とりあえずリアルがひと段落。
次の投稿はもう一個の方の予定。
ミラ side
古臭い店の中に銃声と剣戟音が鳴り響く。
店の中で戦っているのは二体の人形の悪魔と二人の人間。
テーブルや椅子などを足場に跳躍し、天井や壁を蹴り、空中にて方向転換を行う。
「Hey! 坊主! 息切れか? 何ならてつだってやろうか?」
「息切れしてんのはおっさんじゃねぇのかよ!」
悪魔と戦闘を行っていると言うのにネロと銀髪で紅いコートを着た男は軽口を叩きあっている。
しかし、それでも戦闘行為が鈍ると言うことは無い。
私も何か手伝えることが無いかと思っているのだが、悔しいことにレベルが違いすぎる。
私があの中に入れば流れ弾で撃ち抜かれて終わりだろう。いや、それならばまだいい方だ。最悪、ネロの足をひたすら引っ張り、共倒れの可能性も存在する。
同じギルドの仲間なのに手助け出来ないのが心苦しい。
「Be gone!!」
「おっとぉ、オイオイ坊主。今の当たったらしんじまうぜ? 金の代わりに命を取るっていう酒場があるから来てみれば。とんでもない坊主にあったもんだぜ」
ネロの持つ大剣、レッドクイーンを横薙ぎに払い紅いコートの男を巻き込む様に悪魔を斬り殺した。
しかし、ネロの一撃にまともに当たったのは悪魔だけで紅いコートの男は余裕を持ってその一撃を回避している。
その際に悪魔に向けて発砲し、確実に一体を仕留めていた。
「さて、悪魔共はいなくたったぜ。今度はあんたに聞きたい事があるんだよ、おっさん!」
ネロは左手に持ったままのレッドクイーンを相手に向ける。
剣を向けられていると言うのに紅いコートの男は余裕の態度を崩さない。奴は背中に身の丈程もある髑髏の意匠がついた大剣を呼び出した。
「やれやれ。いいぜちょっと遊んでやるよ」
「遊び……ね……。直ぐに笑えなくしやる」
互いに挑発しあい。
にらみ合う。
「ネロ!」
「離れてろ!」
私の呼びかけにネロが怒鳴る様に返してくる。
その言葉の強さに身体が一瞬ビクッと震えてしまう。その際もネロは相手から目を離す事は一切なかった。少しでも隙を見せてしまえばやられる。それほどの相手なのだろうか。
「まずは小手調べだ! 行くぞ坊主!」
「チイッ!」
ネロの舌打ちと共に男の剣を振り払う。
驚くべき速さだった。私の目が全く追いつかない。気がついたらネロの目の前で剣を振るっていた。
それを防ぐネロも流石としか言いようが無い。
「HAHA! やるなぁ坊主!」
「……さっきからごちゃごちゃウルセェ‼︎」
互いの剣が交差し、火花が散る。
ネロが剣を斜め下から逆袈裟斬りを行えば、紅いコートの男は驚くべき反応速度を持って、その剣に合わせてくる。
逆に紅いコートの男の剣劇にネロは若干余裕が無さそうだ。苦虫を噛んだ様な表情が剣戟を重ねていくごとに良く見える。
「そぉら! スキありだぜ坊主!」
それは一瞬のスキ。
常人であればそのスキを察することすら出来ないであろうほんの僅かな間。
体勢か一瞬崩れたネロ目掛けて、剣の先端を突き刺す様に腕を突き出す。
レッドクイーンで防ぐには間に合わない速度。
「ネロ⁉︎」
「舐める……なっ‼︎」
ネロは右腕を下から挙げ、剣の軌道を強引にそらす。その際に腕を使ったにもかかわらず、鉄と鉄がぶつかったかの様な音辺りに響き渡る。
服の袖と、付けていた手袋が破れ音の正体があらわになる。
蒼白く光を放つ、鱗に覆われた様な腕。悪魔の腕。
「おいおい、そいつは一体どうなってんだ?」
ここにきて初めて紅いコートの男の顔が驚愕に変わる。先程までの余裕ぶった笑みとは打って変わり明確に表情が変化した。
そんな事など興味なさげに、ネロは右腕の破れたコートを見る。”直したばっかりだってのに……”と軽く溜息を吐いた後に右腕を動かしやすい様にコートを折り曲げる。
破れたコートに関しては正直、私はすまなかったとおもっている。
「こいつがどうだって? 悪いが、企業秘密でね‼︎」
そう叫ぶと同時にネロが右の拳を握り締めて跳躍する。その際に邪魔になったからだろうか? レッドクイーンを換装魔法を使い別空間にしまっている。
「ハアッ‼︎」
「……ッオ⁉︎………とぉっ!」
ネロの右拳を大剣を横にすることで、その剣の腹で防ぐ。しかし、それでも威力は殺せなかったのか後方に思いっきり吹っ飛ばされていた。
相変わらず凄い威力だなぁ。私もあれぐらいの威力の魔法が使えればいいんだけど。
「逃がすかよ!」
「チッ! しつこい男は嫌われるぜ坊主!」
ネロは男の懐に一息で飛び込むと先程防がれた大剣に向かって更に拳をアッパー気味に突き出した。
ガキィンッ‼︎ と言う音とともに紅いコートの男の足が浮き、そのままの勢いで窓を突き破り外に弾き出されていく。
「吹っ飛ばしすぎた……」
ため息をひとつ吐き、頭を少しかきながらネロも破れた窓から外へと飛び出ていく。
あ! 私も追いかけないと!
