無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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 なんか筆が進んで思ったよりずっと早く書けました。平成最後に間に合った……(特に意識はしてなかったですが(笑))
 原作と同じ流れの部分も設定を考慮して一部意図的に変えたりしています。


共謀な死神達の集団戦

 ホテル内、ルフェイさんの結界に覆われた階層―――その廊下の一角に一誠が立っており、横には猫耳モードの塔城さん。瞑目状態で廊下に正座している。

 その近くの部屋にルフェイさんとイリナさん、ゼノヴィアさんがおり、脱出用魔法陣の準備中だ。扉は開けっ放しの状態。

 その部屋の窓際には他の作戦メンバーが待機している。未だ体力の戻らない黒歌さんと呪いが解呪出来ていないヴァーリさんもいる。

 作戦を立てていた部屋から移動し、窓から駐車場の様子が1番広く見下ろせる部屋に集まった。

 この階層を囲む結界もそう長くは保たない。既に非常階段の所では死神が結界を壊しており、各部屋の窓辺にも死神が集結している。メンバーが集結している窓際の締め切ったカーテンの向こうでは、死神達が結界を破壊しようとしてるのを感じる。

 一誠は鎧を展開し、後はルフェイさんの魔法陣が完成次第、作戦開始。

 瞑目状態でとあるものを探っていた塔城さんが立ち上がり、天井の一角と床の一点を指し示した。

 

「……先輩、そことそこです」

「了解だ」

 

 うなずく一誠。それを確認すると塔城さんはこちらの部屋に入っていこうとするが、一誠が塔城さんの手を引いた。

 

「小猫ちゃん、黒歌は悪い奴だと思う。仙術に魅入られて力を求めているのも分かる。テロリストに身を置いているあいつが善良なわけがない。―――だが」

 

 一誠は黒歌さんの方に視線を向ける。

 

「やっぱり、小猫ちゃんのお姉さんなんだと思うよ。野良猫でイタズラ好きで悪い女だけどさ、小猫ちゃんの肉親なんだ」

「……姉さまのせいで私はツラい目に遭いました」

 

 どんな理由であれ、主を殺して「はぐれ悪魔」となった者に対して悪魔の世界は厳しい。それはその人物の関係者、家族にも及ぶ。恐らくだが、塔城さんは「はぐれ悪魔」となった黒歌さんの罪を唯一の肉親として一身に浴びたのだろう。……そりゃ辛かったに決まっている。心を壊し不安定にさせてしまうかもしれない。いや、実際そうなのだろう。

 

「……姉さまを恨んでいます。……嫌いです。―――でも、私をさっき助けてくれました」

 

 塔城さんは強い気持ちがこもった言葉で一誠に言った。

 

「今だけは信じようと思います。少なくともここを抜け出るまでは」

 

 どうやら塔城さんは既に自分で答えを見つけていたようだ。言葉で通じ合えなくとも、家族の絆は深く強い。まさに血は水よりも濃い。―――だからこそ神無さんはスッキリと断ち切れたのだろう。

 

「それで十分だ。もし、これからも黒歌から何か変な事されそうになったら俺に言ってくれ。懲らしめてやるから」

 

 そう言って塔城さんの頭を撫でると、塔城さんが一誠に抱きつく。

 

「……先輩のお陰で強くなれたんです。先輩のお陰でギャーくんも強くなれた。だから、私も強くなろうと思って……」

「なれるさ。俺でもなれたんだ。小猫ちゃんならすぐだよ」

「……大好きです、先輩……。部長が先にいても、朱乃さんが先にいても、必ず追いかけていきます……。だから―――」

 

 塔城さんは真っ直ぐに一誠を見上げて言った。

 

「おっきくなったら、お嫁さんにしてください」

「「「「「「えっ⁉そこで逆プロポーズしちゃうの⁉」」」」」」

 

 塔城さんのプロポーズにリアスさん、アーシアさん、朱乃さん、ゼノヴィアさん、イリナさん、フリードが仰天していた。

 聞かれていたのが意外だったのか一誠はこちらに少しだけ意識を向けた。すぐそこで扉も開いてるんだから聞こえるよ。外にいるのは一誠達だけだし意識だって向ける。

 

「背と、おっぱいをおっきくしてくれると……俺は嬉しい!」

 

 一誠は一体何を言ってるんだい? まあ一誠らしいけれども。たぶん懸命に絞り出したけど、そんなことしか言えなかったってところかな。たぶんだけど気の乱れ方から大後悔してる。

 ドストレートに自分の意思を伝えた結果、塔城さんも強く頷いてくれた

 

