灰色の果実と劣等生(仮)   作:OkiharaM78

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桜舞う季節。司波達也(劣等生)と邂逅した藤宮敏也(転校生)
2人の出会いは何を齎すのか。



司波達也

 ひらり、と桜が一片舞う。

 古来よりこの国を印象付けてきたこの樹が蕾を満開にし咲き誇るこの季節の中、青年が1人、ベンチに腰掛けて情報端末を操作していた。

 周りは入学式の準備でごった返しているその中で、その光景は一種の異様を形作っていた。例えるならば、一枚の絵画。

 整った顔立ち、涼しげな目元、制服に包まれた身体は細身でいて、それでいて筋肉質を感じさせる、そんな男だった。

 そんな男を見て通りがかる女子生徒たちがひそひそと囁き合う。

だがそれは、決して色めいた会話では無かった。

「早く来たところで二科生なのにさ」

「どうせスペアなのに」

「粋がっちゃって、バカみたいだよね」

 彼女達からかけられる言葉は侮蔑。あまりにも差別意識が染みついていた者の発言だった。

 ひそひそと自分の事を笑う他人には目もくれず、青年は黙々と端末を操作していた。

 と。

 そんな青年の横を男が通る。

 顔立ちは青年とどこか似通っているところはあるものの、完全な黒髪を持つ青年に対して男は蒼みがかった黒髪をしていた。目付きは細く、自然に歩いている様に見えても身体捌きが素早いものであると分かる。

 そして手首には黒い鉱石をブレスレットにしたものを付けていた。

 似通っている様で異なる2人。

 互いが互いを知らぬまま、最初の邂逅は終わった。

 

「早く来すぎた……」

 学園内をしばらく歩いて、俺が発した第一声は、入学式の開始時刻よりも早く来てしまった事への愕然としたものだった。

 風見雄二(アイツ)に教わった様に、朝のランニングを終え、シャワーを浴びての登校だったのだが、思った以上に早すぎたらしい。

「………ふむ」

 足を止めて考える。直ぐに会場へと向かうか、それとももう暫く歩いてから向かうか。

 こういう時、一瞬の判断で全てを決める。それは今まで生きてきた中で身に付いたものだった。今回も例に漏れず判断したのは一瞬。

 直ぐに会場に向かおう。

 座席にでも座って待っていればそのうち誰かが来るだろう。

 そう決めた後の判断は早い。

 足を会場へと向け、歩き出した。

 

