星光小夜曲 -Starlight Serenade-   作:ATSW

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第 4話 『早朝訓練の見学です』

前回のあらすじ?

 

「兄の死を侮辱する悪党。悲しみに打ちひしがれる少女」

「少女のピンチを救うべく、颯爽と現れたティアの王子様!」

「ちょっと、馬鹿スバル! 何言ってるの!?」

「ティアと諏訪二佐の出会い」

「あ……あのねぇ……」

「違ってる?」

「……違わない」

「目指せ、略奪愛! ……だもんねぇ~」

「黙りなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 訓練、訓練、また訓練。それでもまだ先は長い。でも頑張る!

 今日も朝早くから、あたし達はなのはさんの訓練を受けています。かなり厳しいけど、このナカジマスバルに弱音なんて吐いてる暇は無い! でも、もう少しお手柔らかにして欲しいかなー、なんて……。

 

「じゃ、弾丸回避訓練(シュートイベーション)をやるよー」

「「「「はい!」」」」

「それじゃ、レディー、ゴー!」

 

 朝の訓練最後の一本。余力は無いから速攻で決める!

 ティアの幻術(シルエット)を囮になのはさんの気を逸らし、直上からリボルバーナックルで一撃! ……止められた!? 動きが止まっている間になのはさんの魔力弾が襲ってきた!

 

「くっ!?」

 

 体勢が崩れた所為でティアが迎撃してくれるまで避け続けるしかなかったけど、その間にエリオとキャロの準備が整った!

 キャロのブーストを受けたエリオが突貫! って、なのはさん、正面から受け止める気!?

 

 そして二人が激突!!

 

 ……凄い爆煙が発生したけど、どうなったんだろ!?

 

「……お見事、ミッションコンプリート! ちゃんとバリアを抜いて、ジャケットまで届いたよ」

 

 確かに、なのはさんのバリアジャケットに痕が付いている。やった!

 

「じゃ、今朝はここまで」

「「「「はい!」」」」

 

 

 

「ご苦労様」

「朝から大変ですね」

 

 厳しい訓練が終了した時、諏訪二佐と諏訪一尉が現れた。相変わらず仲が良いな~。八神部隊長なんて、「なのはちゃんに恋人でけたら、こんなバカップルになるんかな?」とか言ってたし。でも、ちょっと羨ましいかも。

 

「何の御用ですか?」

 

 なのはさんの声が刺々しい。でも無理ないかも。何しろ、自分が魔導師となった切欠、魔導師としての理想を否定されたって話だから。でも二人はそんな事があったなんて気にしてないみたいだから、余計に苛々してるみたい。

 なんとか仲良くなって欲しいな。ティアだって、憧れの王子様と直属の隊長との板挟みで苦労しているみたいだし。

 ティアといえば、なんていうか、最初の顔合わせの後のティアの喜びようには、物凄いものがあった。あのティアが、恋する乙女になるところを見られるなんて、訓練校時代は想像もできなかったよ。下手したら、一晩中惚気を聞かされていたかも。危なかったな……。

 

「訓練を頑張っている子供たちを労わりに来たんだ」

「早朝訓練の見学です。はい、飲み物をどうぞ。皆さん、喉が渇いているのではないかと思いまして」

「「「「ありがとうございます」」」」

「なに、訓練中は何もできないが、たまにはこういう気遣いをさせてもらいたいだけだ。気にするな」

 

 隊長たちには何故か厳しいけど、あたし達陸上フォワードには優しくしてくれてる。ティア曰く、「子供を守るというのが二人の信条なのよ」とのことだ。もっともその後に、「年はそう変わらないのに子供扱いして……」とか、「一人前の女の子に見て欲しいのに……」とかぶつぶつ言ってたけど。

 ちなみに、背伸びしたい年頃なんだね、とからかったら思いっ切りぶん殴られた。酷いよ、ティア……。

 

「見学ですか。随分とお暇なんですね」

 

 あたし達のときとは違う、硬い声。余裕がないのがあたしでも解る。

 対して、諏訪一尉はいつも通りの態度だ。

 傍から見れば、姉妹に見えるのに。ふとギン姉と自分のことが頭に浮かんだ。もっと仲良くできないのかな……。

 

「なに、我々はここにいる間は有給休暇みたいなものだ」

「時間など必要なら幾らでも作れます」

 

 うわ~。なんか、できる人の余裕って感じ。いいな~。あたし達なんか訓練受けるだけで精一杯なのに。

 あ、そういえば、なのはさんと諏訪一尉、どっちが強いんだろ? なんていうか、諏訪一尉の実力が読めないんだよね。強いのか、弱いのか。

 

「査察官というのは、随分簡単なお仕事なんですね?」

「ああ。機動六課の査察なら、子供でもできる」

「むしろ『子供にやらせたほうが、報告内容が減って助かる』とゲイズ中将に言われましたが」

 

 なのはさんの嫌味を流す二人。でも言っている事はちょっと酷い。この機動六課は問題だらけだと、子供でも解るということだから。でも、どんな問題があるんだろ?

