長月(偽)だ。駆逐艦と侮るなよ。   作:萩鷲

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第六警備隊-1

「――あ、来た! おーい、長月ー!」

 

 食堂に入って、料理を注文――今日は天ぷらうどんだ――して受け取り、さあヴェールヌイはどこかと辺りを見回していると、誰かかから呼びかけられた。

 

「……皐月?」

 

 声の方を向くと、皐月がこちらに手を振っている。一瞬、どういうことかと思ったが、隣にはヴェールヌイが座っていて――ああ、なるほど。

 

「お前も、六警の所属なのか」

「そういうこと」

 

 近付いて、皐月に問いかけると、肯定の言葉が返ってきた。僕は、皐月の向かいの、開いている席に座る。

 

「お前が、長月か……」

 

 僕の右隣に座っていた艦娘が、呟く。右を向くと、長月(ぼく)や皐月と同じ制服を着た、白髪で赤い眼の艦娘と目が合った。ああ、これは分かりやすい。

 

「私は、菊月だ……これから、共に戦うことになる。よろしく頼むぞ……」

 

 やっぱり、菊月だった。キリッとした表情を浮かべているが、顔立ちや体躯は幼い少女そのもので、どうにも背伸びをしているような印象を受ける。かわいい。

 

「ああ、よろしく、菊月」

 

 僕が返事を返すや否や、菊月はすぐに視線を正面に戻し、目の前に置かれたサンドイッチを手に取って、黙々と食べ始めた。素っ気ない。

 

「――ふぁふぃへふぁふぃふぇ、ふぁふぁふふぃひゃん」

「……口の中の物を、飲み込んでから喋ったらどうかな」

 

 ――右斜め前から、口を塞がれたような声がする。直後に入ったヴェールヌイのツッコミからして、口に物を含みながら喋った結果らしい。

 

「ふぁあ、ふぉっふぁ……ごっくん」

 

 声の方を向くと、またしても同じ制服の、茶髪をポニーテールにした艦娘が座っていた。これまた、分かりやすい。いや、分かりにくい艦娘の方が、少ないんだけど。

 

「……あらためてー、はじめまして、長月ちゃん。あたし、文月っていうの。よろしくー」

 

 若干舌足らずな声で、文月は名乗った。子どもっぽい、無邪気な笑みを浮かべている。かわいい。

 

「文月、だな。よろしく」

 

 僕が返事をすると、文月もすぐ、自分の食事に戻ってしまった。子ども用の、先の丸い小さなフォークを鷲掴みにして、口にパスタを運んでいく。……食べ方が、完全に子どもだ。ああ、ソースがほっぺに。

 

「まったくもう、文月はお子さまなんだから。――さて、次は暁の番ね」

 

 左隣で声がして、椅子を弾く音が聞こえる。顔をそちらに向ければ、長い黒髪で、睦月型の制服とは違う服を着た艦娘が立っていた。

 

「初めまして。ヴェルと同じく教導を担当している、特Ⅲ型駆逐艦一番艦、暁よ」

 

 言って、ぺこりとお辞儀をする、暁。まあうん、容姿以前に、暁って言ってたし、すぐに分かった。この制服は――改二の方か。

 

「よろしく頼む、暁」

「ええ、よろしく頼むわ」

 

 言って、暁は手を差し出し、僕もそれに応じる。暁の手は、見た目からは想像できないくらいに、がっしりとしていた。練度が高いだけのことはあるらしい。僕としてはやっぱり、子どもらしくぷにぷにしてる方が好きだけど、これはこれでギャップがあって中々――

 

「……あの、そろそろ離して欲しいんだけど」

「――あ、ああっ、すまない!」

 

 慌てて手を離す。暁は若干不審な顔をしつつも、何も言わずに席に座りなおした。――おい、このパターン何度目だ。そろそろ学習したらどうなんだ、僕よ。

 

「――さて。私はもう既に自己紹介を済ませたし、皐月もルームメイトだから、その辺は済ませているだろう。長月、早く六警のみんなの顔を覚えてね」

「……ああ、そうだな」

 

 ヴェールヌイはそう言うけど――とっくに全員分かるんだよなあ、僕。言うつもりは無いし、言っても信じて貰えないだろうけどさ。

 

「それじゃあ、頂こうか。……二名ほど、もう食べ始めてるけどね」

「そうね、折角の料理が冷めちゃうわ」

「ボク、もうお腹ぺこぺこだよ」

「なんだ、だったら先に食べて貰っても良かったんだが」

 

 菊月と文月はともかく、ヴェールヌイに暁、そして皐月は、自己紹介が済むまで待っていてくれたらしい。

 

「いいや。この朝食は、私たち第六警備隊がこの六名になってから、初めてみんなで摂る食事だ。そういうわけにはいかない――つもりだったんだけどね」

 

 少しだけ申し訳なさそうな、思いっきり呆れたような表情で、ヴェールヌイは菊月と文月の方へ視線を向ける。

 

「……ふん」

「ふぇー?」

 

 菊月は、視線の意味に気付きつつも露骨に無視し、文月に至っては、よく分かっていない様子だった。

 

「……見ての通り、二人は特に協調性に欠けていてね。すまない」

「いや、良いんだ。それよりもほら、早く食べよう」

 

 僕の言葉に、ヴェールヌイは無言で小さく頷いて、僕たちも朝食に手を付け始めた。

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