八神クリニックへようこそ! 作:ナンジェイ
CLANNADは人生(名言)
人生というのは書いて字の如く、人の生き様を表す言葉である。個々の価値観によってそれぞれ歩む道が違い、周囲の環境によっても左右されるだろう。流石に生まれ落ちる場所は当人に選択権は無い、前世の自分が善き行いをしている事を願いたい。そして今の世もまた善行をする事で、来世でも良き廻り合わせに遭うように努めていきたいものだ。
そして言っておいてなんだが、人生はそう簡単に語れるものではない。例えどれだけ長い年月を過ごそうとも、易々と人が人へ教えを説くものではないと思っている。人の身で人生を測ろうなどおこがましい、そんな暇があったら自分の人生を見詰めるべきだ。人に教えを説く程の器であれば、それはもう素晴らしい生涯を全う出来るのではなかろうか。
ただ、人という生き物は本当に凄いと思う。何故なら、人生という言葉をこれ程までに表せる事が出来るのだから──
『早苗さんが、言ってた……泣いていいのは、おトイレか──パパの胸の中だって』
「汐おおおおおお!」
茶髪幼女の潤んだ視線に堪えきれず、液晶画面へ抱き付いてしまった。ダメだ、このシーン何回観てもヤバい……
実は現在夜の自室にて、人生とまで称された某鍵作品を観賞しています。かわいい汐かわいい……そして心が離れ離れになっていた父娘が、その長いトンネルを漸く抜けて通じ合う場面が幼女ボイスに破壊力を増して更にオレの涙腺を崩壊させてくれる……! オレも……オレもこんな娘が欲しいよぉぉぉぉぉぉ!
あ、でもその前に結婚しないとね。そしてこの後汐達が救われるように、オレも奥さんもらって子どもを授かって幸せな家庭を築きたい。結婚は人生の墓場とか言う人いるけど、こんなの観てたら結婚に夢を持つのも仕方ないと思う……誰かいい人いないかな。
何て事を、未だ泣き続けている汐と朋也の抱擁シーンが映っている画面に抱き付きながら考えていると、急に部屋の扉が開いた……あ。
「うわぁ……」
「夜に近所迷惑やと思ったら……兄ちゃん何しとんねん」
扉を開いたシャマルと、彼女にお姫様抱っこされているはやてのドン引きした視線が胸に突き刺さります。いや、これには深ーい事情がありまして……
そしてオレが必死に言い訳を考えていたそんな中、二人は頭が痛いといった様子で額に手を当てながら話しています。
「現実で誰にも相手されへんからって、遂に二次元に手ぇ出してもうたか……一体何処で教育間違ったんや」
「今ちょっと本気でお兄さんが気持ち悪いと思いました……」
なんて理不尽な評価……お前ら観た事ないからそんな事言えるんだよ! あとオレと同じ全国の……いや全世界の汐ファンに謝れ! いいか、オレ達は汐を見守っているだけで手を出すような気は一切無いんだよ。YESロリータNOタッチなんだよ。その信条を忘れるな……!
ファンの一人として力説していると、更に突き刺さるような視線が浴びせられた……胸が痛い(涙
「はぁ……ええやろ。そこまで言うんならちょっとだけ見たったる」
「これでただの小さい子が出てくるアニメだったら本気で軽蔑しますよ?」
「ふん……PC版で光の玉を集める努力もせずたった数話で見定めようなど片腹痛いが……よかろう、目にもの見せてやる」
時間が時間なので、取り敢えずデッキからディスクを取り出してAFTER STORY一話から再生する事に……あん? 今から一話だと朝になるって? うるせぇこれでも大分端折ってんだぞ!
説明したら放映時間が長いだのやいやい騒ぐはやて達を鎮めて、一話から再生を始めます。ああ、オープニングから泣ける……!
えー、結果から言うとオレの大勝利でした。はやてとシャマルはわんわん泣いていましたね、何故か感情の矛先がオレになって袋叩きに遭ったのは腑に落ちないけど。それとアニメは後日、家族みんなで初めから観賞する事になりました。
やはり鍵作品は偉大だ……!
