日本の首都たる大都市、東京。朝の十時から人々は政府からの指示でシェルターに避難し、世界最大の都市である東京の街は静まり返っている。シェルターに避難した人々はそのまま仙台への避難を開始していた。公共交通機関や徴用された観光バス、自衛隊の輸送機などありとあらゆる手段で一千万人を越える人々が着の身着のまま逃げようとしているのだ。
しかし、日本人特有の性質か、それとも火星への恐怖心か、大きな混乱もなく、人々は粛々と指示に従っている。お陰で無闇に自家用車で避難を試みる民間人が渋滞を起こすこともなく、民間車両の通行が禁じられた高速道路を警察の誘導で大型バスが列を成し、淀みなく進んでいた。
『ジャパン・エアフォース・ワン、横田基地を離陸』
「あれが札幌に到着すれば首都機能移転が完了します」
最後まで留まり、首都を守ることを命ぜられた男たちが東京にはいた。
陸上自衛隊第一師団の隊員たちだ。第一師団は諸職種連合の戦闘団編成となり、第一戦闘団として東京防衛に当たっている。神奈川から着実に占領地域を伸ばす火星軍を食い止める最後の砦となろうとしていた。
霞ヶ関周辺には陸自が展開。自走高射機関砲が首都高に並び、90式戦車改と《雷電》が議事堂前に鎮座し、機動戦闘車や偵察警戒車、装輪装甲車、軽装甲機動車などが市内の各所に潜んでいる。
「意外と腹の座った御方だったな、我らが最高指揮官は」
市ヶ谷防衛省に設けられた作戦室で第一師団長の羽崎陸将補は呟いた。
「ええ。最後の機に乗り込んで我々を激励されていくとは感銘を受けました」
「さすが、国民が選挙で選んだ総理大臣だ」
羽崎は窓越しに東京の町並みを眺めていた。いつにない静粛な東京の市街は今のところ平穏だ。
「勝てますかね、火星軍に」
「勝たなきゃならんだろう、そのための我々だ」
羽崎の言葉に呼応するように防衛省の広場で第1戦術機甲連隊所属の六機の《雷電》が起立しようとしていた。市街地戦用のデジタル迷彩が施された紫電はまさにこの東京のような大都市での市街戦に生かされる。
「守るぞ。東京を」
*
格納庫で練習機の整備を行われていた。オレンジ色のカタクラフト、練習機KG-6《スレイプニール》は実は守住にも触った経験のある機体だ。自衛隊に初めて配備されたカタクラフトが《スレイプニール》だった。もっとも自衛隊の《スレイプニール》は自衛隊特有の戦車などに施さ
れるものと同じ野戦迷彩が施されたが。
「ねぇ伊奈帆」
伊奈帆に網文が声をかける。
「
守住は複雑な気持ちだった。学生たちの立てた作戦に自衛官である自分は手を貸し、危険な目に合わせようとしている。
「私に」
声が後ろからかかり、一同は振り返る。妹なのか、小学生くらいの少女を連れた明るい栗色の髪の少女が立っていた。
「私にお手伝いさせてください」
「北欧美人……」
カームが呟く。
「この窮地、この試練……私には引き受ける務めがあると感じます」
「中二病?」
囁いたカームの腹を網文が小突いた。
「身の安全は保障できません」
「重々承知の上です。どうか是非」
守住は顔をしかめた。高校生くらいの年齢だ。連合の兵科教練を積んだとは思えなかった。絹のように白い肌の美人。どう見ても戦いには向いていない。
「アイツは父を殺した」
ツカツカとジーンズを短く詰めた短パンを履き、パーカーのフードを目深に被った少女が歩いてくる。
「私にも協力させて」
細い声には並みならぬ怒りが籠っていた。
「こっちも命がけだぜ」
カームの言葉に「分かってる」と答えた少女はフードを取る。赤い短髪、顔立ちも日本人のそれではなく、白人の整った
「任せて」
守住は伊奈帆と顔を見合わせた。伊奈帆が頷く。
──俺って流されやすい
守住はテキパキと果断に決めていく伊奈帆を見て思った。
「決行は明朝、日の出と共に出発しよう。あの火星カタクラフトを撃退する」
ご意見ご感想をいつもありがとうございます。忙しくてなかなか返信できませんが、内容はしっかり確認しています。
空母ならぬ空護ですが、指摘通りサイズについては300mに満たない規模にしようと思います。てか、強襲揚陸艦で良くね?みたいに思い出してきてまた設定を替えるかもです。
学生の軍事教練義務化は内政干渉ですよね。政府的には国連主導の地球連合とは協調せざるを得ず、制度を取り入れ……みたいな設定ですが、兵役拒否者が当たり前のように出そうですよね。
かといって学生で軍事教練を受けなかった人は徴兵されないことになりそうですし、うまい設定を模索中です。
徴兵で話は変わりますが、徴兵は苦役っていう表現に自分は疑問を抱きます。
そりゃ辛くて厳しい仕事のは当たり前だけど、自衛官やってる人たちは志願して仕事に就き、誇りや使命感を持って日夜訓練している訳です。日本で徴兵制が施行されることは勿論ありえないですが、本来国民全体で自分達の国を色々な意味で守っていくのに自分だけは絶対に戦いたくない、死にたくない、自衛官だけで何かあったらなんとかして、徴兵は嫌だ嫌だと騒ぐのってどうなのかなぁと。自衛官も勿論、徴兵で嫌々来た人たちと肩を並べて戦うなんてごめんでしょうけど、自衛官は自分たちの仕事を苦役扱いされて否定されてるような気がするんじゃないかと思いますねー
追記
空護はカタパルト二基装備の空母型で決定です。