星光小夜曲 -Starlight Serenade-   作:ATSW

9 / 14
第 7話 『ガジェットと戦闘です』

前回のあらすじ?

 

「ヘリの指摘で、随分と不具合が見つかりましたね……」

「人命軽視など論外だ。そう言えば、高町一尉の飛び降り自殺を止めたらしいな」

「何度もしていれば、狙撃くらい誰でも考え付きます。デバイスの自動防御に頼りきり、の弊害でしょう」

「デバイスもあったな。現場に着くまで動作確認もしていないとは」

「楽観視し過ぎです。デバイスルームの査察も計画しておきます」

「任せる」

 

「シャ、シャーリー! 大変です!」

「終わりだわ……、部隊長と同じように査察されるなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 今回は機動六課の初出動。この俺、ヴァイス・グランセニックの操縦するヘリで、ガジェットに襲われている山岳リニアレールへ向かっている! 俺も相棒(ストームレイダー)も絶好調だ! ベストを尽くすぜ!

 

「さーて新人ども! 隊長さんたちが空を抑えてくれてるお蔭で、安全・無事に降下ポイントに到着だ! バリアジャケットも装備済みだし、準備はいいな!」

「何を言っているのです! 彼女たちは空戦魔導師ではないのに! こんな高さでは、危ないでしょう!」

 

 景気付けも兼ねて威勢良く言った台詞だが、いきなり叱られた。諏訪一尉、過保護なママさんみたいだぜ。

 

「まだ高高度からの降下訓練はしていない筈です。リニアレールから外れて落ちる可能性があるのだから、できるだけ接近しなさい!」

 

 その台詞には納得した。心配性のお姉さんにしておくか。

 

「でも、あまり接近すると攻撃されるかもしれないっすよ!?」

「何の為にヘリの仕様について査察を行ったと思っているのですか? このヘリはシールドを展開できるよう改造済みです。たとえガジェット相手でも、集中攻撃を受けなければ大丈夫ですよ」

 

 あー、そう言えばそうだった。整備の連中、大変そうだったし。アルトも『仕事が増えた』って泣きながらヘリを弄り回していたよな。あの時のアルト……いや止めとこう。諏訪一尉にバレたら、ヘリから蹴り落とされちまう。

 

「俺は『いざという時にパイロットの仕事に差し支えるから』って程々の作業だったけど、整備の連中は徹夜でヘリを改造してたよな……」

「貴方たちの葬式を出す方が良いとでも? 『仕事なのだから甘えるな』と言っておきなさい」

 

 えらく冷たい言い方だが、これで面倒見は良いんだよな。整備の連中にこまめに差し入れして感激されてたし。……『飴と鞭』じゃねえよな?

 

「貴方たちは、初任務を確実に遂行する必要があります。不安要素は取り除きなさい」

「了解!」

「最初にリニアレールの先頭車両付近に接近し、スターズ分隊とリインフォース曹長が降下。ガジェットを駆逐しつつ制御を取り戻す。次は念の為に直上を避けながら最後部へ移動し、ライトニング分隊が降下。そしてフォワード全員で中央の重要貨物室を目指す。作戦方針はこれで良いでしょうか」

 

 驚いた。協力しないと言ってたのに、きっちりと作戦の補足までしてくれる。新人たちも目を丸くしているし。やっぱり面倒見が良いんだな。こんな世話女房と結婚できた諏訪二佐、羨まし過ぎるぜ!

 

「他に何も無いのなら作戦開始!」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 さあ、晴れの舞台だ! みんな、頑張れよ!

 

 

 

 

 

 査察官として同乗しているのに、ちょっと口出しし過ぎかと思いました。でも作戦の進捗状況は順調のようです。

 しかし見ているだけというのも……。って、ナカジマ二士が車両外に放り出されました! ……ふう、咄嗟にウィングロードを展開、帰還できましたか。一安心です。

 

 ……? 何故動かないのでしょうか? まさか怪我をしたとか!?

