無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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 一誠がグイグイ前に来るせいで誇銅が全く前に出せない(汗) 立場上誇銅は一誠と同じ前線には出れないし、だからと言って一誠を下げさせる展開も不自然な故にできない。―――誇銅の活躍を期待してくださってる読者の皆様には申し訳ないです。
 チャンスがあれば積極的に出そうと思ってるのでもう少々お待ち下さい。
 もう少し話が進めば、一誠を下げさせる展開も自然に出来るかもしれない。(他強豪勢力や手に負えない敵の初手出現があれば自然と一誠を下げさせられる)


不賛な現状の反骨者

 ゲオルクが『絶霧(ディメンション・ロスト)』を介して外部から死神を召喚したことで、駐車場を埋め尽くす勢いで出てくる死神達。

「上手く鎌を避けきったキミ達だが、さすがにこの物量をぶつければ鎌も当たるよね」

 

 ジークフリートは愉快そうに笑んでいた。質より量の物量作戦、何体やられても鎌さえ通れば良いと言う態勢で挑む。

 

「……あらあら、これはちょっと大変ですわね」

 

 空中で雷光を落としていた朱乃も一誠達のもとに合流してきた。一誠、リアス、朱乃、木場は1ヶ所に固まって構える。

 死神の数は軽く見積もっても1000体以上。駐車場、ホテルの上下、空中にも死神が蔓延(はびこ)っている。アザゼルとプルートの一騎打ちだけ別世界の如く誰も近づかない。

 流石にこの数で一気に斬りかかられたら避けられない。特に一誠は先の砲撃によってオーラを消費し過ぎているため致命傷になりやすい。

 次の一手に苦慮していると―――。

 

『やあ、兵藤一誠。ピンチのようだね』

『それは大変だ』

『死神はとても厄介だ』

 

一誠に話しかけてくる謎の声。それは神器(セイクリッド・ギア)深奥(しんおう)に眠る歴代所有者のものだった。

 一誠は目を閉じて深奥に意識を向ける。

 歴代の所有者達は何故かタキシードにワイングラスと言う紳士の出で立ちで椅子に座っていた。歴代最強のアランだけは以前通り、いびきをかいて寝ていた。

 その内の1人が空っぽのグラスを揺らしながら紳士的な口調で話す。

 

『ふふふ、こんなピンチを抜け出すにはあれしか無いんじゃないかな?』

『そうさ!あれしかない!』

 

『あれだろう!』

「あれって、まさか『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』とかまた言うんじゃないでしょうね⁉」

 

 危惧した一誠の意見に歴代の所有者達はチッチッチッと指を横に振った。

 

『違う!』

『そう、私達は「覇龍ジャガーノート・ドライブ」を卒業したのだ!』

『もっと素晴らしいものをキミ達に教えてもらったからね。―――そう』

『『『『『『乳力(にゅう)パワーをッ!』』』』』』

『「う、うん……? 何を言うとるんだぁぁぁぁぁぁっ⁉ 何を言い出すかと思えば乳力(にゅう)パワー⁉ それは先生が提唱したとんでもないものでして、実証された力とは違うんですよ⁉」』

 

 紳士的な格好をした歴代の所有者に一誠が猛抗議するものの、歴代の所有者達は聞く耳を持たず白い世界の宙に映像を映し出した。そこには見覚えのある乳が―――その場景は一誠の隣にいるリアスのおっぱいだった。

 歴代の所有者の1人が宙に映し出された乳に指を差す。

 

『―――あの乳に頼ろうじゃないか』

『そうさ、あの乳は未来を守るおっぱいドラゴンの源みなもとなのだからね』

『私達はキミ達に触れて、おっぱいを嗜たしなむ紳士になれた。ふふふ、悪くない気分だ』

 

 とんでもないことを口走る歴代所有者達に嘆く一誠に、歴代の所有者達は真剣な表情で言い放った。

 

『―――スイッチ姫のステージを再び上げる時が来たようだ』

 

 その一言に一誠は言葉を失った。エロい……いやいや、エラい事になろうとしている……と。

 

「せ、先生っ! 大変な事になってる!」

「なんだ、バカ野郎!こっちは死神さまと超絶バトル中だ、くそったれ! って、この会話! タンニーンから聞いた話と被るんだが⁉ まさか、あれか⁉ あれなのか⁉」

 

 死神プルートの鎌を掻い潜くぐりながら仰天しているアザゼルに一誠は言った。

 

「歴代の先輩達が部長のおっぱいを次の段階に進めようって言ってきてるんだ!」

 

