美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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第四十六話 風紀委員会と真由美の野望

「風紀委員会?」

 

「そう。私、そこに所属することになっているから今日の放課後は風紀委員会の本部にいかなくてはならないの」

 

一高の風紀委員会――というより魔法科高校の風紀委員会――というのは、校則違反者を取り締まる組織で、一般的な高校の服装違反や遅刻を取り締まる組織ではなく、そういったものは自治委員会という別の委員会の週番が担当しているらしい。

 

風紀委員の主な任務は、魔法使用に関する校則違反者の摘発と、魔法を使用した争乱行為の取り締まりで、摩利さんの役職、風紀委員長は、違反者に対する罰則の決定にあたり、生徒側の代表として生徒会長と共に、懲罰委員会に出席し意見を述べることだからだ。

 

 

「風紀委員なんて危なそうなの、愛梨がやる必要ないよ!」

 

「大丈夫よ、私、これでも一色の長女なのよ?それなりに戦闘訓練もしているし、入試の順位も二位だったの。心配いらないわよ」

 

 

「だとしても、風紀委員会は男所帯だって、摩利さんが言ってたんだ!そんなところに愛梨を入れるだなんて、考えられないよ!」

 

 

こんなに可愛い愛梨が危ないことをする必要はないし、男ばかりの委員会だなんて、絶対入れられない。

誰が何と言おうと、お姉さんが認めませんよ!

 

 

「そうは言っても、私は教員会枠、先生方の推薦で風紀委員会に入ることをお受けしたの。それをこんな土壇場でお断りすることなんて出来ないわよ」

 

「なんでそんなの受けちゃったのさ!」

 

「師補十八家の一色家の長女としては、相応しい職務だと思うの」

 

 

ドヤ顔で言う愛梨だけど、それってつまり、やりたかったってことだよね!?

実際、ぼくが説得しても頑なに、私がやる、と言い続けるし。

 

 

「じゃあぼくも一緒に行く!風紀委員会が愛梨が入っても大丈夫なものなのか、この目でしっかり見極める!」

 

 

こうして、ぼくは風紀委員会に向かうことにした。

今日は早く帰らないと仕事がヤバイ――愛梨と夕食を食べるために昨日はサボったから――のだけど、そんなことは関係ない!

いざ、風紀委員会へ!

 

 

 

 

 

「誰もいないわね」

 

意気込んでやってきたものの、もぬけの殻だった風紀委員会本部は、書類とか本とか携帯端末とかCADとか、多種多様な物で埋め尽くされた長机、乱雑に並べられた椅子など、まるでサッカー部の部室のようだった。

 

 

「まあ、今日の放課後、としか言われていないし、正確な時間指定はされていないのだからこういうこともあるわよね。風紀委員会は校内の巡回が主な仕事なのだし」

 

愛梨はそう言うけど、摩利さんに会ったら弄り倒してやろう。前にぼくが大遅刻した時は散々怒られたからね。まあ、ぼくが100%悪いんだけど!

 

 

「どうする?待つ?それとも適当に校内を歩いてみる?風紀委員が巡回しているなら、一人くらい会えそうだけど」

 

「そうね……下手に動き回って入れ違いになってしまうのは避けたいし……あ、そういえば、美月、貴女、渡辺先輩と連絡は取れないの?お知り合いなのでしょう?」

 

「……全く思い付かなかった」

 

 

ぼくはもしかしたら、頭が足りないのではないかと、若干思ってしまったが、きっとそんなことはないと信じることにして、携帯端末で摩利さんに電話をする。

 

 

「んー、出ないな」

 

 

風紀委員長って大変そうだし、忙しいのかもしれないな、とぼくがコールを切ろうとしたところで、どこからか、小さく電子音が聞こえてきた。

コールを続けたまま、音の聞こえる方へ向かうと、そこには開けっぱなしの裏口。

音はその向こうにある、階段の上から聞こえてくる。

 

 

「摩利さん、上にいるみたいだよ?」

 

