星光小夜曲 -Starlight Serenade-   作:ATSW

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第 6話 『真似させる訳にはいかないです』

前回のあらすじ?

 

「新デバイスを頂きました!」

「最高級品なのは良いけど、それだけ厳しい任務になるのかもよ」

「でも出力リミッターが掛かっているんですよね」

「そのリミッターが反乱防止の為なんて、ちょっと突飛過ぎると思いますけど」

「犯罪者だけが得をするリミッターなんて無くなればいいのよ!」

「ティ、ティア……落ち着いてってば!」

「そうですよ、今は初出動で、ヘリで発進するところなんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 私、諏訪晃生は今、機動六課隊舎屋上から飛び立ったヘリの中にいます。とはいえ見つからないように、気配を消して光学迷彩魔法(ミラージュハイド)で姿を隠したまま、フォワード達とは反対側の座席の端に座っているのですが。新人たちのフォローの為とはいえ、やっている事は密航ですね。

 ところで高町なのは、立ったままだと危ないから座っているべきですよ。教導官が危険行為をするとは、言語道断です。士気を落とさない為、任務中はできるだけ口を出さないつもりでしたが、殴ってやりましょうか。

 

 しかし、大きなヘリですね。部隊長室で、機動六課の設備の確認をしていた時のことを思い出します。機動六課のヘリについて、八神二佐に質問していたのですが……。誰ですか、精神的拷問じゃないのか、なんて言うのは。あれは査察ですよ。

 

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 贅沢ですね、100人規模の地上部隊でも持っていない部署もあるのですよ、その他にもヘリ所有の必要性について散々突っ込みました。それでも、八神二佐が「迅速な部隊展開を掲げている以上、輸送ヘリはどうしても必要な物なんや!」と言い張り続けるので一応引いてみせました。ほっと一息ついてましたが、安心するのはまだ早いですよ? ごね得なんて、させませんから。

 

「機動六課が運用するヘリコプターだが、何故こんなに大きな輸送ヘリが必要なんだ?」

「機動六課の戦力は、フォワード部隊8名。それにシャマルとザフィーラを合わせて計10名。部隊長の私は除くとしても、全員乗れるものが必要だからや」

 

 確かに全員乗ることができる機体は必要でしょうね。遠隔地での任務なら、空を飛べない新人たちは一々移動手段を調達する必要がありますから。でも、この分だと質問の意味は解ってないですね。

 

「……訊き方を間違えたか。地球のある兵員輸送ヘリを例に挙げると、キャビンの収容人数は約30名。このヘリはそれより多少小型だが、このキャビンの大きさで12名は少な過ぎる。壁際に座席が並んでいるだけだが、キャビン中央の空間は何を想定して空けてあるんだ? もっと小型のヘリでも良いはずなのに、何故この大きさなんだ?」

「何って言われても、何かあったときの為に余裕が有った方がええやろ?」

「その余裕とは何を想定しているんだ?」

「いや、そこまでは……」

 

 ……考えてないんですね。着任時の私の『責任者の役目についての説明』を聞いているんですから、次に設備について聞かれたときに即答できるよう、準備しておくべきでしょうに。ヘリの運用例について、整備をしている人間に確認とかしてないんでしょうか。

 

「何でここで地球のヘリが出てくるですかー?」

「静かにしていてください。地球人の八神二佐に解り易く説明する為です」

 

 少なくとも中学卒業までは地球にいたのですから、テレビや映画などで見たことくらいはある筈ですよ。

 そう思いながらリインフォース曹長をちょっと睨みつけると「わっ、解りましたですー!」と敬礼しました。その敬礼は大げさですよ。

 それにしても、曹長の敬礼を見た途端、八神二佐が絶望したような顔になりましたね。裏切られたとか、見捨てられたとかいった感じです。その様子から、援護を期待していたのがよく解りますよ。……援護なら、データベースから情報を引き出すなどして、副官として説明不足や知識不足を補わせるべきでしょうに。終わったら、曹長に言い聞かせておきますか。

 

「……その定数以上乗り込んだときにエキストラシートを設置するのか、荷物を載せるのか、傷病者の乗った担架を載せるのか」

「そっ、そうや。諏訪二佐が言っとること全部を想定しとる!」

 

 ……八神二佐のあれは、支援部隊と口裏合わせておいて、後で言われたことをできるようにする気ですね。慌てたように答えてますが、淳志の呆れ顔に気付いてないんでしょうか。

 

「……それとも空対空ミサイルランチャーでも載せるのか、と続けるつもりだったのだが」

「んなっ!? それは質量兵器やないか!」

「それが輸送ヘリの本来の用途だろう?」

「ミッドでそんな事ができるかい!」

 

 ミッドチルダ以外というか、地球などの管理外世界では普通なのですが。さすがに兵員が乗ったまま発射はしないでしょうけど。

 この様子では、最大戦力の魔導師を運搬する事しか頭に無かったのでしょうね。

 尤も、軍事情報だけでなく、地球の事なんかもう関係ないような感じですからね。友人関係以外、地球に未練は無いのでしょう?