 それを聞いたアザゼルは狂喜乱舞した。

 

「きたぁぁぁぁぁっ!よぉぉぉぉぉしっ! 今すぐやれ! つつけ! 揉め! 触れっ! しゃぶれっ! ふはははははははっ!おい、英雄と死神ども! うちのおっぱい夫婦が噂の乳力を発揮するぞ! グレモリー眷属必勝のパターンだッ!」

 

 一誠を置いてきぼりに、敵を煽り始めるアザゼル。

 

「…………まさか、そんなバカな……」

 

 なぜか戦慄しだすジークフリート。

 

『いいか、後輩よ。あの乳に向けて譲渡の力を使う時が来たのだよ』

 

 再び一誠の脳内に聞こえてくる歴代所有者の声。

 

「じょ、譲渡の力……? ギフトを部長のお乳に使えと⁉」

『ああ、そうだよ。キミ達はあのお乳にギフトを使ったらどうなるか、ずっと疑問だった筈だよ。―――それが今解明されるんだ』

 

 リアスのおっぱいにギフト。一誠は以前から、リアスのおっぱいに赤龍帝の力を譲渡したらどうなるか疑問に思っていた。

 大きさを増すのか、美しさが増すのか、それとも弾力が増すのか、それらをいつか必ず解明したいと思っていた。

 それをやってもいいとなると、一誠はリアスに確認を取った。

 

「あ、あの、聞いて欲しいことがあります!」

「何? 今更何が来ても驚かないわ」

 

 リアスは一誠の要求に覚悟した。

 一誠は生唾を飲み込んだ後に告げる。

 

「……そのおっぱいに赤龍帝のパワーを譲渡していいですか?」

「―――っ」

 

 一誠の告白に一瞬言葉を失うリアス。その光景は京都の時と同じ。少し考えた後にリアスは力強く言った。

 

「やっぱり、分からないわ。京都でもよく分からなかったし、今も正直理解が出来ない。―――けれど、分かったわ! 私の胸に譲渡してみせてちょうだい!」

 

 普通ならこんな危機的状況で、こんな頭のおかしい要求など拒否するもの。だがリアスは一誠を信じ、(いさぎよ)く覚悟を決めた。

 一誠は鎧の中で号泣し、籠手に力を込めた。

 

「いくぜ、ブーステッドギア! リアスのお乳に力を流せぇぇぇぇぇっ!」

 

 手の部分だけ籠手を消し、両手をワシワシとさせて、一気にリアスの胸に触れた。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼』

『Transfer‼』

「いやぁぁんっ!」

 

 赤龍帝の譲渡にリアスが鳴いた。その刹那―――リアスの胸が紅いオーラを発し始めた

 

『BustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBust‼』

 

 一誠の宝玉から聞き覚えの無い音声が鳴り響く。

 

「乳が光っている!」

 

 それを確認した直後、リアスの胸から一直線に放たれた紅い閃光が一誠を包み込んだ。それはアーシアの回復のオーラに似た光。

 温かな光に包まれた一誠に変化が訪れる。

 

「これは―――オーラが回復していく!」

 

 先程の連続砲撃で消費されたオーラが回復していき、一誠の全身にパワーが(みなぎ)っていく。

 その光景を見ていたアザゼルが叫んだ

 

「第3フェーズだッ! リアス! お前はッ! お前の乳は第3フェーズに入ったぞ! 乳力(にゅう)パワーだ! また1つ俺が唱える乳力の実在証明の証拠が見つかったぜ!」

 

 阿呆な発言をするアザゼルをさて置き、一誠は再び砲撃の準備を始めた。

 

「『龍牙の僧侶(ウェルス・ブラスター・ビショップ)』にプロモーション!」

『Change Fang Blasto!!!』

 

 一誠はトリアイナ『僧侶(ビショップ)』に昇格し、死神の大群に照準を合わせる。

 

「いっけぇぇぇえええっ!」

 

 砲身から放たれる莫大なオーラの砲撃が死神達を消滅させていった。

 今の一撃で死神軍団の三分の一が消えたが、またもやオーラを消費しきってしまった。

 ところが―――リアスの胸から再び紅い閃光が一直線に放たれ、一誠を包み込む。先程と同じくオーラが即座に回復される。

 

『BustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBust‼』

 

 紅いオーラを受けて宝玉のテンションも上がっていた。

 その光景を見ていたジークフリートが叫ぶ。

 

