八神クリニックへようこそ!   作:ナンジェイ

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小さな女の子が出ると聞いて、つい最近こどものじかんなるアニメを観賞した。オレには内容が過激すぎました……

あと不覚にも第六話で泣いた。(´;ω;`)ブワッ


カルテ14

 

 

 

 人は誰しも幸福を求める。優雅な暮らし、穏やかな日常、平和な世。人によってその尺度は違えど、行き着く先は幸福感であり、己を満たすものに変わりはない。幸せになりたいと願うのは、誰であれ当然の事だろう。

 

 ある者は宝くじで百万円を手に入れた。またある者は道端で百円を拾った。金額だけなら雲泥の差だろう。誰もが百万円を手に入れた時の方が幸福感は得られると考えるのが普通だ。

 

 しかし、例えば百万円を手に入れた人物が、巨万の富を得ている何不自由無い生活を送っていたとして。百円を拾った者が、明日の食事もままならない貧しい生活を送っていたとして。その場合、より幸福感を得ている者は間違いなく後者になる。不思議な話だが、それだけおかれている環境や人の価値観によって幸福度は様々だ。

 

 誰もが幸せに暮らせる世の中。なるほど聞こえはいいだろう。世界に幸福が満ち溢れる光景、人々もそれを理想として日々生きている。しかし、結局のところ人間の器では、己の幸せを考える事だけで精一杯なのだが。

 

 ただ、幸せを維持する為にどれだけ努力をしようとも。他人の幸福の為にどれだけ善行を重ねようとも。これだけははっきりと言える。

 

 

──この世界は、掴んだ筈の幸せをある日突然奪う事のある、理不尽なものだという事だ。

 

 

「クソッ! 分かっていたんだ。こうなる事は、ずっと前から……!」

 

 

「お兄さん……」

 

 

 つい先程八神クリニックに訪れたミコトちゃんの診察を終え、一週間後に訪れるように伝えてからその姿を見送った後。診察室に戻り、抑えていた感情を爆発させるかの如くデスクへ両拳を力任せに叩きつける。そうする事でしか、胸に込み上げてくる腹立たしさや悔しさを表すことが出来なかった。隣ではシャマルがそんなオレの姿に心配した様子で、胸へ手を当てながら落ち込んだ表情を見せている。

 

 抗いようのない世の理に、オレはたった今世界の理不尽さをこれでもかというほど思い知らされた。痛感せざるを得なかった。以前から兆候はあった。人ならば必然的な変化だ。その現実から目を背けていただけで、オレ自身は既に分かりきっていた。それでも、やはり実際にその変化を知ってしまうと、何とも言えない悔しさを覚えてしまう。

 

 この世界は余りにも理不尽だ。人である以上その流れには逃れられないと分かっていても、分かっているからこそ深い憤りを感じてしまう。どうして神は人にこの様な試練を与えた、何故この様な残酷な現実を突き付ける。オレが、ミコトちゃんが一体何をしたって言うんだ……!

 

 

「お兄さん……その、ただの風邪だって診断していましたけど……ミコトちゃんの容態ってそんなに思わしくないんですか?」

 

 

「シャマル……そうだな、お前にだけは教えておいた方がいいか」

 

 

 診察に訪れた患者が使用する椅子をオレの横に移動させ、深刻な表情を浮かべながらシャマルはそれに腰を下ろした。オレだけに辛い現実を受け止めさせる訳にはいかない、そんな彼女の優しさがひしひしと伝わってくる。

 

 オレは本当に良き家族を持った。彼女をオレ達の元へ呼んでくれた運命には感謝せざるを得ないな。この現実を受け入れる事で、その運命に対する応えとしよう。

 

 意を決して言葉にする。その、余りに残酷で非情な現実を……!

 

 

「実はな……ミコトちゃんの、胸が……」

 

 

「胸、が……?」

 

 

「胸が──一センチ、大きくなってた……!」

 

 

「……え゛」

 

 

 そう、ミコトちゃんの胸が僅かに膨らみを増していた。勿論外見では大差の無い変化だが、ここ三ヶ月程彼女を診察してきたオレには一目で分かってしまったのだ。これを……この現実を非情と言わず何と言う!

 

 いや、本来なら幼女の成長は喜ぶべき事なんだ。それは分かっている、分かってはいるんだ。日々成長していく姿に一喜一憂し、見守り続ける事がオレ達大人の役目だという事は十二分に理解している。

 

 だが、それでもやはり譲れない想いというものはある。屈託の無い笑顔を振り撒く幼げな顔。見るだけで安らぐ申し訳程度の膨らみの胸。神秘的な弾力を生み出す小さなお尻。これらは決して失ってはならない、この世の至宝である……!

