ぶっちゃけプロットも不完全だし、構想もうろ覚えです。それでもまあ納得できるものにはなったので投稿します。
今、僕の目の前で一つの誇り高い戦いが幕を閉じた。
英雄派に、曹操の身に何が起こったのかはわからない。だけど曹操は最期に正気を取り戻し、自らにケリを付けた。そこにはただのテロリストにはない誇り高さを感じた。
命を失ってもゾンビ化した曹操は素手で襲い掛かるが、
「……助けられなくてすまなかった」
「最悪の想定は皆覚悟していた」
前掛けが必要なぐらい吐血したフリードが声をかける。
見るからに重傷なのに不自然なほど自然体。やせ我慢をしているのか、それとも瀕死を感じない程に死に近づいているのか。
「慰めってわけじゃないけどよ。英雄譚はまだ完結してない。英雄の評価はどう死んでいったかで決まり、英雄譚はどう終わったかで決まる。お前らが生きてる限り曹操の英雄譚は終わってない」
「……ああ」
英雄譚が終わってないかはわからないが、この戦いはまだ終わっていない。
遠目では混戦しすぎてわかりづらいが、パペットが操る機械兵が敵の機械兵の数を上回ってはいない。捕獲より補充の数が上回っている。
しかも敵の機械兵の投入数がなぜか突然爆発的に増えだした!
「逃げな悪魔共ッ! 大切なものを守るために!」
ガヴィンが僕らに背を向け叫ぶ。負傷したまま回復もしておらず、鞭のストックもない。だがその背中は闘気に満ちていた。死兵となる覚悟を決めた男の背中。
フリードが次元からとても古いカメラを取り出し写真を撮ると、古いカメラなのに映写機のように鏡像を映し出す。
「この写真世界に入れ! こっちの世界なら命ない機械は入れないから安全に逃げられる! あんまり力を込めてないから5分もすれば崩壊してしまう。だからそれまでに遠くへ逃げろ!」
そう説明すると糸に繋がれた機械兵が僕らを掴み上げ、近場から順に強制的に鏡像を潜らせる。鏡像を潜ると人だけが消え機械兵は素通りした。
残りの機械兵が敵の爆発的増加に僕らを守るように振り分けられる。
だが敵の流れ弾でカメラが壊され悪魔側男性陣と、僕が傍で護っていたレイヴェルさんが取り残されてしまった。
ある程度離れていた方が守り易いと離れていたのが仇となってしまった。こうなったら何をおいてもレイヴェルさんを安全に逃がすことを考えないと……。
そう考えていると自分を掴んでる手が機械兵ではないことに気づいた。
その手は人間のもの、パペットの腕だった。なぜ僕が気づかなかったというと――
「パペットの
機械のように冷たく生命力を一切感じない
目を背けたくなるほどボロボロになっても
「赤龍帝拾ってきたから悪魔と一緒に逃げな。逃げる時間ぐらいは稼いでみせるからよ」
自分たちの都合に巻き込まぬよう離脱する建前だろう。フリードが僅か残った命の捨て場所を強制しない為の配慮。
しかしフリードに既に闘志はなくかといって諦めた様子もない。ただ遠く背後を見ていた。
「その心配はない」
フリードがそう告げる。
「これにて俺達の勝利だ」
その言葉には勝利の確信を通り越し勝利後の安堵感が込められていた。
凄まじい数の機械兵が突如地面から太い鉄の杭が伸び全ての機械兵が串刺しとなった。
その杭は確実に機械兵の
ロボットだからそうは見えないが、人間に例えるとなかなかに凄惨な光景だ。
フリードの見ていた方角に目を向けるとそれは視認できる程の距離まで近づいていた。機械天使に乗った二人のとても強力な助っ人。
「いったい何が起こって……曹操!!」
何事かと戻って来たイクサが動かなくなった曹操の前で膝を折り首を垂れる。フョードルさん悔しそうに両手を握りしめる。
それに目もくれず機械天使が降り立つとフリードとヴィロットさんはその場で膝をつきかしずく。
機械天使はこちらに近づくとすぐに消えてしまう。悪魔の身にあの光はかなり毒だから助かる。
そこへ降り立ったのは一人の男性――マルコさんとアイアンメイデンが一つ。
「ご苦労様でした。ヴィットリーオ・ヴィロット、フリード・セルゼン」
「「ありがたきお言葉」」
役目を終えた
