東方不死刀恋呪縛紀行録   作:天城黒猫

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遠い記憶

ーーーーここはどこだろうか。

それが俺が目覚めて真っ先によぎった疑問だ。本来ならば知らない天井だ。とでも呟きたいのだが、ここには、天井なんていうものは無い。

ただただ、四方八方暗闇が広がっているだけだ。上下左右闇。

どこが上で下で前で後ろで右で左なのか分からない。

何でこんな所にいるのだろうか。

俺は暫く自分の記憶を頭の中から掘り出して、頭を垂れる。

 

 

「ああ……クソ……妹紅……」

 

 

自分の愛していた少女への仕打ち。それを真っ先に思い出した。

なんていう馬鹿なことを……はあ……コンチクショウが……妹紅……クソがぁ……俺の馬鹿……

そうして暫く涙を流し、自分の馬鹿らしさを責める。

 

 

「ああ……こんな事していても何も変わらないよな……妹紅……って、駄目だ駄目だ!先ずはココがどこなのか調べないと!どうやら死後の世界という訳じゃあ無さそうだからな」

 

 

俺は一回死んでいる。その為、死ぬという感覚は知っている。ココは「死」の世界に大分近いが、微妙に違う。

とは言っても、ココがどこなのかは、大体予想出来ている。

刀の中だ。

俺が妹紅を追い出して倒れた後、恐らくだが、あの鍛治家に刀の材料にする為に、俺の体をあの溶鉱炉……だったか?その中に入れて、俺の体を刀にしたのだろうか。

あの後鍛治師はどうしたのだろうか。鬼に娘の仇を取るために、刀を持って鬼へと突貫していったのだろうか。

もしそうだとしたら、恐らく、鍛治師は死んでいるだろう。

強力な武器。それは確かに勝負には、欠かせない要素だ。

だからと言って、その武器を使いこなせなければ何の意味も無い。

俺が見たところ、あの鍛治師は腕力はあるが、剣術とかの類はからっきしだ。

だから、刀を振るっても恐らくはデタラメに、ヤケクソに振るうだろう。

だが、刀は当たらずに、鬼の腕力で捻り潰される。

ーーーーなーんて事になったら、愉快な事この上ないんだがなあ。

だが、窮鼠猫を噛むなんていう諺もあるくらいだし、鬼を倒しているのかもしれない。

それとも、他の……そうだな、剣術が達者な人に刀を持たせて、鬼を斬らせに行く……なんていうこともあるかもしれない。

ま、最も、後者はあの鍛治師がそんな事を考えるとは思えないがな。

まあ、そんな事はどうでもいい。

もしもココが刀の中だったら、他の刀にされた人もいるかもしれない。

取り敢えずは、歩くか。

俺はそう結論を出し、一寸先も見えない闇を進む。

途中、何があってもいいように、いつでも刀を抜けるようにしている。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

あれからどのくらい経ったのだろうか、見当もつかない。

歩けども歩けども、何も無い。あるのは、闇だけだ。

同じ所をぐるぐる歩いているのではないか、不安になってくる。

それとも、この闇は無限なのだろうか。終わりが無く、ずっとずっと広がっているのではないか。

最近はそんなことばかり考えていて、鬱になってくる。

それでも、歩かなくてはならない。それ以外に今出来ることはないのだから。

そして、ふと。立ち止まる。

全身の感覚を研ぎ澄まし、集中する。

右………約6メートル……身長……約150センチ……体重……約46キロ。

なんらかの気配がする。

まあ、恐らくは俺以外に、あの鍛治師に刀にされた対魔師だろうか。

 

 

「おーい!そこの人ー」

 

 

俺は会話しようと、声をあげて、そこにいる人物に声をかける。

 

 

「う、うわああかうやあぁぁっl!!!!」

 

 

だが、その人物は、錯乱しているのか、刀を無闇に振り回して俺に斬りかかってくる。

間違いない。その姿が見えなくとも、ココに来てから、体の感覚が敏感になっているのだ。

恐らくは、ずっと闇の中に居るせいだろうか。

だが、相手はそうは行かなかったようだ。闇の中に居るせいで、狂ってしまったようだ。

 

 

「アアァアアアァァ!!」

「おーい、落ち着けー、俺は敵じゃあねえぞー、だからその刀納めろやー」

「アアアァアアオアアァ!!!」

「……駄目だこりゃ」

 

 

仕方がない。このままじゃあ、いろいろと面倒臭いし、斬るか。

それに、狂っままではいろいろとアレだしな。まあ、その辺は、俺の主観が入っている。

 

 

「はぁっ!」

 

 

居合で一線。

相手の体は、肩から腰に斜めに切れ、倒れる。

俺の足下に何か生暖かい液体らしきものが、触れる。おそらくは、血だろう。

俺の顔にも、血飛沫が何粒か付着する。死んだ。

 

 

ーーありがとう。

 

 

ふと、そんな声が聞こえたようなきがした。振り返えっても、何もいない。屍体は消えていた。

 

 

「ははっ、空耳か」

 

 

全く持って何を考えているんだか、斬られて礼を言うなんて、そんな奴はいないだろう。俺の勝手な妄想だ。

ふと、思う。

 

ーー人を殺したのは初めてだったな。

 

 

だというのに、案外何も思わない。妖怪を斬るのと同じ感覚だな。

どうしてしまったのだろうか、人を殺す。それは俺が今まで、最も忌避していたということなのに。

 

 

ーー■■。おまえは人を殺すな。でないと…………

 

 

……今のは……誰だ?ふと頭を女性の言葉がよぎったが、どうにも思い出せない。

誰だろうか、女性といえは、妹紅……うん、そのぐらいしか関わりがない。前世での記憶だろうか、……わからない。

………………まあいい、今は取り敢えず闇の中を進もう。




次回は、明日別の小説を投稿します。
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