アルドノア・ゼロ──旭日のカタフラクト   作:グロウラー

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act35

 戦闘が始まり、マグバレッジ艦長達は《デューカリオン》に戻っていた。《デューカリオン》の収まる縦穴には基地警備隊の隊員や連合軍の兵士達も集まり、守りを固めている。

 

 青磁色を基調としたデジタル迷彩の装備で身を固めた空自の基地警備隊の隊員らは89式小銃を油断なく保持していた。

 

「自分はカタフラクトデッキに」

 

 篠原は分かれるマグバレッジ達にそう言い残すと秋山と共にカタフラクトデッキに向かった。マグバレッジが艦橋(ブリッジ)に入るとすでに海野が指揮を取って艦長の帰りを待っていた。

 

「艦長、上がられます!」

 

 入り口付近の海自の海士が艦橋内に叫ぶとブリッジにいた海自の要員たちは敬礼するか姿勢を正す。その連合軍とは異質な光景に、連合軍の兵士たちは一瞬呆気に取られた。

 

「弾薬等の補給は可能な限りでは済んでおります。現在戦闘配備を発令し、各員配置についています」

 

「分かりました。発進態勢を取って待機します」

 

「了解です。──艦長が指揮を執る!」

 

 海野が声を張り上げる。

 

「艦長が指揮を執る!」

 

 その言葉を自衛隊の士官達が復唱する。マグバレッジと不見咲は連合軍とは違った居心地に戸惑う。

 

「全く……基地に直接降りてくるなんて、正気の沙汰とは思えません」

 

「交渉するつもりなんかないんだ。力で侵略し、自分の領土とする。咎める者もいなければ国際法もない。産業革命以前の原始的でそして純粋な戦争だ」

 

 鞠戸が言う。

 

「咎める者がいない?まさか」

 

 海野がその言葉を鼻で笑う。鞠戸は思わず怪訝な顔をする。

 

「日本の土を踏んだことを後悔させてやる」

 

 その目には怒りが浮かんでいた。

 

「艦長、基地司令より通信」

 

「繋げてください」

 

「はっ」

 

『地球連合軍所属《デューカリオン》艦長、マグバレッジ大佐だね』

 

 スピーカーに響いたのは初老の老人を思わせる穏和な声だった。

 

「はい」

 

『自分はこの旭川基地司令、平原陸将補だ。承知の通り当基地に揚陸城が直接降下した。現在防衛部隊が応戦しているが、苦戦している。この基地ももはや安全とは言いがたい』

 

 平原司令の言葉にマグバレッジはじっと耳を傾けていた。

 

『これよりアセイラム姫殿下を貴艦へ移送する。姫殿下本人の希望でもあるが、それは正しい判断だろう。貴艦がもっとも安全なシェルターとも言える。一個中隊を護衛につけよう。アセイラム姫殿下を回収次第、至急当基地を脱出。グアムの連合軍アンダーセン基地を目指していただきたい』

 

「分かりました」

 

『……待て。姫殿下ご本人が直接話をしたいそうだ』

 

 

 

 その頃、伊奈帆たちはカタフラクトに乗り込み、発進態勢を取っていた。ガスタービンエンジンが始動。甲高いエンジン音が《スレイプニール》と《アレイオン》から響く。

 

「外部電源、ディスコネクト!」

 

《雷電》と《紫電》はバッテリー駆動だ。整備用区画から誘導を受けて《雷電》が進み出す。

 

「1号車、3番ゲージへ!」

 

「《アレイオン》はタイダウンしたままだ!発進に備え、待機しろ」

 

 伊奈帆はコックピットに収まりながら眼下で走る自衛隊の整備員たちを見ていた。戦闘機と同様の操縦システムを採用したカタクラフトを車扱いする自衛隊のセンスの無さには閉口する。

 

『界塚准尉。《デューカリオン》は出るんですか?』

 

 韻子が不安な声色で聞く。

 

『さあ。このままここで防衛戦になるかもしれないわね』

 

 姉の声を聞きながら伊奈帆は《スレイプニール》を立ち上げる。

 

『なおくん、通信』

 

 姉の呼び掛けに伊奈帆は顔を上げた。

 

「こちらマスタング22」

 

『私もお手伝いします』

 

 耳朶に響いた声に伊奈帆は驚く。遠い存在になってしまったはずの──しかし片時も忘れることは無かった──アセイラムが再び自分に呼び掛けている。

 

「セラムさん」

 

『ヴァースの兵器はすべてアルドノア・ドライブによって機能しています。揚陸城も例外ではありません。アルドノア・ドライブを停止させれば揚陸城はその機能を失います』

 

 アセイラムは捲し立てるように説明する。怒っている?