 

「グランセニック陸曹、ナカジマ二士の様子が変です! モニターを見せてください!」

「え? あ、どうぞ!」

「ありがとうございます!」

 

 モニターには、リニアレールの上に立って何かを呟いている様子のナカジマ二士。声を拾ってみますか……。

 

『お前はね、あたしと一緒に走るために生まれてきたんだよ』

『…I'll think about it』

 

 ……デバイスとお喋りですか。はあ……。

 

「ナカジマ二士、何しているのですか!?」

『わあっ!?』

「今は作戦中ですよ! さっさと任務に戻りなさい!」

『はっ、はいいぃ!』

 

 思わず怒鳴ってしまいました。リニアレールの中に戻るナカジマ二士を見ながら反省します。まあ、怪我が無かったようで何よりですが。……おや?

 

「グランセニック陸曹、その締まりの無い笑顔は何ですか?」

 

 何故か陸曹が私を見てニヤニヤ笑ってます。不愉快ですね。

 

「いやー、口では厳しいこと言ってても、随分と優しいんですねー?」

「なっ!?」

 

 からかうようなその言葉は何ですか!?

 

「隊長たちも知ったら、見方が変わりますよー? 旦那も惚れ直すかも」

 

 ……。

 

「ルシフェリオン、セットアップ」

『Standby ready. Set up』

「ちょっ!?」

 

 慌てる陸曹の後頭部にデバイス(ルシフェリオン)を押し付けます。さて『お話』しましょうか。

 

「私が何を言いたいか、解りますよね?」

「はい! 自分は何も見ませんでした!」

「ストームレイダーは?」

『Yes Ma'am! I cleared all!』

「宜しい」

 

 何もしないつもりだったのでルシフェリオンを待機状態にしておいたのですが。まあ、不測の事態の備えだから良しとしますか。ついでに援護に駆けつける場合を考えて、バリアジャケットを『高機動戦用』にしておきましょう。

 この高機動戦用のデザインはタキシードが近いですね。全体的に黒地で、袖や裾、襟元などに細かく赤い装飾や縁取りがしてあります。淳志は「男装の麗人という感じで凛々しくて良いな」と褒めてくれましたね。嬉しかったのでお気に入りです。

 

 それと自分では分からないのですが、この格好だと高町なのはの叔母、御神美沙斗に似ているらしいです。任務で地球に行った時、彼女の同僚の菟弓華さんという女性に間違われました。でも彼女、本人が横にいるのに「若いから娘?」「胸のサイズは似なくて良かったデスネ!」と余計な事まで口にして殴られてましたが。ちなみに美沙斗さん、自分の胸に手を当てつつ私の胸と見比べて、この世の不条理を嘆いてました。謝るのも変ですし、慰める事もできず、気まずかったです。

 

 それはさて置き話を戻しますが、バリアジャケットは何種類かに変更可能です。尤も、私は空戦魔導師ですから、戦闘用のバリアジャケットでスカート姿など論外です。下から覗かれて堪りますか。……まあ、一応登録はしてあるのですが。

 そういえば、高町なのはは19歳になるのに、普段からミニスカートのバリアジャケットですね。……恥ずかしくないのでしょうか? 今度突っ込んでみますか。

 

 

 さてと、次はティアナさんをモニターで確認します。最初はミニスカートだったのですが淳志に指摘されると恥ずかしかったんでしょうね。デザインを少しだけ変更し、今はキュロットスカートになっています。ルシエ三士は変更しませんでしたけど。

 

『あんたみたいな優秀な子に頼り過ぎると、あたし的には良くないんだけどね!』

 

 調子良さそうですね。頑張っていましたから、それだけ実力もついて……

 

『でも心強いわ! あんたが力を貸してくれるって言うなら百人力よ! これで、晃生さんに勝てるかも!』

 

 ………声をかけますか。

 

「慢心は命取りですよ」

『ひゃぅあ!?』

「それ程自信があるのなら、その喧嘩、高く買ってあげます」

『いっ、いえその、さっきのは言葉のアヤという奴で……』

 

 慌てる様子が可笑しくて、つい笑ってしまいます。背伸びしている子猫みたいで、可愛いですね。

 

「冗談です。無事に任務を完遂できたら許してあげますよ」

『あ、ありがとうございます!』

 

 ティアナさん、私に向かって敬礼してます。その後は、さっきまでと比べ物にならないペースでガジェットを駆逐し始めました。この手は今後も使えますね……。

 

『邪魔よ、退きなさぁい!!』

 

