星光小夜曲 -Starlight Serenade-   作:ATSW

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第 5話 『枷を付けるのは無意味です』

前回のあらすじ?

 

「わたしの行っている新人たちの早朝訓練で、諏訪二佐と一尉に酷評されました」

「あたしはウィングロードとローラーブーツの使い方を工夫しろって言われたよ」

「あたしは指揮だけでなく、有効な牽制や攻撃も行えと言われたわ……はぁ」

「僕はデバイスに頼りすぎず、攻撃を迅速にかな? って言われました」

「わたしは……。支援をもっと強く、早くと。それと気になっている事を相談するように言われました」

「「「「そしてなのはさんに不倫願望疑惑が!!」」」」

「違ーう! そんなの有りませーん!!(泣)」

 

 

 

 

 

 

 

 私、八神はやては今、聖王教会の騎士カリム・グラシアに会いに来とる。気になることがあるって言われての会談や。でも、美味しいお茶を飲んでても、カリムの顔が曇りっぱなしなんは気にかかる。

 ガジェットの新型とレリックの出現がちょう早いのも気になるし、近々私らの出番があるかも。カリムもどうしたら良いか、判断に迷っているようや。

 

「レリック事件も、その後に起こる筈の事件も、対処を失敗する訳には、いかないもの……」

 

 それは同感。もう、ロストロギアで引き起こされる悲劇なんて、真っ平御免や。だから、私はそんな暗い空気を吹き飛ばすように笑ってみせる。

 

「カリムが力を貸してくれたおかげで、部隊はいつでも動かせる。即戦力の隊長たちは勿論、新人フォワードたちも実戦可能。予想外の緊急事態にも、ちゃんと対応できる下地ができてる。そやから、大丈夫!」

 

 笑顔で断言してみせる。

 でも、諏訪二佐、諏訪一尉の言葉が脳裏を()ぎる。隊長は即戦力やけど、指揮官としては経験不足。それは、私にも当てはまる。

 そやけど、ここで暗い顔も、躊躇(ためら)う事もできん。カリムの信頼に応えるためにも、カリムやみんなの笑顔のためにも、頑張るだけや!

 

 

 

 

「これが、新デバイス!?」

「そうですよー、ティアナ。技術スタッフの自信作です!」

 

 新しいデバイスを与えられるということで、デバイスルームに集まったあたし達。目の前には、あたし達に与えられるという、新デバイス。嬉しくて、ちょっと上の空になってる。

 機能説明を受けているうちに出力リミッターの話が出た。なんでも、今の出力を扱い切れる様になったら段階を踏んで解除していくらしい。でも……。

 

「出力リミッターっていうと、なのは隊長達にも掛かってますよね?」

 

 その答えは、本人にも掛かっている能力限定って言うものらしい。そうか、魔導師ランクの保有制限があったわね。

 

「部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って、決まってるじゃない?」

 

 そう言われて苦笑いする、スバルとキャロ。二人はすっかり忘れてたみたい。あんた達、勉強不足よ。

 それにしてもスバル、陸士訓練校で主席卒業だった筈のあんたが、なんで知らないの? まさかカンニング……な訳ないか。こいつにそんな器用な隠し事ができる訳ないから。Bランク以下の自分には関係ないからって、忘れていったんじゃないかしら。

 

 

「一つの部隊でたくさんの優秀な魔導師を保有したい場合は、そこに上手く収まるよう、魔力の出力リミッターを掛けるですよ」

「まあ、裏技っちゃあ、裏技なんだけどね」

 

 そう言って笑っているシャーリーさん。確かにその方法なら、うちの強力過ぎる隊長たちも一つの部隊にすることができる。でも、それって……。

 

「この部隊は『そこまでしてでも過剰な戦力を集める必要がある』と言う事だな」

「しかし、そうまでして優秀な魔導師を集める意味があるのでしょうか? 魔力のリミッターなどという枷を付けるのは無意味です」

 

 いきなり現れた淳志さんと晃生さんは、あたしの内心の疑問に答えるように発言する。『諏訪夫妻』だなんて、意地でも言わない。

 

「諏訪夫妻、何故ここに?」

 

 思ったそばから、シャーリーさん! その呼び方は止めてくださいよ!