「……わかりました。牛乳たくさん飲みます。待っててくださいね、先輩。先輩のお嫁さんになる為、姉さまに負けないお乳になってみせます」

 

 良かったね一誠、全面的に受け入れてもらえて。普通だったらセクハラで嫌われてもおかしくなかったよ。まあそこで嫌いになるような人はそもそも一誠に惚れないと思うけれどね。

 

「―――術式、組み終わりました」

 

 よくわからない逆プロポーズが終わった直後、ルフェイさんが転移魔法陣の完成を告げる。

 ルフェイさん、イリナさん、ゼノヴィアさんの足下に円形の光が走り、魔法陣が展開されていく。3人は英雄派とハーデスのことを魔王と天界に伝えるため、とっておきの転移魔法で先に出る。

 塔城さんもも窓際に移動し、作戦が開始される。

 リアスさんがうなずく。それが作戦開始の合図だ。

 一誠はトリアイナ版の『僧侶(ビショップ)』にプロモーションする。

 

「『龍牙の僧侶(ウェルス・ブラスター・ビショップ)にプロモーション!」

『Change Fang Blasto!!!』

 

 一誠は両肩に形成したキャノンの砲口をそれぞれ上下に向ける。

 塔城さんが仙術で屋上と2階ホールにいる死神の気配を察し、位置を事前に把握していた。

 一誠はこちらに向けて叫んだ。

 

「―――行きます!」

 

 リアスさんの作戦―――それはトリアイナ版『僧侶(ビショップ)』による奇襲同時砲撃。

 結界装置があるのは屋上と2階ホール会場、そして駐車場の計3ヶ所。それぞれ屋上とホールにチームを分けて装置を破壊、その後駐車場に合流すると言う作戦は時間がかかる。それに手の内も読まれやすい。

 そこで提案されたのが、それらを作戦開始と同時に破壊すると言う息もつかせぬ速攻。

 だが死神が大量にいる位置目掛けて砲撃を遠し、死神ごと装置を破壊してしまおうと言うこの作戦は単純だがかなり有効的だ。装置も破壊でき敵も一緒に減らせる。まさに一石二鳥。

 

「さあ、いこうぜ、ドライグ! 当てるべくは結界の装置とその周囲にいる死神だ! 一気にぶっ壊していくぞ!」

 

 砲身に強大なオーラが溜まっていき、左右の砲身は天井と床に向けられている。

 

「ドラゴンブラスタァァァァァァッ!」

 

 ズオオオォォォォォォォオオオオッ!

 膨大な赤いオーラが天井と床にへ一直線に発射され、砲撃がホテルを大きく揺らした。

 天井と床に大きな穴が生まれ、瞑目していたルフェイさんが告げる。

 

「屋上とホールに設置されていた結界装置が破壊されました! 周囲にいた死神の方々ごとです! これで残るは駐車場の1つだけ! ―――転移の準備も完全に整いました!」

 

 その刹那、転移魔法陣も輝きを増してルフェイさん達を光が包み込む。

 

「ゼノヴィア! イリナ! 頼むぞ!」

「イッセー! 死ぬなよ!」

「必ずこの事を天界と魔王さまに伝えてくるから!」

 

 ルフェイさん達が疑似空間から消え、脱出の方は成功したようだ。

 だが屋上と2階ホールが片付いたわけではない。確かに結界装置の周囲から死神の気配は消えた。しかし新たに別の気配を感じた。これは―――機械兵!?

 一度は完全に消えた気配の中から新たな気配が現れた。だが結界内に侵入してきたのとは違う。もしかして結界の装置が破壊されると動き出すようにプログラムされていたのか?

 

「よし! これで後はあいつらをぶっ倒して装置も破壊すれば終しまいだ! 行くぞ、お前らっ!」

『はい!』

 

 アザゼル総督が光の槍を横薙ぎして部屋の窓を破壊し、前衛のアザゼル総督、リアスさん、木場さん、朱乃さんが翼を広げて割れた窓から外に飛び出していく。

 その先には死神が群がる駐車場。鎌を持った死神の群れが空へ飛び出し、アザゼル総督達と空中戦を開始した。

 一足遅れてヴィロットさんとフリードが飛び出そうとするのに待ったをかける。

 

「気をつけてください。破壊した結界装置の場所辺りから機械兵の気配を感じました」

 

 僕がそう伝えると、リラックス状態だった僕達外部勢力側が緊張を高めた。

 

「恐らくですが、結界装置が破壊されたことで動き出したと思います。僕の予想が当たっていれば、最後の結界装置にも起動していない機械兵が待ち構えているはずです」

 