 

「それには何を?」

 

『アルドノア・ドライブは起動させた者が命を失うと自動的に停止します』

 

「セラムさんが心停止したとき《デューカリオン》が墜落したようにですね」

 

『はい。それとヴァース皇帝の血をひくものなら強制的に止めることが可能です』

 

「それはつまりセラムさんなら止められるということですね」

 

『はい』

 

 その返事にアセイラムが何をする気なのか伊奈帆には分かった。

 

「わかりました。セラムさんを敵揚陸城へ案内します」

 

『待ちなさい!なおくん。どうしてあなた、いつもそうなの?』

 

 通信の内容を聞いていた姉が悲鳴を上げるような声で問う。

 

「何が?」

 

『何がじゃないわよ!どうしていつも平気な顔して無茶なこというの?』

 

「政治的な交渉ができないと分かった以上、姫の存在は力にならない。でも戦術的でも力があるなら活用するべきだ。負けたらどのみちセラムさんだって無事ではいられない。理屈はあってる」

 

『理屈しかあってないでしょう!どれだけ犠牲が出ると思ってるの!』

 

「ここままでも多くの犠牲が出るよ」

 

『だからって無茶していいの?』

 

「戦争だし」

 

『戦争だからよ!!』

 

「ごめん。ユキ姉。でも僕は一番可能性が高い方法にかけるのがいいと思う。それだけだよ」

 

『私からもお願いします』

 

 アセイラムはきっと無謀だ、無理だと言っても一人ででもやろうとするだろう。

 

 突然、無線に男の高笑いが響いた。

 

『若者のパワーにはしばし圧倒されるよ』

 

 篠原だった。

 

『はぁ?篠原一尉──?』

 

『合理的な判断だよ。実にね。ただな……』

 

 ユキの咎める声を気にせず、篠原は話し出す。

 

『君一人でそれは出来ない。決断は評価するが、仲間の協力がなければそれは無謀と言うものだ』

 

 篠原の言わんとしている言葉が伊奈帆は読めた。

 

『作戦を立てよう。反撃を開始するぞ』

 

「なお君、ガンバだよ!」と書いてある姉からのメッセージのメモを伊奈帆は見つめた。丸い優しい文字。ただのメモではなく、伊奈帆にはこれがお守りだった。それを胸にしまう。

 

 

 

 

 アセイラムとエデルリッゾ、ユニスは記者会見室から避難し、護衛の偵察隊員に防弾改造した高機動車へ乗せられる。地下施設が広すぎて中の移動は車両やモノレールを使わなくてはならない。

 

 残りの偵察隊員達も別の軽装甲機動車や高機動車へと乗り込んでいく。四輛に分乗して避難先のシェルターを目指そうとしていたときだった。

 

「居たぞ!」

 

 火星軍兵士がそこへ駆けつける。車輛の周りで隊員たちが乗り込む間に警戒し、援護していた偵察隊員の一人が銃弾を浴びて倒れた。

 

「敵襲!」

 

 残りの警戒員たちが即座に応戦し、5.56mm小銃Mk17と7.62mm機関銃Mk48が火を吹いた。発砲してきた火星軍兵士は無数の銃弾を浴びて吹き飛ぶが、別の火星軍兵士がさらに応射してきた。

 

「しっかり!」

 

 ユニスは駆け寄って撃たれた隊員を咄嗟に抱き抱えた。手が血で濡れる。

 

「行って……!」

 

 撃たれた隊員がユニスを突き飛ばす。ユニスは途端に別の隊員に両脇を挟まれて引きずられ、高機動車の荷台に乗せられた。偵察隊員たちは車を発進させる。

 

「待って、まだあの人が……!」

 

