提督と鎮守府と時々艦娘   作:sssn

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さぼりと生真面目2

だが、蜂須賀提督の思惑は見事に空振りに終わることになる。

港に引き上げて、そのあと家まで送ったあと流石に泊まるわけにもいかず、きちんと寝て隈取っておけと何度も釘を指したのだが、そんなもので睡眠をとるくらいなら叢雲も苦労はしない。

翌日また昼過ぎに尋ねた時にはふらふらと壁伝いに歩くこともおぼつかない萩野を目の当たりにすることになった。

それでも萩野は机の前で参考書を読むことをやめようとはしない。

仕方なしに否が応でも寝てもらおうと参考書を取り上げたが今度は部屋の隅っこで体育座りをして蜂須賀提督を睨み始めた。

 

はぁとため息を出したのは果たして蜂須賀提督か萩野か。

そんなことはもうどうでもよくて、

「なぁ、どうしてお前はそこまで寝ないんだ」

「…………」

なるべく刺激しないようにと反対側の角に蜂須賀は座って、煙草をふかしながら訊ねたが、答えたくないと駄々をこねる子供のように首を降ってはうつらうつらと頭を揺らす。

寝れない、というよりかはあれは寝ないか。

自分は寝たくても寝かせてもらえないのに贅沢なと蜂須賀は一人ごちる。

 

無理矢理にでも寝かせる方法は薬や眠気を誘う香りのいいものだとか大量に食わせてしまって眠気を誘うだとか幾らでも思い付くがそれらで癖になってしまうのも考えものだ。

 

等と考えてるうちにとうとう萩野にも限界が来たようだ。

ごんっと壁にぶつかる鈍い音が鳴り響いて苦痛に歪む声が聞こえてきた。

「ほら、無理するな」

「寝たく、ない……」

「寝ろ」

「や………だ…」

 

近づいて背中を揺らすと最後の抵抗すら出来なくなったのか、か細い声をあげたかと思えばそのままこてんと倒れて眠ってしまった。

はぁとここ最近で一番大きなため息が出る。

ようやく肩の荷が降りたと言うかなんというか。

蜂須賀提督はぐっと大きく伸びをしていつ起きるかわからないけども食事くらいは用意しておいてやるか。いやその前に布団を敷かないと等と考えながらと立ち上がり、危うくバランスを崩して転けそうになった。

原因は足元。

たった今眠ったはずの萩野がすがり付くように右足に両手を絡めて抱きついていた。ご丁寧に頬を脛に押し付けてまで離したくないとの意思表示をしていらっしゃるが、

幸い脚を上げればするりと抜け出せた。

よくわからないのは萩野の行動だ。

まさか寝ている間に誰かに抱きつかないと寝れないとかそんなものだろうかとしか思い付かなかった。

だとしたら男嫌いの萩野に取っては蜂須賀がいる前で寝るのはそれこそ舌を噛みきらんばかりのことだろう。

なら夜に一人で寝ればいいのではと思ったが、

「…………」

誰かを探しているのか、ぱたぱたと手を動かす彼女を見ているとこのまま起き上がって動き出しそうだ。

実際にはそんなことは無かったのだけれども。

 

「さて、と。布団は、ここか?」

それらしきものが見当たらない。ならばクローゼットの中か。と、前に立つが

「これ開けて大丈夫か?」

昨日の様子を思い出して開けるのを躊躇う。

かといって床で寝かせるのもどうかとも思う。

布団代わりになるもの。それこそ座布団やクッションでもあればよかったがそれも見当たらないとなるとそもそも布団があるのかも怪しい。

「ごめんな萩野」

何も見なかったことにしよう。

眠っている萩野に聞こえていないだろうけど謝ってからクローゼットを開けた。

 

……。

確かに、これは開けなかった方がよかったかも知れない。

クローゼットには布団が入ってたからそれは良かった。

だがその上に鎮座するそれらは。

普段の彼女からは全くイメージできない物たちだった。

いや、別にそんな趣味があることは良いことだろう。別に性格がどうだとか見た目と行動に反してでも持っていたい趣味のひとつやふたつはある。

蜂須賀もどちらかと言えば渋めのおじさんといった出で立ちではあるが甘いものは大好きだ。

「…………見なかったことにしよう」

それでも隠したいと言うならば見なかったことにする。

記憶の奥底に封印しておこう。萩野のためにも。

ひとまず、『それら』はどけて布団を引っ張り出して、萩野を寝かせることには成功した。

仰向けに寝かせたのだが、少しすると眠れないとばかりに寝返りを打つと胎児のように小さく体を丸めてしまった。

 

 

異変があったのはそれから30分後。

蜂須賀が外のコンビニから晩飯候補を買い漁って

好物のポッキーを食べながら部屋に戻るとガチガチと歯がぶつかる音が室内に響き渡っていた。

「いか……ないで……」

「おい!どうした!」

慌てて駆け寄ると見るからに顔色が悪い。

夏だと言うのに自らの体を抱き締めてガタガタと震えていた。

真っ青にして顔を歪ませぽろぽろと涙を溢していた。

くそっと蜂須賀は吐き捨てる。

寝たくないと言っていた理由はこれか。

蜂須賀が居たからというのは理由ではないと今知った。

寝る度に悪夢を見るのならば寝たくないと言っていたのも納得できる。

 

「やま、と……」

「大和?」

「だ、れか……」

「萩野!なんのことだ!」

「いか、な、いで……ひとりは、いや……」

寝言は嗚咽へ。脈絡がないが大和か誰かがどこかへいく夢か?