「マズいッ! あの胸を放置しておくと危険だ! 召喚に応じる胸、赤龍帝のオーラを回復させる胸、このままでは次にどうなるか分かったものではない! 真に恐ろしいのは赤龍帝でもオーフィスでもなく、リアス・グレモリーの胸かもしれない。赤龍帝、リアス・グレモリー、この2人が揃うと奇跡レベルの現象が何度でも発現すると言う事か……! その中心となるのが―――あの胸だ!」

 

 真剣な表情で馬鹿げた考察を叫ぶジークフリート。

 

「………」

 

 リアスは恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。

 空中でプルートと戦うアザゼルも叫ぶ。

 

「さしずめ『紅髪の魔乳姫(クリムゾン・バスト・プリンセス)』と言うべきか! 一言で表すなら『おっぱいビーム』! または『おっぱいバッテリー』か! とんでもないバカップルだな、おまえら!」

 

 案外余裕ある感じで変な名称を付けていく。

 

「……そっか、私、遂に『ビーム』で『バッテリー』なのね」

 

 もはやリアスも諦めムードになっていた。

 

「あの2人を止めるんだッ!」

 

 そう叫ぶジークフリートだが、一誠は構う事無くドラゴンブラスターを撃ち続けた。死神を一気に吹き飛ばし、オーラが尽きればリアスの胸の光で回復させていく。

 

『BustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBust‼』

 

 胸から紅い閃光を放ちながらリアスが言う。

 

「イッセー……、私、何だかもう色々と諦めたわ」

「―――ッ! ど、どういうことですか?」

 

 リアスは首を振りながら悟りを開いた様な表情で続けた。

 

「いえ、新たな決意表明をした方が良いわね。―――私はあなたが強くなるのなら、この胸を強化オプションにしても良いわ」

「そ、そんな……俺は貴方のこと、そんな風に思ったことなんて……ッ!」

 

 もはやどう言い逃れしようとも、そう思ってるとしか思えない扱い。実際、一誠自身も少しそう思い始めていた。

 リアスは微笑して頷く。

 

「ええ、分かってる。―――でも、私の胸はそれを選んでしまった。ふふふ、きっとあなたを助けたい私の心中を察して何かが起こってしまったのかもしれないわね」

 

 その時、一誠の視界に信じられない光景が映り込んだ。

 ―――リアスの胸が小さくなっていた―――

 

「あ、あああああああっ! む、胸が! おっぱいが縮んでいく⁉」

 

 一誠は涙を流し泣き叫んだ。もはや一誠の頭の中にはおっぱいが縮んでいく悲しみ以外ない。―――この状況の他の全てを差し置いて。

 

「イッセーにオーラを送ると同時にサイズが落ちていくのかしら……? けれど、まだこのサイズならオーラは送れる!」

 

 一誠は砲撃を一時中断し、号泣しながら首を横に振った。

 

「やめてください! このままじゃ、そのおっぱいがッ! 俺の大好きなおっぱいが無くなってしまう!」

「一時的なものかもしれないわ。一晩眠ればきっと元のサイズに戻っている筈よ!」

「それでも俺は貴方のおっぱいが縮んでいく姿なんて見たくないッ! そこまでするぐらいなら俺は……ッ!」

 

 俺は死を選ぶ! そう心の中で叫ぶ一誠。――――リアスが恥も外聞も捨て一誠の為にその胸を捧げたというのに。

 リアスは泣きながら笑顔を作った。

 

「ありがとう、イッセー。でもね、これで良いのよ! 私にとって、あなたと一緒に戦える事が嬉しい事なのだから―――。愛しているわ、イッセー!」

 

 その一言に一誠は鎧の中で涙を溢れさせた。ここまで言われた以上、一誠も覚悟を決めた。

 一誠は大声で愛する女性の名を叫ぶ。

 

「俺も愛してます、リアスッ! リアスリアスリアスッ!」

「どこまでも一緒よ! イッセー! イッセーイッセーイッセー!」

『BustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBust‼』

 

 それを機に送られてくるオーラの質量が上がる。が、その代わり……。

 

『……うへへへ、おっぱい、たのちーなぁ』

 

 遂にドライグの精神が耐えきれなかった。

 

「ドライグゥゥゥゥゥゥゥゥッ! うおおおおおおおおおおおおおおっ! 俺はッ! おっぱいドラゴンはッ! スイッチ姫の乳力と赤龍帝の力でテメェ等テロリストを吹っ飛ばしてやるぜェェェェェッ! ドライグの仇だぁぁぁぁぁッ!」

 

 完全な八つ当たりで放たれる連続砲撃により、疑似空間は崩壊しつつあった。

 