「まずはこの戦いによって負った傷を癒しましょう」
そう言うとマルコさんが大事そうに首にかけていた鍵をアイアンメイデンの鍵穴に差し込んだ。鍵が外れる音がすると、アイアンメイデンが独りでに開帳されていく。
『――――ッ!!!』
アイアンメイデンの中身が露わになり全員が絶句した。同然の反応だ。なぜなら中には全身血塗れの少女が茨に捉えられてる姿があったのだから。
空洞の内部には左右の扉と背後に長い釘が大量に植えられており、ガワだけでなく拷問器具としての役割をしっかり残している。
その傷口と溢れる鮮血、釘にこびりついた血が長時間少女を拷問していた事実を物語る。
優しい目をした少女――メイデン・アインが茨から解放され地に足を付けると、優しい光に包まれアイアンメイデンに似た鎧を身に纏っていた。鎧から見える素肌には傷口どころか血の跡もすっかり消え去っている。
メイデンさんが無言で祈りを捧げると光が一瞬にして広がりこの場の全員を突き抜け遥か彼方へ広がっていく。
光を受けた僕達の傷はすっかり無くなり疲労感さえ消え去った。これがメイデンさんの癒し……。そう思ったのだが――。
「―――??!!」
死んだはずのパペットが起き上がった。死体となったはずの肉体に生命力が満ちている。死んだ人間が生き返ったことに周りも、パペット本人も自分の現状に酷く困惑していた。
「この戦いで傷ついた全ての人に癒しを与えました」
それを聞くとパペットの復活に目を奪われていた脱英雄派の面々が曹操の方を見た。
そこにはゾンビではない普通の人間として生き返っていた曹操の姿があった。
「「「曹操!!!」」」
うれし涙を流しながら駆け寄る脱英雄派の面々。生き返ったばかりの曹操は状況が飲み込めずいまだに困惑するばかり。
その様子をメイデンさんはニコニコしながら眺めていた。
「これがメイデン・アインの奇跡……」
目の前で起きた奇跡に目を丸くするフョードルさん。
「何が起こったかわからんがお前たちが無事生きていたことは喜ばしい」
曹操も仲間が生きていたことに喜びの言葉を口にするが浮かない様子。
「だが俺は大きな過ちを犯しお前たちの命を危険に晒しただけでなく、他の仲間にも大きな罪を背負わせてしまった。……俺はお前達に合わせる顔がない」
仲間にテロリストという大きな罪を背負わせてしまった負い目。生き返り正気を取り戻した曹操は自責の念に苛まれているのだろう。
「だから俺をこのテロの首班として差し出せ。そうすれば英雄派は事実上の壊滅だ。身を潜めていれば積極的に追われることもない。それが俺にできる唯一の償いだ。幸いなことに俺の中に聖槍はもうない。
「バカ野郎ッ! 必死こいてテメェを助けに来たってのにそんな馬鹿な話があるかァ!」
親が子を叱るように弱気な曹操に拳骨を食らわせた。
「ぶん殴ってでも目を覚まさせて連れ帰る。それが俺達がここに来た理由だ!」
「私たちは貴方がやったこと全てが間違っていたとは考えていません。あのままでもいずれ大きな戦いは避けられなかった。ですから帰ってやり直しましょう。今度は間違えぬように」
「そうは言っても唯一俺を英雄たらしめてくれた聖槍は自分で折ってしまった。俺にはもうお前らの期待に応える資格も力もない」
「口を挟んで申し訳ないのですがで、彼はそう思ってないみたいですよ」
メイデンさんが指さす方を見ると、そこへ光が集まり何かが形成されていく。
「なぜこれがここに……!?」
「……『
曹操は恐る恐る聖槍に手を伸ばす。
聖槍を掴むと聖槍は光となって曹操の中へと消えていった。
「もう二度と失望はさせない」
胸に拳を置いて誓いを立てる。黒幕がいたにせよ曹操がやってしまった罪は大きい。それでも彼のこの先に幸あることを願う。
英雄に相応しい人物となる。それがきっと一番素敵な罪の償い方だと思う。
「うちの大将がとんでもない迷惑をかけてしまってすまなかった。必要な償いはいつか必ずしよう。だが必要以上の罪を償わされるのは御免だ。今回は逃げさせてもらおう」
そう言う曹操の服の襟を掴み距離と取ったところで、取り出した札から転移の魔法陣を展開する。
