バカと喧嘩と言えない秘密   作:mos

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part N

 しめた! これなら召喚獣が使える!

 

「──試獣召喚(サモン)!」

 

 僕の喚び声と共に足元に現れる幾何学的な魔法陣。

 そしてそこから木刀を携えたお馴染みの召喚獣が姿を現す。

 

 よしっ! 召喚獣さえ使えれば────うん? 点数表示が出ない?

 何故だろう。正規の戦いではないからか?

 まぁいい。とにかく今はここを切り抜けないと!

 

「吉井が召喚獣を!?」

「ひっ、怯むな! 俺たちも召喚獣が使える! 各自召喚して包囲しろ! 試獣召喚(サモン)!」

『『試獣召喚(サモン)!』』

「だったらウチも……! 試獣召喚(サモン)っ!」

 

 須川君率いるFFF団、それに美波も召喚獣を喚び出し、睨み合う。

 運の悪いことに相手の武器は片刃の(つるぎ)長刀(なぎなた)

 下手に刃を交えれば僕の召喚獣の木刀はあっという間にバラバラにされてしまうだろう。

 救いは須川君の武器だけは以前と変わらず長棍であることか。

 

 点数は出ないが、科目は現国のようだ。

 美波が苦手としている科目のひとつ。正直言って僕も得意ってわけじゃない。

 

「吉井、現国とは運が悪いな」

「く……」

「ウチを甘く見ない方がいいわよ。結構点数上がってるんだから!」

 

 身構える僕と美波。相手はFクラス男子五名。

 召喚獣を使える分さっきよりはまだ良い状況だけど、さすがに五人が相手では分が悪い。

 個人単位で見れば恐らく僕と彼らの実力はほぼ互角。

 美波はああして大見得を切ったけど、期末テストの答え合わせを見る限りでは彼らより下だろう。

 それに加えて五対二のこの状況。力の差は歴然だ。やはりまともに相手をしていられない。

 

 とは言え、逃げるならどうにかして突破口を作らなければならない。

 だが前後は抑えられ、左右は壁だ。

 確かに以前、僕の召喚獣で壁をぶち抜いたこともるけど、それは教室の壁。

 ここのコンクリートの厚さは見た感じ三十センチくらいある。あの時とはわけが違う。

 それにもし仮に穴を開けられたとしても、そんなことをすれば鉄人がすっ飛んでくるだろう。

 つまり、この前後の包囲網のどちらかに突破口を作るしかないということだ。

 

 ……どうせ作るなら……前だ!

 

「吉井は一点集中で突破を狙ってくる! 単独で行動するな!」

『『了解ッ!!』』

 

 さすが幾多もの試召戦争を共にして来た須川君。

 僕の行動はお見通しってわけか。

 

 ──だが!

 

「うらぁっ!」

 

 あえて真っ直ぐ正面に斬ってかかる僕の召喚獣。

 

「なっ!? 真っ向から!?」

 

 警戒している所に真っ直ぐ突っ込んでくるバカはいない。普通ならそう考えるだろう。

 それを逆手に取ったのだ。

 

 僕の召喚獣の突進に須川君とその召喚獣が後ろへ退く。

 距離を取って体勢を立て直すつもりだろう。だがそれは僕にとって好都合!

 僕は空いた場所に召喚獣を進ませ、戦場を校庭へと移す。

 よし、もう少し押せば広い場所に出る。そこで隙を見て一気に駆け抜ける!

 

「くたばれ吉井ッ!」

 

 下がった須川君の代わりに二人の召喚獣が刃を振り下ろす。

 両側からの同時攻撃を受け止めることはできない。

 十分引き付け、紙一重で避ける僕の召喚獣。

 そこへ須川君の長い棒が正面から伸びてくる。

 

「くっ……!」

 

 避けきれず、止む無くそれを木刀で受け止める。

 しまった! これじゃ他の二人に対処できない!

 

「今のうちにヤツを倒せ!」

「「了解ッ!」」

 

 須川君の指示に二人の召喚獣が襲い掛かる。

 くそっ、仕方ない!