 そんな事を考えていたら、話が進んでますね。

 

「出任せは止めろ。想定していないことは解っている」

「出任せって、一体何を根拠に言うんや!?」

 

 往生際が悪いですね、そんなこと一目瞭然でしょうに。

 

「ヘリの中を検分したが、荷物を固定する器具類など無かったぞ」

「そっそれは、バインドで固定できるからや!」

「精密機械もバインドか?」

「そうや!!」

 

 はぁ。本気でしょうか。定数外の人員が乗ってもバインドで固定しそうですね。

 ……何故でしょうか。担架で運び込まれた幼い子供が、バインドで床に縛り付けられている。そんな幼児虐待を思わせる光景が目に浮かびました。真っ当な教育者や医療関係者が知ったら激怒しそうですね。

 

「AMFを使うガジェットを相手にする機動六課のヘリでか?」

「そんな遠くからAMFは効かんで!」

「取り付かれない自信が有るのか? 一機が特攻すれば、俺の言ったとおりになるぞ」

「……」

 

 もう屁理屈は出ないようですね。バインドが無い状態で衝突されたら、その衝撃で搭乗者や荷物が機内を跳ね回る事は想像できるでしょう? 人員の安全を考慮していないという指摘なのですから、素直に聞けば良いのに。

 

「もういい。大方、性能が良いからといって、細かい仕様までは確認しなかったのだろう。搭乗者数が最初に出てきたのがその証拠だ」

「欠陥品を押し付けられたなら、早急な改善が必要ですね。というか、今まで放置されていた事が信じられないのですが」

「整備士たちはプロなのだから、安全基準の見直しを徹底させろ。特に固定具の追加とか、シートベルトでの安全性とか」

「……はい」

 

 ヘリが揺れたり傾いたりといった非常時に、座席から投げ出されたり、搭載した荷物が人間を押しつぶす可能性を考えてないのでしょうか。

 空戦魔導師は空を飛べるし、いざという時は防御魔法で身を守れるから、その手の危機感が無いのでしょうね。

 

「それとこのヘリの防御手段についてだが、何があるんだ?」

「まだ有るんか!?」

「当然だ。ガジェットの攻撃を防ぐ事はできるのか?」

「……できないです」

「魔導師がいなければ、ただの空飛ぶ鉄の箱か。最低限の防御手段くらいは用意しておけ」

 

 これだけ贅沢に予算を使っているのですから、そのくらいは用意してあるかと思っていたのですが。楽観視し過ぎてますね。

 さっき出ていたミサイルランチャーも、質量兵器とはいえ有効手段では有るのですよ? ……まあ、キャビン内には置けないでしょうけど。

 

 

「……解りました。指摘された事は至急手配します。だから、もう、勘弁してーな!」

「何、甘えた事を言っている? 搭乗人員の安全に係わる問題だろうが。次は……」

「なのはちゃん、フェイトちゃん、シグナム、ヴィータ、助けてー!!」

「二佐の階級持ちが騒ぐな!」

 

 ヘリ一つでここまで突っ込まれる部隊とそれで騒ぐ部隊長。……この部隊、存在価値があるのでしょうか?

 

 ・

 ・

 ・

 

 物思いに(ふけ)っているうちに、高町なのはが新人相手に訓示を始めました。

 

「新デバイスでぶっつけ本番になっちゃったけど、練習どおりで大丈夫だからね」

「はい、頑張ります」

 

 まあ、渡してすぐに緊急出動があるとは普通思わないですから。

 

「危ない時は、わたしやフェイト隊長、リインがちゃんとフォローするから。おっかなびっくりじゃなくて、思いっきりやってみよう!」

「「「「はい!」」」」

「……うん!」

 

 良い返事です。これなら心配する必要も無い……

 

「キャロ、大丈夫?」

「あ、ごっ、ごめんなさい、大丈夫」

 

 ……緊張し過ぎですね。フォローは今この時に必要でしょうに、高町なのははまだ気付いていないようです。仕方ない、声をかけましょうか。

 

「大丈夫そうには見えませんが?」

「えっ?」

「緊張し過ぎではいざという「すっ、諏訪一尉!? なんでここにいるの!?」」

 