「おやおや……」
「……ッ⁉︎」
突如後ろから聞こえた声に身体が反応してしまう。
この声には聞き覚えがある、確か………。そうだ、この店の店長だ。
「……私の店がボロボロですねぇ」
「あー、えーっと。……ハハハ」
や、ヤバイ。
いくら悪魔がいたからって店をボロボロにされちゃあ困るよなぁ。
しかもボロボロにしたのって半分くらいはネロの所為だし。
「えっと……今、お金とかあまり無くて……」
私の言葉に店長は低い声で不気味に笑いだす。
いや、待てよ。
少し可笑しくないか?
普通の人だったら悪魔がでてもっとパニックになるはずじゃないか?
「…お金? いえいえ、貴女の魂を貰うからヘイキダ‼︎」
「なっ! 悪魔!」
店長の身体が膨れ上がり、その醜い姿をあらわにする。
しくじった!
完全に油断していた。
いきなり襲いかかってくる悪魔に私の身体は一瞬硬直していて判断が遅れてしまう。
襲い来るであろう衝撃に恐れて目を瞑る。
ズガン‼︎
「……!」
おかしい。
いつまでたっても私の身体には何の衝撃も来ない。であるのであれば先の大きな音は一体なんなのであろうか?
恐る恐る目を開けてみると、目の前にいた悪魔に一本の鎌のような長大な刃物が頭から刺さっていた。
「酷い男共ね。こんな可愛い娘を放っておくだなんて」
後ろからの声に振り向く。
辺りにカッカッとハイヒールの子気味のいい音が響く。
そこにいたのは長くて綺麗な金髪をなびかせて歩く1人の女性だった。
肩出しの黒のトップスにピッチリとした黒色のパンツを履く姿は女の私から見てもカッコよかった。
「Hi! 怪我はないかしら?」
悪魔に刺さっていた鎌を抜きながら、軽く微笑みこちらに語りかけてくる。
鎌を抜くときに血がドバドバ出ていたことをスルーしている姿に若干頬が引きつる。
その事を顔に出さない様にしながら言葉を絞り出した。
「あ、ありがとうございます。怪我は……ないです」
「そう? それはよかったわ」
私の近くに来て金髪の女の人は軽く髪の毛を搔き上げる。その姿がとても様になっていてカッコいいと思った。
私も、もう少し大人になったらこんな風な女性になれるのであろうか? いや、なりたいな……。
「さ、一緒に外ではしゃいでる男共に文句を言いにいきましょう?」
「え? ああ! そうだネロ! だ、大丈夫かなあいつ」
そうだ。
ネロがまだ外で戦っている。
建物の外からは鉄と鉄のぶつかる音や、銃声が鳴り響いているので戦闘はまだ続いていることがよく分かる。
「ふうん。ネロ……っていうのねあの坊や。貴女の恋人?」
「え⁉︎ ち、違う! あ、彼奴とは同じギルドの仲間で……」
ネロと私が恋人⁉︎
そ、そりゃあネロは顔も悪くないし。何だかんだで優しい奴だし……。私やリサーナ、エルフマンを助けてくれた恩だってあるし。
うああああああああ、もう分かんなくなって来た⁉︎
「そ、そうだ! ネロと私は相棒‼︎ 同じギルドの相棒なんだ‼︎」
「ふふっ。相棒ねぇ」
ニヤニヤしながら此方を見てくる姿も様になっているのが腹立たしい。
その事に私は低く唸る事でしか抗議をしめせない。
うー。何かいっても変な意味で捉えられそうだ。
「ごめんなさいね。からかいすぎたかしら? さぁ、とりあえずあのバカ達を止めにいくわよ?」
「え? あ、はいっ‼︎」
そう言って私と金髪の女の人は店を出たのであった。
トリッシュってこれであってるかな?
レディとどっちだそうかギリギリまで迷った。