無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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 皆さん、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいいたします。

 小説情報の状態欄が短編になっていたのを修正しました。


醜悪な悪魔の社会

 暗く陰惨な雰囲気がする廊下に不気味な色をした炎の明るさ。まるで冥界、リアスさんたちのような人間っぽい悪魔ではなくもっと怖いフィクションに出てくるような悪魔が出そうだ。

 そんな陰惨で不気味な場所に似つかわしくない程聖なる雰囲気が漂う絵が炎の照明と照明の間に左右ずっと奥までかけられている。

 不気味な廊下と神聖な絵、その両方が合わさってプラスマイナスゼロにはならない。が、不思議と怖いと言う感情はこみあがってこない。

 不気味なほど静かな廊下。自分の吐く息や心臓の音まで鮮明に聞こえてしまいそうなくらいに。

 何も聞こえず何を主張してるかわからない視界だけど不思議とすすめと背中を押されているかのような錯覚だけはいつも起こる。だけど後ろを振り向いても何もない。なのにその間も前へ進めと押されてる不思議な感覚はつづく。

 

「やっぱり進むしかないか」

 

 ここにずっといるわけにもいかないからその不思議な感覚のまま前へと歩いていく。

 進んでいくことに廊下は普通になっていき炎も不気味な紫色から赤っぽく変わっていく。それと比例して神聖な雰囲気を漂わせていた絵は神聖さを失い普通にきれいな絵になっていく。進むごとにそれは徐々に徐々に激しく変わっていく。

 変わるのは不気味さや神聖さだけではない。結構な距離を歩くと風の音がどこからか聞こえてくる。水が滴り落ちるような音が聞こえてくる。普通なら不気味に思うが廊下の不気味さと絵の神聖さがほぼなくなって普通に明るい廊下になると何の怖さもない。

 何の違和感もなくなったただ長い廊下をまだまだ歩いていく。これだけ歩いてるのに不思議と疲れは一切感じない。

 

「やっぱり、ここに来ちゃったか」

 

 ついに廊下の終わり、扉の前まで辿りついた。

 ここまで来ると室内だと言うのにここちよい風がどこからか吹き照明のろうそくを揺らしまるで野外にいるかのような感覚。不自然に水の滴り落ちる音さえなければもっといいのに。

 そう思いながらも僕は扉を開ける。

 

『グニュグニュグニュ』

『ニュギュニュギュニュギュ』

 

 扉の先には神聖な白い光を放つ何かと邪悪な黒い光を放つ何かが混ざり合った、グニョグニョと動く球体が空中でとても太い鎖で雁字搦めに縛られている。その球体からは混沌色の水がしたたり落ち、球体が動くたびに風が生じる。

 あれがなんなのか僕にはさっぱり見当もつかない。唯一わかる事はあの球体が僕を呼んでいる事だけ。

 

『グニュグニュグニュ!』

『ニュギュニュギュニュギュ!』

 

 僕が一歩近づくたびに球体は激しく動き出す。まるで喜んでいるように、歓迎してるかのように。

 だけど僕はそれに触れようと思ったことはない。触れてもいないのに、僕の手からは不気味な球体と同じ液体が滴り落ちていた。

 

 

 

 

 

 そんな不気味な世界から現実世界に目を覚ました。

 僕の手はいつも通り何の異常もないし、視界も正常。異常な事と言えばこの豪華すぎる客室くらいだ。普通の人間の日常ではありえない。

 

「またあの夢か」

 

 二年前から時々見る不気味な夢。月に一度見るか見ないか程の確率だけど、夢を見るといつも同じ所に立っている。

 

「やっぱり原因と言えばこれかな」

 

 僕は自分の両手を見る。

 この夢を見るようになった頃に何かあったかと言えばこれしかない。最初は無意識的とはいえ僕が初めて禁手を使ったあの日。

 僕が禁手を意識したのは夢を見だす後の事だったけどね。

 

「原因は何となくわかったけど、理由はまったくわからない」

 

 夢を見る理由は何となく察しがついた。だけどあの夢とどう関係するかわからない。

 この夢について藻女さんに相談したところ、いろいろ頑張って考えてくれたけど成果なし。そのほかにも八岐大蛇さんやこころさん、さらには日本神様たちにも相談してみたけどどれもめぼしい成果は上げられなかった。

 結果、夢を見る以外に何の変化もなく何か不都合な異常があるわけでもないから放置することに。コントロールもしっかりできてるしね。

 

「ねえ、あの夢に理由があるなら教えて?」

 

 僕はおもむろに右手に語りかけてみる。

 一誠の籠手に封印されてるドラゴンが夢で一誠に語りかけてきたって話を本人から昔聞いた事がある。だから僕も神器に封印されてる何かが語りかけてるのかと思って同じ事をしてみた。だけど返事はない。

 まあ当然かな。一誠の場合は通常状態から語りかけられてたんだし、封印されてるのも伝説のドラゴンだしね。

 

「……何も教えちゃくれないか」

 