 アセイラムが叫ぶが、自衛官たちはそれを無視して車を走らせた。すぐにザーツバルムの私兵が追ってくる。撃たれて放置された偵察隊員は瀕死の中で爆薬を起爆。追撃しようとした火星軍の車輛を道ずれに吹き飛ばした。

 

「ああ……」

 

 ユニスは思わず、声を漏らした。アセイラムは彼の自己犠牲の献身を思い知り、顔を歪める。

 

「姫様?」

 

「ヴァースの皇女たる私がヴァースの民を敵にするとは」

 

「この戦はヴァースの本意ではありません。すべては反逆者の策略」

 

「いいえ。すべては私の責。私の不徳。急ぎましょう」

 

「頭を低くして」

 

 偵察隊員が声をかけた。途端に車体に殺意を剥き出しにした銃弾が当たり、装甲板に跳ね返されて火花が爆ぜる。鋭い金属音が鳴り、ユニスはアセイラムに覆い被さるようにして身を守ろうとした。

 

 偵察隊員たちは残りの追っ手を振り切ろうとする。 隊員の一人が車体上面ハッチの全周可能なターレットから伸びるブランコのような銃座に座り、防楯付き銃架に据えたMk48機関銃を連射し、弾幕を張る。

 

「追っ手は?」

 

「装甲車四輛」

 

01式携帯対戦車誘導弾(マルヒト)を使え」

 

 偵察隊員たちのやり取りは不気味な冷静さがあった。銃座についていた隊員は引っ込むと荷台に置かれた防水ケースから01式携帯対戦車誘導弾を取り出し、それを構えてハッチから顔を出した。

 

 短い電子音が鳴り、発射。狭い地下通路内では避けようもなく先頭の装甲車がミサイルの直撃を受けて吹き飛ぶが、残りの三輛はなおも追撃してくる。お返しとばかりにロケット弾が飛び、高機動車の前方に跳ねて爆発した。

 

 防弾のガラスが砕け散り、操縦手の首から血飛沫が舞った。それは背後にいたアセイラムにも飛沫するほどの勢いだった。アセイラムが呆然とするなか、助手席の隊員がハンドルを掴んで車をなんとかコントロールする。壁に接触し、ミラーや付属品が吹き飛んだ。

 

「アクセルを押さえる!座席を倒して後ろへ!」

 

 ハンドルを取るために身を乗り出した助手席の隊員が怒鳴る。ユニスが素早くアセイラムと位置を代わるが、座席が倒せず手こずる。ユニスが手こずっていると見かねた機関銃手が銃座から素早く引っ込み、負傷したドライバーの防弾チョッキを掴んで後部兵員室へ引きずり込んだ。

 

 ユニスが咄嗟に出血する隊員の首を押さえるが、すでに活動性出血は止まっていた。隊員は絶命していて首は破片に切り裂かれていて床には血溜まりが広がっていた。バラクラバで表情は分からなかったが、苦悶の表情で死んだに違いない。

 

「ひっ……」

 

 アセイラムは絶句し、エデルリッゾは小さく悲鳴を上げる。機関銃手の隊員は何も言わず、無念そうに死んだ自衛官の肩を労うように叩くと、再び銃座に付き機関銃を撃った。助手席の隊員がなんとか運転席に座り、血塗れのフロントガラスを蹴り破って運転している。

 

 銃弾がさらに車体を叩いた。敵がもう近づいている。続く軽装甲機動車がロケット弾の直撃を受けて横転した。その軽装甲機動車は高機動車の盾になるべく、ロケット弾と高機動車との間に割り込んだのだった。追手の装甲車が横転した軽装甲機動車にぶつかり、出てきた偵察隊員とザーツバルムの私兵が白兵戦を始めた。

 

 残りお互いに二輛になった。激しい銃弾が飛び交う。

 

「弾をくれ!」

 

 銃座の隊員が叫んだ。荷台にある機関銃のベルトリンクをユニスは掴んで必死に機関銃手に渡す。機関銃手は受けとるとすぐさま装填し、撃ち始めた。見上げていたアセイラムに焼けた薬莢が降ってくる。

 

「熱っ……!」

 

 頬に薬莢が当たり、アセイラムは仰け反った。

 

「姫殿下、もう少しの辛抱を」

 

 運転する隊員が声を張る。銃弾が連続して車体を叩くと機関銃手が車内に転がり落ちてきた。

 

