「発令!第十一号作戦」顛末記・改   作:そらがく

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第四作戦「決戦!リランカ島攻略作戦」

某日・カレー洋沖

 

 海原を連合艦隊を組んだ艦娘達が周りを警戒しながら進んでいく。

 その中の第一艦隊。

 防空艦である摩耶を旗艦に航空戦艦姉妹の日向、伊勢が続き、正規空母である瑞鶴、翔鶴、飛龍と続く。

 飛龍は戦力化されてから日が浅く、初めての大規模作戦参加と相まって、そわそわと周りを見回している。

 返って瑞鶴、翔鶴の五航戦姉妹はほどよい緊張感を持ちながらも割とリラックスしながら航行している。

 二人は鎮守府でも早い段階で戦力化(レベリング)が済んでおり、大規模作戦も経験済み。

 経験の差がそのまま余裕の差になっていた。

 瑞鶴を伸びをしながらも危なげなく前を行く翔鶴の隣にするりと移動する。

 

「いい天気。こんな日に一緒に出撃できるのも久しぶりだね、翔鶴()ぇ」

「そうね、瑞鶴。ここの所は出撃自体を二航戦のお二人に任せきりだったわね」

 

 にこやかに笑う翔鶴に対し、瑞鶴は拳を軽く掲げてニカッと笑う。

 

「五航戦の力を発揮するいい機会だよ!」

「まぁ瑞鶴ったら張り切っちゃって。かわいい後輩が出来たからかしら?」

 

 言われた瑞鶴は、ふと首を傾げ、心当たりを探す。すぐに思い当たり「あー」と苦笑いをする。

 

「後輩って、葛城の事? んー、後輩と言っても、何か実感湧かないなぁ。ほら今更『一航戦の瑞鶴』って言われても・・・」

 

 『あの戦争』で開戦時に存在した空母で最後の方まで残っていたのは瑞鶴と数人しかいない。

 一航戦とは誇り高き最強の空母機動部隊に冠される名だ。

 欲しいと思って手には入るものではない。 

 

「そうね。ここでは一航戦と言えば、まだ赤城さん、加賀さんですものね」

「そうよ。翔鶴姉と私に朧、秋雲の4人で五航戦だもの。というか翔鶴姉ぇ、『まだ』って・・・」

 

 悪気はないのだが、さらっと毒を吐く姉に頭を痛めつつも瑞鶴は苦笑する。

 

「朧ちゃんと秋雲ちゃんは遠征に出かけてて残念ね」

「天津風と夕立。うちで最高位の練度の駆逐を付けてもらって贅沢は言ったらダメだよ」

「総力戦ですものね。今作戦が第11号作戦の前半の山場と聞いているわ」

 

 リランカは西方海域に攻め込む為には重要な拠点になる。

 今作戦はそれを奪還する為の作戦だ。

 

「そう、他の2グループは陽動に救援阻止だから、私たちが主力オブ主力。そして作戦の主目標である港湾水鬼を完膚無きままに叩き潰すよ! 五航戦の力、見せてやるんだから」

 

 そう意気込む瑞鶴に対し、翔鶴は両手をポンと合わせるとにこやかに笑う。

 

「そうね。帰ってから加賀さんにうんと誉めてもらましょう」

「ちょっと翔鶴ねぇ。なんでそうなるのよっ」

 

 唐突に出て来た一航戦の片割れの名に瑞鶴がいつも通り過剰に反応するが、翔鶴はそれを面白がるように更に笑うだけだった。

 他の者がからかおうものなら瑞鶴は顔を真っ赤にして怒るだろうが、流石に姉には頭が上がらない。

 

「うふふ。さぁ、そろそろ作戦海域よ。頑張りましょう、瑞鶴」

「ちょっと、別にあいつに誉めてほしいわけじゃないんだけど」

 

 そういってまだむくれる瑞鶴に対し、翔鶴はにこやかに笑う。

 

「あらあら、うふふ」

 

 ややあって、全体の指揮を執る第二艦隊の旗艦の鳥海より会敵予想地点に近づいたことを知らせる通達が発せられ、航空部隊の発艦要請も併せて飛んでくる。

 二人は頷き合って海軍式の敬礼を交わし、お互いの健闘を無言で祈ると距離を取って矢筒に手を伸ばす。

 

「さぁ、五航戦の本当の力、見せてやるんだから」

 

 いっぱいまで絞られた弓から矢が放たれる。

 青い空に綺麗な放物線を描いて矢が飛んでいく。

 会心のそれを遠目に眺めながら瑞鶴は「おっしゃ」と拳を振り上げる。

 

 

 何が何でも負けられない。

 

     ◇◇◇

 

 作戦後、執務室。提督は仮眠中であいにく不在。

 無事に第五作戦まで終了し、最終作戦まで一息付ける時間。

 電は秘書艦として書類に目を通しながらも、比較的ゆったりとした時間を過ごしていた。

 控えめのノックが響く。電が「どうぞなのです」と言うとひょっこりと顔を出したのは加賀だった。

 いつも通りのすました表情。表情がなかなか表に出ない鉄面皮。

 だが、電はだからと言ってこのクールビューティが感情の起伏に乏しい艦娘だとは思っていない。むしろ・・・

 

「・・・五航戦が活躍したみたいね」

 

 第一声からそれだった。提督不在なのは館内放送で知らせているので、居ないのは承知の上なのだろう。 

 

「はいなのです、加賀さん」

 

 そう答える電に対し、加賀は迫まるように歩み寄る。

 別に怒っているわけではないと分かっていても、ちょっと怖い。

 

