MIRA SIDE IN
私が村から離れてギルド、FAIRY TAILに加入してから数日がたった。
弟や妹達とは違って私はまだ今一ギルドに馴染めていない。いや、自分から積極的に馴染もうとしていない……と言った方が正しいだろう。
ギルドの人達は私達を気にかけて話しかけてきたり、仕事に誘ってくれたり、ギルドの案内をしてくれたり、とても良い人達だ。
弟や妹も楽しそうで私は心の底から感謝している。
だからこそ、だからこそ私はここに居ても良いのか戸惑ってしまう。
私みたいな醜い奴が……悪魔みたいな私が、こんな温かい陽だまりにいていいのか?
ギルドに入ってからはずっとこんなことばかりを考えていた。
リサーナやエルフマンにも心配はされていたが、どうしてもこの考えを辞めることはできなかった。
「本当にはぐれるぞ?」
「だからはぐれねぇって⁉︎」
考え事をしている私に話しかけてきたのはネロ。村にいた私達をギルドに誘ってくれた人だ。
容姿は私と同じ銀髪、青目で割と整っている顔立ちだと思う。
容姿と同じで、腕が異形に変わってしまっていると言う点までもが共通していて始めて見たときは物凄く驚いたのを覚えている。そして、この人なら私の気持ちも分かってくれるって感じた。
ギルドでもリサーナやエルフマンまでとは、言わないが良く話している方だ。
皮肉屋なのかまともに受け答えしてくれない時の方が多いのだけど。
今だってそうだ、別に考え事をしていたからってはぐれる分けないのに。
「だといいけどね」
「むっ……」
鼻で笑われた。
ムカつく。
すると突然、身体を此方に向けるネロ。そして左手にはブルーローズ? だったか? が握られていた。
ネロの目を見ても本気。ギルドで見せる表情でも私やリサーナ達と話している時にも見せない。村で悪魔を殺した時に見せる表情だった。
撃たれる……。
反射的に身体が強張り目を瞑ってしまった。
発砲音がし、私の身体に衝撃が走ると思ったのだがそんなそとはない。
変わりに私の後ろから獣の声の様な断末魔が聞こえてきた。
「列車でも言ったろ? 油断するなって」
「わ、悪りぃ……じゃなくて⁉︎ 言えよ! 私も列車で言ったろ!」
「ああー……悪かったな」
「本当だよ!」
こう言う風にいきなり行動するのは本当にやめてほしい!
特に拳銃を向けられた時なんかは本気で殺されてしまうと思った。
だから、私がネロの脛を蹴りまくっているのは悪くないはずだ。うん。
「って⁈ 悪かったって言っただろう」
「痛いっ⁈ ネロこそ右手でのデコピンは辞めろよ⁉︎ なんかものすごい痛かったぞ⁈」
ひどい。
元はと言えば自分が悪いのにデコピンされた。
おでこ赤くなってるよ絶対、タンコブできたら嫌だなぁ。いたわるようにしてデコピンされたおでこを摩る。
少々痛みが和らぐが気休め程度だ。
「はいはい」
「うがーっ⁉︎ 絶対に何とも思ってねぇな!」
両手を頭に当てて髪の毛を掻き毟る。
ネロの対応がとてもおざなりなのが凄く腹立たしい。
ムカつくぞ。
「そろそろ気を引き締めろ」
「ッ⁈ お、おう。わかった」
ネロは左手に持ったブルーローズを構えながら、辺りを警戒して森の奥へと進んでいく。
真剣な目つきで私も悪魔が出てくるのかを注意する。
森の中は木々が邪魔をしているせいか、光が多く入ってこないために薄暗い。
それに倒れた大木やら無造作に伸びきった草、適当にある岩などのせいで隠れる場所は沢山ある。
ガサッ……。
背後で物音が聞こえる。
素早く振り返ってみるが何もいない、しばらく物音がした雑木林を見つめるが反応はない。
私はホッと一息をついて踵を返す瞬間、銃声が聞こえた。
「上だミラ」
「あ、ありがと……」
木々の上からサルの様な悪魔が飛びかかってきたのだろう、ネロがいなければ危なかった。でもこいつまた、いきなり銃をうちやがったな。
悪魔の死体を見ると紫に近い黒の体色をしたサル型の悪魔だった。
「サル? 始めてみる」
「確か……ムシラだったかな。罪人の魂の悪意や欲望から生まれた悪魔だ」
罪人の魂か……。
なんで森にこんな奴らが、いや森だからこそなのか?
あーもー良くわかんねぇ!
「お喋りはここまでだ。どうやら、団体さんが来たようだ」
「うわっ……」
ネロの声に辺りを見渡して見るとムシラが至る所に出現していた。木にへばりついているものやら、地面に降り立っているもの、いる場所は様々だが共通しているのことは一つ。
ムシラ達の視線の先にいるのは私達。どうやら獲物認定されているっぽい。
「こいつら一体一体はあまり強くないが、連携には気をつけろ。行くぞ」
「おう!」
背中合わせで警戒していた体制から私とネロは逆方向に走りだす。
先ずは目の前にいるムシラをぶん殴る!