「だ、大丈夫ですか」

 

 隊員はアセイラムの言葉に返事をせずにそのまま跳ね起きると機関銃に取り付いてそのまま撃ち始めた。

 

 ザーツバルムの私兵の装甲車は激しい弾幕にフロントガラスを破られ、一輛は壁に激突した。残り一輛になるとこちらの二輛からの銃撃が集中することになった。敵の機関銃手が倒れ、エンジンとタイヤを破壊し、装甲車は横転した。

 

「追っ手は居ません」

 

 機関銃手はそれだけ報告すると沈黙した。

 

 

 

『追撃中の車両部隊との通信途絶!』

 

『姫は地下基地内の船を目指している。全部隊直ちに急行せよ!』

 

『こちらアーブル隊!敵の抵抗激しく移動できない!装甲車行動不能!救援を!』

 

『こちらオシンズ隊!敵に侵入路を遮断された!このままでは突入部隊が孤立する!』

 

 無線を聞いていたスレインは姫を救うべく《スカイキャリア》に乗り込む。

 

「おい!そいつはまだ弾薬の補給が!」

 

 整備員が叫ぶが、スレインは構わずカタパルトから射出させた。

 

 

 

 

「アルドノア・ドライブ、出力正常。発進、いつでもいけます」

 

「アセイラム姫は?」

 

「現在第4階層。到着まで間も無く」

 

 姫殿下を回収するべく、艦底部のハッチには自衛官たちが待ち構えていた。しかしザーツバルムの私兵が先に格納庫に到着する。

 

「敵襲!」

 

「上層のキャットウォークに敵だ!」

 

 基地警備隊が交戦、連合軍の兵士達も施設内で戦う。

 

「無反動砲を叩き込め!施設が傷つこうと構わん!」

 

 84mm無反動砲が敵の展開する通路の出口に撃ち込まれ、多目的榴弾が炸裂。ザーツバルムの兵を吹き飛ばす。

 

「西側の通路が破壊された!」

 

「くそ、湧いてきやがる、ゴキブリどもが」

 

 艦橋でもその様子が見守られていた。

 

「敵歩兵部隊です」

 

「我々も応戦します」

 

 海野が言った。武装待機していた陸自隊員と海自の立入検査隊の隊員が甲板に出て応戦する。さらに基地の警備隊員たちも《デューカリオン》を守るべく交戦する。無数の曳光弾が飛び交うのがブリッジからでも見えた。

 

「出られるカットは?」

 

「全機、ラックに固定しちゃってますよ!」

 

「かまわん。出せ!」

 

「すぐには無理ですよ!」

 

 兵士が叫び返したとき、格納庫の縦穴に二輛の車輛が躍り混んできた。

 

「友軍だ、撃つな」

 

「あれは……」

 

 マグバレッジはブリッジの窓から縦穴に飛び込み、射撃を受ける車輛を見下ろした。

 

 

 

《デューカリオン》の格納庫にアセイラムを乗せた高機動車と、護衛の軽装甲機動車が到着した。

 

「出口です。見えました!《デューカリオン》です!」

 

 エデルリッゾが叫ぶ。水陸機動団の偵察隊員たちが甲板に展開し、果敢に射撃する。正確な射弾が群がる火星の歩兵を捉え、次々に撃ち倒していた。

 

「右翼に敵歩兵!」

 

「MG手、右に火力を集中!」

 

 5.56mm機関銃ミニミを持った機関銃手が右翼に回り、飛び乗った火星軍の兵士に単連射で弾を浴びせて、次々に倒す。立入検査隊の隊員も89式小銃を撃つ。車輛に隊員が気づいた。

 

「姫殿下だ!援護しろ!」

 

「回収急げ!」

 

 格納庫に突入した火星軍兵士もそれを認める。

 

「アセイラム姫殿下です」

 

「目標発見!東側、格納庫にて攻撃中。繰り返す、目標発見!」

 

 スレインはそれを聞き、機首を巡らせる。

 

 

 

「撃て!」

 

 高機動車は標的となった。弾が飛び交い、高機動車を叩く。バリンという装甲板の割れる不吉な音が響いた。数発の弾丸が高機動車を叩いた時、前輪のコンバットタイヤが破断し、制御を失った高機動車は整備用の重機に激突して動きを止める。