 会場にはやはりと言うべきか、座っている生徒の数はまばらだった。

「……?」

 そのまばらな人数が座っている位置に妙な違和感を感じた。あまりにも前と後ろとの人数の差が違い過ぎる。

 暫く考えて一つの解答に行き着いた。

「……あぁ、そういう事か……下らん」

  一科生と二科生。

 ブルームとウィードと呼ばれるこの区別は、両者の間を差別という枠組みで囲っていた。曰く、『片方は己の優越に浸り、片方は己の劣等に跪く』。

 だが、俺からすればそんな違いはどうでも良い。

 優秀であろうと、劣っていようと、最終的に己の価値を決めるのは自分自身なのだ。

「死ぬ時に己の人生を悔いるも、満足するも自分次第」

 こう言ったのは誰だったか。

 ため息をついて後ろの席に座り目を閉じた。視界と世界を遮断する。これでこの馬鹿馬鹿しい光景からは暫く離れる事が出来る。そう思った。

 と。

「……すまない。隣の席、良いか」

 声を掛けられる。目を開けるとそこには男が立っていた。

 周囲には集まりつつある生徒の数。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。

 男を見る。細身で有りながらも強靭な肉体を持つその顔は涼しげで、短く切り揃えた黒髪と相まって恐らく女性の大半は頬を染める類に入るだろう。

 こちらの返事を待つ様に立つ男に対して首を縦に降る。済まないな、と再度口にし男は隣に座った。

 暫くの間、沈黙が2人に降りる。仕方がないので懐から小説を取り出して文字に目を走らせる。それを見た男がほお、と声を漏らした。

「珍しいな。今時紙媒体の本を持っているとは」

 ちらと男を見た。「あぁ」と言った男は軽く頷き、

「俺の名前は司波達也。悪いな、紙媒体が珍しくてつい声をかけてしまった」

 と言った男ーー司波達也は自己紹介をしてきた。

「藤宮敏也。別に無いわけじゃ無いだろう。確かに今は電子書籍が主流だが」

 簡単に此方も自己紹介を返し、小説の表紙を見せる。

 電子書籍はかさばる事も無く便利ではあるが、読んでいる気がしないのが正直な感想だった。

 紙をめくる感覚があって初めて「読んでいる」という感覚が得られるのだ。

 そう言うと達也は苦笑する。

「今時珍しい感性だな。いや、確かにそういう考えを持っている人間もいるとは思うが」

「俺の知り合いが、な」

 簡潔に言葉を切る。その様子を不思議に思ったのか達也が口を開こうとするも

「すみません……隣の席、良いですか?」

 直後に話しかけてきた女の声に遮られる。声のした方向へと視線を向けると、女性が2人立っていた。

 赤髪をショートに切り揃えている活発そうな少女と、対照的に大人しそうな外見をしつつも、女性的な体つきをしている眼鏡少女。先程声を掛けてきたのは此方の方だろう。

「俺は別に構わないが……敏也は?」

 達也が視線を此方に向けてきた。こちらも首を縦に振る。

 やった、と言ってガッツポーズをとり、達也の方へと座る少女と有難う御座います、と一礼しこちらの隣に腰を下ろす少女。

「あー、助かったわ。ありがとね。何処もかしこも埋まっててさ、困っていたのよ」

 千葉エリカと名乗ったショートヘアの女子が此方に礼を言う。

「流石に立ったまま受けるというのも無いからねぇ……こうもハッキリと分けられてると前に行く気にもなれないし」

チラと前方を見るエリカ。あからさまにうんざりとした表情を浮かべていた。

「流石にあそこには座れませんね……」

 と、柴田美月と名乗ったもう片方の女子が苦笑交じりに言う。

「魔法が使えるか否かなんて、そんな些細なことを気にしなければ自身が優れている、と実感し無いんだろうな」

 と言うと、達也がそう言えば、と俺を見てくる。いや、正確には俺の制服にあるエンブレムを見てきた。

「敏也のそれ、一科生のそれだろう。こっちに座っていて大丈夫なのか」

 達也の言葉にエリカと美月がえ、とこちらのエンブレムを見てきた。二人とも驚愕の表情を浮かべている。

「え、嘘。こっちに座っていて大丈夫なの⁈ 普通一科生はあっちだよね⁈」

 エリカが詰め寄ってきた。俺は溜息を一つつき、

「一科生がこっちに座ってはいけない、なんて決まりは無かった。あいつらの薄っぺらい選民思想に付き合ってやる義理など無いし、興味も無いからな」

思ったことを言うと、三人とも目を見開き唖然としていた。

「ま、まさか一科生からそんな言葉を聞けるとは思わなかったわ……」

「ちょっと驚きです……」

 エリカと美月が本気で驚いていた。達也だけは、「まぁ、一科生にもそういう考えの人間がいるのだろう」と納得していたが。

「何でそんなに驚く? 一科生だからといって全員が皆天才ばかりだとでも?」

「いや、そうじゃ無くてね。ほら、アイツらの表情見てみなよ。いかにも『自分達はエリートだ』なんていうオーラバリバリに出してるじゃん。だから敏也……敏也って呼んでいいよね? 敏也みたいな人が結構新鮮に見えるんだよね。こう……『どうでも良い』みたいな考えの人が」

「そうか? まあ滅多にはいないだろうな。少なくとも、この学校には」

 エリカがなにかを言いかけるのと同時にブザーが鳴る。徐々に周りを包んでいた喧騒が静まり返った。入学式が始まる。

「ほら、始まるぞ。二人とも静かにしたらどうだ」

 達也の言葉にエリカが口を閉じる。俺も正面を向いた。

彼女が何を言いたかったのかは気になるが、先ずは入学式を終える事に専念しよう。

 魔法科高校での生活の始まり。

 それは色々な意味でも俺の「普通の」学生生活が始まりを告げるものだった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、聞いた? あいつ、第一高に入ったらしいわよ」