 

 

「……そんなに問題点が多いんですか。なら、わたしの教導内容にもありますか?」

「言っていいのか?」

 

 食いしばった歯の間から漏れたような、なのはさんの言葉。なのに軽く返される。凄いな、キャロなんか怯えちゃっているのに。

 

「……お願いします」

 

 視線で射殺そうとするようななのはさんに、諏訪二佐は苦笑する。なんでそこまで平然とできるんだろう? あたし達、みんな逃げ出したくなっているのに。

 

「だが、ここにいても仕方がない。歩きながら話そう」

「データ保存済み。訓練場の終了操作完了。隊舎に戻りましょうか」

 

 あたし達が話し込んでいる間に、諏訪一尉が後片付けしてくれていたみたい。全然気が付かなかったよ。

 なのはさん、自分がしなくちゃいけない事を忘れていたので、「しまった!」っていう顔をしている。でも、しばらく渋い顔をしていたけれど、一緒に歩き出した。

 

「さて、問題点だが……」

「何ですか!?」

 

 なのはさんが喧嘩腰だ……あの優しいなのはさんが……。諏訪二佐、お願いです。あの優しいなのはさんを、返してください!

 

「まず、朝から晩まで訓練漬けな事かな」

「それのどこがいけないんですか!? わたしはみんな無事に帰ってこられるようにと願って! 強くなって欲しくて! 訓練をしているんです!!」

 

 なのはさんの言葉に感動した。そうだよ、あたし達は強くなってきている!

 なのに諏訪二佐の表情は変わらない。

 

「今、出動がかかったら、陸上フォワード陣は使い物になるのか?」

「それは……」

「平時、または訓練校でならそれも良いが、この部隊の性質上、余力を残しておく必要があるだろう」

「または人数を増やし、訓練と待機を一日交代で行うとかでしょうか」

 

 なのはさん、黙り込んじゃいました……。

 確かに、今の状態で出動がかかったらきつい……。ティアたちも考え込んでいる。

 今までは、強くなれるからと考えずに訓練を受けてきた。でも、間違ってるの!?

 

「隊長たちは実力者揃いですから、未熟なフォワードを当てにしなくても良いのでしょうね」

「それとも、捨て駒にでもするつもりだったのか?」

「そんなことない! わたしはみんなが大切だから! ずっと笑顔でいて欲しいから! みんなに強くなって欲しいんです!」

 

 そこまでなのはさんに大事に思われて、とっても嬉しいよ!

 でも、なのはさんに噛み付かれているのに、諏訪二佐は平然としている。

 

「なら、良いだろう」

「え?」

「今のままでは当てにできないのも事実だしな。部下たちが大切だから、無事に帰ってきて欲しいから訓練を行うのだろう? なら、迷ったりするな。それが彼らのためでもある」

「はい!」

 

 なのはさん、迷いが晴れたみたいだ。笑顔で元気に返事した。それを見て、あたしも嬉しくなった。うん、良かった!

 

 

「次はフォワード達だな」

「「「「はい!」」」」

「ナカジマ二士は、そのローラーブーツだな」

「え!?」

 

 その言葉に、自分の足元を見る。この長年の相棒が、問題!?

 そんな筈無い! 確かに自作でおんぼろだけど、今までずっと一緒にいた相棒なんだ!

 

「ウイングロードという不安定な足場の上で、ローラーというバランスを崩しやすい物を着けての殴り合い。足元が危ないし、力も籠められないだろう。考え直せ」

「お断りします!!」

 

 冗談じゃない! そんなことは絶対にできない! 思わず諏訪二佐の胸倉掴みそうになったのを、寸前で我慢した。

 でも! これだけは言わなくちゃいけない!!