 ヴィロットさんとフリード、フョードルさんとハロルさんが互いに顔を見合わせる。

 

「敵の数は?」

「それぞれ最低2機は感知しましたが、今は1機ずつしか感知出来ません。おそらく片方が姿を消してしまっていると思います」

 

 予想では新型の重機型と姿を消せる偵察型の組み合わせ。

 

「わかったわ」

 

 ヴィロットさんは一言お礼を言って飛び出し、フリードも親指をグッと立てて続く。二人共ロキ様の時に使われた空中歩行の靴を履いてるようだ。

 他に窓際に残ったのは後衛の黒歌さん、ヴァーリさん、オーフィス、アーシアさん、そして黒歌をサポートする為の塔城さんとレイヴェルさん。

 黒歌さんは魔力で堅牢な防御壁を生み出し、それで部屋ごと後衛メンバーを守る。今の黒歌さんでも一室ぐらいなら守れるそうだ。

 部屋の周りには死神が近付いているが、部屋を覆う結界の破壊に時間が掛かると判断したのか、ホテルを飛び出してアザゼル総督達の方に向かっていった。

 

「皆さんのお怪我は私が治します!」

 

 アーシアさんはこの部屋でダメージを受けた仲間に向けて回復のオーラを飛ばす係だ。アーシアさんも成長しており、オーラで弓矢の形を作り出し、回復のオーラを矢として放てる程になっていた。

 見たところ命中精度も高く、仮に敵に回復のオーラが当たりそうになっても、仲間以外に命中しそうになると自動で霧散するように作り出したらしい。

 そういった制約以外で条件を付けるのは一朝一夕で出来ることではない。以前は出来なかったであろうことをこの短期間で習得したとなると、その手の才能に秀でるものを持っていたのだろう。

 いまだ本調子ではない黒歌の体を支える塔城さんとレイヴェルさん。2人で黒歌の体を支えていた。

 

「あら、白音。……助けてくれるの?」

「……私を助けてくれた借りを返すだけです。防御の魔法陣に集中してください。仙術でフォローしますから」

「そっちのお嬢ちゃんはどうしてにゃん?」

「私が今出来ることといったらこのくらいのことですから」

「そ。じゃあ、お言葉に甘えちゃう。……白音、今度仙術だけじゃなくて猫又流の妖術とかを教えてあげちゃおうか? ……嫌なら良いけどねん」

 

 黒歌さんが冗談半分っぽく言うが、塔城さんは真剣な面持ちで頷いていた。

 

「……いえ、教えてください。私も仲間を支える為に強くなりたいです。姉さまに頼ってでも前に進まないと―――」

 

 どうやらお姉さんとの和解とまではいかなくても、塔城さんは前に進みだそうとしているようだ。

 一方、同じく後衛であるヴァーリさんの方は。

 

禁手(バランス・ブレイカー)でなくとも―――」

 

 ドゥッ!

 手から巨大な魔力の弾を撃ち出し、宙を飛んでいた死神を数体(ほふ)る。呪いを受けていても魔力での攻撃を繰り返し、死神達を四散させていく。

 前衛で戦うヴィロットさんとフリードは積極的に死神を狩るようなことはせず、近づいてきた死神だけを迎撃し無力化している。これは実力差があまりにも大きいからこそ出来る芸当。死神にあまり集中していないようで、それよりも機械兵の襲撃に備えているのだろう。

 

「我も」

 

 オーフィスも後衛からのサポートに入ろうとする。現状最大の攻撃のオーフィスが動けば脱出は容易だが―――。

 オーフィスが手元を光らせた瞬間、けたましい快音と爆音と共に、とんでもない破壊が駐車場で巻き起こり、死神の群れだけじゃなくリアスさん達まで巻き込まれた。

 煙の中から何とか無事なリアスさん、木場さん、朱乃さんが現れる。

 オーフィスは首を傾げて自分の手を見ていた。

 

「……おかしい。加減、難しい」

 

 やっぱり力加減が出来ていないか。万全でない状態での微調整は慣れてないと難しい。それは元々の力が大きいほどに危険だ。おそらくオーフィスは力を力を削がれた経験など皆無だろう。

 巻き添えの危険性が高い攻撃をされては安心出来ず、前衛にしても力が不安定過ぎて何が起こるか分からない。今のオーフィスを戦力として数えるには不安要素が大きすぎる。

 アザゼル総督が翼を羽ばたかせて窓際に飛んできた。

 

「おい、オーフィス! お前は戦わなくて良い! その様子じゃサマエルの影響で一時的に力が上手くコントロール出来なくなっているんだろうさ! 見学してろ! お前がここで不安定に力を振るえば敵味方問わず全滅だ! 俺達で活路を切り開く!」

