勢いよく体を起こし、荒い息を吐く青年は自分を抱く姿勢で収まらない恐怖に怯えていた。
体の震えが止まらず歯もガチガチと音を鳴らしている。
「ハァッ……………ッハッはっ、は、は……………」
自分が今、生きていることから先程の出来事は夢なのだと理解し、そして自分が今何処にいるのかということを考えられるまでには落ち着いた。
……………わからない。
そしてなぜ自分がここにいるのかを考える。
断片的な記憶が頭をめぐる。
そうだ、僕は避難ルートを通って、そして……………
皆が死んでいた。
「あ、あぁ、ああアアアァァァァァォァァッッ!!! 」
後悔、哀しみ、絶望、それらの感情が一気に押し寄せ、青年は叫びを上げることしかできなかった。
今こうでもしなければ自分は確実に壊れてしまいそうだったからだ。
「うおわっ! な、なんだい!? 」
あまりの大声に驚いたツインテールの少女は飛び上がった。
その姿はまさにラビットの如く天井に届く程であった。
神は寛大だ。例え睡眠を阻害されからといって、恋慕を抱く人との一時を邪魔されたからといって自らの子である。人間を無下にはしない。
だから神ヘスティアは何も言わず、ただ、優しく白髪の青年を抱きしめた。
「辛い事があっんだろ? わかるさ、君の声から色んな感情が聞き取れたからね。理由は聞かないよ。だから今は泣くといい」
そう言い残し神は青年の声が消えるまでただ抱き締めた。
まるで母のようだった。
あの少し鼻をくすぐる朗らかな匂い。そして心が暖かくかるような感覚。
全てが懐かしい感覚でそれが嬉しくて、だから僕はその女の子の胸の中で泣いた。
嗚咽か叫びかも分からない声を上げながら僕はめいいっぱい泣き叫んだ。
★
あれからどれほどの時間が経ったのかは分からない。
それほど白髪の青年は泣いた。
押し寄せてきた感情がすこし落ち着いて来たところでヘスティアは大丈夫かい? と相手を気遣い、事情を聞くことにした。
話の内容はヘスティアからすれば全くもって荒唐無稽なモノだった。
グールという人間を食べるモンスターが街をはびこっていること。トーキョーという都市で繰り広げられたグールと人間との抗争など、いつもなら一蹴して鼻で笑うだろうがそんな事はしなかった。
それはしてはいけないと分かっているからだ。
青年のあの行動からそれが真実であると物語っているのだ。
嘘であんなにも哀しい悲鳴が涙が流せるだろうか。いや、流せるはずが無い。
「そうか、そんなことが……………」
「ありがとう、僕の話を聞いてくれて。君は人間でしょ? だったら僕と一緒にいない方がいい。鳩が君にあらぬ疑いをかけるかもしれないからね」
そう言うと青年はベッドを離れ扉へと向かった。
「? ……………??」
ハト? それはなんだい? 鳥のことではなさそうだけど……………
引き止めようと手を伸ばすも青年はすでに部屋を出て行っていた。
そしてその数分後に物凄い形相で
「ごめん! ここってどこなの!?」
と額に汗を浮かべて戻ってきたのだった。
★
「お、おらりお? 」
聞きなれない言葉についつい反復してしまった。
聞けばここは迷宮都市というらしい。そしてここには多種多様な種族が共存しているのだとか。
そして目の前にいるこのツインテールの女の子が神様だとか……………
「そうさ! ここは冒険者が集まる街なんだよ! ダンジョンを冒険し、そして己を磨き、金や富、名声だって得ることできる夢の街なんだぜ!」
ふふんと手を腰に添えヘスティアは自慢げに述べた。
信じられないというのが青年の感想だった。
まるでおとぎ話の中に入ってしまったのではないかと錯覚してしまう程だ。
だか、目の前の女の子の存在やあの暖かさからこれは現実で本物だと理解せざるえない。
パラレルワールド。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
例えば隕石が衝突しなければ、例えば電気という物が発見されなければ、全ての偶然が重なり青年の住む地球は成り立つと本で読んだことがある。
もしかすれば、ここはその何かが欠けた末の世界なのかもしれないと思った。
欠けている、か……………まるで僕みたいだ。
「えーと、それでだね。傷心のところ本当にすまないとは思っているけれど、もし帰るところがないのなら僕の眷属となってくれないかな?」
「……………眷属?」
「そうさ、眷属になってファミリアを支えて欲しいんだ。聞けば君はゴブリンを瞬殺するほどの実力を持っているらしいじゃないか。神の恩恵|(ファルナ)無しで瞬殺ってすごいよ! だから、ぜひ、是非とも! 眷属になって欲しいんだ!」
今のところここオラリオから元の世界に変える方法なんて、青年は分からない。
それに、知らない土地やルールがある場所で1人でいることほど危ない事はないだろう。
だから、だからこそ
……………眷属になってもいいのだろうか。
ここは見たところ平和に見える。争いなんて殆ど無いだろうしあったとしても喧嘩というぐらいでいたって平凡な物だ。
自分だけがこんな平温に浸かってしまっていいのだろうか。と後ろめたさがこみ上げてくる。
ふと目の前の女の子を見る。
女の子の目は泳ぎ、今か今かと返答を待っていた。
……………今は深く考えても仕方ないかな。どうしたってどうやったって帰り方なんて分からないのだから。
なら、僕は―
「うん、それじゃあ、眷属になろうかな。」
「あぁ!あぁ、よろしく。おほん、それじゃあ改めて僕はこのファミリアの神であるヘスティアさ。君は?」
「僕は金木ケンです。よろしくヘスティアちゃん」
「ヘ、ヘスティアちゃん?」
「駄目、かな? 神様にちゃんづけは……………」
「いや、いいぜ! 新密度が上がるじゃないか!」
熱い握手を交わし、金木ケンは新たなスタートを切った。
これはは悲劇かもしくは喜劇の始まりかは誰も知るよしもないし神すらも知らないのだ。
これは蛇足の物語だ。
うーん、詰め込みすぎたかな?
まぁ、許してください!
感想をくれれば展開が早まりますよ!多分