 

「ウイングロードは、空戦適性の無い自分が空を走るために必要なものです! ローラーは、母さんから受け継いだシューティングアーツに必要なものです! どちらも、自分には無くてはならない相棒です!!」

「その二つを捨てることで、より強くなれると言ってもか?」

「はい!」

 

 迷ったりしない! ウイングロードも、シューティングアーツも! 母さんから受け継いだ大切な宝物だ! 捨てたりできるもんか!!

 

「なら良い」

「は!?」

 

 なに? どういうこと? いきなり雰囲気が変わったので、戸惑った。どういうことなんだろう?

 

「同じ事を言うものだな……」

「ギンガさんも迷いませんでしたね」

 

 苦笑する二人。ギン姉も、同じ? もしかして、ギン姉にも同じ事を言ったの? そして同じ答えを返した?

 

「捨てられないのなら、より使いやすく、より強くなれる工夫をすることだ。例えば、ローラーに魔力の刃を付けてスパイクにするとか、踏み込んだ位置で踵の後ろにウイングロードを縦に小さく作って下がらないための足場にするとか、な」

「ウイングロードそのものを相手にぶつけるという手段もありますよ。他にも相手の動きを先読みして妨害できる位置に作るとか」

「ただの移動手段にしていては、相棒の名が泣くぞ」

「は……、はい!」

 

 言ってることは少し難しいけど、言うとおりにできれば、きっと、もっと強くなれる! やってみせる!

 

 

「ランスター二士は、戦術の組み立てが課題だな。最初の幻術は良いとしても、その次がなかった。それとナカジマ二士やモンディアル三士の攻撃に頼っている部分を直したほうが良い。指揮していたとはいえ見ているだけだったしな。二人の攻撃のときも、同時に誘導弾などを使って牽制と攻撃をするべきだった。止めを刺せなくても、そのための布石にはできる」

「はい」

 

 うわー、前の指摘といい、ちょっと厳しすぎるよ。ティアナ泣くんじゃないかな……。

 あ、ぐっと我慢して真摯に受け止めようとしている。健気だね~。

 

 

「モンディアル三士は、デバイスの性能に頼っている部分が大きい」

「はい……」

 

 うわ、直球。ここまではっきり言うとは。

 

「もっとも、使った経験が無ければ誰でも最初は頼るものだ。依存で無ければ良い。だが、最後の攻撃は機を(うかが)っていたにしても悠長すぎる。攻撃が通ったのもオマケされたようなものだ。次は初撃で片腕吹き飛ばすくらいの気持ちでやれ」

「はい!」

「ちょっ、ちょっと! それは酷いんじゃないかな!?」

「ごっ、ごめんなさい、なのは隊長!」

 

 あー、エリオ、引き攣った顔で謝っている。ご愁傷様。

 

「高町一尉、話に水を差すな」

「……はい」

「あの! 例え話でも、もう少し言い方というものが……」

「それもそうか。高町一尉、すまなかった」

「いえ、もういいです」

 

 なのはさんも「片腕吹き飛ばせ」なんて言われたら黙ってられないよね。

 でも、最後の一撃は結構良かったと思うんだけど。そんなあたしの気持ちを見抜いたみたいに、諏訪二佐が続ける。

 

「ナカジマ二士もだが、デバイスの突進力任せなところがある。それは自分の踏み込みの補助としろ。ただデバイスの力で一直線に突っ込むだけでは、それ以上強くはなれない」

「「はい!」」

 

 あたしも、ローラーだけで走ってるんじゃ駄目なんだ。一緒に走る、それが大事なことなんだ!

 

 

「ルシエ三士は支援が少し弱いな。それに遅い。迷いというか、怯えというかよく解らんが、それが動きを阻害しているように見える。その原因についてカウンセリングを受けてみたらどうだ?」

「カウンセリング……ですか?」

「高町一尉でも、ハラオウン執務官でも良い。気になっていることを相談するだけでも違うぞ」

「はい……」

 

 迷いか……。あたしには解らなかったな。これは隊長たちに任せようか。とくにフェイト隊長はキャロの保護者だし。でも、一体どういうことなんだろ?

