男子高校生、幼馴染に恋をした。   作:変な顎

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ライバル、倍率。

ガチ宣言の後、倉本は直ぐに教室に戻っていった。

「もうちょっとで朝のホームルーム始まるから。」と言っていたがそれは照れ隠しだろう。

出て行くときには耳が真っ赤だったから。

それにあいつがホームルームに合わせてクラスに戻るわけがない。

遅刻常習犯を舐めてはいけない。

 

間もなくしてチャイムが鳴り、ほぼ同時に笹本先生が教室に入ってきた。

「それではホームルーム始めまーす!」

朝からテンションたけーな。

先生は教卓に着くと元気よく出席を取り始めた。

が、それは直ぐに止まる。

浅田が居なかったのだ。

「浅田くん見た人居ないー?」

……そういや浅田見てねぇな。

まさか2日目から遅刻か?

流石去年の遅刻王。

今年も記録更新ペースだなこりゃ。

あいつ、そんなに家遠くないはずなんだけどなぁ。

どうして俺の周りには遅刻魔しか集まらないのだろう。

類は友を呼ぶってやつか?

いや、それだと俺も遅刻魔になってしまう。

あ、俺も遅刻魔だった。

 

「浅田め…。」

笹本先生がクラス名簿に浅田の遅刻を記入しながら低い声で呟いた。

うわ、怖ぇ。

たった一言呟いただけ、それだけなのに本能的なところで恐怖を感じた。

流石学年主任と言ったところか。

普段明るい人がそう言う一面を見せると必要以上に怖く見える。

俺はこの人を怒らせないようにしようと心に誓った。

 

その後は滞りなくホームルームは終わった。

進路オリエンテーションが行われる体育館に移動していると浅田が向かいから歩いてきた。

やっと来たのか。

「お前、2日目から遅刻かよ。あの笹本先生が怒ってたぞ。」

繰り返すようだが、怖かった。

「えー、でも笹本先生だし、大丈夫でしょ。」

浅田はヘラヘラと笑いながら言った。

最初は俺もそう思っていたが、それは間違いだったよ、浅田。

多分あの人怒ると超怖ぇぞ。

「…気をつけろよ。」

それだけ言うと俺は体育館へむかった。

 

進路オリエンテーション、2~3ヶ月に一度のペースで行われるこれは、毎度毎度同じ内容の事を繰り返し先生が話すだけで、率直に言えば暇だ。

横に並んで立っている先生方に目を向ければ、3人に1人は居眠りをしているのが見える。

それ程暇なのだ。

進路が大切なのはわかるが、流石にこう何回も繰り返されるとウンザリしてくる。

せめてちょっとでも話す内容を変えるとかしないものか。

更にこのオリエンテーションは2時間以上あるが、ずっと床に直で座っていなければならない。

腰が痛くなってくる。

暇だし腰が痛いしの地獄のような2時間である。

 

ようやくクラスに戻った時にはすでに12時半近くになった。

10時からの集会だったので2時間半近くに体育座りをしていた事になる。

腰が痛い。

しかも、更に面倒臭い事に、この学校は2日目の午後から平常日程である。

あのあとに2コマ授業が入っているのだ。

とはいえ、直ぐに授業が始まるわけでも無く午後の授業は1までの空いている40分ほどは、そのまま昼休みになるようだ。

浅田を誘って飯でも食うか。

そう思って浅田を探す為教室を見回すと、笹本先生に首根っこ掴まれて引き摺られて行く浅田を見つけた。

やっぱり、あの人ヤベェわ…。

浅田はそのまま進路相談室へと消えていった。

ファイト、浅田!

 

一人クラスに取り残された俺は、弁当も食べ終わってする事もなく惚けていた。

 

暇なので色々考えを巡らせているとふと倉本の事を思い出した。

あいつをあそこまで本気にさせる女子、途端に興味が湧いてきた。

一度、見に行ってみるか。

早速、俺は弁当をしまって倉本の所へ向かう事にした。

 

2年D組、中庭を挟んで向かい側の校舎なだけあってなかなか遠い。

校舎内の移動だけでも3分弱かかる程だった。

教室の中を見回すと1人スマホを弄っている倉本を見つけた。

お前、それはぼっちルートだぞ、気をつけろ!

俺は浅田が居るから大丈夫だな。

 

「よぉ、倉本。」

「あ、ムラっち!どうしたん?おれが恋しくて会いに来てくれたん?」

残念、別にお前が恋しくて来たわけじゃないぜ。

それどちらかと言えば、会いに来たのは、お前じゃ無くてお前の好きな子の方だ。

ただ、今日の朝の倉本の様子を見て、気になっている子の事を話すのは躊躇われる。

それに、その子本人の前でこの事を言う訳にも行かない。

だから、面と向かって「例の子を見たい。」なんて言えるはずも無く、とりあえず倉本の言う事に乗っておく。

「よく分かったな。久しぶりにお前とイチャイチャしたかったんだ。」

「ムラっち…!」

おいやめろ、照れるな、顔を赤くするな。

俺が目覚めたらどうする。

無いとは思うけど。

特に相手がお前ならなおさら無いな。

なぜなら俺は線が細い子が好きなんだ。

お前みたいな筋肉は性別抜いても論外だ。

 

「とりあえず、時間あるか?チェスでもやろうぜ。」

俺はスマホのチェスのアプリを起動し机の上に置いた。

「おう、久しぶりやね。」

 

倉本はかなり長考するタイプだ。

だから今日はチェスを誘った。

こいつが盤にクギ付けになっている時に、例の子を探そうというわけだ。

 

案の定、途中で倉本の手が止まり、盤に目がクギ付けになった。

俺はなるべく、倉本にも周りにも悟られないようにその子を探す。

メガネで、ポニーテール……

…いた、あの子か。

 

想像以上に可愛いや。

これはライバルも多そうだ。

ファイト、倉本。

 

チェスは圧倒的な勝利で終わった。

「なにもクイーン4体も作ら無くても…。」

「お前が弱すぎんだよ。」

「もう一回!もう一回やろうぜ!」

倉本は懲りずに再戦を申し出てきたが、予鈴がなった。

「わり、俺もう戻るわ。」

「うっす、途中まで送る。」

 

廊下に出ると、元のクラスの友達と遊んでいた人が多かったのか、教室に戻ろうとする人で溢れていた。

 

校舎を繋ぐ渡り廊下に差し掛かると流石に人は少なかった。

 

「で、どうだったよ、あの子。可愛かったろ?」

なんだ、気付いてたか。

「あぁ、倍率高そうだったな。頑張れよ。」

「おう、やっぱ人気ありそうだよな…あの子。」

倉本が珍しく弱気な顔をした。

 

渡り廊下を渡った所で別れて、それぞれのクラスへ戻った。

 

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