灰色の果実と劣等生(仮)   作:OkiharaM78

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学園生活を過ごしていた敏也。そんなとき、学園前に彼を訪ねてくるある銀髪女が――
お待たせしました(待っている人なんているのだろうかこんな三文小説に)
今回も読んでくれたら幸いです。


銀髪の来訪者

世の中で、一番貴重なものは平穏だと思う。

 何事もなく、ただあるがままを享受するだけの生活。

 そんな「当たり前の光景」は、俺にとっては何よりも貴重なものであり、同時に自らを錯覚させるものでもあったのだ。

 自分はただの人間であるという錯覚を。首につけられた鎖を忘れるほどの。

 

「風紀委員か。まあ頑張れ森崎。怪我をしない程度にな」

「……お前がそれを言うのか……」

 入学式から暫くたち、友人関係も徐々に構築され始めてきた頃。俺は森崎に激励の言葉を送っていた。しかしその当人は表情を硬くしたままこちらを睨みつける。

「お前は自然とトラブルを引き寄せる。いいか、何があっても、絶対に、僕の、仕事を、増やすなよ」

 念を押すように一句一句を切らせて俺に詰め寄る森崎に心外な表情を浮かべた。

「何を言っている。俺がトラブルを起こしているんじゃない、自然に巻き込まれているんだよ。心配しなくとも、お前の世話にはならないさ」

 こちらを暫く睨みつけていた森崎だったが、やがてふうと小さくため息をつき、「いいか、絶対だぞ」と言って去っていった。

 呆れながらその背中を見ていると背中から声をかけられた。

「藤宮さん、森崎君のことを昔から知っているのですか?」

 振り向くとそこには黒髪の美少女が立っていた。司波達也の妹、司波深雪だ。

「知っている、というよりはつい最近知り合ったばかりなんだがな」

 曖昧に返すと深雪は首を傾げた。そんな姿すら美しいのか、周りの男子生徒からため息が漏れる。同時に嫉妬のまなざしがこちらへと向けられるが知ったことではない。

「そういえば敏也さんって、編入してきたんだよね? 前はどこにいたの?」

 深雪の隣でそう聞いてきたのは大人しそうな印象を受ける女子。前回魔法を使おうとした光井ほのかと紹介された女子だ。

「……前にいた学校のことはあまり話したくはないんだ。すまんな」

 おそらくただの世間話で聞いてきたのだろう彼女は、俺の言葉で「悪いことを聞いてしまった」と言わんばかりの表情を浮かべる。「ご、ごめんなさい」と言って謝るほのかに苦笑をし「大丈夫だ」と返す。

「元々いた学校、というよりは学園か。そこは全寮制の学園でな、理事長が一人娘のために設立したものなんだよ」

 簡単に説明すると驚いたような表情を浮かべるほのかの隣で眠たそうな目つきの少女が口を開いた。

「一人娘のために設立した学園……聞いたことがない」

 そう言ったのは北山雫と名乗った少女だった。その言葉にそうだろうな、と言葉を返す。

「出来たのはつい最近だからな。無理もない。生徒も少なかったからな」

 そう言って思い出したのはかつての学友たち。あまりにも個性的すぎるメンツばかりだったため、忘れようとしても忘れられない面々ばかりだった。

「何人くらいだったのですか?」

 唐突に深雪が口を挟んでくる。表情はどこか真剣なものだった。

「……俺を入れて七人だ」

 短く答える。ほのかと雫がえっ、と声を上げた。

「それって……学園として成り立つんですか? あまりにも運営に無茶があるような気がするのですが」

「明らかに経営破綻しているでしょ」

 二人から一斉に質問を受ける。深雪はどこか考え込むように顎に指をあてていた。

「とはいっても入学料は途轍もなく高いんだぞ。俺はある事情で特待生扱いだっただけで」

 値段を言うと二人とも口を開けて固まっていた。「雫……出せそう?」「……ちょっと厳しいかも」と二人で会話をしているところを眺めていると先ほどまで考え込んでいた深雪がこちらに顔を向けた。

「藤宮さん。その学園の名前って何という名前なのですか?」

 唐突に真剣な目をこちらに向けてくる深雪。そんな彼女に俺は学園の名前を教えた。

「……美浜学園」

 その名は、閉鎖された楽園であると同時に、彼女(榊由美子)曰く「鳥籠」の名前でもあった。

 