 

 アザゼル総督はそれだけ告げると再び戦場に戻っていき、オーフィスも頷いてその場に座り込む。力が不安定である以上、仕方無い。

 窓際に立つ一誠、再び両肩の砲身を駐車場に向け、照準を駐車場の死神達に向けた。

 

「もう一丁! ドラゴンブラスタァァァァァァッ!」

 

 砲身から放たれる赤い極大の砲撃が駐車場を大きく包み込んでいった。

 その砲撃範囲内の中を突き進む無機質な気配が―――。

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

 一誠による2度の砲撃とオーフィスの不安定な一撃で、疑似空間がバチバチと悲鳴を上げていた。

 あの強力な砲撃を受けても未だに結界が健在なのか。装置が壊れていないとしても、使い手の能力が凄まじく強力な証拠だ。

 駐車場は見る影も無く崩壊しており、足場なんて無い程にまで地が裂けていた。宙に舞う粉塵も大量だ。

 その駐車場に一誠が降りたってしまった!

 

「ダメだ一誠ッ! 戻って!」

 

 ダメだ、怪訝そうな顔で振り返りはしたが聞き入れてはいない。例え聞き入れたとしても手遅れかもしれない。粉塵が落ち着いてきたところでそれは徐々に姿を見せた。

 かなり力を入れて踏ん張って進んだような姿勢で停止しているが、その機体にはダメージらしきものはない。

 一誠はアザゼル総督達の戦闘の光景に目を向け、粉塵が舞う前方の機械兵が見えていない! 停止していた機械兵の頭部が動き、一誠の方をしっかりと見た。

 

「一誠、前ッ!!」

「えっ?」

 

 やっと僕の言葉が届いたようで前方を意識した。けれど機械兵は既に手の銃口を一誠へ向けていた。

 

「はぁッ!」

 

 窓際から飛び出したフョードルさんが鉄球を蹴り飛ばし、機械兵の体勢を大きく崩した。それにより弾道は大きく逸れ、一誠の鎧に掠っただけで済んだ。

 掠っただけの弾丸だったが、その銃撃によってほんの一部だが鎧が壊された。

 

「これの相手は私がします! 下がっていてください!」

 

 掠っただけで一部とは言え破壊された事実に機械兵のヤバさを感じ取ってくれたみたいが、機械兵は二機いる。一誠も引くに引けないはず……ん?

 粉塵が完全に落ち着き敵の全貌が見えるようになったのだが、そこには機械兵が一機だけ。おかしい、確かに二機感じたのに。

 怪訝に思った僕はもう一度細密に探知する。一体どこに行ったかと思えば、もう一機の機械兵は感じたときよりも遠くにいた。おそらくは一誠の砲撃に踏ん張れず吹き飛んでしまったのだろう。

 二機目の機械兵はこちらに向かって飛んで―――いや、こちらに突進している!?

 

「もう一機がこちらに突っ込んできます!」

 

 僕がそう言ってる間にも機械兵は凄いスピードでこちらに突撃しに来ている。まるでミサイルのように周りの死神を跳ね飛ばしてこちらに向かってきていた。

 このまま突っ込んで来ればこの階層の防御壁も間違いなく突破される。僕の炎がそれなりの強度を得るためには少し下準備が必要でその時間はない。

 

 バギィィィィィィィン!

 まるで薄い窓ガラスを突破するかのように、堅牢な防御壁ごと壁をぶち抜いて僕たちがいる階層に侵入した! このタイプとの戦闘経験は僕にはない。偵察型ですらかなり強いのに。不安に思いながらもレイヴェルさんを守るために僕は動き出したのだが。

 

「出て行げぇぇぇっ!」

 

 それより先にハルロさんが動いた。手首に付いてる神器(セイクリッド・ギア)であろう手枷から、腕を包む青い巨大な手のオーラによる張り手で機械兵を窓外へと追い出した。

 

「そっちは任せるで!」

 

 そう言い残して機械兵を追いかけハロルさんも外へ。

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ! 『大海の守護巨兵(グレートオーシャン・スピリッツ)』ッ!」

 

 ハロルさんの両腕の千切れた鎖に繋がれた実体化し浮遊する巨大な籠手。それとオーラで創られた肩から先のない巨人の上半身。その背後にいる僕達を階層ごと青い厚いバリアが包み込む。

 階層の防御壁が壊れたと見ると、アザゼル総督達の方へ向かっていた死神達がこちらに戻ってきた。だが死神達がバリアを壊そうにも(ぬか)に釘でまるで手応えがない。突っ込もうともある程度まで進めど強い浮力で押し戻され、逆らえど波に攫われるように外に排出されていく。どうやらこのバリアは水―――いや海に近い性質を持っているようだ。これなら一安心…………ッッ!?

