彼女のためのイーヴァルディ   作:平賀ミウ

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感想は嬉しいものです。幸せです。


2話

 

 夕方。

 明らかに洋風な部屋の中には夕日が差し込み、部屋はオレンジに染まっている。

「……名前は?」

 ぼくに突然名前を尋ねてきたのは先ほどキスをした青い髪少女。

 なぜかはわからないけれど、彼女のキスの後ぼくは言葉が理解できるようになっていた。

「い、井上心葉」

 声が上擦ってしまい、明らかにキスのことで動揺しているのがバレバレな気がして恥ずかしくなる。

 だが、彼女はキスのことなんて気にもとめていないのか、……そう。戸だけ返事をして、

「私はタバサ」

 とだけ名乗った。

「で、タバサさんちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「タバサでいい」

「……じゃあ、タバサ。ここは日本じゃないよね? ここはどこの国?」

 タバサは少しおかしなものでも見るような目で、

「ここはハルケギニアのトリステイン」

 と、告げた。

 全く聞き覚えのない場所。

 そのことから、先ほど召喚されたときに自分が考えたここは本の世界ではないか? という仮説がもしかしたら正しいのかも知れないという考えが頭をよぎる。

 だが、そんなはずはないと、次々とタバサに質問をしていく。

 だが、返ってきた答えはどれも自分の仮説を裏付けるようなものばかりだった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 なぜか急に落ち込む心葉をタバサは不思議そうに見ていた。

「私からも質問がある。いい?」

「……ぼくばかり質問してたね。大丈夫。何が聞きたいの?」

 心葉からオーケーを貰うと、タバサはずっと聞きたかったことを聞いた。

「コノハはイーヴァルディの勇者?」

 質問に心葉は首を振り違うというジェスチャーをした。

「そう」

 違うなら残念だけど仕方がない。と、質問を終えようとしたとき、タバサは無意識に、

「コノハの趣味は?」

 と、尋ねていた。 

 なぜ自分がこんな質問をしているのかわからなかった。

 まるで誰かに言わされているようにも感じた。

 タバサの質問に心葉は面をくらったように驚くと、かなり悩んでから、

「……小説を書くのが趣味かな」

 と答えた。

「……よかったら、今書いて欲しい」

 タバサはコノハに小説を書いてもらわねばならないと、なぜか強くそう感じていた。

 コノハに小説を書いてもらわねばならない、そんな気がしたのだ。

「うん、短いのでいいのなら。三題噺でもいいかな?」

「三題噺?」

 タバサがどういう意味? といった風に首を傾げると心葉は、

「人から三つのお題をもらってそれに沿ったテーマで書くんだよ」

 と、説明した。

「タバサ、お題をお願いしてもいいかな?」

 心葉の言葉を聞いて、タバサは少し悩んでから、

「お母さん、薬、幸せ」

 と、答えた。

 タバサのお題を聞いて心葉は何かを察したような顔になって、タバサから紙とペンを受け取ると文字を書き始めた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 お題を言ったときのタバサの表情でぼくは少しだけタバサの一部がわかった気がした。

 恐らく、タバサの母親は本当に病気なのだろう。

 だから、物語のなかでくらい……。

 うんと、幸せなクリスマスの砂糖菓子のような物語を書こうと心に決めてペンを走らせる。

 二時間程たち、三題噺が完成した。

「終わったよ」

 そういってタバサに話が書かれた紙を渡す。

 タバサは紙を受け取ると、困った顔で、

「……読めない」

 と、言った。

「ああ、そうか。ごめんね」

 ぼくは、日本語が通じるものだから、すっかり文字も読めるものだと勘違いしていた。

 少し照れくさいいけれど、タバサのために声を出して読み上げる。

 ――。

 どこにでもいる少女は毎日お母さんの愛をいっぱい貰って育つ。

 だが、ある日お母さんは病に伏せてしまう。

 このままではお母さんは死んでしまう。

 少女は神様にお祈りをする。――どうか神様、お母さんを助けてください。

 神様は少女の願いを聞きいれ、少女に試練を出す。

 これを乗り越えたときお母さんを治せる薬をあげようと。

 試練は困難だったが、少女はそれを乗り越えて見事に薬を手に入れる。

 そして少女はお母さんといつまでも仲むつまじく暮らす。

 これでこの話は終わり。

 物語のなかでくらい願いがあってもいいんじゃないかとぼくは思う。

 読み終わったとき、タバサは少し涙目になっていた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「……ありがとう。とても素敵な話だった。でも、これは物語。……現実じゃない」

「……そうだね。あくまでこれは現実じゃない。でも、神様にお願いするのは、無駄じゃないと思うんだ。たとえ気休めでもね」

「神様なんていない。いたら、きっとすでに助けてくれてた。だからいくら願っても無駄」

「でも、今度は違うかもしれないよ?」

「……どうせ」 

 なんて言いながら、タバサは心の中で願ってみた。

 願うのはタダなのだ。

 それなら、と。

 ――どうか神様、お母さんを助けてください。

 タバサがそう願ったと同時に、目の前で信じられないことが起きた。

 なんと物語書かれた紙が粒子のように消えていき、代わりに心葉の手には小瓶が握られていた。

 これは一体なんなのかを尋ねようと心葉をみると、彼は真っ青な顔で心葉は意識を失っていた。




読んでいただきありがとうございました。
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