場所は変わって、とある喫茶店。穏やかなBGMの流れる中、ダンとカウンターを叩いてツインテールの少女が言った。

「マジか。別に三嶋崎でも良かっただろうに。あいつも難儀な性格してるな」

それを聞いて、少女の右に座っていた少年がコーヒーを啜り嘆息する。

店の主人がドアに貸し切りの立て札を立てているために、喫茶店の中には5人しかいない。先程まで思い思いの時間を過ごしていた中の発言だった。

「若しかしてアイツ、友人が一人も出来ないまま3年間過ごすのかな」

と、ツインテールの少女……湯浅皐月が呟く。

「皐月ちゃん、それは酷いよ。若しかしたら敏也君、沢山友達出来るかもよ?」

そう言ったのは最初に机を叩いた少女の左に座るおっとりとした少女。本気でそう思っているであろう少女にカウンターの向こうに立つ黒人男性が苦笑する。

「オイオイ、ゆかりちゃん、俺にはアイツが多くの友人に囲まれてる光景がちょっと想像出来ないんだが」

頭を軽く掻き、流暢な日本語で言う男性に対して、伏見ゆかりはムウ、と頬を膨らませる。

「エディさんまでそんなこと言うの? 酷いよ」

ゆかりが怒る。そんな彼女の様子にフフと笑ったのはブロンドの髪をした美人だった。

「ユカリの言う通りよ。学生生活のに友人は必要よ? 何年も付き合っていく仲間なんだから」

 そうでしょ? と言わんばかりの視線を向けながら、ブロンドの美人――リサ・ヴィクセンの苦笑交じりの一言にエディと呼ばれた男は「だってよ」と言葉を重ねる。

「アイツ、基本的に『9029』とソックリジャン。あまり感情表現が上手くないっていうか」

 彼と同じ『会社』に所属しているであろう知り合いの無愛想な顔を思い浮かべ、苦笑するエディ。そんな彼に対してリサは

「それは流石に酷いんじゃないかしら。確かに表情に乏しいけど、『9029』に比べたらまだ豊かじゃないかしら? トシヤだって友人くらい作るわよ。ね? ソーイチ」

そう言って流し目で左に座る少年を見た。ソーイチ、と呼ばれた少年……那須宗一は頷き

「まぁ、そうだな。あいつだったら大丈夫だろ。アイツだって友人はいるんだ、出来ないはずが無い」

 そう言って天井を見る。「でもさ」と続いたのは皐月だった。

「私、敏也の笑った顔って見た事無いんだけど」

その言葉に空気が凍った。同時に「そう言えば……」と言う空気が流れる。

「私もあんまり想像できないわ。トシヤの笑顔って」

「それは……確かに。私、平然としながら銃を構えていそうなイメージがあるからあまり日常で笑顔の敏也君が想像できないかも」

 口々にいう皐月、ゆかり、リサの女性陣。そんな三人を見て宗一とエディは呆れ顔を浮かべていた。

「なぁソーイチ、オレッチこういう時どうアイツをフォローしてやれば良いのか分からないんだが」

「まあ、何とかなるだろ。アイツなんだし」

現実逃避に近い形で話を締め括る宗一。「そりゃ無いだろ」と言った表情を浮かべた後、エディは女性陣の会話の中に入っていった。

四人の会話をしている光景を眺めながら、宗一はぽつりと呟く。

「でもアイツ……周りが気づかない内に色々と動いてるからなぁ。無茶しなけりゃ良いが」

あいつも俺と変わらず相当nasty(無茶苦茶)だしなぁ、と本人が聞いたら怒るような一言を続けた。




( ゚д゚) ・・・
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚) ・・・
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
(;゚Д゚) …!?
感想が来てる……だと……⁉︎
どうもお久しぶりです。前回の投稿から大分経ってしまいましたm(_ _;)m
そして見てみれば、何と感想と評価を頂いていた……っ! こんなに嬉しい事は無いッ!
こんな駄文にお付き合い頂いている方々の為にも、頑張って書き続けます。
さて、最後に宗一君達が出てきました。彼等との出会いも後で書く予定です。他にも「この作品とコラボしてみたら?」と言う御意見、お待ちしております。

今後「クロノスリベリオン」の世界観も入れるべきか

  • 構わん、続けろ
  • 無理に入れなくても良いんじゃね?
  • そんなことよりヒロインの出番増やせ
  • この作品入れてみて?(感想欄にて)
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