 僕は感覚がした方向へ薄い炎を広く放った。すると炎の一部が透明な何かに当たり不自然な形になる。

 

「そこだ!」

 

 その場所に向かって今度は厚手の炎でレイヴェルさん達から引き剥がす。外に追い出そうにも僕の炎でバリアに触れるわけにはいかないので壁に叩きつける。透明化を解除し姿を表したのは、やはり偵察側の機械兵だった。

 一体いつの間に侵入されたのか。考えられる可能性は一つ、機械兵が防御壁を破壊しこの階層が無防備になった瞬間。あのスキに侵入されたか。

 機械兵の鳥のような頭部が左右に開き、中から射出口にエネルギーがチャージされる。照準から見て狙いは回復中のアーシアさんだ! 回復の要を狙っていたのか。

 

「させないッ!」

 

 機械兵の頭部へと炎を暑く、そして熱くさせ燃焼させてしまう。これで止められなかったとしてもかなり時間を稼げる。

 しかし僕では偵察型の機械兵の装甲すら突破することはできない。以前と同じ倒し方もこの状況では難しい。そこで僕は僕以外の倒し方を試すことにした。

 思い出しながら全神経を集中させる。チャンスは一度の一瞬!

 

「ここッ」

 

 バジェン! 機械兵の内部で何かが壊れる音がし、その場で停止した。僕が試したのはジルさんの内部攻撃、いわゆる鎧通しという技。それを真似て手にオーラを纏い全神経を集中させ放つ僕なりの鎧通し。この鎧通しは練習としてやったことはあったのだが、実践使用は初だったので成功してよかった。もし失敗したらもう禁手(バランス・ブレイカー)を使うつもりだった。秘密の為にレイヴェルさんを危険に晒すわけにはいかない。

 大量生産品なら製造効率を図るため構造は全く同じなはずなので、(コア)の位置も当たりがついていたのも助かった。

 辺にもう機械兵が接近していないか注意深く探ってみるが、どうやら一安心といったところか。だが油断は出来ない。さっき偵察型の機械兵を感知出来たのも攻撃態勢に入って無機質な殺気を感じたからだ。注意だけは怠ってはならない。

 機械兵によって崩壊させられかけたが、外の様子も見るに何とかなったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木場が神速で死神を斬り伏せ、アザゼルは巨大な光の槍で大勢の相手を一気に消し去る。

 

「雷光よ!」

 

 朱乃は指先から膨大な量の雷光を生み出して、死神の大群を一網打尽。

 

「消し飛びなさい!」

 

 リアスも巨大な滅びの弾を幾重にも撃ち出し、風景ごと死神の群れを消滅させていく。彼女達の能力はこの様な集団戦だと遺憾無く威力を発揮される。広範囲に大きく効果を出すので、大勢の格下相手には一点突破されない限り相当な戦果は約束する。

 下級の死神は下手な中級悪魔よりも強いが、リアス眷属は全員そのランクの相手を余裕で倒せる程の強さがある。

 リアスと朱乃が一誠の近くに飛び降りる。

 

「イッセー! 譲渡でパワーを引き上げてちょうだい! 一気に消し飛ばすわ!」

「同じく! お願いしますわ!」

「了解!」

 

 一誠はドラゴンの力を高めて二人の肩に手を置く。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼』

『Transfer‼』

 

 パワーが譲渡され、リアスと朱乃のオーラが大きく膨れ上がった。

 2人は空高く飛び上がり、死神の大群に極大な滅びの一撃と雷光を解き放った。疑似空間の上空を覆い尽くす程の滅びの渦と雷光の輝きが広がる。それはもはや二人だけで死神の蹂躙できそうな程に。

 元々のスペックが並の悪魔と比べ高く、力の譲渡だけでここまでの規模となる。

 だがトリアイナ版『僧侶(ビショップ)』による砲撃2発に、二人に譲渡までしたことによって一誠自身のスタミナはかなり消費されていた。

 

「やあ、久しいね。赤龍帝」

 

 前方から一誠に話し掛けてくる者が。魔剣を数多く帯剣した白髪の優男―――。

 

「よー、英雄さん。ジークルフィーとだっけ? お前が相手をするのか?」

 

 一誠そう言うとジークフリートは肩を竦すくめた。

 

「それは楽しいね。今のキミ達なら僕と良い勝負も出来るだろう。―――けど、先にこちらの方々の相手をして欲しいな」

 