 

「新人たちの新しいデバイスが用意されたという話を聞いたのでな」

「どのような物が用意されたのか、性能、仕様、問題点など、新デバイスの確認です」

 

 確認って、物見高い……。あ、査察の一環か。新しい装備ができれば確認は当然。でも、これに問題は無い……わよね?

 

「新人たちには過ぎた装備と思われるでしょうが、これからの任務には必要だという部隊長の判断なんですよ」

「部隊の目的に合わせて、そして新人のみんなの個性に合わせて作られた、色んな人の想いや願いが籠められた最高の機体です!」

 

 そこまで期待されているんだもの、使いこなしてみせるわ! でも淳志さんたちは変わらず素っ気無い。

 

「AMFのあるガジェットと戦うなら、新人たちならこの位の機体は必要だろうな」

「でもまだ使いこなせない事は理解しているようです。段階的にリミッターが掛けられていますから」

 

 未熟を指摘されたみたいで凹むわ……。

 決めた。絶対に使いこなす。そして見返してやるわ。まずはこれからの訓練でこのデバイスに習熟する。そしてリミッターを全部解除させてみせるわ!

 

「部隊長の判断ですから、既に作ってしまったものについては貴女たちには何も言いません。六課立ち上げ前の予算申請にも入ってましたしね」

「まあ、その時から、この4人に目を付けていたんだろうな」

 

 それって、その時から最高の機体が必要になるって判断されていたって事!? それだけ期待されていたのか、それとも必要になるほど危険なのか……。前者だと信じたいわ。後者って事は、歴戦の隊長たちでも力不足になるってことだもの。

 

「ただ、既に保有ランク一杯だというのに、何故5機(・・)も必要か、疑問はありますけどね」

 

 5機!? ここにデバイスは4機しかないし、あたし達は4人よね。それってもう一人増えるって事? あたし達と同ランクの存在っていうと、また子供が増えるのかしら。エリオたちはそれほど手が掛かんない子から良いけど、この二人より年下だったり、我が侭な子が来るなんて事、無いわよね……。

 

 

「そんなことより、さっき言っていた『集める意味が無い、無意味』って、どういう意味ですか!?」

 

 人数の疑問を吹き飛ばすような勢いで、なのはさんが二人(あたし視点ではどう見ても晃生さんに)に食って掛かる。

 ああ、また雰囲気が悪くなった。それにしても、なんでそう突っかかるんですか? 本当に不倫願望があるから、とは思ってないけど。性格は随分違うのに、同属嫌悪って事なのかしらね……。

 

「『枷を付けてまで』と言っただろう? 保有ランク制限のことだ。部隊ごとに極端な戦力差を付けないということなのだろうが、馬鹿げた決まりだ」

「例えば、AAA(トリプルエー)オーバーの違法魔導師の集団が、レリックのようなロストロギアとか、何か非常に重要な物品があると思い込んで機動六課(ここ)を襲撃してきたらどうします?」

「今のあたし達では対応できなくても、リミッター解除すれば大丈夫です!」

 

 聞いた話だと、なのはさんやフェイトさんの本来の魔導師ランクはS+、副隊長たちはニアSランクの精強なベルカ騎士、八神部隊長にいたってはSSランクだ。これで負けるなんて考えられないわよね。

 でも、二人の表情は変わらない。この方法って、やっぱり問題があるんだ。

 

「俺なら、陽動で戦力を散らしてから奇襲をかけるな」

「その意図が見破られないうちに機動六課(ほんまる)を襲撃。速攻で残存戦力を潰し、目的を果たして引き上げれば良いだけですしね」

 

 それって、ゲリラの戦い方よね。でも有り得ない事じゃない。反管理局派のテロ行為も他の世界では起きているって話だし。さすがに本部のあるミッドチルダでは滅多に起きていないけど。噂じゃ、レジアス・ゲイズ中将が治安向上に努力した結果だって聞いている。

