星光小夜曲 -Starlight Serenade- 作:ATSW
前回のあらすじ?
「はやてです……査察官が来たとです……おっぱい揉み甲斐ありそです……」
「はやてです……部隊に駄目だし出たとです……自信作やのにな……」
「はやてです……闇の書の件で誤解されてた言われた……欝や」
「はやてです……『海』ってやり方まちごうてるかな?」
「はやてです……魔法はそんなにも危険なんか?」
「はやてです……私いい気になっとるか?」
「はやてです……はやてです……」
「はやてです……」
「主……あそこまで落ち込むとは」
「はやてちゃん、あそこまで問題指摘された経験無いから」
「部隊長室にいたのか?
「「…………」」
◇
あたしティアナ・ランスターが仕事していたら、館内放送で急な召集を受けたので、他の皆と一緒にロビーへと集まった。
「ティア、どうしたんだろうね?」
「分からないわ、だから落ち着きなさいって」
「一体何があったんでしょう」
「キャロ、始まるだろうから待っていよ?」
壇上に八神部隊長、周りに隊長たちと……地上本部の制服着た男女!? 17~8歳位かしら。それにしては『男の子、女の子』ではなく『男の人、女の人』って呼びたくなる雰囲気を持っている。でも、似ている……あの男の子たちに。
「今回、地上本部から査察のために来られた、諏訪二佐と諏訪一尉や。それでは諏訪二佐、挨拶を」
その言葉に、男の人は前に出て挨拶を始めた。
「只今紹介された、諏訪淳志二佐だ。隣の諏訪晃生一尉と共に、しばらく世話になる。査察官と言う役職上、君たち機動六課課員には煙たい存在だろうが我慢してくれ。以上だ」
みじかっ!
お偉いさんの挨拶って、長いってのが相場なのに、10秒ちょっとで終わるとは。でも簡潔にまとめてくれたのは好印象ね。……じゃ、なくてっ!
「本人!?」
思わず叫んでしまった。みんなびっくりしている……あちゃぁ、失敗したわ。どうしよう……。
「ティアナ、どうしたの?」
なのは隊長が尋ねてきたけど、恥ずかしくて顔を上げられない。
「ランスター二士、お久しぶりですね。再会の挨拶にしては少しばかり奇抜でしたが」
この少々嫌味なくらい丁寧な話し方は晃生さん、あたしの恋がた……ごほん、以前お世話になった女の人で。悔しいことに淳志さんの奥さんだ。
「貴女もお元気そうで何よりですね」
「はっ、はい!」
「固いな。まあ今は勤務中だしな」
「もうしばらく時間を置いたほうが良さそうですね?」
「そうだな。旧交を温めるのは後にしよう。皆の仕事の邪魔になる」
「…………」
何か部隊長の顔が一瞬般若のような……気のせいよね、アンタラガオラナンダラハジメカラジャマニナランワ、なんて呪われそうな声は、あたし聞いてない!
ちょっとスバル! なにあたしにしがみついてんの! 暑苦しいから離しなさい!!
こらエリオ! 何腰抜かしてるのよ! キャロが隣で震えてるじゃない、男なら「自分がついているから」とか言って安心させなさい!
……あれ? ロングアーチの皆が、何か考え込んでいる?
「今回は顔合わせということで、無理をして皆に時間を作ってもらった。これ以上は本当に仕事の邪魔になる。八神二佐、解さ……」
「あ、あの! 二人とも、サングラスを取って顔を見せてもらっても良いですか!?」
ヴァイス陸曹!? あの人の心遣いを蹴り飛ばした上、なにずうずうしいお願いしてるのよ! あたしだって見た……そんなことは休憩時間にでもなってから言いなさい!
