NO SIDE IN
激しい雨が降り注ぐ中、青黒いコートを目が見えない様に被った人があるいていた。190はあるであろう身長によりその人物は男であると思われる。
その腕の中に黒い布で包まれた、赤子を抱いたまま。
時間帯は深夜、それもこんなに酷く雨の降る時に出歩く人達などいない。
脇目も振らずに男は目的地に向かって歩いていく。
向かっている場所、それはFAIRY TAIL。
このマグノリアの街にある”魔導士”ギルドの中で一番の大きさを有し、一番の問題児達が集まるギルドだ。
FAIRY TAILの門前にまでたどり着き、男はそっと赤子を扉の前に置いた。
赤子の頭を一撫ですると、何事もなかったかの様に踵を返して来た道をまた歩んでいく。
「待てい」
男の背中に言葉が投げかけられる。
しかし男は立ち止まるだけで、振り返る事はない。
「ガキを置いて何処にいく」
男に話しかけているのはかなり小柄な老人だ。だが、その眼光は鋭く。普段の老人を知る人からすれば目を疑う様な光景だろう。
老人の名前はマカロフ・ドレアー。
男が赤子を置いたギルド、FAIRY TAILのマスターだ。
「Hum……。俺には必要の無いものだからだ」
「貴様……ッ」
静かに、だがそれでも怒気をはらませた声に辺りの空気が弛緩する。
「やめておけ、お前に用はない」
顔だけを振り返り男はマカロフの顔を見る。それと同時にフードが風で吹き飛び男の素顔が明らかになる。
銀色がかった頭髪に凍えるような寒さを含んだ蒼色の瞳。
「そうは行かんじゃろうが!」
マカロフが魔力を手に込める。
「黙れ」
「ッ‼︎ ……貴様、人ではないな」
マカロフに叩きつけられた純粋な殺意。
大陸でも僅か十人にしか与えられない称号、聖十大魔導を持つマカロフでさえも怯んでしまった。それほどにも研ぎ澄まされた刃の様な、人にはあり得ぬ様な殺気だったのだ。
「人ではない……か。中々に的を得ている」
男の手にはいつの間にか柄が白い刀が握られていた。
魔法にしろ何にしろ、先ほどまで持っていなかった刀が握られている。
「……再び会わない事を祈れ。神にでも……悪魔にでもな」
男はフードを被り直し、目にも止まらぬ速さでその場を去って行った。いや、むしろその場から消えたと言った方が正しいだろう。そのようなスピードだった。
「むぅぅ、彼奴は一体……」
雨の降りしきる中、マカロフは一人思考に耽る。すると、先程まで大人しかった赤子が突然泣き出した。
まるで別れを惜しむかの様に。
「おとととっ⁈ 今はこの子の方が先じゃのう」
マカロフは門前に置いてあった赤子を腕に抱える。そのまま、赤子をあやしながらFAIRY TAILの中へと入って行った。
「新しい家族が増えるぞい。名前は……手紙も何も無いのう。黒い布、ふむ。
犬猫のように名前を決めるマカロフであった。
NO SIDE OUT
NERO SIDE IN
「悪魔のいる街?」
FAIRY TAILの酒場で俺は育ての親でもあるマスター、マカロフの話しを聞いていた。
何でも俺はいつの間にかこのギルドの目の前に捨てられていたらしい。”両親の姿”は知らないとの事。ま、親なんてどうでもいいけどね。
それで、マカロフは俺を拾って十四歳になる今現在まで育ててくれたのだ。ネロって名前の由来も聞いた時は安直過ぎるとは思ったが、今では割と気に入っている。
「そうじゃ、なんでも教会に悪魔が住み着いているらしい」
「はっ! 教会に悪魔ね。皮肉なもんだ」
悪魔ってのは物語の様に聖なる場所は嫌うもんじゃないのかね。何処にでも住み着くのは悪魔らしいとは言えるけどな。
「で?行くのか?」
「ま、この右腕の事も調べる手がかりになりそうだしな。行くよ」
俺の右腕は利き腕の左腕とは違って、黒い手袋で覆われている。怪我をしているとかではない、火傷や切り傷だったらどんなにマシだったことか。
「その腕も気にする必要は無いんじゃがの。儂等
「別に、一般人が気にするから隠してるだけさ」
俺の右腕には他人にはあまり見せたくないものがある。幸いこのギルドにはこの腕を気にする奴らなんていないが、俺の気持ちってのもあるだろう?
「んじゃ、行ってくる」
「気をつけての。ちゃんと風呂入るんじゃぞ、綺麗な銀髪なんじゃから」
マカロフの魔法によって伸びた腕で俺の頭をガシガシと撫でる。それを左手で払いのけ座っていた席を立つ。マカロフはいつまでたっても俺をガキ扱いする。
まだ、ガキだから仕方ねぇのかもしれないが。
「何時も入ってるだろ? 全く」
側に置いてあった紺色のコートを羽織り、左腕の袖を捲る。右腕は……分かるだろ?
そのまま、ギルドを出ようとすると唐突俺は後ろから話しかけられた。
「ネロ! どこ行くんだ? 仕事か⁈」
話しかけてきた少年はナツ・ドラグニル。
桜色の髪に竜の鱗の様なマフラーが特徴的な活発な少年だ。そして、ナツにはもう一つの特徴がある。
失われた魔法。
その一つでもあるドラゴンを滅するための魔法。
滅竜魔法の使い手であると言う事だ。
ナツは俺の進路を塞ぐ様に前に立ち止まる。俺が何処に行くか説明しないとどきそうにもない。
「……はぁ、仕事だ。着いてくるなよ」
「んなぁ⁈ なんでだよぉー!」
「残念ながら今回の仕事はR-14指定だ」
「なんだよそれー」
勿論嘘だ。
そんな依頼聞いたことない。
そのまま俺はナツの傍を抜けて出口へと向かう。今回は悪魔が関わってるらしいから、できれば一人で行きたかったのだ。
「はっ! お前が言ってもネロの足手まといになるのがオチだってーの!」
「んだとグレイ‼︎」
「やんのかコラァ!」
ナツは新たに現れたグレイと言う名の少年と口論の後、取っ組み合いを始めてしまった。
グレイ・フルバスター。黒髪タレ目の少年だ。使う魔法は氷の造形魔法、しかしどういう訳か直ぐに服を脱ぐ。
現に今もナツと喧嘩してるが上半身が裸である。
相手にするのも馬鹿らしいので無視をしよう。
「ふむ、ならば私ならついて行ってもいいんだな?」
「……今度はエルザか。いや、お前13だったろ?」
俺の横から話しかけてきたのはエルザ・スカーレット。
その名の通り、緋色の髪が特徴的な女の子だ。何時も鎧を着ているのがまた不思議なことだ。俺の右手の手袋も似たようなものかもしれないが。
「むぅ」
「そんな訳だ。一人で行く」
今度こそ俺はギルドからでて、一人で歩いていく。何でこう彼奴らは俺の依頼に着いて来たがるのかね。俺は悪魔や魔物の討伐とかを集中的に選んでるせいなのか?
「帰ってきたら勝負しろよな!」
後ろから聞こえてくるナツの声に左腕を挙げるだけで答えて。目的地の悪魔の住み着いている教会のある街へと向かう。
確か、西の森を超えたあたりだったはずだ。
走るか。
俺は一つ溜息をはいて駆け出した。
バージル困難じゃねぇよ。
ってツッコミが来ても多分変わりません。