 

「仮に解除できるとあっても、本人の意思ではできないんだ。申請、承認、解除の手間がある。間に合わなければ意味は無かろう?」

 

 そうなのよね。解除には、隊長たちは八神部隊長の、部隊長は直接の上司であるカリム・グラシア少将か部隊監査役のクロノ・ハラオウン提督の許可が必要。しかも、その許可の取り直しは難しいとの事だ。

 一瞬の判断が生死を分ける状況になってしまったら、解除申請なんて悠長なことをしている暇は無い。そして接敵前に判り易く実力を見せてくれる相手なんていない。いたらただの馬鹿だ。

 相手の実力を分析し損ね、読み違えていたら、味方の死体を作るだけだ。

 

「無理して戦力を抱え込んだ部隊にいた所為で、出力、能力を限定され、魔導師としての実力を出せずに死ぬ局員もいることを忘れているのでしょうか」

 

 そうだった。兄さんも死んだ。あれは陥れるための細工だったらしいけど、実力を出せたら死ぬことは無かった筈だったって聞いた。そう、死なずに済んだんだ!

 

「そんな制限自体、無くすことはできないんですか!?」

 

 気付いたら叫んでた。スバル達も驚いているけど、もう、止まらない!

 

「死ぬような危険性があるのに、何故そんな事が認められるんですか!」

 

 困ったように顔を見合わせる淳志さんたち。でも、それさえなければ兄さんは死なずに済んだ!!

 

「俺は、反乱防止のためだと思っている」

 

 え!?

 

「反……乱……?」

 

 何それ!? 兄さん達が何をするって言うの!?

 

「高町一尉には話したが、時空管理局は『一握りの魔導師が権益を独占し、非魔導師である大多数の人間たちを支配する』という社会構造を作り上げた」

「それはっ……」

 

 否定できない。高ランクの魔導師であるほど優遇されているのは事実だ。でも優遇されていた筈の兄さんは、『高ランクの空戦魔導師だからエリート』と言われる事を嫌っていた。魔導師でなければ価値が無いって考え方だからって。なんで忘れていたんだろう……。

 

「異論は有ると思う。しかし次元世界は、魔導師を中心とした世界なのは事実だ。そして、その権益で甘い汁を吸う者にとっては、自分に取って代わる存在など認められないだろうな」

「だから、どこかの部隊が過剰な戦力を揃えた場合、必ず枷を付け、脅威では無い状態にしようとする訳です」

 

 どこかの部隊って、それって、まるで……!!

 

「あたし達が、反乱を起こすと! そう思われているんですか!?」

 

 なのはさんが悲鳴のような叫び声を上げた。親友でもある部隊長の理想に共感し、この機動六課に参加したって話だから無理も無い。

 でも、なんて屈辱! 犯罪者と同列に見られているなんて!

 

「落ち着け。機動六課の場合も規則と慣例に従っているだけだ。ここまで能力に制限を付けるのも珍しいのは確かだが」

「それだけ無茶な戦力を集めているのは、八神二佐も解っていることでしょうしね」

 

 その言葉にちょっとだけ頭が冷える。でも不愉快なのは変わらない。

 

 

「でもなんで、機動六課が反乱を起こすなんて事になるんですか?」

「反乱を疑われているのは地上部隊だ」

「え!?」

「何でですか!? 父さんもギン姉も、前に所属していた部隊でも、そんな事は考えてなかったですよ!?」

 

 スバル……。そうよね、大事な家族が犯罪者扱いされるなんて、我慢できないわよね。あたしだって、兄さんが死んだ時に『犯罪者の仲間だったから手加減しようとして死んだのだろう』なんて言われて泣きそうになったもの。

 

「本局と次元航行部隊(うみ)は地上と仲が悪い。無茶な名目を付けては資金も人材も吸い上げていくのだから、怨まれている事は自覚しているのだろう」

「『その二者をどうにかしない限り、地上の治安は守れない』としたら、お前たちはどうする?」

「そんなの、ちゃんと話し合って問題を解決すれば良いんじゃ……」

 