 翌日。

 登校中する前の運動を済ませ、通学路を歩いていた俺は司波兄妹と会った。

「よう。二人とも今から登校か?」

 軽く声をかける。二人ともこの前の一件からか俺に対し警戒心を持っているようだった。

「おはよう藤宮。まあそんなところだな」

 妹を守るようにして前に出た達也が返事を返す。仲のいい二人だ。

「朝から仲が良いなお前ら。いいことだ」

 仲が良い、という単語に反応したのか深雪が頬に手をあてて身をよじる。

「兄弟だからな。妹と登校するのは別に悪いことじゃないだろう」

 達也の言葉にそれもそうだ、と頷き返して前を向く。

 途中エリカとレオ達とも合流し学校へと向かう。暫く五人で向かっていたが校門前へと差し掛かったところで俺は足を止めた。思わず苦い表情を浮かべる。

「…どうした敏也。何かあったのか?」

 レオが聞く。その言葉にほかの三人も振り向いてこちらを見た。

 校門の正面。

 そこにあったのは青のロードスター。そのドアにもたれてこちらを見て笑顔で手を振っている銀髪碧眼の女性がいた。

 メリハリのついた肢体をスーツで包み、銀髪を肩まで伸ばしている。男なら誰しもが鼻の下を伸ばし、女ならその容姿に嫉妬する、そんな女だった。

「……だれ、あの人? 知り合い?」

 エリカが興味津々に聞いてくるがその女性に視線を合わせることなく答える。

「知らん。あんな奴。俺の知り合いにマヌケは居ない」

「トーシーヤー!」

「……思いっきり呼んでるわよ? 投げキッスまでしてるし」

「断じて知らん。関わらないほうが良い類の奴だろう。さっさと行くぞ」

「ちょっとー! 無視なんて酷いじゃない!?」

「半べそかいてるわよ、あの人」

「…………」

 はぁ、とため息をつく。

「悪い、ちょっとあの女と話してくる。後で説明するから先に行っていてくれ」

 興味津々にこちらを見てくるエリカとレオ、それと何を考えたのか顔を赤くしている深雪と表情を変えない達也に手を振ってその『人違い女』の元へと歩いていく。気にしているようだった三人だったが「行くぞ」という達也の言葉に学校へと入っていった。

 その後姿を見送った後、頭を掻きながら不機嫌な表情を浮かべその青いロードスターへと近づいて行った。

「……おいコラ」

 低くドスのきいた声を出す。その声に臆することなく女は笑顔を浮かべた。

「あ、やっと来てくれた! どう? 学生生活を楽しんでいるかしら?」

「まあまあな。そっちこそどうだ、保護者ごっこは」

「ひっどーい! そんな言い方ないじゃない!? 静名だってそんな物言いしないのに」

「何しに来たんだよあんた」

「うわ、何しに来たって無いじゃない? 私、一応あなたの保護者なのよ?」

「こっちでの身元を保証してくれていることには感謝しているが、俺はもう保護が必要な年じゃない。帰れ」

「冷たいわ……うぅ、子供のころはもっと素直で可愛かったのにどうしてこうなっちゃったのかしら」

「ガキのころをだしたら俺が黙ると思ったか? もう一度聞く。何しに来た。仕事なら暫く休むと言っているだろうが」

 むう、と膨れる女。ワザとらしくため息をついて肩をすくめた。

「いやだわ。私はただあなたが普通に学校生活を送っていけているのか様子を見に来ただけよ?」

「今のところは問題ない。現状問題があるとしたら今こうしてあんたが会いに来て話をしていることが問題だ。教室に戻った後なんて言い訳すりゃいいのか考えるのが面倒くさい、俺の仕事を増やすな」

「破綻しない経歴は用意してあげたでしょ? べつに白湯村出身にしても良かったのにわざわざ作ってあげたじゃない。私のことは母方の親戚だってことにしてくれて良いのよ?」