「そやなー、一緒の隊舎で仕事するんやし、サングラスかけっぱなしも目に悪いやろから、ババーンと、お披露目したってや!」
「ね、ねえ、ティア、……ホレ、ソノブサイクナツラ、オガマシテモラオカ、トットト、ミセヘンカイ、なんて空耳だよね?」
「あたしはそんな
「怖いです……」「キュクルー」
「ほら、エリオもしっかりする!」
「はっ、はい!」
混乱しているあたし達を余所に、壇上の二人が困ったように話していた。みっともない所、見せちゃったな……。
「どうします?」
「まあ、言っていることは正しいな。仕方ないか」
そう言ってサングラスを取る二人。諏訪二佐、三年振りだけどすごく格好良くなって。はぁ……、素敵。
「え、ええっ!? なのはさん、そっくり!?」
「そんなに似ていますか? ナカジマ二士」
「似てるなんてもんじゃないです! 瓜二つです!」
叫ぶ馬鹿スバル。でも仕方ないか。晃生さんは、なのは隊長にそっくりだから。他のみんなもざわついている。
でも隊長たちが驚いているのを見ると、彼女達も知らなかったらしいわね。ちょっと問題になりそう。
「おい、どういうことだ!」
やっぱり。シグナム副隊長が晃生さんに問い詰めようと……
「あ―――――――――っっっ!!!」
ヴァイス陸曹が凄い大声を上げた。
さすがの二人も驚いたみたいで、ヴァイス陸曹を見ている。
「思い出した! あの時のちびっ子査察官コンビ!」
「ヴァイス陸曹、失礼ですよ!」
注意するが、聞いてない。それどころか、何故か嬉しそうにしているわ。
「お久しぶりです! お会いできて光栄です!」
そういうと二人に近づき最敬礼。……ちょっと?
「6年前の伝説の! 星天の王! 星光の女神! 俺もあの場にいたんです!」
その言葉に、地上部隊出身者たちが歓声を上げ、二人の周りに集まった。……あ、握手攻めにあっている。相変わらず凄い人気だわ。
「ねっ、ねえ、ティア。星天の王とか星光の女神って、何?」
「後で教えてあげるから、ちょっと放っといて!」
せっかくの再会なのよ!? 邪魔するんじゃない!
ん? 隊長たち、なに殺気立ってるの!?
「わたしそっくり……なんで……なの……?」
「なのは……? まさか、人造魔導師!?」
「なっ!? じゃあ、あれ、なのはのクローンなのか!?」
「なんで! わたしよりスタイルが良いの!?」
「そっちかよ!?」
……あ~、確かに。晃生さん、服の上からでも見て分かるほどスタイル良いからね……。あたしも3年前の晃生さんにすら負けているからよく分かる。密かな
「あの! お二人とも指輪をしていますし、もしかして!?」
「ええ。私は諏訪二佐の妻になります」
『ええええええええ――――――っっっ!!!』
「つ、妻!? なんで!? いつの間に! ねえ、なのは! 一体いつそんな関係になったの!? 怒らないから、お願いだから、教えて!?」
「ちょ、ちょっと、フェイトちゃん!? 夫婦なのは、わたしじゃないよ!?」
「フェイトさん、恋人に結婚するって言われたみたいな驚き方ですぅ……」
あ。フェイト隊長、なんか凄く取り乱している。
「あのけしからん乳とわがままボディは夫婦生活の賜物か……なのはちゃんもああなるんかいな?」
「ちょっ、ちょっと、はやてちゃん!? その不穏な手つきと舌なめずりとギラついた目で近寄ろうとするのは何故!?」
「はやて……、親父くせーぞ……」
部隊長……。お願い、誰か何とかして。
「しかしフィニーノ一士、よく指輪に気付いたな?」
「これでも年頃の乙女です。プライベートでは身嗜みとお洒落にはいつも気をつけていますから!」
「隊長陣は誰も気付きませんでしたよ?」
「……それって、隊長たちが年頃の乙女じゃないってことですか?」
「モンディアル三士、そこまで『はっきり』言うものではありませんよ」
「ああ、隊長陣を『乙女失格』『女性失格』『人間失格』『存在失格』とか言っているようなものだ」
「「エリオ……」」
「エリオ君、デリカシー無いよ……」「キュウゥ!」
「ぼっ、僕! そこまで言ってませんよ!? って、ちょっとぉ!? 何でみんな、まるで死地へ赴く兵士を見るように敬礼してるんです!?」
エリオ、君のことは忘れないよ……。
「ほう、モンディアル、良くそこまで言えたものだ、成長したな」
「これって、成長なのかよ?」
「腐負怖斧訃、エリオ、後で
「……私に出会いが無いことへの皮肉かいな……!?」
「エリオ、そんなこと言うなんて……」
「フェイトちゃん、反抗期の息子に苦悩するヤンママみたいよ」
「いたのか、シャマル!?」
「もうそのネタは止めてよ!」
死んだわね、エリオ。香典の相場は、幾らだったかしら。