 なのはさん、その考えは甘いですよ。その程度で解決する問題じゃなくなっています。それほど『陸』と『海』の溝は深いのだから……。

 

「無意味だ。地上を(ないがし)ろにし、下部組織扱いしている連中が、話し合うと思うか?」

「内部クーデターを起こし、本局と『海』を地上本部の統御下に置けば良い。そういう過激な考えを持つ者も地上にはいるのですよ」

「それを知っている本局が、反乱を起こされないように地上部隊をリミッターで抑制してるって言うんですか……」

「二者の力関係なら有り得るだろう? 実際、保有制限が制定された時は、地上部隊の魔導師ランク総計規模が今より高かったのだから」

「だから地上部隊の保有制限は、本局や『海』と比較にならないほど厳しいし、リミッター解除の申請も難しいんですね……」

 

 呆然としているなのはさん。シャーリーさんは納得した様子だ。

 今の意見は、確かに過激だけど納得できる。『海』の所為とはいえ、地上の高ランク魔導師が少なくなったから保有制限を低くする口実にできる。そして、そんな風に相手が話を聞かずに理不尽な要求だけ押し付けるなら、力で解決しようとする者も出てくるだろう。

 

「そうでなかったとしても、これだけ戦力を集中させれば警戒と疑念を招くのは事実だ。だが、馬鹿な真似をしなければ文句はあまりつけられない」

「八神二佐は『非常事態に対する迅速な対応ができる、手本となる部隊』としたいのですから。任務を確実にこなせば大丈夫ですよ」

 

 ……そうだ。多少問題があっても、ここに来たのは自分の意思。ならば、自分にできることをしっかりやれば良い。

 

「もっとも、八神二佐も本局所属らしく、地上本部を蔑ろにする傾向があるがな」

「地上本部への根回しどころか、挨拶の一つもしてないのですから。部隊責任者としての自覚に欠けてますね」

 

 ……前言撤回。部隊運用するのに地上の最高責任者を無視するようじゃ、先の見通しは暗いわね……。

 

「もし、地上本部の全面協力が得られていれば、六課、七課と二つ用意して合同部隊とし、制限無しにすることも有り得たのだがな」

「まあ、それは可能性の問題でしかない話ですが。運用面でも問題が出た筈です」

「実現できれば、言葉通りに最強の部隊ができたろうな」

 

 確かに、今の機動六課の倍以上の戦力を保有している部隊なんて、そうあるとは思えない。そもそも、戦力っていうものは、必要な部隊に必要なだけ与えられるべきだ。

 そこまでしてでも戦力を揃える必要があるなんて、機動六課って、一体何なの?

 

 機動六課について考えているうちに、淳志さんたち二人はいなくなっていた。なのはさんは二人への文句を言ってて、リイン曹長とシャーリーさんに宥められている。

 確かに疑問点の多い部隊だけど、所属した以上は任務をしっかりこなすだけよ。気持ちを切り替えて、今後の自主練のスケジュールを考える。

 

 

 そして突然、第一級警戒体制のアラートが鳴り響いた。

 

 教会本部からの出動要請。レリックらしい物が山岳リニアレールで運ばれていたらしい。それを狙ってガジェットが最低でも30体、車内に侵入しているという話だ。

 

『いきなりハードな初出動や。なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?』

『私はいつでも』

「わたしも!」

 

 確認を取る通信画面の八神部隊長。そしてそれに答える隊長たち二人。いつもの三人からは想像できない緊迫した表情だ。

 

『スバル、ティアナ、エリオ、キャロ! みんなもOKか!?』

「「「「はい!」」」」

 

 今度はあたし達だ。淳志さんの指摘が頭を()ぎったけど、今はそんなことは関係無い。全力を尽くすだけ!

 

『機動六課フォワード部隊、出動!!』

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 あたしは、今のあたしにできることをするだけよ!

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