好きなライダーのレベルばかりが上がっていく……。
NERO SIDE
リサーナとエルフマンのお陰もあってか、ミラは段々と変わっていった。これまでのように一人でいた時間が減り、ギルドの馬鹿ど……仲間達と関わることが多くなっている。これでもうギルドをやめて一人で何処かに行く何てことは言わないだろう。
現在では自らの魔法、テイクオーバーも制御出来るようになっており、俺の右腕とは違って普通の人間のものになっている。その事に対して、ミラは此方を申し訳ないような感じで見つめていたのが印象的だったのだが、気にする必要なんて全くない。俺は俺である程度は割り切っているからだ。
ミラは普通に黒いマントをとって生活するようになった。まぁ、リサーナやエルフマンと似たような普通の服装だ。子供らしくていいんじゃないか? 黒いマントからの振り幅で最初はギルドの奴らも驚いていたけどな。髪の毛も割と長いのを縛らずに伸ばしている。黒いマントで包まれてたから気づかなかった。
そして俺といた時にもちょいちょい出ていた男勝りな性格もあって、なんだかんだでエルザとの仲もいいみたいだ。
ナツとグレイよろしく、ギルド内で二人でどつきあっている。たまに巻き込まれるこっちとしてはいい迷惑だ。そして何より言いたいことがあるとすれば、
「ネロー! 仕事行くのか!」
「……ああ、お前は別の「私も行くぜ!」……」
このように俺の仕事にしょっちゅう同行してくると言う事だ。一度マカロフに何か言われたのか? とも尋ねてみたのだが「マカロフ? ……ああ、マスターの事か! いや、何も言われてないけど?」と返事が返ってきた。その前にマカロフの名前を覚えておいてやれよ、と思った俺は悪くないはずだ。
「聞いてんのかよ!」
「……聞いてるよ」
ギルドの一階カウンター席に座って依頼書を見ていたミラが話しかけてくる。少し、これまでのミラについて考えていたせいか返事が疎かになってしまった。俺の隣に座りながらミラは依頼書を見ようと、横から覗いてくる。それに対して見やすくなるように依頼書をミラの方へとズラす。
「……赤いコートの男を追え?」
「ああ、最近悪魔が出没する街で目撃されるらしい。悪魔が出没する原因かは知らないが、あの男が出る度に悪魔が現れるらしいから確認のために捕まえてくれって内容だ」
「ふーん? まぁ、私とネロなら楽勝だな! 早速行こうぜ!」
「……残念ながら。これはS級クエストだ、お前にはまだ早い」
ミラに目をくれる事もなく話を断る。この前まではS級クエストと聞いたら諦めてくれたのだが、
「私聞いたんだからな! S級クエストでも同行者に認められればついていけるって! S級クエストだから連れて行けないって嘘ついてたな‼︎」
残念ながら、その断り方も前回で最後になってしまったらしい。ミラにS級クエストについて詳しく教えたのは……多分マカロフだな。俺たちから少し離れたところで口笛を吹いて誤魔化しているのが見えた。とりあえず左手にブルーローズをだして一発撃つ。悲鳴を上げるマカロフから視線を外し、隣のミラに再度向ける。
「つーれーてーけーよー」
「ダメだ」
「つーれーてーけーよー!」
「鬱陶しい」
「つーれーてーけーよー‼︎」
こいつは壊れた魔導ラジオか? 俺の言葉に同じ単語しか返してこない。それと俺が断る度に肩に拳を叩き込んでくるのは如何なものか。何気に腰が入っているから痛い。いや、そこまでのダメージでは無いが気になる程度には痛い。
「チッ」
「舌打ち⁈ 今、舌打ちしたよなぁ⁉︎」
「してない。チッ……」
「ほらまたぁ⁉︎」
ああ、もう。本当にうるさくなりやがった。良い意味でも悪い意味でもこのギルドに影響されやがって。馴染んでいることはとても良いことなのかしれない。しかしだ、こうも直ぐにナツやエルザ達のようになるとは思わなかった。もうため息しか出てこない。