「あっ、あの! 機動六課の印象を教えてくださいぃ!」
「必死だね、エリオ……」
「うん……今、隊長たちから、ものすごい殺気が来たから……」
みんな、竦んでたものね。
「それは機動六課全体の印象ですか? 隊長陣ですか? 生憎と、あなたたちフォワード陣は、一人を除いて殆ど情報が無く、あまり知らないと言う状態なのですが」
「その、一人って?」
「ませてるな、少年。人の奥さんに、そんな『僕をどう思ってるんですか』みたいな聞き方は良くないぞ」
「私は諏訪二佐の妻ですから。あなたが期待するような、誤解するようなことは言いませんよ?」
「エリオ君……」
「違います―――――っっっ!!!」
期待していたような顔だったけど。
「エッ、エリオが、エリオが諏訪一尉に!? そんな、どうしたら、ねえ!?」
「落ち着けママさん。いきなり同級生の女の子を連れ帰った息子じゃねーんだから」
「そうや。掃除中に避妊具見つけたような取り乱し方せんでもな」
「はやてちゃん、せめて、エッチな本にしてあげようよ……」
「高町、経験あるのか?」
「え? 無いよ?」
「ユーノの部屋に掃除しに行ったりとかねーのか?」
「何で?」
なのは隊長……。男性との付き合いが無い事、暴露してますよ……。
「ではまず全体の評価からどうぞ」
「1年と限られた試験運用にしては豪華すぎますね」
「地上部隊はもっと少ない予算で苦労して遣り繰りしている所もある。ナカジマ二士も知っている陸士108部隊などは恵まれている方だ」
「八神二佐は、それを地上部隊の基準にしているのかもしれませんね」
最初から厳しいわね。機動六課が贅沢だっていう事かしら。
「そうなの?」
「……私が研修で行った部隊は、みな同じような規模や設備だったのは確かや」
「『甘やかされている』って言ってましたですね……」
「反論でけへんな……」
事実なの!? 部隊長、地上部隊の厳しい現実を見ていないっていうんじゃないでしょうね!?
「隊長陣はどうです?」
「皆、経験不足。単体戦力としての実績はともかく、指揮官としてはまだ未知数だな」
「こういう特殊部隊を作る前に、通常部隊を運用するなど、もうワンクッションおいて実績を築くべきですね」
「辞令ではなく志願なら、『有名だ』『上を狙える』ではなく、『信頼できる指揮官』で選ぶべきだな」
そこまで酷評される隊長たちか。うわぁ、早まったかも。
「そこまで信頼ないんか……」
「だっ、大丈夫だよはやてっ! みんな頑張ってるし、信頼は実績で築いていけばいいじゃない!」
「フェイトちゃん本人は、なんも言われんかったな……」
「わたしなんか、魔導師になったこと自体否定されかけたもの……」
「うっ……」
何やったんですか、なのは隊長。淳志さんも晃生さんも厳しいけど、そこまで言うのは滅多に無いのに……。
「ここまで言うと、士気に係わりますね」
「ちょっと拙いか。……この部隊は試験運用だが、結果を出せるだけの下地はできている。あとは君たち次第だ」
「他に見ないほど本局、地上部隊でバックアップをしています。皆さんが『自分でできること』を行えば大丈夫ですよ」
とってつけたように言われても……。でも最後に見せた、諏訪一尉の笑顔で気分が軽くなったわ。同性なのに、何時もどきりとするのよね。
「ロングアーチはどうですか?」
「縁の下の力持ち。派手な栄誉などはないだろうが、部隊を支える重要な役目だ。よく連携をとり、この部隊の設立目的である『迅速な展開と対応』ができるよう頑張ってくれ」
「隊長陣・フォワード陣の戦力・特性を把握し、最大限にサポートすることが責務ですね」
「まぁ、隊長陣は若い美女たちばかりだし、力に成れなきゃ男が
みんなが盛り上がる。だけど……。
「淳志さ……諏訪二佐が他の女性を褒めるなんて珍しいですね?」
「ん? 褒めてないぞ?」
「え? でもさっき……」
「遺憾だが、『俺にとっての最高の女神』と似た顔があるのでな」
「淳志……」
「それって、なのは隊長が最高ってことですか?」
分かってるけど、意地悪するわ。
「ふわ~、なのはさん、べた褒めですぅ」
「にゃはは、照れるね」
「なのは、顔が真っ赤」
「こんの男殺しがぁ~」
いきなり盛り上がる隊長たち。だけどその代わりなのか、それ以上に晃生さんを包む空気が極寒のものへと変わっていく気がする。……晃生さん、確か炎熱変換の資質持ちだった筈なんだけど。
「まるで、似た顔なら構わないような言い方ですね……」
「晃生、誤解だ。形が似ていても、『ダイヤモンド』と『ガラス玉』を同じだと思うか?」
うわぁ……。拗ねてそっぽ向いた晃生さんを宥める為とはいえ、そこまで言う!?