 とりあえず今はアザゼル総督、および悪魔関係者にばれなければいいや。

 僕は頭を切り替えて入口や窓から見えないように朝の稽古を始めた。

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 冥界のリアスさんの豪邸に到着した翌日。

 一誠は朝から教育係の悪魔さんから様々な授業を受けて、それ以外の僕たちはグレモリー城観光ツアーに行っていた。

 一誠はなぜ自分が授業を受けることになったのかは疑問に思ってる様子だったけど、僕も僕で城観光ツアーに連れて行かれるかが疑問だったよ。二年間のブランクで赤点が危ぶまれるから勉強のために残りたいと言ったけどまた却下された。まさか二年もブランクがあったなんて言えないし無理にも断れなかったよ。

 しかもその後はすぐに若手悪魔が魔王領に集まる恒例のしきたりに僕たちも参加させられるらしい。ちょっとどころの疲れじゃないよこれ。

 

「ここは魔王領の都市ルシファード。旧魔王ルシファー様がおられたと言われている冥界の旧都市なんだ」

 

 グレモリー城観光から帰ってすぐに列車で魔王の領土に移動した僕たち。

 列車の中で約三時間の仮眠のち到着した場所は、近代的な都市やホーム。その場所の説明を木場さんがしてくれた。まったく興味はなかったけど。

 因みになぜか駒王学園の制服のまま来ている。浴衣に着替えて部屋で夏休みの宿題をさっさと終わらせたい。

 

「空は紫でも、町は人間界と変わらないね」

「そうだな誇銅。契約から始まり、『悪魔の駒』での眷属へ転生といい、共存関係と言える。文明を取り入れて独自に昇華するのも種族が生きる道なんだろうな」

「その通りよイッセー。『悪魔の駒』が創られてから、私たち悪魔と人間はより密接な関係になりつつあるわ。こうした冥界の変化もその変化の一つね」

 

 文明を取り入れて独自に昇華するのも種族が生き残る道というのはわかる。だけど共存関係ってのは違うと思う。僕も一方の意見しか聞いた事ないから断言はできないけど、もしも本当に共存ができてるなら天照様はあんなに不満を言わないだろう。

 拉致問題と人間の生命の侵害。悪魔側にどんな主義主張があるかまったく知らないけど、天照様が言うって事は実際に起きている。もうこの時点で共存とは言いにくい。

 他にも高天原の神たちの不満では、能力や役割がある者の種族を勝手に変えてしまったり、その人間への対処をどうするかが非常に厄介ということらしい。元々自分たちが役割を与えた人間だし、下手に手を出してそれらを完全に悪魔側に渡されでもしたらまずいと愚痴を聞いた。

 まあ僕なんかが知ってるだけでも共存と言えない事がこれほどある。

 

「このまま地下鉄に乗り換えるよ。表から行くと騒ぎになるからね」

「キャーッ! リアス姫様ぁぁぁっ!」

「遅かったか」

 

 突然、黄色い歓声がリアスさんに向けられた。ホームの方には悪魔たちがリアスさんを憧れの眼差しで見ている。

 

「部長は魔王の妹。しかも美しいものですから、下級、中級悪魔から憧れの的なのですよ?」

 

 朱乃さんがそう説明してくれる。確かにリアスさんは美人だし名家グレモリー家のお嬢様に加えて魔王の妹。人気が出るのもうなずける材料がこんなに揃っている。

 平安時代の日本でも表向きは名家で裏は七災怪。加えて美人の藻女さんも町に出れば人間妖怪問わずに人気者だった。裏では嫉妬の声もあったりしたけど。

 

 大勢の悪魔を前に若干怯えながら僕の背中に隠れるギャスパーくん。叫び声は上げないところを見るとちょっと成長したように感じちゃうよ。それでも、ずっと引きこもって対人恐怖症気味なギャスパーくんには辛い夏休みだね。

 

「困ったわね。騒ぎになる前に急いで実家の列車に乗りましょう。専用の列車は用意してあるのよね?」

 

 リアスさんは連れ添いの黒服の一人に訊く。僕たちのボディーガードで何人もついて来てる。話ではかなり強いって聞いたけど……いや、僕が知ってる強者の世界が達人だらけなだけか。

 魔王の妹であれだけ親に愛されてるリアスさんのボディーガードを担う人たちが弱いわけはない。……たぶん。

 

「はい。ついて来てください」

 

 こうして僕たちは黒服さんの後に続いて地下の列車へ移動した。

 その道中、男性のリアスさんはファンたちに苦笑しながら手を振って応えたりした。学園の外でもリアスさんの人気は健在だね。

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 地下鉄から乗り換えて現在、僕を含めたグレモリー眷属は若手悪魔たちとお偉いさんが集まる会場に向かうエレベーターの中にいる。黒服のボディーガードさんたちはエレベーター前までしか随行(ずいこう)できないのでそこで待機している。

 

「皆、もう一度確認するわね。何が起きても平常心でいること。何を言われても手を出さないこと。―――上にいるのは将来の私たちのライバルたちよ。無様な姿は見せられないわ」