 

 それが失われていく過程を見なければいけないこの辛さよ。おお、シャマル。この想い、分かってくれるか……!

 

 

「へ……変態っ! 変態っ、変態っ、へ、ん、た、いっ!」

 

 

「あいたっ! ってちょっと待てシャマル!? あっ! いたいっ! お願いやめてっ!?」

 

 

「さっきまでの私の心配を返してください! 最低です! お兄さんの馬鹿っ! お巡りさんこの人です!」

 

 

 いたいっ! 何故だか分からないけどシャマルが急にバインダーで叩きまくってくるんですけど!? やめてっ!? 叩きすぎたら頭がおかしくなっちゃう! そ……それ以上はらめえええぇぇぇ!

 

 はあはあ……や、やっと止まった。頭がズキズキしてヤバい……そんなに叩かなくてもいいだろ!

 

 

「信じられません……どうしてお兄さんみたいな人がお医者さんになれたんですか」

 

 

「え? そんなの医師免許取ったからに決まって──」

 

 

「……ッ!」

 

 

 まともに返事を返したら、シャマルのお怒りの眼差しが飛んできました……はい、口答えしてすみません。現状はどうやらオレが悪者らしい。一方的に暴力振るってきたのはシャマルなのに……解せぬ。

 

 幼女を愛でて何が悪い。幼女を見守って何が悪い。幼女に萌えて何が悪い。幼女に想いを馳せて……何が悪いっ!

 

 

「悪いですよ!? その思考が既に犯罪者のそれですっ!」

 

 

「あいたっ! ……お願い、バインダーで叩くのやめて」

 

 

「その危ない思考回路が正常に戻るまで叩きます」

 

 

「年上のお姉さん万歳っ! シャマルさん大好きっ!」

 

 

「っ……そ、そんな事言ったって許しません……!」

 

 

 バインダー振り上げてきたので正反対の事を言ったら、激おこだったシャマルが急に顔を背けて視線を合わさなくなった。くっ、これで許してもらえると思ったのに……まだちょっと顔赤いから怒ってるのか? ま、まあ……触らぬ神に祟り無しだよね。

 

 隣で急に黙り込んだシャマルはさておき、患者もいない事だし書類の整理でもやっとくか。電子カルテなる管理システムが登場している現代だが、メリットよりもデメリットを考慮してか導入していない医療機関も多い。特にうちのような小さな病院だと抱える患者もそれほどでは無いため、従来通りの紙による記録保存の方が安心できる。慣れた作業だからそこまで苦じゃないってのもあるが。

 

 PCにて近日中に通院してくる予定の患者を確認し、棚から患者のカルテを引き出して事前に考えておいた処置をもう一度検討しておく。人の身を任せられている以上、何度も考察してあらゆる事態まで想定しておかないと不足の事態を引き起こしかねない。医療ミスとかもう最たるそれです、患者の体質は本人以上に把握しておかないと大変な事になる。これでも色々と気を遣ってるんです。

 

 さて、取り敢えず……

 

 

「はぁ……私が甘やかしちゃうからお兄さんがこんな風になるんでしょうか? もう少し厳しくしないといけないって分かってるのに、何だか結局許しちゃってますし……」

 

 

 あの、シャマル? さっきから椅子に座ったまま独り言言ってないで仕事してくれませんかね……

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 カルテの整理を始めて早二時間と十分、流石に同じ作業の繰り返しだと飽きがきました。そんなんで仕事務まるのかよとか言わない、そもそもオレに労働意欲何てものはありませんですしおすし。まあ途中から受付で退屈していたシグナムと、隣でブツブツ言っていたシャマルに手伝わせているので大分捗ったが。

 

 ふと診察室の時計に目を向けると、時刻は既に正午を回っていた。丁度いい時間だし、そろそろ昼食にしよう。

 

 

「昼も過ぎたし、そろそろ飯にするか」

 

 

「そうですね……私お茶を淹れてきます」

 

 

「では……私はロビーの方で準備を」

 

 

「了解した。オレは表に札掛けてくるよ」

 

 

 二人に昼食の準備を頼んだオレは、診察室を出てからロビーを過ぎてクリニックの出入口へと向かう。自動ドアを通り、日が照りあげている昼中の外で空を見上げる。今日は風が少し吹いているようで、朝の天気予報で気温三十三度とか言ってたけど驚くほど暑くはない。ああ、こんな日は公園の滑り台で幼女が遊んでいる姿を下から眺めていたい……