 

 さて、ライトニングの子供たちの様子は、と。うん、頑張っているようですね。しかし降下前のあれは……。

 

『怖い……? 一緒に降りれば大丈夫だよ。はい、手を繋げば安心できるでしょ? 僕が、ずっと傍にいるから。怖くないように君の心も守ってあげるから……』

 

 …………。

 

「モンディアル三士、どこであんな歯の浮く台詞を覚えたのでしょう。天然の女たらしなのでしょうか? 10歳だというのに、末恐ろしいですね……」

 

「(どう考えても、この夫婦の影響だよな?)」

『(I think so)』

 

 陸曹たちが小声で何かを話しているようですが……もう面倒です。無視しましょう…って、あれは!?

 

『エンカウント! 新型です!』

 

 大型の新型ガジェットが出現、戦闘を開始しました!

 やはり子供では荷が重いのか、苦戦しています。誘導弾でこっそり…は無理ですが、援護しましょう……え?

 

「もう一機!?」

 

 モンディアル三士がガジェットを跳び越えた時、隠れていた二機目に背後から攻撃されました!

 

『があっ!』

「いけない!」

 

 気絶したモンディアル三士が車外へ投げ飛ばされ、それを追ってルシエ三士が飛び降りました! なんて無茶を!?

 

《晃生!》

《分かってます!》

 

 淳志の要請に答え、飛行魔法発動! 追いかけます!

 

 

 

 ルシエ三士がモンディアル三士に追いついて手を掴んだ…と見えた時、ガジェットの追撃が命中、また離れ離れに!

 

「ルベライト!」

『all right!』

 

 固定完了! あとは守るだけ! 二人の上に留まり、ラウンドシールド展開! 攻撃は通しません!

 

「諏訪一尉!?」

「大丈夫ですか!?」

「はっはい! ただ、バインドで浮いてるのは複雑なんですけど!」

「抱える余裕は有りません!」

 

 二機分の攻撃で厳しいのです!

 反撃します! パイロ……。

 

「あの!」

 

 いきなり声を掛けられて術式中断、何ですか!?

 

「1分、いえ30秒で良いんです! 時間をください!」

 

 ……自重しましょう、これは彼女たちの任務です。それにルシエ三士の顔付きが降下前とは違います。何か吹っ切れたようですね。これなら……。

 

「良いでしょう、貴女の思うとおりになさい!」

「はい! フリード、やるよ!」

「キュー!」

 

 彼女の魔力光が周囲に満ち、輝いています。そして足元には召喚陣。これは……。

 

「窮屈な思いをさせてごめんね、フリード。いくよ! 竜魂召喚!」

 

 話には聞いてましたが、これが彼女の竜、フリードリヒの真の姿ですか……。

 

 

『Encount! Look up!』

「えっ!?」

 

 ルシフェリオンの警告に慌てて上を見上げると、何かが……って、冗談でしょう!?

 

「何故ガジェットまで飛び降りるのですか!?」

 

 リニアレールが通り過ぎていたのに、ずっと攻撃が途切れなかったのはこういう訳ですか!

 真上に向けて展開していたシールド越しに、ガジェットが一機降ってきたのが見えます! こんな所でガジェットと戦闘ですか!?

 

「諏訪一尉!?」

「こちらは気にしないで! リニアレール上のガジェットをお願いします!」

 

 私を押し潰そうというのでしょうが、シールドを傾斜させて弾き飛ば……AMF!? 不味い、シールドが消えます!

 

「ルシフェリオン、フィールド強化!」

『Load cartridge!』

 

 フィールドを強化して対衝撃態勢をとる……衝突、一緒になって落下! AMFで飛行魔法は不調、不味いです!

 

「何故これほど強力なAMFが張れるのですか!?」

 

 これの相手は、機動六課隊長陣でも難しいです!

 

 飛べない、離れる余裕が無い、それなら直接攻撃するだけです!

 ガジェットがベルト状の腕を伸ばして私を捕まえようとする、その上を跳び、掻い潜り、本体へ肉薄します!

 

「パイロシューター!」

 

 魔力を掌に集めて突き出すように発射しますが、AMFに力を失い装甲を貫けずに爆発。だけどこれは動きを止め、センサーを眩ますための囮です!