 

 部長の言葉に気合が入っている。いつも以上の気合と若干の凄味があった。リアスさんは相当気合が入ってるみたいで、まるで臨戦態勢時の時のような声色。

 隣では一誠とアーシアさんが固唾を呑んでいる。緊張を落ち着かせようとしてる様子が見れるけど、あまり意味はないようだ。

 かなり上に上がったところで、エレベーターが停止して扉が開く。エレベーターから出るとそこは広いホールになっていて、使用人らしき人がいた。その人はリアスさんや僕たちに会釈をする。

 

「ようこそ、グレモリー様。こちらへどうぞ」

 

 その人の後に続く僕たち。通路を進んでいくと、一角に複数の人影が―――。

 

「サイラオーグ!」

 

 リアスさんはその人影の一人を知ってる様子で名前を叫んだ。すると、あちらもリアスさんに気付いたらしく、リアスさんを確認すると近づいてきた。

 僕たちより同い年か一つ上くらいの男の人。筋肉がしっかりとついて、国木田さんと同じタイプのイケメンだ。それにしても体格がよくて、筋肉の付き方がプロレスラー並みに綺麗に鍛えられている。おそらく実戦ではないだろうけど、限りなく実戦に近い形で鍛えられたのがうかがえるよ。

 

「久しぶりだな、リアス」

 

 その男性はリアスさんとにこやかに握手を交わす。

 お互いの主たちが和やかな空気を発している中―――向こうの眷属悪魔さんと思わしき人たちが笑顔で、しかしその目だけは見定めるようにこちらを見ていた。

 

「ええ、懐かしいわ。元気そうで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟なの」

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

 一誠がバアルという言葉に反応してるからきっと何かすごい名家なんだろう。僕は知らない、もしくは覚えてないけど。それにしてもこの人はなんだか今まで見てきた悪魔と少し違う。何が違うかはうまく言えないけど、威圧のされ方が他と何か違う。

 

「それで、こんな通路で何をしていたの?」

「ああ。くだらんから出てきただけだ」

「くだらない? 他のメンバーも来ているの?」

「アガレスもアスタロトもすでに来ている。挙句、ゼファードルだ。着いた早々、ゼファードルとアガレスがやりあい始めてな」

 

 サイラオーグさんは心底嫌そうな顔をしている。

 何をやり始めたのかは扉の向こうから感じるもので想像はつく。

 

   ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

 建物が大きく揺れてバカデカい破砕音が聞こえてきた。僕は反射的に臨戦態勢に入ったけど、その必要がないのは明白。僕もまだまだ未熟だね。

 部長はそれが気になったのか、躊躇いもなく音のした方―――大きな扉に向かった。

 

「全く、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

 

 サイラオーグさんは嘆息しながらも自分の眷属たちを連れてその後ろを歩く。

 部長の手によって開かれた大きな扉の向こうには、破壊され尽くした大広間があった。

 破壊された大広間の中央には両陣営に分かれた悪魔が睨み合っている。両者は冷たく殺意に満ちたオーラを出して武器を取り出している。一触即発のムード。昔の僕だったらこのオーラにビビったね。今じゃただ大きなオーラくらいじゃ驚かない。畏れればその時点で敗北が決定するから。

 

「…………」

「……!」

 

 つまらなそうに眺めていると、サイラオーグさんの長身の眷属が僕をじっと見ていた。それに今気づいた僕はさっと顔を背けた。今更背けるのに何の意味もないのに、むしろ図星を当てられたと自白する行為なのに。

 そっと視線を戻してみると、相手はフッと僕に笑いかけて前を向く。

 

「はぁ……ゼファードル。こんなところで戦いを始めても仕方ないんじゃなくて? 死ぬの? 死にたいの? ここで殺しても上に咎められないかしら」

「ハッ! 言ってろよ、クソアマ! 折角俺がそっちの個室で一発しこんでやるって言ってやってんのによ! アガレスのお姉さんはガードが堅くて嫌だねぇ。だから男も寄ってこずに未だに処女やってんだろ!? ったく、魔王眷属の女どもはどいつもこいつも処女臭くて敵わないぜ! だからこそ、俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」

 

 クールな雰囲気がするメガネをした女性の悪魔と、顔中に魔術的な刺青を入れてる上半身がほぼ裸の男性悪魔がにらみ合っている。お互いキツイ暴言を吐きあって超険悪ムード。

 方や委員長のような女性は『殺す』と平然と言い放ち、方や関わったらヤバイタイプの不良の男性も下品な言葉を投げかける。見た目だけでも絶対に交わらない感じの二人だね。

 困惑するリアスさんたちに、サイラオーグさんが来て説明をしてくれる。

 

「ここは時間が来るまで待機する広間だったんだがな。付け加えるなら、若手が集まって軽い挨拶を交わす所でもある。だが、若手同士で挨拶をしたらこれだ。血の気の多い連中を集めるんだ、問題の一つや二つは出よう。それも良しとする旧家や上級悪魔の古き悪魔たちはどうしようもない。無駄なものに関わりたくはなかったのだが、こうなっては仕方がない」