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大人に比べ、幼少時期は免疫力がそれほど高くない。その為病気に対する予防は徹底する必要があり、季節毎にそれぞれ対策を実施して我が子の健康に努める事が望まれる。潔癖になれとまでは言わないが、普段の私生活においても少し気を付けるだけで防げる病気が殆どだ。皆も普段から手洗いうがいは心掛けよう。
この八月の時期にかけて、夏特有の病気として夏風邪と呼ばれるものがある。症状によって幾つか分類されるが、ここでは俗に言うプール熱について話したいと思う。
正式名は咽頭結膜熱と言い、夏の時期にアデノウイルスによって引き起こされる小児児童が発症する事が多い病気だ。主に飛沫感染と接触感染が感染経路になり、プール熱と呼ばれる事から夏のプールで感染するという事例が多く見られる。プール使用前、使用後のシャワーや洗顔、手洗いうがいである程度は防げるので、公共のプールを使用する時は親御さんに注意してもらいたい。
何せこの病気、明確な治療薬が存在しない。対症治療によって抑えていく事になるので、高熱ならば解熱剤、結膜炎なら点眼薬といった具合に処方が違ってくる。発症中は勿論辛いので、子どもの諸君は本当に手洗いうがいをしてね。
そして、本日の八神クリニックにも該当患者が訪れているのだが……
「高熱か……他は目立った症状が無いので、抗生物質と解熱剤を処方しておきましょう」
「ありがとうございます、先生」
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「結膜炎が酷いですね……目薬を出しておきましょう。熱も微熱とは言え、これから発熱する可能性があるので解熱剤と、二次感染防止で抗生物質も処方しておきます」
「はい、お願いします」
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「のどの炎症を抑えるお薬を出しておきます。手洗いうがいを心掛けてね?」
「えへへ……せんせいありがとう」
「(ミコトちゃんかわええ……!)」
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「あの、先生……どうですか?」
「……」
「えっと……松お兄ちゃん?」
「……お前ら手洗いうがいとかちゃんとしろ。プールの前と後にシャワーや洗顔も忘れるな。ちぃたぁ気ぃつけろや!」
……キレた。熱中症患者が押し寄せてきた時と同じ頻度でプール熱の患者ばかり来るので我慢の限界を越えた。いや、子ども相手にキレるとか最低なんだけど……
だってみんなに聞く度聞く度に手洗いうがいやらシャワーやらしてなかったって話すんだもん。怒ったって仕方無いよね……今まで親御さんに強く言えなかったオレなんてチキン。
「ご、ごめんなさいっ!」
「ごめん、なさい……」
目の前の椅子に座っているベージュがかった髪色の少年、ユーノ・スクライア君が頭を下げてきた。何故か付き添いで来ているなのはちゃんも涙目になりながら隣で頭を下げ、上目遣いでこちらの様子を窺っている。
ユーノ君や、チミはもしかして……なのはちゃんのアレだったりするのかな? たった九才でお付き合いなんてお兄さん絶対に許しません。きっと士郎さんや恭也も同じ考えのはずだろう。今度二人も呼んでユーノ君とは四人できちんと話し合いが必要なようだ。
……ん? もしかして怒鳴ったのはそれが原因だって? いやいや、診察に私情を混えるなどオレがするわけ……そりゃあなのはちゃんと付き合うなんてオレが許さないって不機嫌なのはそうだけど──
「思いっきり私情です、あと子どもにいきなり怒鳴ったりしてはいけませんっ!」
「あいたっ!」
ぐ、後ろに控えていたシャマルからバインダーの天誅が……あの、シャマルさんヴォルケンリッターで癒し担当ですよね? 物理担当は他の三人ですよね? 前衛型の回復役とか聞いた事ないんですけど……
だってなのはちゃん取られちゃうんだよ? あの可愛い笑顔が一人の男のものになっちゃうんだよ? AでBでCな関係になっちゃうんだよ? オレ耐えられないよ……!?
「お兄さんはなのはちゃんの一体何なんですか……」
「そんな事決まっている……お兄ちゃんです!」
「貴方の妹ははやてちゃんですよっ!?」
はやて? 知らないよあんな凶暴な茶髪少女。ヴィータは大切な妹だけど、はやてはオレに対しての仕打ちが酷いからもう知らないもんね。オレの妹はヴィータとなのはちゃんで充分です。
「そうですか、でしたらはやてちゃんが他の男の子とお付き合いしたとしても口出ししないでくださいよ?」
……え? 今なんて? はやてにそんな相手いたの? 初耳何ですけど……(涙
い、いつの間に出逢いイベント消化してたんだ……そいつ誰だか知らんがぶっ殺すぞこの野郎。
「あ、あはは……面白い人だね、なのは」
「にゃははは……」
こらそこ勝手に仲良くしない!
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ユーノ君の診察終了後。ロビーに残っていた患者の皆さんにはお帰りいただいて(ちゃんと別の病院紹介してあげたよ?)クリニックを閉めると全速力で我が家へ帰宅した。シャマルが横で騒いでたけど知らない、オレには仕事なんかより重要な事なんだよ!