え!? なのは隊長から、何か魔界の瘴気みたいなものが溢れ出してる!?
「レイジングハート! セーット! アーッ……」
「ばっ馬鹿者! 何を考えている!?」
「ちょっと
「『OHANASHI』はまずいですーっ!」
もしかして、地雷踏んじゃった?
……あたしは悪くないわよね、多分。公私の区別を付ける淳志さんが、仕事中にあんな台詞言うなんて思う訳ないじゃない!
「もう。それに、また女神だなんて……」
「初めて出会った時から、ずっと俺の女神だからな」
「馬鹿……」
「お前がそばにいてくれるなら、馬鹿で良いさ」
あの~。人目も
「なのは! 落ち着いて!」
「バカップルの惚気だ、気にすんな!!」
『Master! Keep cool!!』
「KOOLだよ!!」
「字がちゃうで!」
「離して――っ! わたしの! 女としてのプライドがかかっているの―――っ!!」
カオスだわ……。放っておこう。それよりも……。
「あっ、あの! よく知らないと言ってましたが、フォワード達はどうです!?」
二人のイチャイチャを見ていたくなくて声をかけたのだけど、凄い目で睨まれた。ううっ、何でこんな貧乏くじを……。
でも、二人とも自重することにしたらしく、姿勢を正して解説を始めた。
「モンディアル三士、ルシエ三士は幼いが、部隊長が権限の及ぶ範囲で集めた中では最も優秀な隊員の一人なのだろう。今後の活躍に期待する」
「「はい!」」
「ナカジマ二士は、人聞きだが今一つ判断が甘く、猪突猛進の部分があるらしいな」
「あうう」
「冷静さと的確な判断力を持て。これはフロントアタッカー以外にも言える事だが、その二つが生存率、それも自分以外の者にも関わってくる。失敗を恐れず最善を掴み取れ」
「はい!」
「そしてランスター二士」
「はい」
「3年前の欠点は魔導師としての力量、魔力量に拘り過ぎ、自分を卑下し過ぎな点だった」
「はい……」
「でもそれは、努力次第で覆せるものです」
「どれだけ成長したか、見せてもらうぞ」
「はっはい!」
辛い採点。期待に応えられなかったら……そう思うと体が強張る。こんな、プレッシャーなんて……。
そのとき、二人が苦笑し、雰囲気が和らいだ。
「そう固くなるな」
「今なら少しだけ、旧交を温めても良いでしょう」
「え……」
優しい眼差し。
「なかなか会えない妹分だしな。どうしているか、ずっと気にはしていたよ」
「ええ。元気そうで何よりです」
「あ……」
柄にも無く、胸に迫るものがあった。二人に見つめられて、胸の動悸がさらに激しさを増す。
まだ緊張しているのが自分でも分かる。あたしは暴れる心臓を宥め賺し、しかし慌てていると見られないようにゆっくりと二人の前に立って敬礼した。
「諏訪二佐、諏訪一尉」
二人が笑顔を浮かべて答礼してくれる。
懐かしさと、嬉しさで胸がいっぱいになる……!
「お久しぶりです、お二人とも」
あたしには分かる。
「お会いできて光栄です!」
あたしは今、生涯最高の笑顔よ!