 こっそり乗り込んだからですが。光学迷彩とはいえ誰も気付かないとは、腑抜けてますね。……あ、気配も消していたのでは、無理も無いですか。

 

「密航です」

「しれっと言わないで! 諏訪一尉、犯罪じゃないですか!!」

 

 煩いですね。ルシエ三士の緊張を(ほぐ)す為の冗談なのに。

 無許可ですけど、法に違反してはいないのですが。形としては一応、私も機動六課にいるのですよ。

 

「本当は査察の一環で乗り込んだんです。高町一尉は気にしないでください」

「気にするなって……」

「ちなみに、地上本部との契約では、私たちは任務に同行させないことになっています。ですから今回査察はしますが、協力はできません。これで不具合が見つかれば、任務遂行自体に毎回査察が必要なほど問題が有る事になります。気を付けてくださいね」

「くっ、分かりました!」

 

 まあ、私がいる本当の理由は、「不測の事態に対して備えろ」という、淳志の指示なのですが。淳志ったら、口では何だかんだ言っていても、甘いのですからね。暫くは不機嫌を装って、拗ねてみましょうか。淳志はその辺の男たちのようなご機嫌取りなどしないですが、それでも普段より優しくしてくれますからね。思いっ切り甘えさせてもらいます。今から楽しみですね。

 

 

 そして突然、ヘリ内に緊急警報音が鳴り響きました。

 

 この音、また何か起こったんでしょうか? ガジェットに新しい動きがあったとか。

 

『ガジェット反応!? 空から!?』

『航空型、多数!』

 

「ヴァイス君、わたしも出るよ。フェイト隊長と二人で、空を抑える!」

「うっす! なのはさん、お願いしまっす!」

『Main hatch open!』

 

 どうやら迎撃に出るようですね。それにしても、やっとルシエ三士の様子に気付いたのでしょうか? 今、目の前で落ち着かせようとしていますけど。さっきから不安そうにしていたのに、今まで無視していたのですか? ちょっと問題ありますね。……まあ、ルシエ三士が少しは落ち着いたようなので良しとしますか。

 

 ……って、何を!?

 

「ちょっと、待ちなさい!」

「ぐにゃぁっ!?」

 

 高町なのはがそのまま飛び降りようとしたので、髪の毛を掴んで引き戻します。……愉快な声ですね、もう少し遅くすればちょっと面白かったかも。

 

「ちょっと、何するの!?」

「一体、何をしようとしたのです!?」

 

 お互いに質問。でも時間が無いので強引に話を進めます!

 

「何を飛び降りようとしているのですか!?」

「迎撃だよ!」

「そのままでですか!?」

「セットアップするよ!」

 

 ……はあ、自分が何をしようとしたのか、理解してませんね。

 

「初の実戦だという新人の前で、ヘリから飛び降りて、自由落下中にセットアップ、ですか?」

「そうだけど?」

「真似をしたらどうするんですか!? この4人には空戦適性が無いのですよ!」

 

 ナカジマ二士のウィングロードを列車まで伸ばし、その上を走るなら良いですが、あれは空中に固定されるようですし。そのまま飛び降りてセットアップ、とやりそうです。

 

「いい年した大人が、危険な事を子供の前でしないでください!」

「いっ、いい年って!? わたし、19歳! まだ若いです!」

「危険な事をするなと言っているのです! 機内でセットアップしてから出て行きなさい!」

「何でそこまで……!?」

 

 不満そうな高町なのは。言いたくはなかったのですが、仕方ないですね……。

 

「8年前のアンノウン。ヘリの周りにいたらどうします? 外に出た途端に蜂の巣にされるかもしれませんよ?」

 

 ……顔が真っ青になりましたね。これで慢心が無くなれば良いのですが。

 

「……解った。わたしが間違っていた。セットアップは機内でするよ」

『なのは隊長、急いでください! もうすぐフェイト隊長がガジェットと接触します!』

「了解! レイジングハート、セットアップ!」

 

 高町なのはは私の言葉に納得し、機内でセットアップして飛び立っていきました。

 索敵範囲内に反応無し。慎重過ぎたかもしれませんが、新人たちに真似させる訳にはいかないですからね。バリアジャケットという防御も無しで敵の前に出るなど、いい鴨です。それよりも……。

 

「4人とも! 今のうちにデバイスを起動させ、不具合が無いか確認したらどうですか!?」

「「「「え?」」」」

「フィリーニ一士、ぶっつけ本番で起動させるなど、デバイスマイスターとして恥ではないのですか!? 調整をしておきなさい!」

『わっ、分かりました! フォワードのみんな、起動して! 調整します!!』

「「「「はい!」」」」

 

 

 はぁ、まだまだ甘いですね。

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