ラブライブ─問題児なマネージャーが付くそうですよ?─   作:リン オクムラ

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逆廻十六夜は語るだそうですよ?前編

「俺がガキのころは施設にいたってのはいってあったか?」

 

 

「そうなんですか?」

 

 

「私は前に聞いたけど…」

 

 

「施設って言っても、十二歳ぐらいまであっちこっち盥回し立ったな。ああ、身内じゃないぞ。施設から施設。施設から養父母、養父母からまた施設ってな感じだ」

 

 

「……どうしてそんなことになったの?」

 

 

「そりゃお前、俺が優秀だったからに決まってんだろ。養子にしたいって引く手数多だったんだが、クーリングオフも早かったってこと」

 

 

ヤハハ!と十六夜は笑うがとてもそんな気にはなれないと、μ'sは視線を落とす

 

十数年平和に生きてきただけの少女達に十六夜の過去は初めから重すぎた。

 

 

「…………ま、俺はガキの頃からサービス精神旺盛だったからな。求められた分だけ応えてやったんだが、どうも刺激が強すぎたらしい。親を名乗った連中はどいつもこいつも必ず土下座で

 

『───頼むから、施設に帰ってくれ………!』

 

と言われてはいサヨウナラ。中には利用しようとしてくれた面白い奴もいたが、結局そいつも同じ幕切れさ。…………フン、今考えてもつまらない幕切れだった。色々と利用されてやったのに、最後がアレだ。いい加減腹が立ったから、ソイツの脱税記録と横領の証拠を全部検察とテレビ局に送りつけてやった」

 

 

ハッ、と鼻息を荒くして茶を煽る。

 

幼かった十六夜は彼なりに自分を利用しようとした親のことを気に入っていたのだ。出なければここまで語調を強めて罵ったりしなかっただろう。

 

 

「酷い…」

 

 

「自分で引き取ったのに…親としてどうなのそれ…」

 

 

「それが、何時だ?ああ、十歳の頃だ。以来、利用しようと近付いてくる連中は片っ端からドン底に叩き落としてやったんだが、面白かったのは最初の頃だけだったな。資金稼ぎにはなったがそれもすぐに飽きた。それでいよいよやることがなくなった時に───集めた資金で一つ、ゲームをすることにしたんだっけ?」

 

 

「ゲーム?」

 

 

「そ。賞金も出し惜しみせず出してやった。ルールは『一週間以内に俺を見つけろ』の一つだけ。簡単なもんだろ?」

 

 

「う、うん」

 

 

「そんでルールを明記した紙と、賞金である札束を山積みにして、その写真をネット中にばら撒いてやったのさ。そしたら馬鹿な連中がウヨウヨと動き始めてちょっとした騒ぎになったんだが…………それも、面白かったのは最初だけだな。大半は三日で諦めて『難しすぎる』だの『ヒントを出せ』だの『主催者は勝たせる気が無い』だの、まあ好き勝手言い出す始末だ」

 

 

不機嫌そうに肩をすくませる十六夜

 

 

「あ、ほんとや。これやろ?」

 

 

と、東條希が言ってスマホの検索結果を見せる。

荒い画像だったが幼い十六夜がやったゲームの跡が確かに残っていた。

 

 

「でも、これだとこんな大金を子供が持ってるわけ無いって思われちゃうんじゃない?」

 

 

「だな。これはもっと試験的なゲームから初めて参加者を厳選すべきだった。まあガキだと思って目を瞑ってくれ」

 

 

十六夜は二杯目の緑茶を入れながら、どこか気鬱な瞳で幼い頃の話を続ける。

 

 

「───ゲーム中に隠れていた場所がな。この前の合宿に行った山の山奥だったんだよ」

 

 

「…そんなところに隠れられる家なんてあったかしら」

 

 

「あそこには高速道路の建設が頓挫したせいで建てられたまま使われずに放置された老人介護施設の予定地があるんだよ」

 

 

「そこ、凄い山奥じゃない…そんなところにいたの?」

 

 

「で、其所にアタッシュケース三十箱分の金を積んで待ってたんだが、一向に誰もこない。しかも夏の終わりで湿度も高く寝袋がジメジメと腐ってきやがる。しかも嵐までやってきやがった。山奥で轟々と鳴り響く雷は成程、"神鳴り"とはよく言ったもんだ。撃たれたところで死ぬような身体じゃないが、ガキなりに巨大な何かを感じさせるものがあったのさ」

 

 

「アタッシュケース三十箱!?」

 

 

「…ハラショー…」

 

 

「そんな嵐の中、いよいよクリア出来る人間が現れそうにないと悟った時。急に馬鹿らしくなってな。ヒントを出せと言ったから出してやったのに気づかねえし、見つかるように時々一人でうろついているのに見つけられねえ。テメェらの目は山椒魚並みに退化してんのかとガキなりに憤慨して、いよいよもって収まりがつかなくなって、こうなったら世の中の半分ぐらい滅茶苦茶にしてやろうかと小刻みに拳を震わせながら隠れ家に帰ったら…」

 

 

「…一旦休憩にしましょ…ちょっと話を整理させて」

 

話を続けようとする十六夜に絵里が待ったをかける。

いきなり、ちょっと重めの話から入ったので少し休憩を入れたいらしい

 

 

「まあ、いいが。お前ら時間いいのか?」

 

 

「私は大丈夫!」

 

 

「私も」

 

 

「私もです」

 

 

「てゆーか、重すぎるにゃー…」

 

 

「施設を盥回しって…」

 

 

十歳くらいの子供がそんな生活をするのはとてもではないが健全とは言えない。

 

「何というか…ものすごい暮らしをしていたのですね…」

 

「流石にここまでとは予想してなかったわ…」

 

 

μ'sの少女の予想より十六夜の過去は斜め上どころか真上をいっている。

 

だが、これはあくまでも、序章のようなもの。

 

十六夜にとって大きな意味を持つ過去はこのあとなのだから。

 

 




春日部「そういえば、私たちの出番は?」

黒ウサギ「恐らく無いでしょう。これは十六夜さんが箱庭に来る前と言う設定ですから。μ'sの方々を無理矢理にでも、箱庭に連れてこない限り私たちが出る前にこの作品は終わってしまうのですよ」

飛鳥 「私たちが十六夜くんが箱庭に来る前の世界に行ってしまうのはどうかしら?」

黒ウサギ 「それはノーネームの財政上今のところは現実的ではないのですよ…」

春日部 「じゃあどうすれば…」

黒ウサギ 「もしかしたら、最終回に名前くらいは出るかも知れないのですよ!」

飛鳥 「そんななけなしの出番で私たちが満足すると思って?」

春日部 「こうなったら白夜叉に打診しに行こう」

飛鳥 「そうね。黒ウサギが歌って踊るって言えば乗ってくれるでしょう」

黒ウサギ 「お、お待ちください!そんなことにしたら絶対にややこしいことになってしまうのですよ!」

春日部 「大丈夫。私たちには被害は無いから問題ない」

黒ウサギ 「黒ウサギに被害がある時点で問題しか無いのでございますよ!このお馬鹿様!」




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