横でギャーギャー騒いでいるミラの声をBGMに、俺は依頼書をしっかりと読み直す。依頼の場所は……結構遠いな。そして依頼書の内容からして一日での解決は難しいかもしれない。赤いコートの男が現れるということは悪魔も同時に出てくる可能性が高い。それに、赤いコートの男が何日も現れないことだってある。
仕方がないか、悪魔関連の仕事は選んでいられるほどの量は無い。赤いコートの男ってのにも個人的に興味があるし、この依頼で決定でいいだろう。
そうと決まれば早い。さっさと準備をしに家に帰るか。
と、その前に。
「マカロフ、この依頼俺が受けるぜ」
「んん? おお、そうか。内容からして泊まりの仕事になりそうじゃの」
依頼書をマカロフに渡し、許可を得る。内のギルドは基本フリーたが、依頼がかぶったらいけない。そのために最低限の確認作業は行っている。依頼書をマカロフに見せるのもそれの一つだ。と言っても内のギルドは本当に最低限のことしかしないんだけどな。他のギルドがどうかって事も詳しく知ってる訳じゃないけど。おそらくは内のギルドよりは手順が多いだろうね。
「依頼を受けるのはネロだけかの?」
「……ああ、俺だけ「私も行くぜ‼︎」……お前な」
「かっかっか。ネロとミラの二人じゃの」
「マカロフッ! あんた」
横から俺とマカロフの会話にミラが入り込んでくる。マカロフも二人で依頼に行くことに賛成のようだ。快活に笑っている様が非常に腹立たしい。
一人で行くって言っても、聞かないだろうな。このパターンは。……しょうがないか。
「はぁ、分かった。二人で行く、これでいいだろ」
「んむ! よろしい‼︎」
「へへっ。やりぃ!」
俺の言葉にマカロフは大袈裟に頷き、ミラはパチンと指を鳴らす。共通するのは二人とも満面の笑みだということ。こちらを見て笑っているのが本当に、本っ当に腹立たしい。だからそんな二人に意趣返しの意味を込めて右手と左手でデコピンをする。
バチん、ズドンと二つの額から音がなる。軽い音が左手、重い音がした方が右手でやったデコピンである。
「いったぁ! 何すんだよネロ!」
「ぬおおおおおおおおっ……⁉︎」
左手でデコピンをしたミラは回復が早い。若干涙目になりながらこちらを睨んでくる。逆に右手でデコピンをしたマカロフは額を抑えて床をのたうち回っている。フン、いい気味だ。
「タンコブ出来たらどーすんだよっ‼︎ ったく、ネロは何時も何時も……」
「ミラ」
「何だよ⁉︎」
「明日の朝にマグノリアを出る。準備しろ」
のたうち回っているマカロフを尻目に、俺は藍色のコートを翻して席を立つ。ミラの横を通り抜ける間に用件を言い終えてギルドの出口へと向かう。
「……へへっ、素直じゃねー奴。あっ、待てよ⁉︎ 準備ってどんな準備すりゃいいんだよぉ!」
最初の言葉は小声過ぎて良く聞こえなかったが、大声で叫んでいた後の言葉は聞こえた。そして現在その声の主が走って俺の所に駆け寄ってくる音も聞こえてくる。はぁ、本当にめんどくさい奴になったもんだ。
「なぁ、ネロ」
「どうした、やっぱり依頼に行くのを取り消すのか? わかった、じゃあマカロフに言っておけよ」
「ちげーよ⁈」
チッ。
流れで依頼のキャンセルを狙ったのだがダメだったか。それにしてもこいつ、ツッコミが中々上手くなってきたんじゃないか?
「こ、こいつまた舌打ちしやがって……。じゃなくて! 準備なんだけどさぁ」
「ああ?」
準備がどうした。俺の隣を歩き出すついでにそんな事を尋ねてくる。
「マジでわかんねぇんだけど……」
「……」
はぁ。どうやらこの後は俺の準備とこいつの準備の手伝いで無くなりそうだ。
赤いコートの男……。
まぁ十中八九あいつですよ。
ストロベリーサンデーかピザを用意しなくちゃ。