「止めろォォォォォッ! あの2人を止めるんだァァァァァッ! このままじゃ本当に乳のパワーで構成員が全滅するッ!」

 

 ジークフリートが必死に死神達に作戦を指示するが、アザゼルもグレモリー眷属に指示を送った。

 

「お前ら、全力でバカップルを救えッ! そいつらが俺達の(かなめ)だッ!」

「あの2人の邪魔はさせないよ。せっかく盛り上がっているのだから、邪魔したら悪いだろう?」

「うふふ、羨ましいわ、リアス。私も後でイッセーくんに甘えちゃおうかしら。2人の仲が燃え上がる度に浮気心も更に燃えるわね」

 

 その後も一誠とリアスによる砲撃は続いたのだが―――――。

 

(さえず)るな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドグゥゥゥゥン!

 歴代所有者がいる深奥(しんおう)の更に奥底から響く謎の声。その声と共に湧き上がる威圧により、一誠の全身が内側から爆発したかのような衝撃が走る。

 その威圧は神器(セイクリッド・ギア)を、一誠の体を突き抜けて外部まで漏れ出した。

 突然の強大過ぎる何者かによる刹那の威圧は、一瞬にフィールドを掌握し敵味方両方の一切を萎縮させた。

 

「がはっ!!」

「ッ!!? イッセー!!」

 

 内側からの衝撃により回復したオーラも消し飛び、激しいダメージにより膝から崩れ落ちる。一誠を回復させ続けていたリアスの胸の光もすっかり消えてしまった。

 一誠は先程の声の正体を確かめるべく、目を閉じて深奥に意識を向ける。

 先程まで馬鹿騒ぎしていた歴代の所有者達は床に倒れ込み気絶していた。起きているのはただ一人。

 

『誰だこいつら!? てか他の奴らは……ああ、こいつらか。なんでこんな格好してんだ?』

 

 歴代最強と謳われ、どんな時でも一人だけただ変わらず眠りこけていたアラン。先程の威圧で目を覚ましたアランは、まず周りで倒れる見慣れない人達―――様変わりした歴代の所有者達の変化に疑問を抱いた。

 

『まあどうでもいいか。まず“アイツ”の所へ行かねぇとな。こいつらが気絶してるのも“アイツ”が原因だろうし』

 

 一誠が問いかける間もなく、アランは一誠が立ち寄れない深奥の更に深部へと()ってしまった。

 動けない一誠の眼前に偵察型の機械兵が突如姿を表し、その鋭い爪を一誠へと振り下ろした。

 

「……ッ?!」

 

 先程の内側の衝撃のダメージによって回避も防御も間に合わない。

 威圧の余韻だけが残る中、真っ先に動き出した二人――――ヴィロットとフリードが一誠達の元へ駆けつける。

 先に辿り着いたフリードは一誠の前で立ち塞がり機械兵の爪をオーラで防御した肩で受け止めた。オーラでも完全に防御はできず、骨が絶たれる寸前まで爪は肉へと食い込んだ。

 反撃にあえて受け止めなかった聖剣を機械兵の喉元に突き刺すも刺さりはしなかった。だが続いて聖剣の先端へ無駄なくオーラを集中させゼロ距離から押し込むことで何とか頭部を斬り落とす。そして、丸見えとなった内部へ聖剣を突き立て、内部を(コア)ごと破壊した。

 少し遅れて到着したヴィロットはまだ余韻が抜けきっていない死神達を、大振りな一撃で全て消滅させた。

 

「大丈夫か、赤龍帝!」

 

 心配の声を掛けるフリードは顔を上げさせ一誠の無事を確かめる。

 顔を上げた一誠は物凄く驚いた表情で“何か”を見て涙を流し始めた。

 

「ああ、これぐらいキメラの俺にとっちゃ屁でもねぇよ。それに言っただろ、俺は敵じゃないって。味方として無事を確かめるのは当然だって……?」

 

 一誠の視線の方向が自分から逸れていることに気づいたフリードはその視線の先を見てみると、そこには“ぺったんこになったリアス・ブレモリーの胸”。一誠に送り続けた結果、リアスの乳は消耗され尽くし、豊満な胸は見る影も無かった。

 

「これじゃ、小猫ちゃんと変わらないじゃないか……!」

 

 小猫とリアスの胸元を交互に見比べて、一誠は号泣していた。

 

「えらく余裕そうだな! おい!」

 

