アルドノア・ゼロ──旭日のカタフラクト   作:グロウラー

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act21 《アルギュレ》再び

 アラートが鳴り響いた。一方的な休戦宣言の直後だというのに国籍不明機が艦隊に接近していた。

 

 第五護衛隊群の旗艦である航空護衛艦《あかぎ》の飛行甲板では慌ただしく甲板要員が走り回り、艦載機が緊急発進(スクランブル)準備を進めていた。TF-1高等練習機が左右のF5-IHI-2ターボファンエンジンを始動し、キャノピーを閉じる。

 

 TF-1は先進技術実証機で得た技術をベースに純国産で開発された艦載型LIFT機(戦闘機前段階練習機)だ。超音速飛行が可能な上、着艦訓練が可能で、新編された艦上航空隊などを中心に取得されている。

 

 対戦闘機訓練や対地射爆訓練、非常時には補助戦闘機として使用するため、M61機関砲や火器管制レーダーを装備しており、高出力のエンジンと先進技術実証機から得たCCV技術が活かされ、高機動性を発揮する。

 

 発艦準備を進めるTF-1はセンターに増槽を抱え、制空戦装備を抱えていた。その安全ピンを解除した武器員(アーマメント)がそれをパイロットに向けて掲げる。

 

 TF-1は電磁式航空機発艦システム(EMALS)の電磁式カタパルトに首脚(ノーズギア)のプライドルを固定する。発艦士官の合図で二機が間を開けずに発艦した。

 

『休戦交渉の妨げになるような軍事行動は避けろって難しい注文ですね』

 

 二番機の後席のレーダー迎撃士官の藤掛二等空尉がぼやいた。

 

「政治は複雑なんだ。現場が背負うしかない」

 

 一番機を駆る宗像三等空佐はそう答えながらマッハ1.1の音速巡航(スーパークルーズ)で不明機へ向かう。

 

 TF-1は装備の一部をモジュール化して練習機から戦闘機への転用がすぐさま行えるようになっていた。練習機とは思えないような多機能ディスプレイの並んだグラスコックピットで、ヘルメットもJHMCS(ジェイヘミクス)──統合ヘルメット装着式目標指定システム──が備わる。ハリアー並みの武装を搭載可能で、着艦訓練用の高等練習機という名目で調達された航空護衛艦用の艦載機であることは艦上航空隊のパイロットなれば誰しも陰ながら理解していた。

 

『レーダー、パッシブコンタクト』

 

 後席の岡部二等空尉が告げた。

 

『アンノウン、ベクター310、ヘディング075。レンジ10、アルト28。データベースに該当なし、類別不明。IFF応答なし。輸送機並みにでかい。新芦原でリングレイス隊が交戦した敵かも』

 

「オーライ。ステア075、ナウ」

 

『ステア075』

 

 右旋回し、不明機の後ろに回り込むように方位075度へ。間も無く見えてくるはずだ。

 

「タリホー!アンノウン、ビジュアルコンタクト」

 

 不明機を視認し、コールする。不明機との距離はあっという間に詰まり、その機影がはっきりした。

 

『なんだアイツ……カタクラフトを乗せてる』

 

 僚機のパイロットである能登一尉が呟いた。

 

「ホークアイ、こちらワイバーン01。国籍不明機を視認した。火星軍機、カタクラフトをぶら下げてる」

 

『了解、艦隊の防空圏まで五マイル』

 

「警告する、警告する。こちらは日本国航空自衛隊。太平洋上を針路075へ飛行中の火星軍機に告ぐ。貴機は我々の防空エリアに侵入しようとしている。直ちに針路を変更せよ。繰り返す。直ちに針路を──」

 

『ブレイク!』

 

 怒声が耳元で弾け、手は反射的にサイドスティックを倒している。刹那、機体のすぐ近くで爆発が起きた。遅れて爆発音が聞こえる。

 

「なんだ!」

 

『マーシャンの攻撃だ、砲弾を撃ってきた』

 

 岡部が早口で告げる。攻撃は止んでいない。宗像はスロットルを押し込み、パワーダイブで離脱しながら加速する。

 

『ワイバーン02、被弾した』

 

 能登の声に宗像は緊張した。

 

『ホークアイより02、報告せよ』

 

 早期警戒機が呼び掛けてきた。宗像は機首を引き起こし、火星航空機を追う。

 

『直撃ではないが、インテークが破片か何かを吸い込んだ。テイルパイプの温度が上昇している。さっきからマスターアラームが鳴り止まない』

 

 能登は被弾しても冷静に応答している。

 

『02、エマージェンシーを宣言するか』

 

『ネガティブ。飛行に支障無し、エスコートも不要だ。しかしレーダーシステムがアウト、誘導を頼む』

 

『ホークアイ、了解。甲板には緊急機対応態勢を取らせる』

 

「ホークアイ、こちらワイバーン01、交戦許可を求む」

 

『ワイバーン01、待て……』

 

 待てだと!?宗像は激しい怒りを覚えた。警戒機の管制官は空護の指示を仰いでいるのだろうが、時間には猶予がない。

 

『やりますか?』

 

 岡部が聞いた。気持ちは一緒だ。しかし二人が行動を開始しようとしたとき、早期警戒機ではなく、母艦から直接通信が入る。

 

『こちらは《あかぎ》だ。ワイバーン01へ。アンノウンはボギーだ。撃墜せよ』

 

「了解、撃墜する。ワイバーン01、エンゲージ」

 

 交戦を宣言した宗像は即座にレーダーで敵機をロックオンした。

 

『レーダーロックオン』

 

「フォックス3」

 

 主翼からAAM-4B中距離空対空ミサイルが離れ、ロケットモーターに点火する。ミサイルはまっすぐ敵機へ向かう。

 

 敵機は回避行動に移った。

 

『命中せず、目標健在。ミサイルは撃ち落とされた模様』

 

「っち、フォックス3!」

 

 さらにミサイルを放つと敵機の針路へ機体を加速させる。スロットルをミリタリーパワーまで押し込み、距離を縮める。敵機に乗り込む火星カタクラフトまではっきり見える。

 

「ガン!」

 

 機関砲を発射。20mm弾が敵機を叩く。エンジンから黒煙が吹いた。敵機の砲腔がこちらを向く。一撃離脱で宗像は離れた。

 

『ワイバーン01、離脱せよ。敵機が艦隊防空圏に侵入』

 

 ホークアイからの指示に離脱する。イージス艦がミサイルを発射し、敵機を攻撃する。被弾したにも関わらず敵機は恐ろしい機動で旋回し、ミサイルの旋回半径に回り込みながら榴弾でミサイルを撃ち落としていく。空護に迫っていた。

 




TF-1高等練習機
完全に架空の航空機です。空護の艦載機がF-35だけなのは大変贅沢ですし、空母を戦後始めて運用する日本に艦載型の練習機が無いのも変かな、などと思い考えました。
先進技術実証機で作ったサイズのエンジンも活かせて、圧倒的に作戦機が足りない日本のためにT-2みたいに有事は補助戦闘機としても運用できるというコンセプトです。
考えていて思ったんですけど、韓国のT-50みたいですね。今の日本には帯に短し襷に長しな機体なんですが、この世界線では追い込まれていてなりふり構っていられない情勢なので導入できたということで。
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