「発令!第十一号作戦」顛末記・改   作:そらがく

4 / 7
第三作戦「ベーグル湾通商破壊戦」

 某日・ベーグル湾

 

 どうしてこうなったんだろう。

 

 ベーグル湾に照りつける太陽。うだるような暑さ。

 西方海域と称しているが、実は沖縄より南で赤道に近い。だから気候は熱帯のそれだ。

 5月だというのに、夏真っ盛りと思うほどのねっとりとした熱気に汗が滲む。

 軍艦時代も暑さにはほとほと参ったものだが、艦娘という人とあまり変わらぬ姿になって更に困る。特に汗と言うやつは拭いても拭いても吹き出てきて、ベトベトと体にまとわりつく。

 しかし、問題はそこではない。

 

 根が真面目な彼女は現状に戸惑っていた。

 

 艤装や体調に問題はない。

 問題は練度にあった。順番待ちの多い重巡の特訓に彼女の番が回ってきたのはたった一週間前。

 最初の改造を行ったのはついこの間。

 

 そして今、彼女は掛けなしの最前線に居た・・・。

 下された指令は大規模作戦の第三作戦に参加する事。

 故に彼女は遠く、熱気でゆらゆらと揺れる水平線をぼんやりと見ながら思う。

 

 どうしてこうなったんだろう。

 

     ◇◇◇

 

 明けて翌日。休憩室。

 

「まさかの古鷹さんの投入なのです。時代はOJTなのです!」

 

 やけくそ気味に電が叫ぶとハリセンが飛んできた。

 

「なにが『実戦で訓練(オンジョブトレーニング)』やねん!」

 

 パシッと小気味よい音が部屋に響く。

 ハリセンなので音から想像するほど痛くはないが、それでも少し痛い。

 頭をさする電が見やるとジト目の龍驤が立っていた。

 

「しかし、他に言いようがないのです」

「見てみい、あの古鷹はんを」

 

 電がすまなそうに見やると部屋の隅の椅子に真っ白に燃え尽きた古鷹。

 耳をすますと「古鷹は大丈夫です」とうわごとを言っている。

 開いた口からは今にも魂が抜けていきそうだ。

 

「大変なのです。キャラが変わっているのです」

 

 あの台詞はどこぞの金剛級三番艦の十八番だった筈。

 重巡のいいとこ普及委員会の委員長だった古鷹はどこに行ってしまったのか。

 

「にしても熊野の言うとおり重巡がほんまに足りへんとはなぁ」

「本当にびっくりだったのです」

 

 げんなりする龍驤に同調するように電は

 第三作戦から第五作戦までは平行作戦(ふだあり)

 情報収集の結果から三つ分の艦隊の作成に取りかかる。

 必要なのは通常艦隊2組に連合艦隊1組。

 つまり24人の艦娘が必要になる。

 その中で重巡が必要人数は8人。しかし戦力化が済んでいるのは7人。

 恐怖の1足りないである。・・・違うか。

 ともかく白羽の矢が立ったのは、言わずもがな育成の始まったばかりの古鷹だった。

 

「まぁ、せやかて意外と何とかなるもんやな」

「はいなのです。古鷹さん旗艦に霧島さん、高雄さん、愛宕さん、千歳さん、五十鈴さんの六人で意外と頑張れたのです」

 

 やれやれと苦笑する龍驤に電は無事に済んだことが何よりと嬉しそうに答える。

 

「第四作戦の連合艦隊は摩耶鳥海にオイゲン。第五作戦は鈴谷熊野が担当やったか」

「はいなのです。これでもう一人足りなかったら、つまり古鷹さんの育成を始めてなかったから多分アウトだったのです」

 

 第三作戦を乗り切るために実行されたのは、練度不足の古鷹を旗艦に据えて、みんなでフォロー作戦。

 艦隊の頭脳(物理)こと霧島を筆頭に長らく重巡筆頭を務めていた高雄愛宕姉妹。

 一応軽空母の中では筆頭練度の千歳。そして軽巡における対空の対潜の専門家である五十鈴。

 もちろん古鷹も練度は低くとも重巡は重巡。改造とせめての改修は終わっており、意外とおかざりにはならず戦力として頑張った。

 

「うちの残りの重巡は本当に練度低いんやな」

「一桁ばっかりなのです」

「偏りすぎやで・・・でもなぁ」

 

 龍驤は古鷹の方をちらりと見ると小声で電にささやく。

 

「今回の作戦、別に軽巡2隻でも良かったみたいやで。練度の高い川内辺り突っ込んでおけば良かったみたいや」

 

 ・・・。

 

「マジなのですか?」

「マジや。内緒やで?」

 

 口に人差し指を当ててウィンクをする龍驤を古鷹をちらり見してから複雑な表情で電は見つめる。

 

「つまり本当にOJTだったのですか・・・」

「結果論やけどな。せや、道中に阿賀野のパチモン出てきたみたいやないか。でも倒さへんかったって?」

 

 苦笑しながら龍驤が話題を変えると電もそれに乗った。

 

「軽巡棲姫なのです。でもボスとしでもなく道中で登場だったのです。しかも遺物(ドロップ)も別においしくもなかったとのことなのです」

「そら倒す必要性が感じられへんな」

 

「あはは」と笑って頷く龍驤に「基本スルーなのです」と電が今度は苦笑する。

 

「高波は来んかったみたいやし、その辺は第4作戦組に期待やね」

「はいなのです。それにしても・・・」

「何や?」

 

 言いごもる電を不思議そうに龍驤が見やる。

 電は未だに魂が抜け掛けている古鷹を見やる。

 

「旗艦って事は報告書は古鷹さんの仕事なのです・・・」

「そいや、せやったな・・・しばらく再起は無理やろ。提督室に行こか」

「はいなのです」

 

 

 

 結局、報告書は高雄が「お任せください」と笑顔で引き受けてくれた。

 




そんな古鷹さんも今ではLv80で改ニです。
今は妹分の加古が育成枠に。

前回と打って変わって短めの話の投稿です。
相変わらず投稿速度が変則的ですがご容赦を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。