 

 その光景を想像して思わずニヤついていると、遠くからこちらへ向かってくる人影が。一体誰だろう──

 

 

「兄貴ー! 弁当持ってきたー!」

 

 

「おっと……ってヴィータか。こんな所までどうしたんだ?」

 

 

「いやな、実はシグナムに兄ちゃんの弁当渡すの忘れてたんや」

 

 

 手提げバッグ片手に抱き付いてきたヴィータに続いて、車椅子に乗ったはやてが苦笑気味に姿を現した。オレのだけ忘れたってところに悪意を感じるのは気のせいだろうか。だって弁当一つだけ忘れるって中々無いよ? ……いや、考えるだけ哀しくなるからやめておこう。本当にたまたま忘れたっていう可能性もあるし。

 

 そんなありもしない可能性を信じて若干泣きかけていたその時。隣でヴィータが精一杯背伸びをしてきたかと思えば、それをやめた後にしゃがんでくれと合図をしてくる。

 

 ……何この可愛い生き物、その動作一つ一つに萌え死ぬんですが。

 

 

「実ははやて、兄貴とお昼食べたいからってわざと忘れたみたい」

 

 

「へぇ~、そうだったのかぁ……ふーん……」

 

 

 ヴィータが耳打ちしてきた内容に思わず笑みがこぼれた。何だかんだ言って、はやてもお兄ちゃんっ子だという事か。全く、世話のかかる妹を持つと大変だぜ……

 

 

「何や急にニヤニヤして……気持ちわるっ」

 

 

 うちの妹にも中々可愛いところあるじゃないかー、と思っていたらこの発言ですよ。ヴィータ、本当にそんな事言ってたの? 実の兄に対して、それも本人の目の前で気持ち悪いとか平気で口にする妹が一緒に食べたいなんて言わないと思うんですが……

 

 とまあ妹の反応に精神的大ダメージを受けながらも、休憩中の札を入口に掛けてから二人をクリニック内へと迎え入れる。中へ入るとロビーでは既にシグナムがテーブルへ弁当を広げており、今頃二つしか無い事に気付いたのか戸惑っている様子だ。遅れてシャマルがコップを三つ乗せたトレイを手にロビーへ姿を現し、オレの隣にいるはやてとヴィータに気付いた。

 

 

「あっ、ヴィータちゃんにはやてちゃん……もしかしてお兄さんのお弁当持ってきたんですか?」

 

 

「まあな」

 

 

「なんやシャマル、兄ちゃんの弁当無い事知ってたんか?」

 

 

「はい。ここに来る途中に気付いたんですけど、まあ別にいいかなって……」

 

 

 いや、気付いてたんなら言えよ。そしてそう怒鳴らなかったオレを褒めてほしい。まあ、実のところ怒鳴った反撃にバインダーで叩かれるのが恐いだけです、はい。今シャマルの機嫌を損ねたら直ぐにバインダーで叩かれそうなんで……正直オレの頭が保ちません。

 

 でもまあ、結局シャマルの中でオレの扱いはこういう事なのか……一応仮にも一家の主、的な立場なのよオレ? 自分で言うのも何だけど高収入だし家計に貢献してんのよ? それなのに皆さんちょっと扱い雑すぎやしませんかね。

 

 

「ふふ、はやてちゃんがわざと入れなかった事に気付きましたから」

 

 

「主はやても来られたのですか。それよりどういう事だシャマル? 兄上の弁当が無かったのは主のミスでは無いと聞こえたが……」

 

 

「あーあー! シャマルとシグナムの言うてる事よう聞こえへんかったなー!」

 

 

 三人でガヤガヤ騒いでるけどどうしたんだろう。何かもうオレだけハブられた感すごいんですけど……どうやらオレの扱いは常時これで進むようです。

 

 全国のお兄さん、そして一家の主として働いている皆さん。どうかオレに、家族の中心となれる方法を教えてください。このままだとオレ、いつか人間不信になりそうです……(涙

 

 

「ア、アタシだって兄貴と昼御飯食べたかったんだぞ?」

 

 

 急に袖を引っ張られたので隣に視線を向けると、ヴィータが照れくさそうに上目遣いでそんな事を言ってきた。やだこの子可愛すぎて抱き締めたいんですけど。でも信じてたよオレ、ヴィータだけは味方なんだって……!

 

 

 全国の同志達よ。オレ、お縄を頂戴されても良いのでヴィータと結婚しようと思います。

 

 

 




感想をくれる同志達よ。よければついでに幼女の出てくるアニメを教えてほしい。
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