ベタな話ではあるが、死別した時のことが夢となって未だに萩野の胸のうちにわだかまっているのか。

そういえば艦娘だと昨日言っていた事を思い出す。ならば轟沈も経験したかいや、それにしては。

さまざまな可能性が出ては消えていき収拾がつかなくなった。

頭を降って余計な思考を追い出す。

膝をついて背に手を回し蜂須賀は萩野を抱え起こす。

「大丈夫だ。ここにいるぞ」

「いか、ない……?」

「ああ、行かない。安心しろ」

背中をとんとんとあやすように叩いて、抱き寄せり。

それに応じたのか萩野は両手を蜂須賀の背に回しもう離さないと言わんばかりに締め付ける。

すぅっと苦悶の表情が和らいでいく。

少し息苦しいがこれが正解だったようだ。

いまだカタカタと小刻みに体が震えているがそれも徐々に収まりを見せている。

ほぅと思わず安堵の息をつく。

 

結局のところが萩野の行動すべてが過去から逃げるため。忘れるための彼女なりの努力なのだろう。

限界が来るまで走り続けて、休んだら過去に喰われるという被害妄想。

「馬鹿だなぁ……」

 

蜂須賀提督も昨日と今日の疲れがどっと溢れだしたのか次第にあやすても止まる。

壁に背を預けていつしか二人して眠りについていた。

 

 

 

蜂須賀提督が起きたのは大きく時間は動き午後8時。

夏とはいえすっかり外も暗くなり坂道を軽快に飛ばすトラックの音がやけに大きく聞こえてきた。

座って寝たからか凝り固まった間接が痛い。

「おはよう」

その声に蜂須賀は驚く。

まだ脚、太ももの辺りに柔らかいなにとは言わない感触があって、締め付けられている感覚も残っていたからまだ寝ているものだと思い込んでいた。

だが彼女は蜂須賀の提督の腰に抱きついたままじっと下から見上げていた。

殴られるか?そう身構えたがいつまでたっても拳は飛んでこない。

まだ寝ぼけているのかと顔を覗きこんだがいつものしっかり起きているときの萩野と何ら遜色ない顔つきだ。

いや、隈がだいぶ引いているのを覗いてだ。

「殴るわけないでしょ。その、……ありがとう」

「…………俺はなにもしてないよはぎのん」

だがしかし、調子が狂う。

ぽんぽんと頭を撫でてみたが一瞬びくりと動いただけでそのあとは心地良さそうに目を細めるだけだ。

「風邪でも引いたか?」

「どうしてそうなる」

「いや、殴ってこないし」

まあ目新しい反応はこれはこれで楽しいものがある。

特に今まで触れるどころか近づいただけで殴りかかってきた彼女が今では猫みたいになっているのはどこか背徳感すら感じられる。

と、そこで腹の虫がなった。

「……」

「……」

二人してお前だろと顔を見合わせ笑う。

そういえば買ってきていた晩御飯があったような気がするがふとそちらに目をやると散らばったポッキーとひっくり返って野晒しにされている弁当が目についた。

この炎天下で放置された弁当を食う勇気は蜂須賀にはない。

「食べに行こうか?」

「ん」

そして二人して立ち上がって家を出た。

ひとまずは問題も片付いた。

「約束」

玄関を出たところで萩野が鍵をかけながらそういった。

はて、なにか約束をしてたかと記憶をさらうって思い出す。

「ああ、サボりな」

「よろしくね。期待してるから」

休みはまだまだあるが今日の夜も長そうだ。

 

 

 

---以下番外編----

入れようと思ったけどきりがないので会話だけでやるなにか

 

 

じりじりと照りつける日差しのもと蜂須賀はバタバタと服をはためかせ風を送り込みながら電話を片手に歩き回っていた。

「おう鈴谷。ちょっと今から買い物に付き合ってくれ」

『あっれー?どういう風の吹き回し?』

「いや、ちょっとな?ほら、駅前の服屋あるだろ?そこで待ってるから」

『どうしようかなー?ん?あれ?そこってたしかレディースのじゃ…………ははーん?さては女か?女か提督?隅に置けないねぇ。わかったわかったー。鈴谷にまっかせなさーい』

「違っ、おい鈴谷!?くそ、もう切れてる…………」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない。それにしてもほんとそれしかないのな」

「外でこうやって、買い物するなんて思っても見なかったからさぁ…………正直恥ずかしい」

「俺もさすがにそんなに露出高い服の女性をつれて歩くのは辛いな」

「は?」

「悪い、悪かった。だから殴るのはやめろ」

「しょうがないなぁ」

 

「おっまたせー」

「来たな話を聞かないやつ」

「ほー?やるじゃん提督」

「そんなんじゃないって。鈴谷、この人がほら以前言ってた提督の」

「ああ!萩野さんね了解了解。いやぁ話に聞いてたとおりの美人さんだ」

「蜂須賀」

「まて、俺は何も言ってないから」

「鈴谷でぇーすよろしくー」

 

 

「ふぁぁーやっぱ生き返るねぇ?」

「あーあっちぃ……」

「待ってればよかったのに」

「んじゃあちゃちゃっと選んじゃいますか。ほらはぎのんこっちこっちーえっとこれとこれとーこれもか!それとー」

「ま、待って。そんなちょっとふりふりすぎるのは……」

「いいじゃん似合う似合う」

「蜂須賀ぁー……」

「がんばれはぎのん」

 

 

「じゃーんかんせぇー。最近はやりの提督だけを殺す服!ほら提督感想感想」

「ほぉー馬子にも衣装?痛ぇ!冗談、冗談だって!」

「ふん!」

 

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