 

 サイラオーグさんは手首をコキコキ鳴らすと、睨みあう両陣営の方へ歩いていく。

 この時、僕はサイラオーグさんの背中を見て何が違うのか少しだけ理解した。目の前の両陣営の悪魔やリアスさん、その他見てきた悪魔全員の氣のようなものの流れが垂れ流しに近いのに対して、サイラオーグさんはなんだか整ってる。まるで今まで何度も戦ってきた妖怪や人間に近い。

 一人で両陣営の方へ歩き出すサイラオーグさん。それを止めようとする一誠をリアスさんが止める。

 

「イッセー、彼―――サイラオーグをよく見ておきなさい」

「え? は、はい。でもどうしてですか? 従兄弟だから?」

「―――彼が、若手悪魔のナンバーワンだからよ」

 

 若手ナンバーワン。そう言われても納得する。それほどサイラオーグさんから感じるものが強かったから。

 サイラオーグさんが両方の間に割り込んだ。するとやっぱり睨みあっていた二人の視線がサイラオーグさんに集まった。

 

「アガレス家の姫シークヴァイラ、グラシャラボラス家の凶児ゼファードル。これ以上やるなら俺が相手をする。いきなりだが、これは最後通告だ。次の言動次第で俺は拳を容赦なく放つ」

 

 サイラオーグさんの迫力ある一言。久しぶりに肌に感じる程の言葉を聞いた。

 一誠も今の一言で鳥肌が立ってる。相当プレッシャーを感じたようだね。

 しかし、その一言に男性の悪魔は額に青筋を立てて、怒りを色濃く見せる。

 

「バアル家の無能が―――」

 

 次の瞬間、激しい打撃音が響く。男性の悪魔は言葉を言い切る前に―――サイラオーグさんの一撃で広間の壁に叩き飛ばされていた。その人は壁から身体が離れた時には既に気を失ったようで、力なく床に突っ伏していた。

 パワーは相当なものだ。正直返す自信は十分あるけど、もしも失敗したら戦車の耐久でも一撃耐えきれるかわからない。今まで失敗しても若さと戦車の耐久があると思ってた節があるからね。

 

「言ったはずだ。最後通告だと」

「おのれ!」

「バアル家め!」

 

 倒された男性側の眷属が勢いで飛び出しそうになるけど―――。

 

「主を介抱しろ。まずはそれがお前らのやるべきことだ。俺に剣を向けてもお前たちにひとつも得はない。―――これから大事な行事が始まるんだ、まずは主を回復させろ」

『―――っ!』

 

 その一言に飛び出しそうになった眷属たちは動きを止めて倒れる主のもとに駆け寄った。

 次にサイラオーグさんは片方の女性の悪魔に視線を向ける。目の前で同族が一撃で倒されたのを見て表情がこわばってるのがよくわかる。

 

「まだ時間はある。頭を冷やしてこい。邪悪なものを纏ったままでは行事もままならんからな」

「―――っ。あ、ああ。分かっています」

 

 恐怖で頭が冷えたのか踵を返して、眷属を連れてサイラオーグさんの言葉に従う。

彼は踵を返して、眷属と共に広間を後にした。

 それを確認した後、サイラオーグさんは自分の眷属に言う。

 

「スタッフを呼んでこい。広間がメチャクチャ過ぎて、これではリアスと茶も出来ん」

「サイラオーグ様、紅茶中毒が会場の紅茶を全部盗って逃げました」

「スタッフに紅茶の追加を伝えろ。そしてペンタゴナはシャルルを呼び戻して来い」

「了解!」

 

 もめごとをビシッと解決してその後の対処も威厳をもってしっかりできるところがすごくカッコいい。僕も都で小競り合いを解決することはあったけど、とても威厳がある解決の仕方なんてできなかったから。

 

「あ、兵藤」

 

 そこに、聞き覚えのある声が。振り返れば、そこには見知った駒王学園の制服に身を包んだ人たちがいた。

 

「匙じゃん。あ、会長も」

「ごきげんよう、リアス、兵藤くん」

 

 匙さんとソーナ会長も広場に到着した。だけど他のソーナさんの眷属の姿は見えない。

 

「よ、誇銅」

「あ、国木田さん」

 

 国木田さんが僕の肩を叩く。よかった、国木田さんがいてくれて。ソーナさんはどうやら匙さんと国木田さんだけを連れてきたようだ。

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「私はジークヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

 

 

 先ほどの女性の人―――アガレス家のお嬢様に僕たちは挨拶を貰った。

 人間界なら即中止レベルにボロボロになった大広間はあの後、駆けつけたスタッフの魔力によって修復されてほぼ元に戻った。ほんと魔法って不思議。

 広間が修復された事で改めて若手が集まり、挨拶を交わしていた。唯一、さっき戦闘不能になった男性悪魔だけはいない。

 

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 

 リアスさんとソーナさんが続けて挨拶。

 挨拶するのはそれぞれ代表の悪魔だけ。それ以外の眷属はどこも後方で待機してる。

 

