美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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第十一話 美月の瞳と仲直り

あの日、美月にキスをされた日から美月は全く私たちに絡んでこなくなった。

あの日のことは忘れよう、とそういうことなのだろうか。お兄様以外の男にキスをされるなんて考えるのもおぞましいことではあるが、女同士であった出来事だ、私も大事にするつもりはない。きっとこれで良かったのだろう。

 

 

数日が過ぎる。

未だ美月は一切接触してこない。私だって向こうから声をかけてくるのなら無視をする気はない。謝ってくれるならこの前のことを許すことも吝かではない。全ては美月次第だ。

 

 

さらに数日。

私は全く問題ないが、そろそろ美月が謝りたいのではないだろうかと美月のクラスを覗きに行く。美月は何やら友人らしき女の子と親しげに会話をしており、こっそり覗いている私には見向きもしない。

 

私にあんなことをしておいて他の女の子と仲良くしているなんて……。

 

ま、まあ私には関係のないことだ。

 

 

関係の…ないことだ。

 

無意識に自分の唇に触れてしまう。そこにはまだあのときの感触が残っている気がして、熱が残っている気がして……って私は一体何を考えているの!

 

もう考えないようにしようと思えば思うほど美月のことばかりが頭に浮かんで、そして、あのときのことが鮮明によみがえる。

 

 

 

「美月」

 

 

結局、私から美月に会いにきてしまった。

 

 

「深雪さん!うぅ会いにきてくれたのはすっごく嬉しいんだけど……その、ぼくの視界に入らないでくれるかな 」

 

「」

 

 

きっと今の私の顔はとてもお兄様には見せられないくらい間の抜けた顔をしていることだろう。

 

 

「ああ、違うんだ!本当だったら何万時間だって深雪さんを見ていたいんだけど……その今日はちょっと持病が……」

 

 

持病?まさか美月が病気だっただなんて……。

あんなに元気に運動だって出来ていたし、明るくてはしゃぎ回ってる美月が病気だとは、思いもしなかった。はっ…!もしかして美月の言動がたまに頭を疑うようなものなのはその持病のせい……

 

 

 

「うん、深雪さん、たぶん今考えてることは全くの見当違いだから!そしてぼくを可哀想なものを見る目でみないでくれるかな!ぼくの言動がおかしいのは病気じゃなくて自前だよ!元からおかし……ってぼくは別におかしくないから!」

 

「それはないわね」

 

「うっ…酷い」

 

 

どうして私の思考を読めるのかはともかくとして、自分の言葉に自分で怒るのはやっぱり美月はおかしいということの証明なのではないだろうか。

 

 

「も、もうその話はおしまい!どう考えてもぼくが追い詰められるから!」

 

 

どうやら美月も本当は自分が変人だということを認めているらしい。

 

 

「認めてないよ!?そして流石に変人は酷いと思う!」

 

 

美月の大袈裟な反応につい小さな笑いが漏れてしまう。

 

 

「ふふっ、ごめんなさい、あんまり美月の反応が面白いものだからついつい遊んでしまったわ」

 

「うう、深雪さんが意地悪だ…この小悪魔め!……でも可愛いから許しちゃう!」

 

 

やっぱり美月は変人だった。いや、変質者だろう。

 

 

「そろそろぼく泣くよ!?今のぼくには深雪さんの考えていること丸分かりだからね!?」

 

 

 

 

 

「霊視放射光過敏症…」

 

「うん、まあ詳しいことはググってもらえば分かると思うけど、サイオン?とかなんか普通の人には見えないものが色々見えるんだよね」

 

 

随分と適当な説明ではあるが霊視放射光過敏症については調べるまでもなくお兄様にお聞きすれば詳しく知ることができるだろう。お兄様に知らないことはないのだ。

 

「で、その霊視放射光過敏症を普段はコントロールしてるんだけど……たまにコントロールできなくなることがあるんだ。なんかより強く見えるようになるっていうか……言葉で説明するのは難しいんだけど、とにかく眼に慣れるまではコントロールできなくなる」

 

 

何故か両手にそれぞれ輪を作り双眼鏡をのぞくような動作をしながらそう説明する美月。美月のよく分からない言動は気にせず無視するよう言われているので特に何も言わない。

 