 音も無くジークフリートの周囲に死神の群れが集まってくる。リアス達が相手をしている死神に比べるとローブと鎌の装飾が凝っており、殺気も強い。

 

「死神か。鎌に当たったらヤバいんだよな。ま、とりあえず、当たらずにいきますか」

 

 一誠はそれだけ確認して迫り来る死神達と対峙した。大きく振るわれる鎌を最小限の動きで避け、ドラゴンショットを撃ち込む。死神は一撃で霧散していく。

 数を増やし襲いかかってくる死神達だが、拳と蹴りのカウンターで楽々と倒されていく。

 一誠の戦闘を見てジークフリートは大きく関心していた。

 

「ほ―――っ! 赤龍帝の相手は中級クラスの死神なのに!」

 

 一誠達が最近まで対峙して来た相手はどれも中級クラスの死神以上の強者。それらく比べるとどうしても見劣りしてしまう。

 

「驚いたな。その通常の禁手(バランス・ブレイカー)でもそこまで強いなんてね」

 

「曹操には全く通じなかったけどな」

 

 一誠の言葉にジークフリートは苦笑する

 

「彼はまたスペシャルだからさ。気にしないほうがいい。今のキミでも十分過ぎる程の強者だよ」

 

 ジークフリートから賛辞が送られる。

 この脱出作戦が始まる前、一誠は「俺が曹操に勝つにはどうしたら良いでしょうか?」とアザゼルに訊いていた。一誠の力と神器(セイクリッド・ギア)の事をよく理解していると思っているからこそ、アザゼルに訊いてみた。

 

『……今のお前はある意味で曹操よりも強いさ。攻撃が当たればの話だが。……だが、まるで当たる気がしないんだろう?そうだな……奴専用の必殺技でも作って初見で葬るのが1番だろうな。無論、あのバカげた技量を超えられるだけの技ならな』

 

 しかしヴァーリですら強敵と賞賛する曹操を倒せるだけの技、それを逆立ちしても到底思い付きそうにない。そう考える一誠。なぜ自分を狙う敵は、こんなにアホみたいに強い奴ばかりなのかと。―――少し前までただの高校生だった一誠には泣きたくなるような状況。

 

「だから言ったろ? お前は現時点でも相当強いってな」

 

 そう言いながら一誠のもとにアザゼルが下りてくる。

 

「サイラオーグや曹操と戦っていりゃ、このぐらいの死神じゃ束になってもお前の相手にはならないだろうよ。ま、俺にとっても同じだ」

 

 自信満々に自分を指差すアザゼル。

 

≪死神を舐めてもらっては困ります≫

 

 突如駐車場に響き渡る謎の声。

 不穏な気配を感じて、そちらに視線を送れば―――空間に生じた歪みから何かが現れようとしていた。

 歪みの中心から姿を現したのは、装飾が施されたローブに身を包み、道化師の様な仮面を着けた死神らしき者。ドス黒い刀身の鎌を携たずさえ、明らかに他の死神よりも高位の存在だと認識出来る。

 アザゼルがその者を見て驚愕する。

 

「貴様は……!」

≪初めまして、堕天使の総督殿。私はハーデスさまに仕える死神の1人―――プルートと申します≫

「……ッ! 最上級死神のプルートか……ッ! 伝説にも残る死神を寄越すなんてハーデスの骸骨オヤジもやってくれるもんだな!」

≪あなた方はテロリストの首領オーフィスと結託して、同盟勢力との連携を陰から崩そうとしました。それは万死に値します。同盟を訴えたあなたがこの様な事をするとは≫

 

 困惑する一誠、ブチギレるアザゼル。

 

「……なるほど、今回はそう言う事にするつもりか。そう言う理由をでっち上げて俺達を消す気か! その為にテロリストどもと戦っていた俺達に襲い掛かったと! どこまで話が済んでるんだ⁉ この道化師どもが!」

≪いずれそんな理由付けもいらなくなりますが、今回は一応の理由を立てさせて頂いただけです。―――さて、私は悪魔や堕天使に(おく)れを取るほど弱くはないですよ≫

「と言うよりもお前ら、単に俺達に嫌がらせしたいだけだろう⁉」

≪ええ、そうとも言いますね。死神にとって悪魔も堕天使も目障りですので≫

「―――ッッ!舐めてくれるもんだなッ!」

≪舐めてはおりません。真剣です。偽者と言う事になったオーフィスをいただきます≫

 

 そう言った直後に最上級死神プルートの姿が消え去り、金属音が聞こえてくる。アザゼルは人工神器(セイクリッド・ギア)の槍で死神の鎌を受け止めていた。

 