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ」

 

 先ほどのイメージ通りに威風堂々とした自己紹介。やっぱり他とは何か違う。何だろう、整った氣もそうなんだけど、何かが感じないんだよね。

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

 

 優しげな声で自己紹介する男性。見た目はすごい紳士な雰囲気がするけど。なんだろう、この人から感じるねっとりとした嫌な感覚は。平安時代でもこんなねっとりとした嫌な感覚は感じたことがない。何だかわからないけど、この人には気を付けておこう。

 

「グラシャラボラス家は先日、御家騒動があったらしくてな。次期当主とされていた者が不慮の事故死をとげたばかりだ。先ほどのゼファードルは新たな次期当主候補ということになる」

 

 サイラオーグさんがこの場に居ない人の説明をしてくれる。御家騒動で事故死って相当何かがあったんだろうね。お世辞にもさっき殴られた人は当主って感じの人じゃなかったし。まあどうでもいいけど。

 若手悪魔全員が揃い自己紹介を終える。一誠はこの顔ぶれに少し圧倒されてるようだ。仕方ないよね、一誠は本当に裏を知って一年未満でまだ深いとこまで知らないからね。それ以外にも、リアスさんの実家で勉強をさせられたり期待を人一倍かけられてるのもあるかな。

 

「おい、兵藤。間抜けな顔を見せるなよ」

 

 匙さんが嘆息しながら一誠に話しかけた。

 

「たってよ、上級悪魔の会合だぜ? 緊張するじゃないかよ。皆、強そうだ」

「何言ってんだ。お前は赤龍帝だぞ? もう少し堂々としてればいいじゃねえか」

「そんなこと言ってもよ……。って、なんで匙がキレてんだよ?」

「眷属悪魔はこの場で堂々と振舞わないといけないんだ。相手の悪魔たちは主を見て、下僕も見るんだからな。だから、おまえがそんなんじゃ、先輩にも失礼だ。ちったぁ自覚しろ。おまえはグレモリー眷属で、赤龍帝なんだぞ」

 

 匙さんに強く言われて、一誠も驚いてる。

 僕はこの感覚は知ってる。平安時代でも何度も都や妖怪の領地で見てきた。

 

「お前は先輩自慢の眷属なんだからな。……俺だって、会長の自慢になってみたいさ」

 

 匙さんは苦笑している。大小あれど誰もが持ってる感情、劣等感だ。

 

「他の眷属たちを見てみろ。みんなビシッと構えてるだろ?」

「ただいま戻りました、サイラオーグ様」

 

 会場が片付く前に出て行ったサイラオーグさんの眷属が扉を開けて戻ってきた。

 ライダースーツに室内なのに星の絵が描かれたバイクのヘルメットをかぶったままの女性。その後ろには匙さんの言葉を台無しにするかのように、両足をロープで縛られて引きずられてる男性が一人。

 

「oh 酷いネ! ワタシはただティータイムを楽しんでただけなのに、こんな目にあわされるされるなんて。それよりティータイムのお菓子が欲しいネ。

 ヘイ、そこのキミ。テーブルのスコーンをワタシにプリーズネ!」

 

 両足を縛られ引きずられ、顔にはくっきりと足跡がついているのに、その男性は何ともないような顔で腹筋の力だけで上体を起こすと僕にテーブルのスコーンを取ってほしいと笑顔で求める。僕が言われた通りテーブルのスコーンを持っていくと。

 

「アリガトウゴザイマース。アナタ親切な人ネ。ワタシはサイラオーグ様眷属の『騎士(ナイト)』、シャルル・ヴィッカースデース。ヨロシクオネガイシマース」

「リアス・グレモリー眷属、『戦車(ルーク)』の日鳥誇銅です」

 

 あまりのマイペースぶりに、ついよろしくおねがいしますを忘れてしまった。

 あれだけ威風堂々としてたサイラオーグさんの眷属にもこんなマイペースで明るい人がいるんだと思うとなんだか安心する。けど、大丈夫? 怪我と主の威厳が。

 

「親切はありがたいが、甘やかさないでもらえると助かる。そちらも他の眷属のいう事を聞いてるようでは示しがつかんだろ?」

 

 あ、大丈夫です。元から眷属内でも一番立場が下のポジションなので。

 それよりも、若手ナンバーワンの眷属のそちらの示しの方が心配なんですけど。仲間が一人暴走して情けない状態になってるのですが。

 

「同じくサイラオーグ様眷属、『騎士(ナイト)』のペンタゴナだ」

「日鳥誇銅です。よろしくお願いします」

 

 ペンタゴナさんの握手に応えようと僕が右手を差し出すと。

 

「!!」

 

 ペンタゴナさんは焦ったように手を引っ込めた。顔色は見えないけど、雰囲気から動揺してるのはわかる。

 僕の右手には何もないし殺意も込めてない。なのになんでこんなに警戒されたのかわからない。……あまり考えたくはないけど、もしかして僕の手に、神器を発動した際に最も危険になる部位に発動前から危険を察知されたの? 