確かにこの場で捕まればこのいざこざ全ての責任を押し付けられる可能性が高い。こちらとしても独断で黙ってオーフィスを引き入れたことは大きな有責だ。
逃がすかと、ヴァーリさん以外の皆が一斉に取り押さえようとしたが、脱英雄派の面々が魔法陣から出て一瞬で全員を返り討ちにしてまう。圧倒できる程の力量差はなくとも、実力派悪魔を一瞬で一時無力化させる技量差は脱英雄派にはある。
「この礼はまたどこかで」
そう言い残して消えてしまった。
この戦いで悪魔は防衛も制圧も何一つ満足に成し遂げられなかった。これまで三大勢力で使われていた力の基準が大きく変わろうとしているのかもしれない。時代が流れゆくように。
時代の一部が腐り落ちる幻聴が聞こえた。
◆◇◆◇◆◇
……肝心なところで役に立てなかった。
曹操に全く歯が立たなかった。力不足の自分に閉口しちまう。自身を嘆く俺の頭をサイラオーグさんがなでる。
「そう落ち込むな。なに、あの様子なら両者共に当面戦うことはないだろう」
サイラオーグさんがそう漏らしていた。
ヴァーリが俺の方に視線を向ける。
「キミがグレートレッドと通じたと言うのなら、あの赤龍神帝に挑戦する前にキミと決着をつけないといけないようだ」
―――っ。こんな状況でも宣戦布告かよ。こいつらしいな。
「ああ、来いよ。俺ももっと強くなって、お前をぶっ倒してやるさ」
「だが、気を付けろ。キミを恐れる者が増える一方で、狙う者も今後増えるだろう。―――真龍と龍神と通じたと言うのはそう言う事だ」
それは怖いですね。でも、まあ、来るなら超えていくしかないだろう。
「何が来ても俺は俺の目標の為に突き進むだけだ。―――上級悪魔になって、俺はハーレム王になる! あと、レーティングゲームの王者にもなりたいしな!」
俺の宣言を聞いて、ヴァーリは楽しそうに口の端を上げていた
『ドライグ……少し休むのか?』
『ああ、そうかもしれないな。あるいは……。すまんな、アルビオン』
アルビオンとドライグが会話をしている? 何の会話だ?
その横でヴィロットさん達が話をしていた。
「ヴィロット、敵の首領はどこに行った」
「メイデン様が到着する数分前に突如逃走しました。追いかけはしましたが機械兵に妨害され、そのすぐ後に大量の機械兵が投入されました」
「我々の接近を早い段階で察知したか。そしてメイデン様に敵わないと判断し我々を足止めするためだけに戦力を使い潰した。的確な判断だな」
どうやらロボット達を串刺しにして全滅させたのはこの人達のようだ。それにしてもあれだけ苦戦させられたロボットを一瞬って……。
それとメイデンって女の子の回復能力も相当なものだ。なんせ死者蘇生が可能なレベルなんだからな。幼くてもアーシアと同じ聖女と呼ばれた者同士ってわけか。
「となれば我々が残る理由もないな。任務完了だ」
「そうですね。……フリード・セルゼン、お体の調子はどうですか?」
「メイデン様の祝福のおかげで薬に侵されていたのが嘘のように好調です」
「それはよかった。ですが私が治癒できるのは肉体だけです。摩耗した精神や魂まで癒すことは出来ません」
「はい、承知しております。嬉々として奪った数々の罪なき命。正気は失えど目にしたもの、手に染み込んだ生暖かい血の感触も全て覚えています。私は……なんということをしてしまったのか……」
フリードの奴震えてやがる。俺達もフリードには散々な目にあわされたが、そこまで反省してるなら許してやってもいいかもな。結果的にアーシアも無事だったし、今回の戦いでは何かと助けてもらった。
「ふとした時に脳裏に鮮明に浮かぶ己の罪に押しつぶされそうになります。私はもう疲れました」
「わかりました。それでは貴方をその苦しみから解放して差し上げましょう。これまでご苦労様でした。後の事は私に任せください」
「メイデン様の慈悲に感謝します。そして貴方に再び会わせてくださった神の慈悲に感謝します」
そう言うとフリードはそのままの態勢で体を、首を少し前に突き出した。一体何をする気なんだ?