 本命の多重弾殻魔力弾は既に形成済み!

 さあ、蜂の巣になりなさい!

 

『Pyro Shooter!』

「シュート!」

 

 爆散!

 

 ガジェットは私の放った魔力弾で穴だらけになり、爆発しました。復活したシールドで爆圧を受け流します。これで子供たちの……。

 

『Master!』

 

 っ!? 高魔力反応、ガジェットの残骸の中から!?

 

「何故、わざとらしく次々に問題が起こるのですか!?」

『This pattern is 【Jewel Seed】!』

 

 ルシフェリオンの報告に愕然とします。中規模次元震すら起こせる危険物が、何故ここに在るのですか!? いえ、考えるのは後!

 

「封印しますよ!」

『All right!』

 

 まずは、ジュエルシードが纏う魔力を吹き飛ばします!

 

『Blast Fire!』

 

 砲撃がジュエルシードに命中! 続けて封印!

 

『Sealing!』

 

 成功!

 

 ……はあ。(ようや)く周りを確認する余裕ができました。子供たちはどうしてるでしょうか。

 見回すと、彼女たちは指示通りにリニアレール上に残ったガジェットへ攻撃していました。おや、やっとモンディアル三士が目を覚ましたようです。

 ……どうやら作戦が決まったようですね。動きが変わりました。

 

 フリードの炎で攻撃してガジェットの動きを封じ、その隙にルシエ三士がツインブーストを使用。強化支援を受けたストラーダを構えてモンディアル三士が突撃、撃破!

 

 これで一区切りつきましたね……。ガジェット反応が無い事も確認できましたし、ヘリに戻るとしましょうか。

 

 ・

 ・

 ・

 

「はあ、疲れましたね……」

 

 見守るだけの筈でしたのに、何故こうなるのか。やはり、機動六課が不甲斐ない所為ですか?

 ……いえ、今回の苦労はジュエルシードの所為ですね。まさかガジェットに仕込んであるとは思いませんでした。その上この状況で発動するなんて。私の魔力攻撃に触発された可能性もありますが、何者かの意図が絡んでいるかのような不自然な暴走でした。

 

 何故、本局に保管されている筈の危険物がここにあるのか。盗難か、流出か。

 どちらにしても、本局が不祥事を隠蔽して体面を保つ事を優先したら、地上までは情報が回ってきません。追求しても、管理責任の不備は認めないでしょう。

 平和ボケした阿呆の集団。イライラしますね。

 

 本局に砲撃でも撃ち込んでみましょうか……。

 

『Master. Is a firing lock cancelled?』

「残念ですが、ここからでは集束魔力砲(ルシフェリオンブレイカー)でも届きません。研究中の次元跳躍術式を早く完成させて組み込みましょう」

『All right』

 

 本当に、残念です……。

 

 

 術式構成を考えていた時、私宛に通信が入りました。

 

『晃生、そちらはどうだ?』

 

 淳志の声に、ささくれ立った気分が穏やかになります。会いたいです。抱きしめたいです。直接顔を見たいです。……でも今は仕事中です。リインフォース曹長に状況を確認、報告します。

 

「全ガジェット撃破、レリック確保済み。後は事後処理と撤収ですね」

『それは確認済みだからいい。疲れているようだが、お前は大丈夫なのか?』

 

 心配されている事に嬉しくなりました。我ながら現金ですね。

 

「疲れているだけです。新型ガジェットを一機相手にしたのですが、その内部からジュエルシードを発見。発動して次元震を起こしかけた為、封印する事態となりました」

『ジュエルシード? あの?』

「あのジュエルシードです。本局からの流出か、盗難かは不明ですが」

『そうか……』

「淳志は随分と不機嫌そうですが、そちらで何かあったのですか?」

 

 

 ………………。

 

 

 頭が痛くなりました。六課メンバーが揃いも揃って、一体何を考えているのですか。本当に砲撃しましょうか?

 

『Is a firing lock cancelled?』

「…………いえ、我慢しましょう。今はこれ以上疲れたくないです」

『Sorry』

 

 それでも、つい機動六課隊舎の在る方角を見てしまいます。この遣る瀬無い気持ちは、本人たちに直接ぶつける事にしましょうか……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。