 僕は内心なにか気づかれた、もしくは何か兆候を見せてしまったのかと焦りを隠しつつ自分の手を確認してみた。が、何も変化はない。

 

「……すまない。私の勘違いだ、よろしく」

「よ、よろしくお願いします……?」

 

 落ち着いたペンタゴナさんは再び手を差し伸べてくれて、それには素直に握手をしてくれた。何か気づいた様子もないのに一体なんだったんだろうか? いくら考えても今の僕にはわからなかった。

 僕とペンタゴナさんの挨拶が終わった頃、扉が開かれて使用人が入ってきた。

 

「皆様、大変長らくお待ちいただきました。ーー皆様がお待ちでございます」

 

 ついに本格的な行事が始まるようだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕たち若手悪魔たちが案内されたのは、異様な空気が漂う場所だった。

 かなり高いところに席が置かれていて、そこには偉そうな方々が座っていた。その上の段にも席があり、更にもうひとつ上の段には魔王様たちがいる。名前はえっと……あっ、サーゼクス様とセラフォルー様! 何とか思い出した。その隣にいる二人は面識はないよね? 

 立場の違いを表すように高い所から僕たち若手を見下ろすお偉いさんたち。一番上の魔王様たちはそうでもないけど、中間のお偉い方々は僕たちを見下している。露骨な目線だからはっきりとわかる。

 そんな事を考えていると、リアスさんを含めた若手六人が一歩前に出る。サイラオーグさんに殴られた男性悪魔も回復して同様に一歩前へ出ていた。殴られた頰の腫れはまだ引いていないようで、痛々しい痕を残している。

 

「よく集まってくれた。これから次世代を担う貴殿らの顔を、改めて確認するために集まってもらった。これは一定周期ごとに行う、若き悪魔を見定める会合である」

 

 初老の男性悪魔が手を組み、威厳のある声で言う。

 

「さっそく、やってくれたようだが……」

 

 次に、ヒゲをたくわえた男性悪魔が皮肉気に言う。確かに、大事なしきたりの前にあんな事があればそう思うのも無理はない。ただ、サイラオーグさんが止めなかったら、また別の問題が起きてただろうけどね。

 

「キミたち六名は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前にお互いを競い合い、力を高めてもらおうと思う」

 

 一番上にいるサーゼクスさんがしっかりとした声量で僕たちに言う。

 確かに、新しい世代同士が競い合い、高め合うのはいいことだしよくある。だけど、それに他種族を巻き込むのはやめてほしい。まあ、了承し問題ない場合は別だけど。この中に無理やり、騙されて眷属にさせられた人がいない事を祈るよ。

 

「我々もいずれ『禍の団(カオス・ブリゲード)』との戦に投入されるのですね?」

 

 サイラオーグさんが堂々とした様子でとんでもない事を訊く。いやいやいや、僕は命を懸けて悪魔の為に戦うつもりなんてこれっぽっちもない! そもそも、レーティングゲームだって日鳥誇銅として戦うつもりはないのに。

 サイラオーグさんの言葉に、サーゼクスさんが首を横に振る。よかった! 本当によかった!

 

「それはまだ分からない。だが、できるだけ若い悪魔たちは投入したくないと思っている」

 

「何故です? 若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。この歳になるまで先人の方々からのご厚意を受け、なお何もできないとなれば―――」

「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし無謀だ。何よりも成長途中のキミたちを戦場に送るのはなるべく避けたい。それに、次世代の悪魔を失うのはあまりにも大きいのだ。理解してほしい。キミたちはキミたちが思う以上に宝なのだよ。だからこそ、大事にキチンと段階を踏んで成長してほしいと思っている」

 

 サーゼクスさんのお言葉に、サイラオーグさんは『わかりました』と、一応の納得をした返事をした。様子からして全く納得はしてないみたいだけど。

 でも、サイラオーグさんのやる気は分からなくもない。僕だって恩を受けた日本勢力のためなら全力で力になりたい。下をまとめる責任あるポジションならなおさらだ。

 だけど僕もサイラオーグさんも一貫して若すぎる。

 技術面では例えかなり成熟していても、精神面にはよほどの事がない限り難がある。大事な役目を安心して任せられない。って、スサノオさんが昔言っていたっけ。

 

 その後、全く頭に入ってこないようなお偉いさん方の話が続いた。難しいってのもあるけど、悪魔を辞めようと思ってるから本当に必要性を感じられない。

 早く終わってほしい。そうすれば後は……あっ、アザゼル総督の修業があったんだ。嫌だな~。忘れた勉強の復習をしないと成績が、夏休みの宿題も早めに終わらせたいのに。拒否なんてできないんだろうな。

 

「さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。なに、私たちは若いキミたちに夢や希望を見ているのだよ。それだけは理解して欲しい。キミたちは冥界の宝なのだ」

 

 サーゼクスさんの言葉に若手全員が聞き入っているのがわかる。僕も魔王様が嘘偽りを言ってないだろうってのが良く解る。いや、リアスさんに見捨てられた時の事があるから。

 少なくとも日本は悪魔から多大な迷惑を被ってる。どっちにしろ信用はできても、信頼はできない。

 