「フリード・セルゼン、貴方はあまりに多くの平和に生きる人々を殺めてきました。それは許されざる罪。よって判決を言い渡します―――判決、死刑」
その宣言と同時にどこから不自然に飛んできたガラスが、
「メイデン・アイン様の判決はこの世界の絶対。メイデン様が判決を下せば世界がそれを執行する」
メイデンが両ひざを付いてフリードの首を拾い抱きしめる。一緒に来た男が魔法陣から棺桶を召喚しフリードの胴体を納め、最後にフリードの首が入れられた。
あれだけ頑張った味方をあっさりと、それもあんな小さな女の子が……。その様子を見て絶句してしまった。
「なぜそこまでするのですか」
静まり返った中にレイヴェルの震える声が響く。
メイデンはフリードの入った棺桶に目を落とす。
「彼は十分に苦しみました。彼が死を望むのであればその罪と共に解放してあげることが私にできる救い。もしも彼にまだ贖罪が必要とあれば、彼を殺した私が背負います。それが彼を裁いた私が背負うべき罪です」
前にアザゼル先生から聞いた話も先生自身が半信半疑だった。だけど本物を目にして確信した。あの話は全部本当だ。一連の流れがそう確信させる。
悪の親玉と言われていたが実は純粋だったオーフィスとは全くの逆だ。初めて会った時のゼノヴィアが霞む程の狂信的な正義感。俺には全く理解できない。
「私の正義が理解されがたいのは悲しいことですがわかっています。しかし世界平和の為には必要なことであり、誰かが血に染まる必要があるのです。そうして、世界が平和でありますように」
そう言うと鉄の拷問器具の中に自ら戻って行った。
言ってることは全くわからん。自らに文字通りの拷問を課すのもその精神力の成せる技なのか。てかあんな痛々しい棘だらけの中に入るなんて想像するだけでゾッとする。
一緒に来たメガネの男が敵だった軍服の男に話しかける。
「フーリッピさんですね。貴方は我々アメリカが保護します」
「はい、わかりました。あの……ありがとうございました」
洗脳されてた軍服の男が誇銅に深々と頭を下げる。
「ではこちらへ。ミカエル!」
銃声と共に聖なるオーラを纏った巨大なロボットが現れた! すげぇ聖なるオーラで傍にいるだけでもの凄く痛い!