 それに気づいたフリードは上げさせた一誠の横っ面を張り倒した。ヴィロットも冷ややかな横目でそれを見ていた。

 視線だけで何かを感じ取った小猫は、ホテル三十階にある後衛の部屋から一誠目掛けて何かを投げ飛ばすが、海のバリアに阻まれ威力が全く無くなった状態で外へ排出されるだけ。

 

「あれからだいぶ成長したなって思って見れば、何も成長してねぇ見てぇだな! おっぱいで奇跡を起こすって何だよ?! お前自身の成長がまるで見えてこねぇよ! そうやって大事な相棒もただの道具扱いしてるからそういうそういう目に遭うんだよ!」

 

 張り倒した一誠を再び起こしぐわんぐわんさせながら叱咤(しった)する。

 

「ドライグの精神負担をかけてるのは認めるが、決して道具扱いなんてしてない!」

「確かに赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)のことは相棒として認識している。だからこそお前は歴代の赤龍帝とは全く違った進化をすることが出来たんだ。だが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)自体は未だに道具としか思ってねぇ! 神器(セイクリッド・ギア)ってのは本来そういったものじゃねぇんだよ! それじゃ一生かかっても神器(セイクリッド・ギア)の力を引き出すことなんて出来ねぇ!」

 

 フリードは叱責兼助言のようなものをするが、一誠にはフリードが言っている意味が理解できなかった。

 一頻(ひとしき)り叱ったことでハッと我に返る。余計なことまで言ってしまったことを後悔しながら、自分の肩をキメラの能力と魔道具で治療する。

 

「いいか、他人の意思を無視した行いに協力の道はない。互いを尊重し認めあってこその共生だ。今のお前は全てが独りよがりだ」

 

 最後に一言だけそう告げた。

 ぼちぼちと威圧の余韻も消え去り、死神の大群も退けられ、残るはジークフリート、ゲオルグ、プルートのみとなっていた。

 プルートと距離を取ったアザゼルは一誠達のもとに降り立ち、同様にプルートもあちら側に降り立つ。

 

「おいイッセー、今のことは後でじっくり説明してもらうからな。さて、ジークフリート、ゲオルク、チェックメイトだな」

 

 光の槍の切っ先を彼らに向けるアザゼル。

 

「……相変わらずバカげた攻撃力だな、赤龍帝。しかもさらに進化の兆しがあると見える」

 

 そう言いながら肩で息をするゲオルク。

 駐車場の結界装置は未だ健在。小規模で強固な防御結界をゲオルクが作り出しており、先程の連続砲撃でも破壊されることはなかった。だが、守備に全力を費やしたせいでゲオルクは息切れしており、装置を覆う結界も歪みだしている。

 上位神滅具(ロンギヌス)の所有者と言えど限界はあり、このまま押し切れば突破は可能というところまで来ていた。

 ジークフリートも苦渋に満ちた表情を浮かべるが―――その時だった。

 空間にバチバチと快音が鳴り響く。見上げれば空間に歪みが生じて穴が空きつつあった。

 敵の援軍かと思われたが、ジークフリート達も(いぶか)しげな表情を浮かべていた。それは互いに想定外の乱入者。

 次元に穴を空けて侵入してきたのは軽鎧(ライト・アーマー)にマントと言う出で立ちの男が一人。見覚えのある男が一誠達とジークフリートの間に降り立つ。

 

「久しいな、赤龍帝。―――それとヴァーリ」

 

 男は一誠を睨み付け、後衛のホテル上階の窓際にいるヴァーリも睨み付けた。

 アザゼルが目を細める

 

「シャルバ……ベルゼブブ。旧魔王派のトップか」

 

 現れたのはディオドラ・アスタロトを裏で操っていた旧魔王ベルゼブブの子孫―――シャルバ・ベルゼブブだった。

 

 『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』と化した一誠に葬られたと思われていたが、その実は生き延びていた。

 ジークフリートが1歩前に出る。

 

「……シャルバ、報告は受けていたけど、まさか本当に独断で動いているとはね」

「やあ、ジークフリート。貴公らには世話になった。礼を言おう。おかげで傷も癒えた。……オーフィスの『蛇』を失い、多少パワーダウンしてしまったがね」

「それで、ここに来た理由は?」

「なーに、宣戦布告をと思ってね」

 

 大胆不敵にそう言うシャルバは醜悪な笑みを浮かべ指を鳴らす。すると、再び疑似空間に生じた裂け目から1人の少年が姿を現す。その少年は瞳が陰り、操られている様子だった。

 一誠はどこかで見たことのあるその少年の記憶を思い出す。それは京都でアンチモンスターを生み出していた、神滅具(ロンギヌス)である『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の使い手。