シャマルの制止を振り切って自宅へ戻ると、リビングでヴィータやザフィーラさんと寛いでいたはやての姿を見付けて一目散に抱き付いた。
「ど、どないしたんや!? 急に……」
「ただいま」
「お、おかえり……帰ってくるの早かったんやね。なあシャマル、兄ちゃん泣きそうな顔しとるけど何かあったんか?」
「そ、それが……」
困惑した様子ではやてが見上げる先、シャマルは苦笑いをしつつ言葉を濁していた。そりゃあシャマルも本当の事言えないよね、だってはやての秘密バラしちゃったんだから。
そして肝心の我が妹。ありましたよ、ええありましたとも。この妹しれっとシャマルに状況が分からないといった口振りで話してるけど、そんな余裕の態度もそこまでだ! 兄ちゃんに隠し事なんて出来ないんだからな!
「はやて……兄ちゃんはお付き合いなんて絶対に認めません」
「……はあ?」
「認めないったら認めない! はやてに彼氏なんてあと十年は早い! いやそれでも早い! とにかく早いの!」
あ、やべ……必死すぎて徐々に問い詰めていく作戦が第一歩で転んだ。まあいいや、取り敢えずはやての彼氏なんて認めない。いくらなんでも早すぎる。不純異性交遊いくない。
図書館行くの禁止、借りたい本はシグナムに頼む、買い物もオレ達が全部やる、はやては一歩も外に出さないからな!
「こ、恐いよ兄貴……」
「ほんまに何があったんや……」
ヴィータとはやての顔が引きつってるけど気にしないもんね。大切な妹を守るためならなんだってしちゃうもんね。嫌われたってやめないもんね……いや、流石に嫌われるのは傷付くんでどうしてもって言うなら外出許可くらい出すけど。
「ええっとですね。実はさっき、もしもの話で『はやてちゃんに彼氏ができてもお兄さんは口出ししてはダメ』って話題になって……」
「そ、それで兄ちゃんその話を本気にしたいう事か?」
「みたいです」
「わ、我が兄ながらとんでもないシスコンやな。これは喜ぶべきなんやろか……」
シャマルから事の経緯を聞き、はやてが何故か頭を抱え始めた。大事な妹を心配して何が悪い! でも今もしもの話とか聞こえたけど……気のせいだよね。あのシャマルが嘘なんかでオレを苛めるわけないもん。え? 人の話を聞け? 聞いたからこうして心配になって仕事切り上げたんじゃん。
「に、兄ちゃん。私に男の人なんておらへんから……なんでこんな事を実の兄に言わなあかんのや」
「ほ、ほんと? ほんとにほんと?」
「ほんまやて……第一兄ちゃんが結婚するまで私この家出ていかれへんし。料理とかどないするんや」
「いや、料理はオレ出来るよ?」
「やったら出ていってもええんか?」
「嘘です料理出来ません!」
ちょっと見栄を張ったら、悪戯な笑みを浮かべながらはやてが苛めてくるのでたまらず抱き付く力を強めた。くっそ、兄の良心を弄びやがって……でもまあ、はやてに彼氏がいたのは誤解だったようで何よりだ。
……べ、別にはやての事なんて大好きじゃないんだからねっ!
「はぁ、こんな兄ちゃんに良い人なんて見つかるんやろうか……シャマルかヴィータ、兄ちゃんもらってくれへんか?」
「あははは……お兄さんがいいなら私はどちらでも」
「兄貴だったら別にもらってあげてもいいぞ?」
「やって、兄ちゃん。良かったやんか」
「う、うるさい! そうやって身を固めさせて彼氏作ろうったってそうはいかないからな!」
まあ、慕われてるのは嬉しいんだけど……まず初めに家族だから結婚できないからね? ヴィータと結婚とかもうお縄を頂戴するレベルだからね? 結婚なんてしなくていいもん……
と、そんなこんなで家族仲良くリビングでじゃれあっていました。ザフィーラさんが空気とか言わない、ずっと気持ち良さそうに寝てたんだから仕方無いじゃん。あれ? でももう一人足りないような……あ。
「そう言えばシャマル」
「どうしたんですか?」
「シグナムに今日閉院するって伝えた?」
「あれ? お兄さんが伝えたんじゃないんですか?」
……ま、まあ書類仕事残ってるだろうし……自主的に働く事も大切だよね!
主人公最初と最後で言ってること違うし、シスコンが気持ち悪いレベルだね。
はやては幸せだなぁ(白目