ロボットは素早くメイデンとメガネの男、軍服の男とフリードの棺にヴィロットさんを連れて飛び去ってしまった。
―――と、また誰かがここに来る気配が感じられた。瓦礫の向こうからやってきたのは紳士な出で立ちの男―――ボロボロな姿のアーサーだった。
「ヴァーリ、皆……こちらに来ています。予定通り……一暴れしてきましたが……」
「どうした! 一体何があったんだ?」
ヴァーリは今にも倒れそうなアーサーに肩を貸す。
「少々イレギュラーがあってね。重症だが皆無事ですよ。ですがゴグマグが奪われてしまいました」
「詳しい話は後でしてもらう」
ボロボロのアーサーは木場に視線を送る。
「―――木場祐斗。私が探し求めていた聖王剣コールブランドの相手として、あなたは相応しい剣士のようです。ヴァーリが兵藤一誠と決着をつける時、私もあなたとの戦いを望みましょう。それまではお互い、無病息災を願いたいものですね」
そう言い残してアーサーはヴァーリと共に去っていった。
木場もアーサーの挑戦を受けて、不敵な笑みを見せる。
「ジークフリートを倒したのか?」
俺が腰の魔剣を指差して木場に訊く。
「え? ああ、これ? まあ、色々あってね。ジークフリートは皆で倒したんだ」
あ、そうなのか。でも、魔剣はゲットしたと。でもそう言った木場の表情はどこか複雑そうだ。
「さて、俺も眷属を待たせているのでな。そろそろおいとまさせてもらおうか」
サイラオーグさんが背を向ける。
「サイラオーグさん、ありがとうございました」
俺の礼にサイラオーグさんは手を上げて応え、そのまま飛び去って行った。
「ところでカメラが壊れてしまいましたけど写真世界に避難した皆さんは大丈夫なのでしょうか」
「たぶん閉じ込められるとかの心配はないと思う。この手の結界術は崩壊した地点と同じ位置に放り出されるはずだから。全く感知できないけども。もうすぐ5分経つから探しに行ってみるよ。遠くに行ってなければすぐに感知できる」
「じゃあ僕も皆を手伝うよ。イッセーくんはここで休んでいて」
そう言って木場も誇銅もレイヴェルも行ってしまった。
……独りだけになっちまった。皆が来るまで休んでようと思った矢先。
『相棒、良い戦いだった。まだまだ足りない部分もあるだろうが……それでも良い戦いだった』
ドライグが賛辞を送ってくる。
「なんだよ、急に」
『……いや、お前はこれで良いんだろうな』
「……何だか、元気ないじゃないか」
『……お前の体を再生するのに俺は色々と使い過ぎてしまった……もうじき、意識を失う……』
「……な、なんだよ、そりゃ!どういう事だよ!なんで話してくれなかった⁉」
『……安心しろ……俺がいなくても
ドライグの声がどんどんかすれ、小さく弱くなっていく
「待ってくれよ!……俺、まだ……お前がいなきゃ何も出来ねぇよっ!」
『出来るさ……お前には……仲間が……る……。……俺はもう必要……ない……さ』
既に声が所々ところどころ聞こえなくなってきている! マジかよ! そんなのねぇって!
必要だよ! 相棒だろう! ずっと一緒にいようぜ! 俺とお前で赤龍帝だろうがよ!
俺は涙が止まらなかった。ボロボロと流れ、鼻水も出てくる。
それでも脳裏に次々と蘇よみがえるドライグとの思い出が溢れて、どうしようもなかった。
ドライグは最後にハッキリとした口調で言った。
『俺の相棒―――イッセー、ありがとう。楽しかったぞ…………――――』
「ドライグ……? なあ……返事をしてくれよ……なあ、相棒……」
問いかけても返事をしない宝玉。
もう、喋ってくれないのかよ……?
などと思っていた俺の耳に入ってきたのは―――。
『…………グゴゴゴゴ』
「……あれ?い、いびき? ね、寝てる……?」
「ドライグ、次元の狭間と今の戦いで力使って疲れた。寝てる」
俺の籠手にそっと触れてくきたのはオーフィス。
いつの前にか辿り着いていたようだ。
「……オーフィス? って、ドライグは寝てるだけなの⁉ ドライグ!……バカ野郎……ッ! バカ野郎……っ!」
俺は籠手を抱きながら泣くしかなかった! きなり別れの挨拶なんて酷いだろう! 俺とお前はずっとやっていく相棒なんだからよ!
仲間達の気配がどんどん近付くのが感じる。やっと終わりだ、中級悪魔の試験が。長く険しかった試験がようやく終わりを迎えたんだ。
「帰ろうぜ、オーフィス。今度こそ―――皆で」
「我、赤龍帝の家に帰る」
オーフィスが浮かべていたのは可愛らしい笑顔だった。
ああ、こいつはやっぱり、テロリストの親玉なんかじゃねぇよ。ただの強くて寂しいドラゴンだっただけあ。
と、万事良く決めたところで俺はとあることを思い出してしまった。
あ、学校の中間テスト、どうしよう……。
俺はそこで初めて絶望しきった。