 ジークフリートとゲオルクが驚愕する。

 

「……レオナルド!」

「シャルバ、その子を何故ここに連れてきた? いや、なぜ貴様と一緒にいるのだ? レオナルドは別作戦に当たっていた筈だ! 連れ出してきたのか⁉」

 

 2人が面食らっている間に、シャルバの体が幽霊のように薄い蛇のようなものが巻き付く。その蛇の先から超回転しながら伸びてくる鉄球。拘束され回避できぬシャルバは、力で強引に拘束を緩め魔力でガードした。

 鉄球の攻撃は防がれたが鉄球の根本から引っ張られるように鎖が急速に縮んでいき、フョードルが急速に距離を詰める。奇襲が防がれると矢継ぎ早(やつぎばや)に追撃を行った。

 

「退魔80%―――聖主砲Верный(ヴェールヌイ)級」

 

 退魔の波動を込めた鉄球をシャルバへ蹴り出すが、またしても強大な魔力に阻まれ攻撃は届かない。その様子をフリードは(いぶか)しげに見た。

 

「シャルバ・ベルゼブブ“程度”があの攻撃を止めた……?」

 

 目の前の他愛もない結果に納得がいかない。シャルバはフョードルの退魔の波動を防ぎきった。その事実を怪訝(けげん)に思った。

 シャルバが防御を固めた隙きにレオナルドへと手を伸ばす。

 だが、後少しでレオナルドに手が届きそうなところで魔力の反撃に弾かれ救出は失敗に終わった。

 

 こちらを見る英雄派の面々にシャルバは大胆不敵に言った。

 

「そう焦るな。少しばかり協力してもらおうと思っただけだ。―――こんな風にね!」

 

 ブゥゥゥンッ!

 シャルバが手元に禍々まがまがしいオーラの小型魔法陣を展開させると―――レオナルドの体にそれを近付ける。魔法陣の悪魔文字が高速で動き、途端にレオナルドが叫んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああっ!」

 

 絶叫を張り上げて苦悶の表情を浮かべるレオナルド。それと同時に彼の影が広がっていき、フィールド全体を覆う程の規模となっていく。

 その場で空中に浮き始めたシャルバが哄笑を上げる。

 

「ふはははははははっ! 『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』とはとても素晴らしく、理想的な能力だ。しかも彼はアンチモンスターを作るのに特化していると言うではないか! 英雄派の行動を調べ、人間界で別働隊と共に動いていた彼を拉致してきたのだよ! 別働隊の英雄派構成員に多少抵抗されたので殺してしまったがね! それでは作ってもらおうか! 現悪魔どもを滅ぼせるだけの怪物をッ!」

 

 レオナルドの影から何かが生み出されていく。影を大きく波立たせ、巨大なものが頭部から姿を現していく。

 規格外の頭部、胴体、腕、それらを支える圧倒的な脚。フィールドを埋め尽くす程に広がった影から生み出されたのは―――。

 

『ゴガァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!』

 

 鼓膜を破る様な声量で咆哮を上げる200メートル程の超巨大モンスターだった。

 更にそれよりサイズが一回り小さい巨大モンスターも何体かレオナルドの影から生み出されていく。100メートルを超えるモンスター軍団が出現した。

 その規格外の怪物達の足下に今度は巨大な転移型の魔法陣が出現する。

 シャルバが哄笑しながら叫んだ。

 

「フハハハハハハッ! 今からこの魔獣達を冥界に転移させて、暴れてもらう予定なのだよ! これだけの規模のアンチモンスターだ、さぞかし冥界の悪魔を滅ぼしてくれるだろう!」

 

 魔法陣が輝き、巨大なアンチモンスターの群れが転移の光に包まれていく。

 

「止めろォォォォッ!」

 

 アザゼルの指示のもと、一誠達は巨大なアンチモンスター達に攻撃を放つが―――全くびくともしない。ヴィロットとフリードは転移型魔法陣に向けて聖剣を振りかぶったが、巨大なアンチモンスター達がこの場に残り一誠達を殺してしまうことを危惧し、舌打ちしながら攻撃を止めた。

 攻撃も虚しく終わり、巨大なモンスター達は全て転移型魔法陣の光の中に消えていった。

 怪物達が消えた途端、フィールドが不穏な音を立て始める。白い空に断裂が生まれ、ホテルなどの建造物も崩壊していく。強制的な怪物の創造と転移に疑似空間が耐えられなくなったのだ。