「最後に、それぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」

 

 サーゼクスさんの問いかけに最初に答えたのはサイラオーグさんだった。

 

「俺は魔王になるのが夢です」

『ほぅ……』

 

 躊躇うことなく言い切ったサイラオーグさん。その目標に誰もが視線を向け、彼の凛とした姿を認識していた。お偉いさんたちも、堂々と言った魔王と言う目標に反応を示す。

 

「大王家から魔王が出るとしたら、前代未聞だな」

「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」

 

 お偉いさんの前でここまではっきり言えるなんてすごいし、羨ましい。きっと僕にもサイラオーグさんのように堂々とできれば、修業も冥界旅行自体も拒否できたんだろうな。

 サイラオーグさんの次にリアスさんが目標を言う。

 

「私はグレモリーの次期当主として生き、レーティングゲームの各大会で優勝することが近い将来の目標ですわ」

 

 サイラオーグさんのような最終目標ではなく、近い所に一つ目標を置いた言葉だね。

 悪く言えば小さい、でも堅実に一つ一つ目標をこなして行こうって感じがする。昔の僕なら、リアスさんの夢を叶えるために頑張ろうと思ったんだろうね。

 まあ、昔のままだったらリアスさんの中に僕自身は仲間としてカウントされてなかっただろうけど……。

 その後も若手悪魔たちがそれぞれ夢や目標を口にし、最後に残ったのはソーナさんだった。

 

「冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

「レーティングゲームを学ぶところならば、既にあるはずだが?」

 

 お偉いさんたちは眉根を寄せ、確認するようにソーナさんに訊いた。

 それに対し会長は、淡々とした様子で答える。

 

「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行くことが許されない学校のことです。私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔てのない学舎です」

 

 まさか、レーティングゲームの学校は中級悪魔以下には行くことすら許されてなかったのか。そこに分け隔てなく教育する場を与える学校を創る。とっても素晴らしい考えだと僕は思いますよ! そうなれば、きっと冥界は良い方向へ行くと思う。

 

『ハハハハハハハハハハッ!』

 

 お偉いさんたちの笑い声が会場に響き渡る。その笑いには、明確な悪意が籠っていた。嘲笑? 罵倒? 滑稽? 無謀? いいや、それら全てが混ざり合った悪意の笑い声。これを聞いて僕は思った。町並みは現代風に変化しても、その頭の中は相当昔のまま、この人たちの頭の中は変わってない。

 人はそう簡単に変わらない。それは仕方ない。天照様だって最初は自分勝手で人間の事なんてどうでもいいと思っていた。僕もかなり無茶なくらい遊びに付き合わされた。そんな天照様も今では立派な神として世代を受け入れつつまとめてる。

 僕はこれが悪魔が他種族に迷惑をかけてる原因だと理解した。

 

「それは無理だ!」

「これは傑作だ!」

「なるほど!夢見る乙女というわけですな!」

「若いというのはいい! しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がそのような夢を語るとは。ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったというものだ」

 

 強く、長寿だからこそ変わらない。循環しない水は濁っていくのみ。

 その意味でソーナさんの思考は素晴らしくも異質な考えなんだろうね。

 

「私は本気です」

 

 ソーナさんは真っ直ぐに言うが、そんなの濁ったお偉いさんには届かない。姉であるセラフォルーさんだけはわかりやすくソーナさんの意見に同意を示していた。それと同時に潰れてしまいそうな立場にいるソーナさんを心配もしている。

 こんなにお偉いさんに笑われさらし者にされてソーナさんは大丈夫かな?

 僕も心配になってソーナさんを見てみるとなんと、全く堪えてる様子はなかった。笑い声を気にも留めず腕時計で時間を確認していたよ。

 

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出されるのが常。そのような養成施設を作っては、伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰すこととなりますぞ? いくら悪魔の世界が変革の時期に入っているとはいえ、変えていいものと悪いものがあります。全く関係のない、たかが下級悪魔に教えるなどと……」

 

 パァァァァァァァァァァァァンッ! パチィィィィィィィィィィンッ!

 

 お偉いさんが古くさい伝統や転生悪魔を見下した事を言ってると、それを黙らせる轟音が会場に“2つ”鳴り響いた。

 音の原因は国木田さんが手を叩いた事。だけど、とても手を叩いただけとは思えない轟音が鳴り響いた。結構本気で鳴らしたよね?