私の拳にあたり一体が吹き飛ばされる、それを最後まで見る事なく自分が立っていた場所から横に移動する。
横に動いた瞬間にさっきまで私のいた場所にムシラが降り立つ、連携って言うより一体一体が適当に動いているって感じだ。
仲間意識なんてない、ただ私達を殺せばいいってだけだろう。
そこから私は前後左右を注意しながらムシラに拳や脚を叩きこんでいく。
使うのは嫌だけど、右手の悪魔の腕を振るう。やっぱり右手の方が威力は高い。右手で殴ったムシラは上手く決まれば一撃で絶命するのがいい証拠だ。
私の後ろではネロも戦闘を行っている、拳銃に剣、悪魔の腕を上手く使って立ち回っている。
余裕があるからかブルーローズでこっちいるムシラもちょくちょく倒して、私をフォローしているのが分かる。
チョット悔しい……。
「それっ!」
右手でムシラの脚を掴んで、木の上にいる奴に投げる。私にはネロ見たいな遠距離の武器はないから……こいつらを利用してやる!
投げられたムシラは木の上の奴にあたり、二体まとめて落ちてくる。
そこに向かって私は走り出して二体共に拳を叩き込む。
よし! 上手く倒せた。
ようやく一息をつける様になったころには粗方の悪魔は倒し終えていた。
最後の一体は逃げる為に踵を返した瞬間にネロによって撃ち抜かれる。
「終わりか? ネロ」
「ああ……。いや、まだらしい」
「んん?……うわっ⁈」
辺りには何もいなかったのだが、突如地面が揺れる。
森の奥から出てきたのは先ほどのムシラの様な小さい影では無かった。
成人男性二人分以上はあろう体躯に剛腕そうな腕、ゴリラやオラウータンに近い姿をしている。
「で、でけぇ」
「オラングエラか……。こいつがここら辺のボスか?」
横にいるネロの呟きを聞くに、デカイ猿の様な悪魔の名前はオラングエラって言うらしい。
こんな奴に勝てんのかよ……。
「ま、やることは変わらねえか」
ネロは挑発的に笑い、手にあるブルーローズをくるりと回してオラングエラに向ける。
「ガアァァァァ‼︎」
ネロと私に向かって吼えて、突進してくる。
それを左右に別れるようにして回避、ネロも私も地面に身体を投げ出すが前転の要領で大勢を立て直す。
デカイ癖になんて速さだよ……。
「喰らえ!」
跳び上がったネロは剣の柄を捻りイクシード?を燃焼させる。そのまま頭上から脳天に向けて一撃を与える。
オラングエラが頭に受けた一撃で怯んだ瞬間、剣による連撃を加えていく。
オラングエラの身体が硬いからか、スケアクロウやムシラの様に簡単に倒すことはできない。それでもネロは確実にダメージを与えていっている。
「わ、私もっ‼︎」
ネロに注目がいっていることは明らか、私はオラングエラの背後に回る。
そのまま右手で背中に拳を叩き込む!
「っつぅ⁈ 硬っ⁈」
背中も凄い硬かった。
ダメージを与えることが出来たようではあるが、自分の拳もチョット痛い。
「ミラ! しゃがめ!」
「ッ⁉︎」
背後にいた私を払い除けるようにオラングエラは腕を無造作に振るう。
ネロが言葉をくれていなかったら危なかった。オラングエラの腕の風圧で髪が乱れ、背筋にうっすらと冷や汗が流れる。
とりあえずその場にいるのは危険だと思い、バックステップで飛び退く。
「グガァァァッ‼︎」
オラングエラは跳躍し、木の枝に飛び移る。
そのまま、枝から枝へと移動して地面に降り立つ。ネロと私から少し距離を取られた。
するとオラングエラは仰け反り、その場で動かなくなる。
チャンス!
「今だっ!」
私は重い一撃を意識して、拳を握りオラングエラへと近づいていく。
「何してんだ!」
ネロの言葉に「え?」と反応する間も無くらその言葉を放った本人によって抱えられ、横に飛び退かされる。
そしてさっきまで私がいた場所に空気?の塊が叩きつけられた。
見ればオラングエラが口から何かを放った様な大勢で静止していた。
「あ、ありがとうネロ」
「真正面から突っ込むなら警戒しとけよ」
ハァと目の前で溜息をつかれるが助けてもらったし、警戒が薄かったのは事実なために言い返しにくい。
ってヤバイ!
「ネロ! あいつもう一回やるつもりだ!」
「分かってる!」
ネロはオラングエラの口に向かって銃弾を何発も撃ち込んでいく。
口の中に連射で撃ち込まれては堪らなかったのか、悲鳴をあげながら手で顔を隠す。
その隙をネロが逃す筈も無く、剣を構えて走っていく。
「…1!…2!…3!……片腕貰うぜ!」
剣による三連撃を腕に与えてオラングエラの片腕を切り落とす。
そして繋がっているもう一つ腕をネロは右手で掴んで悪魔を振り回す。
「吹っ飛べ‼︎」
そしておもいっきり岩にむかってネロはオラングエラを投げつける。
投げられたオラングエラはそのまま岩にぶつかり、動けなくなって溶けるよう消えて行った。
「疲れた……」
ネロを見ると右肩をグルグル回して調子を確かめているようだった。
私、足手まといだったかなぁ。