NERO SIDE IN
ここが、依頼のあった街か。
いやどっちかって言うと街じゃなくて村だな。
あまり大きな集落ではなさそうだ。
先ずは依頼人のこの村の村長に話しを聞きに行かないとな。
しばらく村を歩いていると、この村にしては大きな家があった。これがおそらく村長の家だろう。
「依頼があってきたFAIRY TAILの魔導士だ」
扉を叩いて中に人がいるかのかを確認する。
すると、直ぐに返事が帰ってきた。中へとから出て来たのは杖をもち長い髭を生やした老人だった。
「おお! 魔導士様、よく来て下さった」
「……依頼があって来た。FAIRY TAILの魔導士だ。これが紋章」
左手の甲にあるギルドの紋章を見せて確認を取る。たまにではあるがギルドの名を語った犯罪者がいることがある。そんな奴らと勘違いされては困るので仕事の前にはなるべく見せるようにしている。
「確かに。確認しましたぞ」
「で? 悪魔のいる教会ってのは?」
早速仕事について尋ねるが村長は何か言いづらそうに、顔を伏せる。
なんだ?
「その話なんですが……。悪魔はもう居ないのです」
「居ない?」
小さく舌打ちをして無駄足だったかと一人呟く。
依頼料が出ないのはどうでもいいが、それだったらもうこの村には様はない。
帰ったらマカロフに皮肉の一つや二つ言っても文句はないだろう。
「その、村に住んでる少女が退治したのです」
「ふーん、だったら問題ないな。俺は帰らせてもらう」
少女がね。
俺もまだ少年って年頃だが随分と腕の立つ少女がいたもんだな。エルザ以外に。
「お待ちくだされ! 魔導士様ッ‼︎」
「ととっ、急に腕を掴むなよ」
「す、すいません」
「んで? なんか用か? 悪魔はもう居ないんだろう」
帰ろうと思い、踵を返すと左腕をギュッと掴まれた。そのせいで僅かに身体のバランスが崩れて転びそうになってしまう。
仕事が無いようなので、帰ろうとしたのだが村長の態度からして何か急用でもあるのだろうか?
「悪魔はいませんが、悪魔憑きならいるのですっ!」
「ッ! ……へぇ」
悪魔憑き……ね。
もしかしたら俺と似たような奴がいるのかもしれない。依頼変更だ。そいつを見に行くぜ。
「案内してくれよ。……その悪魔憑きの場所まで」
「おお! ありがとうございます!魔導士様」
俺が首を縦に振るまで腕を離すつもりなんてなかったくせに、良く言うぜ。
掴まれていた所を離してもらい、その場所を手で二、三払う。
「ささ、こちらです」
促されるまま、俺は村長の後をついて行った。
歩きながら村の様子を見る。
悪魔が住み着いていたせいか、村の雰囲気は何処と無く暗い。人の気配も余りしないし、いたとしても下を向いている奴がほとんどだ。
しばらく歩いていると一軒の家とそれを無数に取り囲む村人達が見えてきた。
しかも村人達はご丁寧に棒や包丁、その他農具などで武装をしている。その目に映っているのは嫌悪だけ。
「……」
「あの家が悪魔憑きのものです」
その光景に俺は口を開くことが出来なかった。
「皆の者! 魔導士様が来て下さったぞ!」
「「「「おお‼︎」」」」
村長の声に村人達は歓声をあげる。
そして口々に助かっただとか悪魔を殺せだとかを隣に要るもの同士と言い合っている。
「魔導士様! どうかお願いします。悪魔憑きの始末を!」
「魔導士様!」
「魔導士!」
村人が俺を見ながら語りかけてくる。どいつもこいつも気に入らない目つきをしている。これじゃあどっちが悪魔かわかったもんじゃない。
その様子に俺は溜息をはく他なかった。
「……わかった。その前に俺に話しをさせてくれ」
魔導士様⁉︎と静止の声を受けるが、その声を無視して悪魔憑きがいると言われている家の中に俺は入っていった。
家の中を警戒しながら進んで行くと、三人の俺と同年代くらいだと思われる少年少女がいた。
一人の黒いコートを被った子供を庇うように、勝気そうな少女と気弱そうな少年が此方を睨んでいる。