 ゲオルクがジークフリートに叫ぶ。

 

「装置がもう保たん! シャルバめ、所有者のキャパシティを超える無理な能力発現をさせたのか!」

「……仕方ない、頃合いかな。レオナルドを回収して一旦退こうか。プルート、あなたも―――」

 

 ジークフリートはそこまで言いかけ、既に姿を消していた死神に気付いた。それを知り、ジークフリートが何かを得心した様な表情となる。

 

「……そうか、シャルバに陰で協力したのは……。あの骸骨神の考えそうな事だよ。嫌がらせの為なら、手段を選ばずと言うわけだね。『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の強制的な禁手(バランス・ブレイカー)の方法もシャルバに教えたのか……? あんな一瞬だけの雑な禁手(バランス・ブレイカー)だなんて、どれだけの犠牲と悪影響が出るか分かったものではない。僕達はゆっくりとレオナルドの力を高めようとしていたのにね……。これでは、この子は……」

 

 それだけ漏らしたジークフリートとゲオルクは気絶したレオナルドを回収し、そのまま霧と共に消えていった。

 速攻で逃げ去った英雄派に心の中で毒づいていると、今度はホテルの方から爆音が鳴り響く。見上げれば、シャルバが後衛のメンバーに魔力の攻撃を放っていた

 

「どうしたどうした! ヴァーリィィィィィィッ! ご自慢の魔力と! 白龍皇の力は! どうしたと言うのだァァァァァッ! フハハハハハハッ! 所詮、人と混じった雑種風情が真の魔王に勝てる道理が無いッ!」

 

シャルバはヴァーリを攻撃していた。今は海のバリアがシャルバの攻撃の大部分をを削ぎ落とされ攻撃の多くはまともに届かないが、今のヴァーリではシャルバに対抗できない。それでも防御の魔法陣を展開させ、防戦一方だった

 

「……他者の力を借りてまで魔王を語るお前には言われたくない」

 

 (かんば)しくない状況でもヴァーリはシャルバを言葉で切り捨てる。

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハヒハハハッ! 最後に勝てば良いのだよ! さて、私が欲しいのはまだあるのだ!」

 

 オーフィスの方に手を突き出すシャルバ。オーフィスの体に悪魔文字を表現した螺旋状の魔力が浮かび、縄の如く絡み付いた。

 

「ほう! 情報通りだ! 今のオーフィスは力が不安定であり、今の私でも捕らえやすいと! このオーフィスは真なる魔王の協力者への土産だ! パワーダウンした私に再び『蛇』も与えてもらおうか! いただいていくぞ!」

「させるかよッ!」

 

 一誠はドラゴンの翼を広げて、一気にシャルバに詰め寄る。

 シャルバは醜悪な笑みを浮かべて言い放った。

 

「呪いだ! これは呪いなのだ! 私自身が毒となって、冥界を覆い尽くしてやる……ッ! 私を拒絶した悪魔なぞ! 冥界なぞ、もはや用無しだっ! もうどうでも良いのだよッ! そう、冥界の覇権も支配も既にどうでも良い! フハハハハハハッ! このシャルバ・ベルゼブブ、最後の力を持って魔獣達と共にこの冥界を滅ぼす!」

 

 狂喜に包まれたシャルバはまともな目をしていなかった。思想も何もかも破綻したシャルバは一誠に指を突きつけてきた。

 

「……そうだな、貴殿が大切にしている冥界の子供も我が呪い―――魔獣どもによって全滅だよ、赤龍帝! 我が呪いを浴びて苦しめ! もがけ! 血反吐ちへどを吐きながら、のたうち回って絶息しろッ! フハハハハハハッ!傑作だな! 下級、中級の低俗な悪魔の子供を始め、上級悪魔のエリートの子息子女まで平等に悶死もんししていく! ほら! これがお前達の(のたま)う『差別の無い冥界』なのだろう? フハハハハハハッ!」

 

 もはやシャルバは復讐の鬼と化していた。自分を認めなかった冥界に未練も誇りも捨て、全ての悪魔を滅ぼそうとしていた。

 そうこうしている内にフィールドの崩壊は進んでいく。遂に壁に複数の穴が空き、フィールドの瓦礫を吸い込みだした。

 ホテルの室内にいる黒歌が叫ぶ。

 

「もう、このフィールドは限界にゃん! 今なら転移も可能だろうから、魔法陣を展開するわ! それで皆でここからおさらばするよ!」

「邪魔は入ったけど、任務完了」

 