 召喚獣を一旦下がらせ、間一髪攻撃を避ける。

 

「ハァッ!」

 

 下がった所へ須川君が棒を振り下ろす。

 体勢の立て直しが間に合わず、堪らず再びそれを木刀で受け止める。

 息をも突かせぬ連続攻撃。やはり三人相手では反撃の隙が無い。

 それに須川君たちも召喚獣の扱いに慣れてきているようだ。

 互いに押し合いながら睨み合う僕と須川君。

 

「やるじゃないか──須川君!」

「フッ……。お前もな」

 

 いや、だからそのキザな台詞は似合わないってば。

 

「「隙ありぃーっ!!」」

 

 睨み合っているうちに後ろから襲い来る二体の召喚獣。

 しまった! 後ろの二人を忘れていた!

 

「やらせないわよ!」

 

 勇ましい美波の声と共に金属がぶつかり合う音が響き渡る。

 

「美波!」

「アキ! 後ろは任せて!」

「分かった! 頼む!」

 

 背中合せに構える僕と美波。

 どうやら僕が前の三人を相手にしている間、ずっと後ろを守っていてくれたようだ。

 この時、僕は美波を心底頼もしいと感じた。

 

 だが状況は依然として僕たちが不利だ。

 このまま戦っていては消耗していずれ倒れてしまう。

 なんとかしてやり過ごさなくては……。

 しかしこの包囲網。どうすればいい……?

 

「オラっ! 観念しろ吉井!」

「くっ!」

 

 振り下ろされる長刀を間一髪のところで避ける。

 作戦を考えている間にも彼らは執拗に攻めてくる。

 くそっ! 落ち着いて考えることも出来やしない!

 

「やるわね。アンタたち……」

「我ら異端審問会の信念をなめるなよ!」

「信念ならウチだって負けないわよ!」

 

 後ろの美波も二人を相手に苦戦を強いられているようだ。

 

「よそ見とは余裕だな吉井!」

 

 美波に気を取られている隙に須川君の棒が僕の召喚獣を襲う。

 

「ぐあっ!」

 

 し、しまった! 武器が!

 

 なんとか避けたものの、棒が木刀に当たり、僕の召喚獣は得物を跳ね飛ばされてしまった。

 激しく回転しながら宙を舞う木刀。

 

「勝負あったな。吉井」

 

 須川君が勝利を確信したような顔を見せる。

 

「まだ……終わりじゃ────ないッ!!」

 

 せっかくここまで切り抜けてきたんだ! 諦めてたまるか!

 僕は召喚獣を跳び上がらせ、木刀に手を伸ばす。

 

 ──掴め!

 

 僕の召喚獣は真っ直ぐ木刀に向かって上昇していく。

 この行動を予測していなかったのか、須川君たちは驚きの目でこの様子を見上げていた。

 その隙に僕の召喚獣は空中で回転する木刀を掴み、地上に降り立つ。

 

「僕は……僕は負けるわけにはいかないんだ!!」

 

 召喚獣に木刀を構えさせ、めいっぱい力を込めて言い放つ。

 

「く……」

「何なんだよコイツ……」

 

 僕の気迫にたじろぎはじめるFFF団。

 

「おのれ吉井……! 数ではこちらが勝っている! 手数で押すぞ!」

「「おぅっ!」」

 

 しかし須川君の言葉で彼らはすぐに指揮系統を取り戻した。

 さすが雄二の指揮を見てきただけのことはある。いい結束力だ。

 

 でも今のでここからの脱出方法を見つけたぞ。

 と言っても須川君たちを撃破するのではない。

 三十六計逃げるに如かず。彼らの相手をする必要は無いのだ。

 

 それには召喚獣の力が必要だ。

 ただ、それは美波の召喚獣では出来ない。僕の召喚獣にしか出来ない仕事だ。

 けど向こうも攻撃の手を休めてくれそうにない。

 

 ならば────これだっ!

 

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