「ミラ姉は悪くない! 村の皆のために悪魔を退治したのに!……こんなの、ヒドすぎるよ」
銀髪の髪の少女が泣き崩れる。
横にいた少年は泣き崩れた少女をあやす様に肩をだく。その少年の瞳にも涙が流れていた。
俺は無言で歩を進めて黒いコートを剥ぎ取る。
「ッ!……嫌ッ!」
黒いコートの中にいたのは、右腕が悪魔の様に異形に変わっていた少女だった。
その少女は右腕をかき抱き俺の視界に映らないようにと、精一杯隠している。
「……見せてみろ」
俺の言葉にその少女は一瞬、身体を震わせる。
そんな事を無視して俺は少女の右腕を左手で掴み調べ出す。
……これは。
「お前は悪魔憑きなんかじゃない」
「え?」
「どういうこと?」
俺の発した言葉に右腕の持ち主の少女は勿論、先程まで泣き崩れていた少女、少年までもが反応する。
あくまで警戒を怠っていないが、少年少女は俺の話が聞きやすい位置にまで移動する。
「これは接収、唯の魔法の一種だ」
「魔…法…?」
右腕が異形の少女は恐る恐ると言った雰囲気で俺に話しかけてくる。その少女の目にも涙が浮かんでいた。
「ああ、悪魔の力を宿しているだけだ」
「……悪魔」
魔法と説明したのだが、その少女の顔は晴れることはなかった。逆にもっと沈んだ物へと変わってしまった。
「やっぱり私って、悪魔なのかな……」
「違うよ‼︎ ミラ姉は悪魔なんかじゃない!」
「そうだよ!」
周りにいた二人の少年少女がミラと呼ばれた少女に駆け寄る。何度も励まそうと言葉をかけるが、ミラと言う少女の顔から涙は消えない。
「
「え?」
俺は少女に一つの言葉を投げかける。
少女は驚いた様に此方に顔を向けるも、頬には涙が伝ったままだった。
左手を伸ばして人差し指で、両の目から流れる涙を拭う。
「涙を流せるならお前は悪魔じゃない。人間でも悪魔みたいな奴らはいる。窓の外の……あいつら見たいにな。だから、お前は悪魔じゃない」
「う……本当? 」
縋る様な目つきで俺を見てくる少女に頷くことで返事を返す。本当の悪魔って言うのは心がそうなっちまった奴らの事を言うんだよ。
だからこの少女が悪魔であるって事は絶対にない。
「ありがとうっ……ありがとうっ……ううっ……」
また泣き出した少女を見て俺は頭をかくことしか出来なかった。いや、今度は俺が何か言ったって別にいいか。
問題はどうやってこの事を村人達に説明するかだ……。村人の様子から見ても、説得するのはかなり難しいと思われる。なんせ、この前まで悪魔に苦しめられていたのだから。
さて、どうしたものか。
最終手段だが……。
「お前ら、ギルドに入るつもりはないか?」
「ギルド?」
横にいた少年が俺の言葉の中に、聞きなれない単語があったのか聞き返してきた。
見たところ他二人の少年少女にも魔力はある。三人で魔導士になるっていう選択肢も加えていいはずだ。
「ああ、魔導士ギルドだ。村を出ることになるがここよりは生活がしやすいだろう」
「で、でも……」
ミラは自らの右腕に視線を移す。
なるほどね。
「心配することはない。その腕を気にする奴なんでいないさ。なんせ……」
腕については問題ないと説明しようとしたところで、家の外から悲鳴が聞こえてきた。
それと同時に心の底から不快になる者達の声も。
「あ、あ、悪魔だぁぁっ⁉︎」
まさかまだ悪魔がいたとはね。
「話しは後だお前ら三人はこの家にいろ。俺が片付けてくる」
「ちょっ……!」
戸惑いの声を後ろに、俺は窓枠から家を飛び出る。
そしてそのままズタ袋に虫がつまった様な悪魔、スケアクロウに向かってドロップキックを決める。
スケアクロウはそのまま吹き飛び壁にあたって消滅する。
これで終わりならラクだったんだが、見た感じ三十はいるな。
「村人達は家にはいれ! 早くにげろ!」
村人達は悲鳴をあげながらも自らの家、若しくは近くにあった家の中へ飛び込んでいった。残念ながら悪魔憑きの家には誰も入っていかなかったが。
「