某日・カレー洋
月が照らす夜の海上を6人の艦娘を駆ける。
主機をぶん回し、すでに速度は
各人が水しぶきを後方に巻き上げ、更に加速を掛けていく。
陣形は今の所、短縦陣。軍艦だった頃は1500mから2000mぐらい距離を取ったものだが、艦娘になってからは200mから300m前後の距離。
しかし、目線が低いのに水上を
普通なら暗闇という事もあり恐怖を感じるところではあるが・・・
「やったぁ、待ちに待った夜戦だぁあああ!」
「素敵なパーティするっぽい?! やっちゃうっぽい?! ぽいっ?!」
勝負服ならぬ勝負マフラーを愛用する二人の艦娘の生き生きとした声が無線を通して跳ね回る。
言わずもがな夜戦バカこと川内とソロモンの悪夢こと夕立だ。
川内の飛ばした夜間偵察機が昼間取り逃がした敵を発見してからすでに15分。
すでに敵もこちらに気づいており、両者の距離はぐんぐんと狭まっている。
「ちょっと落ち着いて、二人とも。今回はあくまで威力偵察! 偵察よ!」
2人に追いすがりながら天津風が必死に制止するも完全に夜戦モードになった2人は聞く耳を持たない。
だからしょうがなく天津風は恐れ多くも二水戦の上司に呼びかける。
「神通さんも、何か御願いします」
「そうね」と神通の落ち着き払った声に天津風が「流石は神通さん」と安堵するもつかの間、神通が続ける。
「二人とも一番槍はこの私が勤めます。探照灯を照射後に最大戦速の単縦陣で続いて、すれ違い様に各自最大火力を叩き込んでください。出来ますね?」
「・・・あぁ、もう!」
「姉妹ですものね!」と頭を抱える天津風を尻目に神通が速度を上げる。そして探照灯と20.3cm2号砲を構えて、まるで一本の矢のように敵戦隊へと突っ込んでいく。
「まぁ、ここまで来たらやるクマ。水雷屋は舐められたらやっていけないクマ」
それに続くように本来、旗艦である筈の球磨がマイペースに15.5cm砲を掲げると加速して神通の後ろに付いた。その後ろに一旦速度調整をした川内、夕立が続き、
「しょうがないね。行くよ、天津風」
と言って魚雷を抱えた時雨が苦笑いをしながら続いていく。
「もう、私の知ってる威力偵察とだいぶ違うわ・・・」
そう呟きながらも天津風は覚悟を決め、腰に接続した長10cm砲+高射装置に換装した連装砲くんの頭をポンと叩くと、最大戦速まで主機をぶん回す。
「あぁ、もう逃がさないんだからっ!」
会敵まで、残り30秒・・・!
◇◇◇
明けて翌日。鎮守府の待機室。
帰還は夜明けだった。もちろん徹夜だ。
シャワーを浴びた天津風と球磨が一息付いていた。ほかの面子はすでに引き上げてベッドに倒れ込んでいる頃だろう。
そこに電が書類を抱えてトテトテとやってくる。
「お疲れ様なのです」
「まぁ、疲れたと言えば疲れたクマ。でも何かすごい楽だったクマ」
ソファーにグダっとした球磨が片手を上げてそれに答える。
それを見て電が微笑む。
「本当にあっさりで驚いたのです」
「そもそも飛ばしすぎなのよ。鎮守府の練度最上位で構成された水雷戦隊を惜しげもなく投入すれば、当然あっという間に終わるでしょ」
テーブルについて、律儀に作戦レポートをまとめている天津風が万年筆で空中にくるりと円を描く。
確かにその通りでまったく何も無く、高速で偵察を済ませていた。
敵の巡回ルートなどはすでに割り出せた。
おかげで次の作戦はいくらか楽になるだろう。
しかしながら、電がいくらか悲しそうな顔をする。
「そして残念ながら、新しい着任者はいなかったのです。また大淀さんはダメだったのです」
大淀の艦魂を保有する深海棲艦がこの海域で確認された事は、事前情報で分かっている。
しかしながら、威力偵察中にはそれを確保できなかった。
でも天津風は筆を進めながら優しく笑う。
「いい風はいつか吹くわよ。それよりも全力の甲評価で良かったの? 報酬はあの試製51cm砲なんでしょ? 少し手を抜いて46cmとかの方が・・・」
大本営の通達で、文句ない成果を上げれば、試製51cm連装砲をこの鎮守府に回す事は事前に知らされていた。そして、評価を下げれば、46cm、41cmと口径が下がっていく事も。
そして正直なところ、試製51cm連装砲なんて化け物級の艦砲を扱える戦艦は限られている。
だが、電は苦笑いをして肩をすくめる。
「しょうがないのです。オール甲評価なのが司令官さんの悲願なのです」
「なら、しょうがないクマ。それにいつか武蔵が使いこなしてくれるクマ」
球磨がソファーに完全に寝そべって足をプラプラしながらそう言った。
確かに試製51cm連装砲を使いこなせるとしたら、うちでは武蔵ぐらいしかいないだろう。
それに天津風も頷く。そして球磨がこのまま寝るんじゃないかと思う。
そもそも作戦レポートは旗艦の仕事なのに「この球磨にレポートなんて書かせるとはいい度胸クマ」と訳の分からない理屈で押しつけられたのだ。
「確かに、いつかの備えは必要よね・・・」
そう言いながら、天津風は字を間違えた。
まだ紙の初めの頃なので、書き直そうとそれを丸めてゴミ箱に向けて投げる。
しかし、ハズレ。
思わず漏れる天津風の舌打ちに電が苦笑しながらその紙ゴミを拾ってゴミ箱に投げ込む。
「天津風さん、コーヒーでもお持ちしましょうか?」
「ありがとう。お願いするわ」
「クマにも頼むクマー」
結局、レポートが上がったのはお昼前だった。
提出役の球磨はもちろんソファーで寝ていたそうな。
なんか色々追加してみました。
シリアスも嫌いじゃないのですが、艦娘がわいわいしながら戦闘に突入していく感じが好きです。
ちなみに実録ではなく、6人で艦隊を組むとこんな感じになるのかな、と。
小説的には珍しい組み合わせだと思いますが、みんな自分の好きな艦娘なので(だから育ってるんだから当たり前ですが!)