 

「姫殿下、お怪我は!?」

 

「大丈夫です、ユニス。エデルリッゾは……?」

 

「足を痛めたようです。ほかは大丈夫です」

 

 エデルリッゾは足を押さえていた。ユニスが診ると、捻挫のようだった。操縦していた隊員は無事だったが、銃手はすでに事切れていた。車体を今も銃弾が叩いている。四人は助手席側のドアから脱出した。

 

「姫殿下、《デューカリオン》までお連れします。ユニスさん、エデルリッゾさんはここを動かないでください」

 

「私は姫様と──」

 

「自分一人ではあなた達を守りきれない」

 

 隊員の顔はバラクラバの下に血が滲んでいた。

 

「……私も軍人の端くれだ。助太刀する」

 

 ユニスが言うと隊員は弱々しい顔で「今は民間人の身なのに、申し訳ない」と答え、その手を借りることにしたようだ。車内にあった5.56mm小銃Mk17をユニスは渡される。使い方は観察して理解していた。予備の弾倉もポケットにねじ込む。

 

「エデルリッゾ。必ず迎えに来ます」

 

「姫様……」

 

 エデルリッゾは心細そうな声を上げる。

 

 ユニスと隊員は走り出した。ユニスが援護射撃の弾幕を張る。隊員は自らアセイラムの盾になるべく走り出した。遮蔽物から遮蔽物に移動する。その時、火星軍の歩兵戦闘車が姿を現した。

 

「装甲車だ……!まずい!」

 

 ユニスが叫んだとき、その歩兵戦闘車が機関砲を撃ち始める。太鼓を乱打するような砲声が響き、遮蔽物にしていたコンテナが紙のように引き裂かれ、アセイラムは悲鳴を上げた。

 

「姫殿下!」

 

 ユニスが歩兵戦闘車に向けてMk17を撃つ。5.56mm弾が虚しく弾き返される。しかしその瞬間、突然歩兵戦闘車が爆発炎上した。

 

 撃っていたユニスの方が驚き、目を丸くする。

 

 一体何が……?

 

『生きてる?そのまま走って。援護する』

 

 デジタル迷彩が施された《紫電》がハンガーに入ってきて、スピーカーで呼び掛けてきた。聞き知った少女の声だ。

 

「ライエか……?」

 

《紫電》は無防備な火星軍兵士たちに頭部の20mm機関砲を連射。20mm弾の弾幕を浴びた兵士達は一瞬にして掻き消え、粉々になる。そのまま頭部を振り、文字通り、蹴散らして吹き飛ばす。

 

「ライエさん!」

 

 アセイラムが叫んだとき、さらに歩兵戦闘車が突入してきた。ライエはそれを引き付けて流れ弾がそばを飛び交わないようにハンガーから出ていく。

 

「来た来た来た!お姫様!こっち!あと少し!」

 

 ランプウェイに立つカームと起助が叫ぶ。そばに陸自隊員達が伏せて89式小銃を構えて援護していた。陸自隊員達があっという間にアセイラムに駆け寄ってきて盾になると、ランプウェイに急ぐ。ユニスも急いだ。

 

「ハッチ閉鎖」

 

 最後まで射撃していた自衛官達も乗り込み、ランプウェイが閉じられる。

 

「エデルリッゾ……必ず迎えに来ます」

 

 アセイラムは決意の言葉を漏らした。

 

「お姫様、収容しました!」

 

「《デューカリオン》発進。コントロール、五番シェルター開放願います」

 

『こちら第二発令所、了解。五番シェルター、開放。連合軍所属《デューカリオン》へ、貴艦の航海の無事を祈る、かな?フライトの方が良さそうだ』

 

「感謝します」

 

《デューカリオン》は反重力デバイスの能力によって垂直に上昇していった。

 

 

 

「あれはあのときの……」

 

 スレインは間に合わず、上昇していく《デューカリオン》を見送っていた。突入した火星軍部隊と基地守備隊が撃ち合う中、スレインは横転した車のそばにいた少女を保護する。

 

「君、ここは危ない、僕と一緒に来るんだ!」

 

「あなたは……!」

 

 エデルリッゾはスレインを見て驚く。スレインもまた少女を見て驚愕の表情を浮かべた。

 

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