そして、初原作女性キャラになります
「や、やっほ〜……ゆきっち」
軽やかな足取りで坂をかけ上がってくる金髪の女性……という美しい絵ヅラはそこにはなかった。そこにあったのは坂を無謀にも駆け上がってきた人の末路があったのだ。息を切らし、汗をかき……俯きながらふらついた足取りで登ってくる。
「え、えっと……大丈夫っすか? アリシアさん」
「だ、大丈夫大丈夫っ、全く持って問題ないよ〜」
そういいながらどう考えても無理をしてるのが見え見えの表情で親指を立てている。
彼女はアリシア・テスタロッサさん。天才デバイスマスターと呼ばれるほどの人で、彼女の力があればデバイスは本来の十倍以上の力を発揮できるとかなんとか、そんな超人的な噂の持ち主だ。ちなみに、俺が性同一性障害であることを知る……数少ない人の一人でもある。
「いやぁ〜……沈みかけの太陽を見ながら黄昏る銀髪の女の子っ! とても良い絵になってたよ〜」
「いや、別になりなくてなってたわけじゃないんですけど……」
「今度一緒にショッピング行かない? 可愛い服とか見繕ってあげるからさっ!」
「いや、俺の話を……」
「あっ! 海もいいよね〜、ふゆっちはどんな水着がいい? 思い切ってビキニにしちゃう? しちゃう?」
「えっと……その」
「それともショッピングよりもお菓子巡りとかの方がいいかな? ふゆっちは何が好きなのっ?」
「だ、だから……はぁ、アイスが好きです」
俺はアリシアさんが少し苦手だ。別に嫌いというわけではないが、時々見せるこの爆弾トークの人の話の聞かないところ、すぐにアリシアさんのリズムに乗せられてしまうところとか、とても危険人物だ。
「そっか〜いいよね、アイスっ」
「そ、そうっすね〜……」
「それで……」
アリシアさんはふぅっと息をついてもうほとんど沈んでいる太陽を横目に、ゆっくりと口を開いた。
「本当に時間が止まっちゃえばいいって、思ってるの?」
一転して真剣な表情で俺を見るアリシアさん。その真剣な表情に俺は少し気圧されてしまったが、唾を飲み込み……少し深呼吸をして、口を開く。
「思ってますよ。 世界は俺に優しくないです……確かに母さんは優しいです、でも……母さんから寄せられる期待も、周りから送られる期待と絶望も……俺には重過ぎる」
自分で言っていて情けなく思う。でもこれは事実だ……世界は、俺には優しくない。いつだって牙をむく……油断させておいて落とす。俺の父さんがいないのだって、ある意味……世界が俺たち家族を苦しめる為に行ったことなのだから。
「そうだね……確かに世界は人に優しくないよね。人は何を考えているかもわからないし……ほんの少しのことで掌を返す……」
アリシアさんの表情はなにか、悲しみに染まっているように感じた。アリシアさんの過去に、一体何があったのか、俺にはわからない……いや、きっと知ることはできても、理解はできないかもしれない。
「でも、家族はとても大事だよ。私は私の家族を助けるために……支えるために、私なりに頑張った。みんなで力をあわせて、過去の過ちも…乗り越えてきた」
「過去の過ち……」
「うん……そして、ゆきっちのお母さんや、私の友達も支えてくれた。そのことは、とっても感謝してるんだ。みんなのおかげで、私はアリシア・テスタロッサでいれるんだから」
「……」
「だからきっと、ふゆっちを支えてくれる人は沢山いるよ……ふゆっちが気づいてないだけで、周りの人はきっと、本当のふゆっちを見ようとしてると思うよ…私だって、そう思ってるもん」
初めて見るアリシアさんの表情……まるでいつもの雰囲気が嘘のようだった。いつものと、今の……どちらがアリシアさんの本当なんだろうか……いや、きっとアリシアさんはどちらも本当なんだろう……
だけど……
「アリシアさんに言われると、なんだかパッとしませんね」
「それを言うの!?」
「だってアリシアさん、年齢的には母さんと同じ、もしくは歳上なのに……背丈が女性平均よりも全然低いですし」
「ぐさっ!?」
「胸だって申し訳程度にしかないですし」
「ぐさぐさっ!?」
「何よりいつものノリはただの子供ですからね」
「わ、私はとっても傷ついたよ!?」
「日々の行いのせいですよね」
「う〜っ、ゆきっちの意地悪〜っ!」
そしてなにより、俺は今まで聞き流していたが、一応言っておかないといけないだろう。
「アリシアさん、俺の名前は冬華です。とうか…ですよ? なんでふゆっちって呼ぶんですか?」
「だってふゆっちって可愛いよね?」
「は……?」
いや、確かにふゆっちは可愛いかもしれない。地球にあったと言われるた○ごっちの仲間みたいな感じもする。だけどそれだけの理由で俺はふゆっちと呼ばれていたのか? やっぱり……
「あれですね、アリシアさんって大人って感じがしません」
「一番気にしてることを躊躇なく言われた!? ひどいよ〜……」
がくりと肩を落としているアリシアさん。その姿を見て少し可愛いと思ってしまったのは、きっと悪くないはずだ。
「でも……」
アリシアさんを見て口を開く。アリシアさんは少し涙目になりながら俺のほうを見る。
「ありがとうございます、アリシアさん」
自分ではわからないけれど、きっと俺は笑っているだろう。嬉しかったのだ……ただただ、こうやっていってくれたことが。我ながら単純だとは思う。
「その笑顔、百二十点っ!」
そういって親指を立てるアリシアさんは、最初の時の何十倍も輝いて見えた。
あれですね、アリシアさん可愛いです。一番好きなキャラではないですが。
感想や要望などは書いていただければ答えたりなどしたいと思います
それでは、次回も宜しくお願いします