 

 

「ま、訓練は迂遠なところがあるが、お前たちが信じているなら、それが力になる」

「相変わらず厳しい評価ですね……」

 

 あ、なのはさんが凹んでいる。あ~あ。褒めて落とすなんて、酷いんじゃないかな。

 

「別に(けな)してはいない。教導自体は及第点、といったところだが」

「うう……」

「どういう考えで訓練をしているのかをきちんと教えなければ、受ける方も不安になる」

「ええ……」

「なら、それをきちんと言ってやれ。そして迷いを、不安を無くし、導いてやれ。それが教導官の役目だろう?」

「……はい!」

 

 なのはさんの返事に満足したように、諏訪二佐が微笑んだ。

 ううっ、なんか、ティアの気持ちが分かるような……。って、ティア!? そんな夢見る乙女みたいな表情、初めて見るよ!?

 なのはさんも顔を赤くして、いや百面相しているし!?

 

「……高町なのは。人の旦那様相手に、随分と(よこしま)な考えを持っているようですね?」

「うにゃあ!?」

 

 ジト目の諏訪一尉に背後から耳元で呟かれて、なのはさんが慌ててる。……まさか、図星? もしかして、諏訪一尉と好みのタイプが一緒とか!?

 そんななのはさんに構わず、諏訪一尉は諏訪二佐の横に並んで歩き出した。なんていうか、一枚の絵みたい。うん、お似合いだね。

 

「教導内容の説明不足については、仕方ないかもしれませんね。何しろ戦技教導官とはいっても、高町なのはは『脳髄まで筋肉でできている管理局戦技教導隊』の所属ですから。だから教導を受ける側の心構えまでは、思い至れないのでしょう」

 

 先の発言が無かったかのように諏訪一尉が続け、諏訪二佐の腕をとって組んでいる。

 ティア……、そう羨ましそうな顔しなくても……。

 

「誰が脳筋ですか!?」

「高町一尉です」

 

 反発するなのはさんに、間髪入れずに返す諏訪一尉。良いコンビだね~。

 

「戦技教導隊の主義は『細かい事で叱ったり怒鳴り付けてる暇があったら、模擬戦で徹底的にきっちり打ちのめしてあげる方が、教えられる側は学ぶ事が多い』ですからね。頭で考えるのでなく体に教えるのですから、脳筋でなくてなんなのです?」

「『敵対したら徹底的に叩き潰す』という噂の高町一尉には天職だな」

 

 そう言って二人が笑い合う。ちょっと!? なのはさんが睨んでますよ!?

 

「その噂、本当なんですか!?」

 

 なのはさん、今度は怒りで真っ赤だよ。ああ、さっきまでの和やかな雰囲気が恋しいよ……。

 

「本当だ。武装隊での戦い方から、そう言われているのだろう」

魔力を使い切った相手(フェイト・テスタロッサ)にバインドをかけて動きを封じ、オーバーキルの集束魔力砲(スターライトブレイカー)を叩き込むのですから。身に覚えはあるでしょう?」

 

 なのはさんが黙っちゃいました。……って、事実なの!? エリオとキャロも青い顔しているよ。ティアも「そうなのよね……」って遠い目をしているし。

 

 後で聞いた話だけど、自分と(おな)い年くらいの魔導師の例として、模擬戦で『高町なのはの戦い方』をされたらしいんだ。これだけを聞いたら諏訪一尉も戦技教導官ができるのかな、って思ったけど、抵抗できなくなったところで目一杯砲撃叩き込むような、かなりえげつない戦い方だったらしい。

 ああ……、なのはさんが、なのはさんが……。

 

「『私……明日の朝日を拝めるのかな……』とか考えていそうですね?」

「……ねえみんな、それ、本当……?」

「「「「いいえ!」」」」

 

 全員で、必死になって否定する。頷いたらヤバいと、頭の中で警鐘が鳴っている!

 目の前で、今にも魔王が降臨しようとしているのは、絶対気のせいだ!

 

「まあ、落ち着け」

「誰の所為ですか!?」

「不倫願望を持った高町一尉です」

「「「「ぶっ」」」」

 

 思わず噴き出した。諏訪一尉、さすがにそれは……。って、ティア!? なに『あたしは不倫OK、さあドンと来い!』と言いたげな顔してるの!?

 なのはさん、ちょっと慌て過ぎです! 本当なのかって、疑われますよ!?

 

「ふっ、不倫願望なんて持ってません!」

「『背徳感が素敵』とか?」

「かっ考えてません!」

「『あ、ちょっといいかも』くらいは?」

「思ってませーん!!」

「……二人とも、じゃれてないで行くぞ」

 

 なのはさんと諏訪一尉、漫才しているみたい。

 それにしても、あのなのはさんをあっさり流せるなんて……この二人、一体どういう神経しているの?

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