「……さっき曹操の野郎にやられたばかりで人工神器(セイクリッド・ギア)も回復しきってないが、出し渋りは危険を伴ともなうな! ファーブニル! もう少し踏ん張ってもらうぞ!」

 

 アザゼルは槍から黄金のオーラを発生させて、素早く全身鎧全身鎧(プレート・アーマー)を装着。12枚の黒い翼を展開させ、プルートを空中に押し上げて飛び出していった。

 駐車場の上空で派手に剣戟を始める両者。プルートの動きはアザゼルに負けず劣らずの速度で、漆黒の像が幾重にも残る程だった。

 

「先生!」

「イッセー、来るな! こいつの相手は俺がする!」

 

 そう言うなり、アザゼルはプルートとの空中戦を継続。激突する度に宙が大きく震える。

 

「さて、キミ達の相手は僕じゃないとダメなんだろうね」

 

 今度はジークフリートがそう言う。

 既に龍の腕が4本生えており、自前の腕と合わせた6本の腕に魔剣を握っていた。ジークフリートの神器(セイクリッド・ギア)能力は腕の本数分の倍加。つまり4回の倍加を行おこなう事が可能。

 身構える一誠だが、そこに木場が現れた。一誠の隣に来ると、一言告げる

 

「悪いね、イッセーくん、。―――彼は僕がやる」

 

 木場がハッキリと敵意を向けることは珍しく、目線を真っ直ぐとジークフリートに向けていた。ジークフリートは木場の登場と口上に苦笑した。

 

「木場祐斗か。新しい能力を得たそうじゃないか」

「京都であなたに圧倒されたのが個人的に許せなかったもので。赤龍帝を相手に修行を重ねたんだ」

「それは面白い」

 

 木場は手元に聖魔剣を新たに作り出し、ジークフリートに構える。ジークフリートも6本の魔剣を木場に向けた。

 木場が瞬時にその場から消え去り、金属音が前方から聞こえてくる。ジークフリートが剣を動かす先に火花が生まれていた。

 高速で繰り出す祐斗の剣戟をジークフリートは最小の動きで捌さばいている。

 木場の姿はもはや視認すら出来ない程速いが、以前の戦いではジークフリートに全く届かなかった。それもゼノヴィアと2人がかりで。

 何か秘策でもあるのか、と心配げに見守っていた一誠だが、ジークフリーとの衣服に傷が生まれていた。僅かだが、木場の剣戟がジークフリートに届きつつある。

 しかし、ジークフリートはまだ余裕の笑みを浮かべていた。

 

「なるほど。以前よりも速度と技量が上がっているね。けれど、キミの剣は僕に切っ先が触れる程度でしかないだろう」」

 

 そう言いながらジークフリートは頬を掠りそうになった剣戟を避ける。以前よりも攻撃は通じているが、その剣はまだ届かないようだ。

 ジークフリートの魔剣が光る

 

「ノートゥング! ディルヴィング!」

 

 魔剣の1本を横に薙ぐと剣戟と共に空間に大きな裂け目が生まれ、更に他の魔剣を振り下ろすと地響きと共に大きなクレーターが作り出される。

 ノートゥングは切れ味重視、ディルヴィングは破壊力重視の魔剣。

 

「次はこれでどうかな! バルムンク!」

 

 ドリル状の莫大なオーラを纏った魔剣バルムンクを木場にむけて突き出すと―――剣から放たれた禍々しい渦巻きが空間を大きく削りながら襲い掛かっていく。

 木場は得物を聖剣にチェンジすると素早く龍騎士団を生み出し、それらの半分を盾にした。強大な渦巻きのオーラによって、龍騎士団は無惨にも四散していく。

 残った半数がジークフリートに高速で斬りかかっていく。

 

「ハッ! ダインスレイブ!」

 

 ジークフリートが魔剣ダインスレイブを横に薙ぐと地面から巨大な氷の柱が木場に向かって次々と発生し、龍騎士団を貫いて凍らせていく。儚はかない音を立てて氷と共に龍騎士団は散り逝く。

 残りの龍騎士団がジークフリートに斬りかかるが、ジークフリートは木場の創った龍騎士団の弱点を察したのか―――龍騎士団の剣戟を体捌きだけでやり過ごす。

 

「その新しい禁手(バランス・ブレイカー)の弱点は少しの手合いだけで理解できた。―――キミの能力を龍騎士達に反映出来るんだね? けれど、技術はまだ反映出来ていない。速度だけの騎士団ではこの僕に通じるわけもない!」

 

