◇ ◇ ◇
青い髪の少女、タバサの召喚した使い魔を見てすでに召喚の儀を終えたギャラリーたちは驚きの声をあげる。
「なんだあれ……」
「まさか失敗か?」
ギャラリー達の驚きに無理はなかった。
タバサが召喚したのは、おかしな服を着た平民の少年。
もし、平民を召喚したのがゼロのルイズだったなら、おそらくは皆嘲笑していただろう。
だが、タバサはトライアングル。
この学院の中でも三指に入るほどの実力者。
当初、タバサは風竜を召喚するのではと噂されていた。
――それが、蓋を開けてみれば。
皆、平民を召喚したタバサを気の毒そうに見つめている。
場がシンと静まり返る中、その静寂を破ったのは、教師でありこの使い魔召喚の儀の現場監督でもあるコルベールだった。
「……使い魔の召喚に成功したようですな」
コルベールは努めて冷静に言ったつもりだったが、その内心にわずかな混乱があるのは誰が見ても感じ取ることができた。
なにせ平民の使い魔など前例が全くないのだ。
「えー、気の毒だとは思いますが、使い魔の召喚のやり直しは認められていません」
コルベールはタバサがあまりに可哀想だと思い、一瞬規則を覆そうか迷ったのだが根が真面目なため真実をはっきりと告げる。
もしかしたら、ミス・タバサが怒り出すのではないか、という考えがコルベールの頭をよぎった
だが、タバサはそれを裏切るように、
「別に、かまわない」
と、一言述べてコントラクト・サーヴァントをするために平民のすぐそばに一歩、二歩と足を進める。
それから小さな声でスペルを唱え、使い魔となる少年にキスをする。
その瞬間、今まで黙って様子をうかがっていた少年が謎の言語をしゃべりながら暴れ始めた。
◇ ◇ ◇
青い髪の少女が目に入った後、ぼくはこの場に大勢の人がいることに気がついた。
ぼくは、まるで児童文学のハリーポッターの世界へ紛れ込んでしまったのではないかと感じた。
なぜなら、彼女を含め皆魔法使いのようなローブを身にまといおまけに杖まで持っているのだ。
……まさか。
本の光に吸い込まれたことを思い出し、ぼくは物語の中へ放り込まれてしまったのではないかという仮説が頭をよぎる。
しかし、そんな馬鹿なはずはないと頭を振って考え直す。
とにかく周りの人に話を聞くしかないと、声を発そうとしたとき、ここが少なくとも日本ではないということが理解できた。
周りにいるのが外国人ばかりなので、もしやと思っていたが話す言語が日本語ではない。
かといって、英語でもなかった。
全く聞き覚えのない言語。
最初に目に入った少女は、ツルッパゲの初老の男性と何かの話をしていて、それが終わるとこちらに近づいてきた。
「キャン ユー スピーク イングリッシュ?」
わずかな希望を持って尋ねるが、彼女は無表情。
小声で何かをいってから、彼女はぼくの顔に、
――――。
唇と唇が触れ合う感触。
それは、ちょうど一年ほど前の、菜の花ように明るい後輩以来の突然のキスだった。
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