「あんまり嘘は吐きたくないんだよ。重ねりゃ重ねるほど色と嘘は黒くなる」

「嘘は“赤くなる”でしょう?」

「赤とて重ねりゃ黒くなる」

「そうならないようにうまく立ち回りなさい? “事故死”はしたくないでしょ?」

 事故死、の言葉を出した瞬間だけ、女は目を細めた。

「いわれなくてもやっている。だからこそ俺の生活にイレギュラーを持ち込むな」

「もう…わかったわよ。今日はこれで帰るわ」

「…おい、なんだよ、本当に顔見に来ただけなのか?」

「そういったじゃない。仕事だったら事前に携帯端末に連絡入れてるわよ」

「……まあ、確かに」

「……え? 嘘、まさか持ち歩いていないの!? ちゃんと仕事用とプライベート用、二つちゃんと用意してあげたでしょ!?」

「悪い、次は持ち歩くようにする」

「こっちからの呼び出しに対して15分以上返答がない場合、逃亡とみなして何人か送り付けるわよ? 分かっているの?」

「ああ」

 頷いて見せた俺に女は畳みかける。

「それと! 県外に出る際は事前に申請書を提出しなさい!」

「はいはい」

「あ! そうだったわ思い出した! あなたここに来る時歩いて県境を超えたでしょ! キャビネットパスだって用意してあげたのに何やってるよ!」

「キャビネットは嫌いなんだ、知ってるだろ」

「だからって数百キロも歩くバカがどこにいるの!?」

「目の前にいる。それに歩いたのは180キロだ」

「そのせいで警察の世話になった挙句真由美ちゃんにまで世話になったクセに偉そうに言わないでよ! 上から嫌味言われるのは私なのよ!?」

「……………」

 沈黙を通す。

「ちょっと、何その“チッ、面倒くせぇなこの女”みたいな目で私を見ないでよ!」

「あんたエスパーだったのか? なぜ俺の考えている事がわかる」

「うわ、泣きそう」

 本気で涙を浮かべる目の前の女。

「悪かった。今度ゆっくり飯でも食いながら謝るから今日のところは帰ってくれ」

「そうすりゃ私が黙るとでも?」

 そういった女は俺を睨みつけて指さした。

「もう一度いうけど、“事故死”したくなければ変なコトはしないこと! 分かった?」

「はっ! 了解であります、涼鳴三佐!」

「むー……」

「おい、“コイツ一発マジでぶん殴っておこうかしら”みたいな目で俺を睨むな」

「あなたエスパー!?」

「ほかの連中には内緒にしておいてくれ。自己紹介のたびにスプーン曲げるのは面倒だ」

 いつの時代の人よそれ……と言って女はため息をついた。

「全く…どうしてこんな可愛げのない子に育ったのかしら? 静名だって夏輝ちゃんや唯ちゃんをちゃんと育てているのに…」

「あいつらと一緒にするな。静名がやっているのは『教育』という名の『調教』だ。いいからもう帰れ。ここで遊んでいる暇なんぞないんだろうが」

「ホントは真由美ちゃんにも挨拶しておきたかったんだけどね…それとしつこいようだけど!」

「分かっている。悪かったな、EB」

「分かればよろしい。じゃあね、また連絡するわ」

「あぁ…」

 雪のような銀髪を振って車に乗り込んだ背中を見送り、そのまま走り去るのを見た俺は周りの視線を気にせずカバンの中から携帯端末を取り出した。

 彼女には持っていないように言っていたものの、実際は仕事用も持ち歩いている。

 黒い端末―仕事用だ―を起動させ、暗証番号を入れてメニュー画面を呼び出した。

 一見すると普通の携帯端末だが、その実この端末での通話は特殊な秘匿回線に接続される。この端末に登録されている名前は一つだけ。

 その名前は『EB』――エリザベッタ・E・ベルナルディ――帰化名涼鳴瑛梨奈――つまり俺のバイト先での直属の“上司”の名前だけが登録されていた。

「…チッ、来るなら来ると連絡入れろっての…」

 忌々し気に舌を打ち鳴らし、端末をスリープにしたあとでいつ呼び出しがかかっても対応できるように制服のポケットに押し込んだ。

 彼女が自分の口で評価していたように確かに面倒な女だ。

 半年近く連絡をよこさずにいたかと思いきや突然呼び出して「指定の場所で待機」とだけ言って面倒な仕事を押し付けてくる。仕事があるのなら良いのだが、時には呼び出したまま一時間以上連絡がなく、散々待たせた挙句連絡が来たかと思いきや「状況終了」という言葉だけで解散を言い渡してくる。足を運んだ分の“出張料金”は俺の口座に振り込まれるため無駄足ではないのがせめてもの救いであるが何かしらの徒労感は感じてしまう。

 あまり公には出来ない仕事ではあるし、人に聞かれても説明に困る仕事だが、こちらの都合で退職させてもらえるものではない。それになによりも自分の意志で足を踏み入れた仕事だ。そう簡単に辞めるつもりもなかった。

「…さて、どう説明したものか…」

 とりあえず『人違いをしたお姉さん』という説明は通用しないだろう。

 少しだけ重くなった足を引きずりながら俺は自身に向けられる視線の中、学園の門をくぐった。

 




はい、どうも生きておりますすいません。
今回は「グリザイア」シリーズでのJBにあたるオリキャラを登場させました。
イメージとしてはゴッドイーターのアリサをスタイルをもうちょいボンキュッボンにさせたキャラクターと思ってくれたらいいかと(←変態)。
後、今回「とある作品」の登場人物の名前を出しました。
分かる人がいたら感想欄までどうぞ。
…当たっていてもなにか景品が出るわけではありませんが。
ではまた次回。
…エターにはしませんよ?

今後「クロノスリベリオン」の世界観も入れるべきか

  • 構わん、続けろ
  • 無理に入れなくても良いんじゃね?
  • そんなことよりヒロインの出番増やせ
  • この作品入れてみて?(感想欄にて)
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