「この上は……確か生徒会室ね」

 

 

校内図が全て頭に入っているという愛梨によると、この上は生徒会室らしい。

風紀委員会の本部と生徒会室が繋がっているってことは、たぶん、頻繁に出入りする必要があるからなのだろうから、風紀委員長の摩利さんが、この上にいてもなんら不思議ではない。

 

 

「こっちから行っちゃおうか」

 

「勝手に入っても大丈夫かしら?」

 

「大丈夫だよ、ぼく、生徒会長の真由美さんと仲好しだから」

 

「……貴女の交友関係ってどうなっているのかしら」

 

 

何やら戦慄したような顔をしている愛梨だけど、結局上に行くことにしたようで、ぼくの後ろをついてくる。ぼくとしては、愛梨の後ろから階段を上って、階段を上る愛梨を眺めていたかったのだけど。

 

 

「失礼します……って……えっ、何事?」

 

 

階段を上った先の生徒会室は何やらピリピリとしていて、険悪な雰囲気だった。

 

 

「ん?美月じゃないか。どうしたんだ?」

 

 

この険悪な雰囲気の中でもいつも通りの摩利さんが不思議そうに聞いてくる。

 

 

「どうしたって……友達が風紀委員会の本部に行くって言うから着いてきたんですけど、部屋に誰もいなかったから」

 

「あっ、しまった……今日だったか。色々あってすっかり……」

 

 

忙しいとか、そういうわけではなく、単に忘れていたらしい。摩利さん、しっかりしてそうでそういうところがあるんだよね。

 

 

「すまなかったな、君が教員会推薦の?」

 

「はい、一色愛梨と申します」

 

 

この部屋には、生徒会役員が全員揃っていて、何故か達也も深雪もいる。聞きに行きたいけど、深雪がプイッとぼくから顔を反らすし、達也はなんでか、はんぞーくんと睨み合っている。えっ、本当に何があったの?

 

 

「みーちゃん!遅くなったけど入学おめでとう!」

 

 

ぼくの手を両手で握ってぶんぶん振る真由美さん、マジ天使。この笑顔、永久保存です。

 

 

「さあ、みーちゃん、こっち来て。あーちゃんもよ」

 

真由美さんに手を引かれて、ちっちゃくて可愛い小動物のような美少女の横に連れていかれた。ん、これはこの娘を好きにして良いってことなのかな?

 

 

「ふふ、私の野望がついに!ほら、もっとくっついて!」

 

 

何故か並べられたぼくと、「あーちゃん」と呼ばれた先輩?は、言われるがままにくっついた。

ぎゅっと抱き締めてみると、何故かあーちゃん先輩が落ち込んでいたけど、どうしたんだろ?まあ、ぼくは美少女とくっつけて最高でした。

 

 

「会長、盛り上がっているところ申し訳ないのですが、第三演習室を使える時間は決まってますから、また後にしてください」

 

 

うっとりしていた真由美さんに、そう横槍を入れたのは、背の高いクールな美人さん。

 

 

「ん、それもそうね。また後で楽しむことにしましょう」

 

 

どうやら、時間が押しているらしいが、ぼくはまだ目的を達していない。

ぼくは、愛梨を風紀委員会に入らせないために、ここまで来たのだ。

 

 

「摩利さん!ぼくは愛梨が風紀委員に入るなんて反対ですよ!」

 

「なんだ突然、あたしは別に強制していないし、入るのは本人の意思だ。あたしに言われても困るぞ」

 

「だって本人がやるってきかないから!」

 

「……なら別に問題ないだろ」

 

 

問題しかない!

愛梨を風紀委員会なんて危なそうなところには入れさせたくない!あんな男ばかりのところに、こんなに可愛い愛梨がいたら、どうなるか分かったものではない。

 

愛梨は摩利さんと違って繊細なんだい!