 そして音は国木田さんだけのものでない。それはサイラオーグさんの眷属。スサノオさん並みの巨体を全身マントで隠している。その人が指ぱっちんで指ぱっちんとは思えない音を響かせたのだ。

 

「ソーナ殿、サイラオーグ殿、下僕の躾がなってませんな」

「申し訳ございません。後で言ってきかせます」

「私も後できつく叱っておきます」

 

 音でびっくりしてしばらく耳を押さえてクラクラしてたお偉いさん方。その状態から回復するとソーナさんとサイラオーグさんに眷属の行為を注意する。

 実行した当の本人たちは全く悪びれた様子はない。それどころか妨害した二人はお互いをじっと見て、国木田さんは何か満足したように笑って目線を外した。向こうはフードで顔が見えないからよくわからないや。でもちょっとスカッとした。

 

「ならなら! うちのソーナちゃんがゲームで見事に勝っていけば文句もないでしょう!? ゲームで好成績を残せば叶えられるものも多いのだから!」

 

 突然のセラフォルー様の提案に、魔王以外の皆が驚いていた。

 プンスカと可愛く怒っているが、冷気の魔力が漏れてる事から見た目通りの怒りではないね。

 

「もう! おじさまたちはうちのソーナちゃんをよってたかってイジメるんだもの! 私だって我慢の限界があるのよ! あんまりイジメると、私がおじさまたちをイジメちゃうんだから!」

 

 セラフォルー様は涙目でお偉いさんの悪魔たちに物申していた。当のお偉いさんたちは魔王レヴィアタン様の涙目の怒りに反応に困っている。

 そして、セラフォルー様の怒りに、セラフォルー様の妹のソーナさんは顔を恥ずかしそうに覆っていた。

 でも、セラフォルー様の言葉にもちょっとスッキリした。国木田さんとサイラオーグさんの眷属が妨害してくれたのも良かったけど、やっぱりはっきりと言葉に出して通してくれた方が何倍も気分がいい。お偉いさんも魔王の言葉はバカにできないか。

 ソーナさんは恥ずかしがってるけど、しっかりと抗議してくれるなんていいお姉ちゃんだと僕は思うな。

 

「ちょうどいい。では、ゲームをしよう。若手同士のだ」

 

 サーゼクス様の一言に皆が注目する。

 

「リアス、ソーナ。戦ってみないか?」

「……」

「……」

 

 リアスさんとソーナさんは顔を見合わせ、目をパチクリさせて驚いていた。

 

「元々、近日中リアスのゲームをする予定だった。アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったのだからね。だからこそ、ちょうどいい。リアスとソーナで1ゲーム、執り行ってみようではないか」

 

 サーゼクスさんは朗らかな笑みを浮かべていう。この笑みからおそらく元々、ソーナさんとぶつけるつもりだったのかもしれない。

 それにしてもアザゼル総督か。きっとこれは、冥界での強化合宿の締めくくりのつもりなんだろう。嫌だな~。でも、国木田さんと戦うのはちょっぴり楽しみなんだけどね。

 

「公式ではないとはいえ、私にとっての初レーティングゲームの相手があなただなんて……運命を感じてしまうわね、リアス」

「競う以上は負けないわ、ソーナ」

 

 火花を散らす両者。ソーナさんの実力は知らないけど、国木田さんが、日本妖怪が協力してるとなると単純な力比べは絶対にしてもらえない。パワー系統が多いこちらはかなり不利になるだろうね。

 

「リアスちゃんとソーナちゃんの試合! うーん☆燃えてきたかも!」

 

 さっきまで怒っていたけど、セラフォルー様も楽しげにしている。

 

「対決の日取りは、人間界の時間で八月二十日。それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。詳細は改めて後日返信する」

 

 サーゼクス様の決定により、リアスさんとソーナさんのレーティングゲームが開始されることとなった。




 <平安時代の日本でも表向きは名家で裏は七災怪。加えて美人の藻女さんも町に出れば人間妖怪問わずに人気者だった。>

 この部分にもしかしたら疑問を持つ方がいるかもしれないので一つ私なりに調べた補足を記述しておきます。気にしないという方は特に関係ない補足なので無視していただいても構いません。

 まず、平安美人と言えば、ふくよかな頬のぽっちゃりしたおかめ顔を想像する人が殆どでしょう。でも私は平安時代に生きていた藻女を現代でも通用する妖艶な美人にしたかったのです。だから何とか言い訳ゲフンゲフン。他の説がないか調べてみました。
 そこで私はある説を見つけました。
 そこには平安美人は現代美人と変わらないという記述を見つけました。

 平安時代の大人気小説『源氏物語』の記述からは、本当のノッペリ顔はむしろ不美人の証だったとわかるんです。『源氏』の「空蝉(うつせみ)」の記述がその証拠なのですが、見た目もステイタスもすべてが最高という設定の「絶世の美男子」光源氏が、マジ惚れしてしまったのはそんなに美貌でもない年上の人妻・空蝉でした。
 光源氏は「わたしはなんで、こんな大したことない女性のことを、本気で好きになってしまったのだろう」と焦ります。
 そこに空蝉の外見描写が乗っていました。今まで平安美人との写真とそっくりです。

 まあ他にもいろいろ書かれていましたが、これ以上は蛇足と判断させていただきました。
 実際、平安美人はおかめ顔ではなかったという記述はあっても、現代美人と同じという証拠はなかったので。でもまあそんなには変わらないだろうとは思ってます。
 それでは皆様、また次のお話で。
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