美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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ただのイチャイチャ回です。
サブタイトル思いつかない……。


第二十四話 可愛い二人

真由美は自分の胸に手を当ててため息を吐いた。

 

 

「真由美さん?どうかしたんですか?」

 

 

それは目の前でお菓子をパクつきながら、のほほーんとしている少女に触発されてのことだった。

 

真由美の視線の先には中学生にしては些か発育の良すぎる胸が。

小柄なわりに大きな方であると自負している真由美ではあるがそれでも自信を無くさずにはいられない。ブティックやエステサロンでいくら褒められても、こうして実際に目の当たりにすると、やはり落胆する。

 

 

「いえ、なんでもないわ」

 

 

そんなことで落胆していたと美月に悟られるわけにはいかない。美月の前では頼れるお姉さんでいたいのだ。

 

 

 

「真由美さん、国立魔法大学付属第一高校に通ってるんですよね?」

 

「ええ、私、これでも魔法師志望だから」

 

 

真由美が魔法師志望であることは彼女が七草であるのだから当然のことなのだが、七草の意味を知らない美月にはそんなことは分からない。

だから、真由美が会話の中で何気なく話した『一高』というのが、本当に自分の思う『一高』、『国立魔法大学付属第一高校』であるかの確認が必要だった。

 

 

「へー、実はぼくもちょっと魔法を使えたりするんですよー」

 

「ええ!?」

 

 

真由美が驚くのも無理はない。

実用レベルで魔法を発動できる中高生は、年齢別人口比で1/1000前後。

そしてそのほとんどは名の知れた家の者であり、そうでなくとも比較的裕福な家の者が多い。

 

真由美は混乱しかけた頭をなんとか落ち着けて考える。

美月の惚けた、ゆるい雰囲気で勝手に魔法師ではないと思ってしまっていたが、美月がそうである可能性も0ではなかったのだ。

このパーティーに出席しているということはある程度裕福なのだろうし……と改めて美月を見てみる。

 

 

可愛い、というのは贔屓目ではない。

ふわふわとした髪も大きく少し眠そうな黄金色の瞳も、庇護欲をそそられるお人形のような可愛さだ。

そして、大きな胸に、それを強調するかのように引き締まったウエスト。スラッとした手足も白くて長い。何か運動でもしているのかプロポーションが羨ましい程に良いのだ。

私ももう少し胸にボリュームが……と意識が他に逸れそうなのを赤面しつつなんとか防ぐ。

 

 

「真由美さん?」

 

 

小首を傾げて見上げてくる美月。

その可愛さに思わず抱き締めそうになるが、そんなことをして変な誤解を与えるわけにはいかない。

真由美は警戒心の強い小動物のような後輩、中条あずさを思い浮べて、もっとなついてくれるまで我慢しようと決意する。

美月にとってはいらぬ我慢であるが。

 

 

「いえ、なんでもないわ」

 

 

誤魔化すように視線を美月の首もとへと移す。

そこにはシンプルなデザインのネックレスが下がっており、白い肌の上で輝いている。

真由美にはそれがとても高価なものであることが一目で分かった。

真由美とて七草の長女、高価なアクセサリーを身につける機会は幾度もあり、ある程度、目利きはできる。

 

やはり美月は裕福な家の者だったようだ。

自分が知らなかったのは、芸能人や小説家なんかの本名とは違う名前で活動している人間の娘や孫なのだろうと予想する。

 

 

「じゃあ美月さんも魔法師志望なのね」

 

 

前述の通り、実用レベルで魔法を発動できる中高生は、年齢別人口比で1/1000前後。

魔法が使えるというのはそれだけ希少な才能であり、必要とされている才能でもある。

魔法を使ってみたいと、誰もが一度は思うものだが、本当に使えるのはほんの一握りなのだから。

 

そして魔法を使えるなら進学先として一度は考えるのが国立魔法大学付属高校だろう。

真由美は美月の実家がどこかは知らなかったが、中学生である美月が平日のこのパーティーに参加しているなら東京都内、少なくとも関東圏の人間だろう。

であるならば真由美の所属している国立魔法大学付属第一高校に入学する可能性は高い。

 

 

 

「もしかして、私の後輩になったりする?」

 

 

真由美はキラキラと輝いた瞳で美月の両手を包むようにして掴み、顔を至近距離まで近づけて尋ねた。

美月が後輩になったらなんて素敵なんだろうと、気持ちが弾みすぎた結果だった。

 

 

「へ、あっ、その、ぼくは芸術科高校に推薦貰っているから……えっとごめんなさい!」

 

 

美月は至近距離に近づいてきた真由美に大混乱しており、そわそわとしながらも何とか答えた。

どうやら美月は迫られると弱いようだ。

 

 

「ああ!謝らなくていいのよ!私こそごめんなさい、貴女が後輩になったらどんなに素敵だろうってちょっと焦り過ぎちゃったの」

 

 

美月の反応から自分の大胆な行動に気がつき、少し照れたように顔を赤くして、モジモジとしている真由美はとても可愛く、美月は歳上であることも忘れて頭を撫でて愛でたい気持ちにかられる。

 

 

「真由美さん可愛い!」

 

「あ!……もう、私の方がお姉さんなのに」

 

 

我慢出来ずに真由美を胸に抱いて抱き締める。

頭を撫でられながら頬を膨らませている真由美も、そう気分を害しているわけではなさそうだ。

ただ、お姉さんでいたい真由美としては少し不本意で膨れているのだろう。

 

 

「でも残念ね、美月さんが後輩になったら学校生活も、もっと楽しくなったでしょうに」

 

 

一旦落ちついた後、まだ赤みの残った顔で真由美は言う。真由美はこの短時間で美月を大層気に入っており、学校の後輩、中条あずさ、通称あーちゃんと並べて愛でたいと目論んでいた。

 

 

「ぼくも……真由美さんみたいな先輩がいたら……その、嬉しいかな……なんて思っちゃったり?」

 

 

素直に褒められて照れ、真由美から顔をそらしてそう答える美月。

勿論、顔は赤く染まっている。

 

 

「可愛い!」

 

 

真由美はもう辛抱たまらなかった。

 

 

「ひゃい!?」

 

「もう、どうしてこんなに可愛いのかしら!美月さん家の子にならない!?」

 

 

真由美から頬擦りしそうな勢いで抱き締められ、色々と柔らかいものが当たっている上、至近距離に真由美の顔があって美月は目をぐるぐると回して、完全に真由美の勢いに押されていた。

 

 

「はにゃ~」

 

 

こうなるともう美月は使い物にならない。

 

後は真由美の良いようにされるだけだった。

 

 

「可愛いわ~っ!」

 

「うぅ~っ!」

 

 

このあと真由美が正気に戻り、美月が気を失うまでこのカオスは続くのであった。

 

 

 

 




─その後の二人─

七草邸近辺の駐車場にて。


ヽ(´Д`;)ノ美月「ごめんなさい!」


(≧へ≦)水波「………何がですか?」


(>Д<)美月「うう、水波ちゃ~ん、悪かったから許してって!」


(´・ω・`)水波「別に怒っていないので謝る必用はないです……」


(≧Д≦;)ノ美月「でも水波ちゃん泣いてるじゃん!」


(。 >﹏<。)水波「泣いてないです!時間を間違えたのかと不安に駆られながら、何時間も外で待っていたくらいで泣かないですから!」グスッ


。・゚゚・(>д<;)・゚゚・。美月「ごめんよぉぉおおお!本当にごめんよぉおお!」


結果、二人で号泣してカオスになったという。

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