 ジークフリートが最後の1体を軽く受け流そうとしたその時―――ラスト1体の龍騎士は今までの龍騎士とは違い、軽やかな動きを見せてジークフリートの龍の腕を斬り落とそうと剣をを振り下ろし―――龍の腕一本に深くはない傷を与えた。

 傷を負ったジークフリードの顔が苦痛に歪む。

 

「危なかった……! もう少しで腕を1本斬り落とされるところだった。素直に認めるよ、今のは驚かされた。キミも赤龍帝と同じく十分過ぎる程の強者だ」

 

 惜しみなく賛辞を送るジークフリート。

 剣を弾かれたことにより龍騎士は兜が外れ―――そこには祐斗の姿が。

 少し離れた位置で龍騎士団に指示を飛ばしている木場だが……そちらの方は姿が徐々にぼやけていき、遂には消えていった。

 

「久々の感覚だった。魔力で作り出した幻術か。本物は龍騎士団の鎧を身に纏い、騎士団に紛れ込んで油断を誘ったのか。龍騎士団を盾にした時に紛れ込んだのか?」

「……ええ。そして、あなたが僕の龍騎士団の弱点を把握して、油断するのを待った。案の定、あなたは僕の能力の弱点を見つけ、油断してくれた。―――相手の弱点を探るのが英雄派の戦い方でしょうから。それを逆手に取ろうとしたのですが」

 

 ジークフリートの質問に木場は白状した。この手のだまし討は二度は通じない。特に所見で見破るような強者相手にはなおさら。

 土壇場で自分の能力の弱点を逆に利用した木場は内心失敗を悔しんでいる。

 木場の言葉にジークフリートは悔しそうに歯噛みしていた

 ジークフリートは回避しきれなかった自分の過失に憤慨している様子だったが、それ以上に驚いてもいる

 

「それにこのダメージ……キミは龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力を得たのか!」

 

 ジークフリートの言葉に一誠も驚き、木場が手に持つ聖剣を前に突き出して言う。

 

「ええ。―――『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖剣』、あなたの神器(セイクリッド・ギア)が龍―――ドラゴンを冠する以上、例外無くこれには抗あらがえない」

「……龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の魔剣、聖剣は神器(セイクリッド・ギア)で創り出すのが1番困難だと言われていたんだけどね。発現してしまったのか。大した才能だ」

「元々龍殺し(ドラゴンスレイヤー)についてはイッセーくんが再び暴走した時用の止める手段の1つとしてディオドラ・アスタロト戦後すぐにアザゼル先生から打診されていたんだ。龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖剣、または魔剣をね。勿論、龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖魔剣にも出来る」

 

 木場は苦笑する。

 

「けれど、その後イッセーくんが『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』をやめて、暴走しない道を選ぼうと模索していたから、僕は龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖魔剣の修行を中断していた。でも、あなたに敗北した後、再び発現を目指したんだ」

 

 木場の言葉にジークフリートは悔しそうに歯噛みしていた。とっさに受け止めたとはいえ、虚を突かれたのが屈辱だった。

 

「さすがね」

 

 いつの間にか一誠の近くに下りてきたリアス。そのまま言葉を続ける

 

「イッセー、祐斗と毎回トレーニングしているでしょう?」

「ああ、そうだけど」

「……私はそれが凄いと思うの。あなたとそこまで付き合える祐斗の実力に感服するわ。今のあなたは相当な強さを持っている。全力を出し切れば、獅子の神滅具(ロンギヌス)と同化したあのサイラオーグと戦える程よ。そのあなたと毎回トレーニングに付き合える祐斗をどう思う?」

「生身で俺に付き合える時点であいつもバケモノですよ」

 

 木場は弱点とされていた防御力を高める事をほぼ捨て、「当たらなければ良い」と言う持論を極めようとしていた。そのため、一誠とのトレーニングでは防御を捨て回避に専念する方向で続けている。

 

「イッセーのパワーの陰に隠れてしまうけれど、あの子も相当な手練れに育っているわ。私から見ればあなたと祐斗は若手悪魔を代表できる程の実力者よ」

 

 自慢の拳属を誇るようにリアスは笑んでいた。

 

「赤龍帝との修行が僕をどこまでも高まらせてくれる。一度、彼らとのトレーニングをオススメするよ。―――ただし、毎回死ぬ覚悟を持って臨まないといけないけどね。イッセーくんは手加減なんてしてくれないから」

 

 木場にそう言われたジークフリートが息を吐く。

 

「……そうだね。それも考えよう。彼らは手加減ばかりだったからね。けれど、まずはこれらを退けてからだよ」

 

 ジークフリートの周囲に霧が発生し、そこから死神の大群が再び姿を現す。




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