 

 

「おい美月声に出てるぞ!誰が繊細じゃないだと!」

 

「いたっ、いたたた!?ごめ、ごめんなさい!?」

 

 

摩利さんに頭を掴まれて、ギリギリと締め付けられる。痛い!痛い!美月さんの頭が!ただでさえちょっとおかしいのに、もっと馬鹿になっちゃう!

 

 

「美月、お前、なんで会長や渡辺先輩と……」

 

しばらくして、やっと解放されたぼくに、達也が困惑気味に聞いてきた。

そういえば、達也には二人との交友関係を言っていなかったんだった。

 

 

「そういう達也こそ、なんでここに?」

 

「彼はあたしが風紀委員にスカウトした」

 

 

どうやら達也は昼休み、深雪が生徒会に入るついでに、摩利さんから風紀委員の勧誘を受けたらしい。

それで放課後、改めて、生徒会室へやって来てみれば、副会長のはんぞーくんが、達也の風紀委員入りに猛反対。

雌雄を決するべく、模擬戦をすることになったようだ。

何それ、面白い。

 

 

「そういうわけだから美月、一色の風紀委員云々はまた後にしてくれ」

 

「渡辺先輩もこう言っていることですし、私は風紀委員に入ることを止める気はないわよ?美月が何と言おうと、私は自分で決めたことを曲げるつもりはないもの」

 

 

むむ、愛梨がここまで頑固だなんて。

これじゃあ、どうしたって愛梨の風紀委員入りを阻止するのは無理……あっ。

 

 

 

 

「じゃあ、ぼくも風紀委員に入る!」

 

 

そうだよ、なんで思い付かなかったんだ!ぼくが一緒に入って、愛梨を守れば良いんだ!そうすれば、放課後は愛梨とずっと一緒にいられるし、一石二鳥だ。

 

 

「駄目よ!みーちゃんが風紀委員だなんて!危ないでしょ!」

 

 

ところが、ぼくを隠すように抱き締める真由美さんによって否定されてしまう。

柔らかい。この柔らかい感触に包まれていると、もうどうでも良いかな、と思ってしまうが、今日ばかりはそういうわけにもいかない。

 

 

「大丈夫ですよ、ぼく意外とやりますから!」

 

「駄目!何かあったらどうするの!」

 

「そうならないために、ぼくが愛梨を守らないと!」

 

「そしたら今度はみーちゃんが、危ないでしょ!」

 

 

このままじゃ埒が明かない。

何か、真由美さんを納得させられる手は……そうだ!

 

 

「摩利さん!ぼくと模擬戦をしましょう!それで実力を証明してみせます!」

 

「ほぉ?」

 

 

ぼくの宣言に、摩利さんが好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「中条、あたしと美月の模擬戦を追加してくれ」

 

「ちょっと摩利!?」

 

 

あーちゃん先輩に指示した摩利さんに、真由美さんが驚いた声を上げれば、摩利さんが片目をつぶって一言。

 

 

「あたしが負けるとでも?」

 

 

その一言に、真由美さんは押し黙った。

二人の信頼関係、お互いの実力を把握しているからなのだろう。

 

 

「美月、あたしが勝ったら大人しく諦めろ。ま、もし勝てたなら真由美の説得でもなんでもしてやる」

 

「良いですよ、じゃあ、ぼくが勝ったら摩利さんは今後、語尾に「にゃん」をつけてくださいね」

 

「ふっ、ああ、なんなら猫耳も尻尾もつけてやろう」

 

 

 

こうして、ぼくは摩利さんと模擬戦をすることになったのだった。

 

 

 

ネコ摩利さんのために、負けるわけにはいかないね!




――そのころの深雪さん――


(;・ω・)深雪「(あれ、美月?)」


o( ̄ ^  ̄ o) プィッ!深雪「(またあの娘と一緒にいる……)」


( ̄⊿ ̄)深雪「(あの娘のためにここまで?……ふーん)」


(●`ω´●)深雪「(会長とも渡辺先輩とも仲良さそう……私のこと好きとか、愛してるとか言ってたくせに……)」






(。 >﹏<。)深雪「(もう美月なんて負けちゃえ!)」

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