 魔法陣を展開する黒歌のもとにグレモリー眷属達やフョードル達が集結。シャルバの攻撃で傷を負ったヴァーリにアーシアが回復のオーラを当てる。

 未だに哄笑を上げるシャルバ、その近くには捕らえられたままのオーフィス。

 一誠はそれを見てふたつの思いに駆られた。

 

「イッセー! 転移するわ! 早くこちらにいらっしゃい!」

 

 リアスがそう告げてくるが―――一誠は魔法陣の方には行かなかった。

 怪訝に思っているリアスとグレモリー眷属に一誠は告げた。

 

「俺、オーフィスを救います。ついでにあのシャルバもぶっ倒します」

『―――っ!』

 

 一誠の言葉に全員が度肝を抜かれた。

 

「僕も戦うよ!」

「1人だけ格好つけても仕方ないのよ⁉」

 

 木場、朱乃がそう言うが、一誠は首を横に振った。

 

「いや、俺だけで充分だ。皆はあの魔獣どもの脅威を冥界に伝えてくれ。どっちにしろフィールドはもう保もたないだろう。俺なら鎧を着込んでいればフィールドが壊れても少しの間、次元の狭間で活動できる筈だ。ヴァーリもそうやって次元の狭間で活動していた頃があるんだろうから。……今、シャルバを見逃す事も、オーフィスを何者かの手に渡す事も出来ません」

 

 これは自分達にしか出来ないと思った一誠。アザゼルの疑似禁手(バランス・ブレイカー)も限界まで来ている。

 一誠の意思に引き下がるグレモリー眷属達だが、フリードは一誠の腕を掴み食い下がった。

 

「待て、赤龍帝。ぶっちゃけ自棄になったシャルバ・ベルゼブブ程度ならお前なら十分勝機はある。けど今のシャルバ・ベルゼブブは何かおかしい。それに今さっき神滅具(ロンギヌス)の拒絶でダメージを受けたばっかりだろ。残念だがオーフィスは今は見捨てろ。どっちもまたチャンスはある。だから今は引け」

「見捨てられるわけないだろ! それに、ここでシャルバを討たなかったら犠牲が増えるに決まってる! あいつは、冥界の子供達を手に掛けると言ったんだ! それだけは……それだけは絶対に許しちゃいけない!」

「もう限界にゃん! 今飛ばないと転移できなくなるわ!」

 

 黒歌がそう叫ぶ。

 

「兵藤一誠」

 

 アザゼルに肩を貸してもらっているヴァーリ。先程のシャルバの攻撃が体に響き、ツラそうな表情。

 

「ヴァーリ! お前の分もシャルバに返してくる!」

 

 一誠の言葉を聞いてヴァーリは口の端を笑ました。

 

「イッセー! 後で龍門(ドラゴン・ゲート)を開き、お前とオーフィスを召喚するつもりだ! それで良いんだな?」

 

 アザゼルの提案に一誠は(うなず)いた。

 

「あーもうわかった! その代わり俺も残る。本来なら俺が代わりに残ると言いたいが、それじゃ納得しないだろ? だからこれが最大の譲歩(じょうほ)だ」

 

 これ以上犠牲者を増やさない為にとの一誠の判断は理にかなっている。ならば説得は不可能と判断したフリードは自分も残ることを譲歩とした。

 一誠は腕を掴む手を外そうとするが、フリードはさらに力を入れ離さない。

 

「いや、俺だけで充分だって。それに生身のお前じゃ次元の狭間での活動は出来ないだろ」

「何度も言うがこの体はキメラだ。多少破損しても生きていられるし、オーラを纏ってれば次元の狭間でもしばらく活動も出来る。自力で次元の狭間を脱出する手段もあるから龍門(ドラゴン・ゲート)で召喚してもらう必要もない」

 

 互いに目線を合わせる。一誠は外そうとする手を離し、その後フリードも腕から手を離した。

 一誠はドラゴンの翼を展開させる。

 

「イッセー!」

 

 リアスの声に振り向く。

 

「必ず私のところに戻ってきなさい」

「ええ、必ず戻ります!」

 

 それだけ告げて一誠とフリードはシャルバの方へ突っ込んでいった。同時に転移の光が一層膨らんで弾ける。他の皆の転移は成功した。

 

「くれぐれも、いのちだいじにで頼むぜ」

「死ぬつもりはねぇよ!」

「……そうだな、ここで死ぬのはちと早いかもな」

 

 軽口を叩きながらも軽く激を飛ばし合う。

 そうして一誠はシャルバを倒し、オーフィスを救い、リアスの元へと帰ることを決意した。




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