ。イッセー、お前の惚れた女は誰よりもお前を理解しているようだぜ?」

 

 アザゼル総督が苦笑しながらそう言う。リアスさんも何故か自信満々の様子だった。

 正直あまりいい予感はしないが、一体どんな作戦なのだろうか?

 さり気なくヴィロットさんに作戦内容を訊いてみた。

 

「ただの脳筋ぶっぱよ。まあ下手な作戦立てられるよりはマシだし、好きにやらせとくことにしたわ」

 

 僕と同じく訝しげに思っていた一誠に朱乃さんが耳打ちしている。

 

「とんでもない事を考えたもんスね!」

 

 仰天した一誠がそう一言漏らす。

 詳しい作戦内容は知らないが、ヴィロットさんがこう言うからにはそういうものなのだろう。

 一誠はリアスさんに尊敬の眼差しを送るが、ヴィロットさんは既に興味なさげに別のことを考えてる様子。

 アザゼル総督が一誠の肩に手を置く。

 

「まあ、確かにすごいんだが、リアスはおまえに夢中だから思いついた作戦だぞ? ソーナの戦術とはまた違う方向だ」

 

 あー……何をするかはわからないが、どんな事をしようとしてるかはわかったかもしれない。

 

「さて、皆、集まって」

 

 リアスさんが部屋の中央に皆が集まるよう告げる。

 ほぼ全員の視線がリアスさんに集中し、自信満々な笑みを見せたリアスさんは宣言した。

 

「さあ、私の大事な眷属達。ここをさっさと突破しましょう。その作戦を今から説明するわ!」

 

 こうして脱出作戦は始まっていった。

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