 

「うん、達也には後でゆっくりお話をするとして……ここからが本題なんだけど……ぼくはこの状態、霊視放射光過敏症の状態だと、人の心が読めるんだ。見える光の揺らぎや色で何となく分かっちゃうんだよ。普段だったら心を読むのだけをオフにすることも出来るんだけどね」

 

「心が……あっ…もしかしてそれで…」

 

「うん、心が読めちゃうからこの状態の時にはなるべく人に関わらないようにしているんだ。誰にだって知られたくない秘密とかあるだろうし……そのだからあのこと(・・・・)も謝りに行けなくって……ぼく暴走しちゃったのに」

 

 

うう、美月の言葉に顔が赤くなっているのが分かる。

 

 

「そ、そのことならもういいわよ。美月も反省しているようだし……でも次は許さないわよ?」

 

「あ、ありがとう深雪さん!大好き!」

 

 

涙目で抱きついてくる美月はなんだか妹のように思えて可愛い。ついついなんでも許してしまいそうだ。

ただ、じっとこちらを睨んでくる方がいるのだけど、私が何かしたのだろうか。すごく綺麗な人だからか迫力があるので止めてほしい。

 

 

でも、少し安心した。

視界に入らないで、というのにはちゃんと理由があったようだ。

 

それにしても、心が読めるというのは随分と凄いことのように思えるのだけど……私との会話から本当に心が読めているようだし。

ただそうなると本当に美月との接触は避けた方が良さそうだ。もし美月に秘密を知られるようなことがあれば殺……おっと心を読めるのだった。

 

 

「ボクハナニモミエテナイヨー」

 

 

冷や汗を流しながら両目を手で覆い、片言でそんなことを言う美月。さっきのは冗談だが、もし本当に秘密……四葉のことを知られてしまったら美月がどうなるかは分からない。命を失うようなことにもなりかねないのだ。

 

 

「それじゃあ、美月、ちゃんとコントロールできるようになったら連絡してね」

 

「あっ明日からは眼鏡かけてくるから大丈夫だよ。前使った時、壊しちゃって。

しばらく使わないし放置してたんだけど、新しいのが今日届くんだ」

 

 

どうやら美月はオーラ・カット・コーティング・レンズという度の入っていない特殊な眼鏡を持っていたようで、それを使えばサイオンや光が見えなくなるらしい。しばらくはその眼鏡をかけつつ、眼をコントロールできるように調整をするようだ。もう何度か繰り返しているようで、あと一週間もあれば眼鏡は必要なくなるらしい。

 

 

「そうだ美月、前から思っていたのだけど私のこと、深雪でいいわよ?美月にさん付けされるの違和感あるもの」

 

「うん、深雪」

 

 

私がそう提案すれば美月はふわっと笑顔を浮かべながら、そう名前を呼んだ。

 

その笑顔はとても魅力的で黙っていれば可愛いのにと思いはしたが、黙っていては美月ではないという気もする。

 

 

でも一つ確かなのは……どうやら私は美月を嫌いになることはできなさそうだということだ。

 

ちょっと……いえ、すごく変わった友人が一人出来た。

 

私は今日、本当の意味で美月と友達になれた気がした。

 

 




\(*゚∀゚*)/ 美月「やっふぅうううー!!深雪と仲直りできたよぉおおおお!!」

( ̄^ ̄) 薫 「"深雪"?ふーん呼び捨てね。そりゃ良かったですねー」

( ´∀`) 美月「なんだよー拗ねるなよー、ぼくの一番の親友は薫だろー(頭ナデナデ)」

(〃 ̄^ ̄〃) 薫 「あっ頭撫でるな!蹴り飛ばすぞ!」

ԅ(´´ิ∀´ิ`ԅ)ニヤニヤ 美月「照れるな照れるな、可愛いやつめ」

薫「う、うるせぇー!」

ヽ(*゚ー゚)θキーック!);゚⊿゚)ノ イッター!/





これから後書きにこんな感じの遊びを入れてみようかと思います。余裕のない時はなしになるかもしれないけど(震え声)

今回は試験的ですが……どうでしょう?

※前話にも入れておきました。

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