「別にいいのだけども。私は第五作戦の担当なのだから」

「その割に気になって戦果を見に来たのですね」

 

 そう言いながら電は手元にあった第四作戦の作戦報告書を差し出す。

 すでに提督が目を通しているし、流石に外には出せないが、仲間内で隠すようなものではない。

 そのうち、持ち出し厳禁ながら資料室行きになる代物だ。

 

「何かおっしゃいましたか、電さん」

 

 そう言いつつも加賀はそれを受け取ると応接セットのソファーに座り、おもむろにそれに目を通し始める。

 

「何でもないのです。そうですね、五航戦と言えば、瑞鶴さん、ずいぶん張り切っていたのです」

 

 そう言いながら電は立ち上がると湯飲みを二つ用意してから、茶葉を急須に入れてからお湯を注ぐ。

 

「葛城さんが入ってきて随分と浮かれているみたいね」

 

 素っ気なく加賀が言う。葛城とは雲龍型3番艦で、今大規模作戦の第二作戦後に顕現(ドロップ)した空母艦娘だ。

 

「あぁ、そう言えば葛城さんは随分と瑞鶴さんに懐いてましたのです。加賀さんは面識は・・・あ。」

 

 葛城が急遽建造された理由の一つは加賀を含む南雲機動部隊の空母陣の壊滅だ。

 瑞鶴とは辛うじて縁があるが、加賀とはほとんど縁も無かった。

 唯一あったとすれば・・・

 

「当然ないわ。私が沈んだ時、起工すらされていなかったもの。だから最後の一航戦を担った子としか聞いていないわ」

 

 一航戦という名だけが加賀と葛城を結ぶ縁だ。

 もっとも葛城からしてみれば、それを受け継いでいた瑞鶴と筆頭とした生き残りのみが一航戦という認識だったりするが。

 

「ともかく、皆さん無事で帰ってきて良かったのです。リランカも無事攻略できたのです」

 

 そう言いながら電はお茶を注いだ湯飲みを加賀の前に差し出し、そして自身も対面の前に座る。ちょっと休憩だ。

 

「ありがとう・・・そうね。リランカ島攻略が無ければ、ステビア海の突破など夢もまた夢」

「足がかりはどうしても必要なのです」

 

 深海棲艦が活性化している西方海域を一気に突っ切ってカスダガマ島まで行くなど正気の沙汰ではない。

 そう言いながら電は湯飲みにそっと口を付ける。煎れ立てのお茶はやはり熱々ですぐに口を離す。

 それをくすりと笑いもせず加賀は資料に目を落として続ける。

 

「それで今回の編成は空母機動部隊。第一は摩耶を旗艦に、戦艦は伊勢に日向。空母は五航戦に飛龍。第二は鳥海を旗艦にしてオイゲン、榛名、球磨、天津風に夕立というわけね」

 

 電はうなずく。報告書の内容はすでに目を通している電の頭の中にある。

 

「対地攻撃用に用意した三式弾は4発装備だったのです。一応夕立さんがWG42を装備しましたが、あんまり効果がなかったそうなのです」

 

 そう言いながら電はしょんぼりとする。

 WG42ロケットランチャーは駆逐艦でも装備できる対地攻撃兵器であり、駆逐艦娘である電にとっては希望の光りような兵器であったが、期待ハズレもいいところだった。

 いや、それなりに使えるのだが、期待が大きすぎたとも言えるが

 

「前回の報酬受領時に、今回大活躍すると聞いていたのだけれど、大本営発表はやっぱりあてにならないものね」

「そういうものなのです。でも何気に大規模作戦で地上型のボスと殴り合うのは初めてだったかもです」

 

 先の渾作戦もトラック島防衛戦も地上型の海域支配艦(ボス)と巡り会う事は無かった。

 

「そうね。港湾水鬼だったかしら」

「ええ。写真だとメンチ切ってて怖いのです。声はかわいらしかったですが、イコクノチ、イコクノチと喧しかったとの報告が」

 

 想像できませんと苦笑する電に加賀は報告書の写真に目を向け、

 

「そうね。分相応の下品な顔ね」

 

 とぶっ込む。確かに「!?」とかが似合いそうな顔ではあるが。

 

「加賀さん、少しはオブラートなのです!」

 

 敵ながらそれはあんまりだと電は叫ぶが、加賀は気にしない。

 

「それで苦戦したの?」

「いえ、最終局面で道中、決戦支援を出した以外にはさほど苦労はしなかったみたいなのです。さすがにストレートとはいかなったですが、この編成をベースに第六作戦に挑むのもいいかもなのです」

 

 武蔵や長門を加えれば現状では最強艦隊と言っても過言ではない。

 それに対し、加賀も頷いて同意する。

 

「そうね。私も出る予定よ。それよりも今回の報酬は?」

「パスタの国から戦艦のリットリオさんが来てくれました」

 

 そう言うが、電は少し困り顔だ。加賀も意味する所を悟り、嘆息。

 

「高波はダメだったのね」

 

 第四作戦で発見できなかった以上、一端お預けだ。

 だが電はその事実を振り払うように笑う。少なくとも成果はあったのだから、それを喜ぶべきだと。

 

「はいなのです。残念ながら。でもリットリオさんも強い戦艦だと聞いているのです。何でも大和型並の射程距離なのだとか、なのです」

「そう。戦艦ばかり増えてどうするのかしらね、この鎮守府。まぁいいのだけども」

 

 加賀はそう言いながら、ちょうど良い温度になったお茶に口を付ける。

 頑張った後輩にどう声を掛けるべきか、それを思いながら。




気ままな投稿ですが、今しばらくおつきあい願えればと・・・。無理か。
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