美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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投稿が久しぶり過ぎて、予約投稿のシステムに戸惑うという。

言い訳すると、別のやつ書いてました……。


第四十七話 輝夜

「美月、色々言いたいことはあるが、とりあえず、お前に風紀委員は無理だ」

 

「なんでさ」

 

 

生徒会長印の捺された許可証――こういう物は未だに紙が使われている――と引き換えにCADのケースを受け取ってすぐに、達也が言う。

 

 

「風紀委員は放課後の活動が主なんだぞ?」

 

「それが?」

 

「お前、放課後の時間を削って、仕事は大丈夫なのか?」

 

 

わ、忘れてたぁぁあああー!?

それはまずいよ!今でさえ、びっしりとスケジュールが組まれていて、今日もサボってるから、かなりヤバイのに、今後、風紀委員会で放課後の時間を使うことになったりしたら……死ねる。

 

 

「う、そ、そんなの達也だってそうじゃん!」

 

 

でもそれは達也も同じはず!

達也の仕事のスケジュールは把握していないけど、何度か手伝わされた感じ、かなりキツそうなんだけど。フォア・リーブス・テクノロジーの仕事以外にも、別の仕事があるようで、正直、ぼくより忙しそうだ。

 

 

 

「……だから、やりたくはなかった」

 

 

そういえば達也は立候補したんじゃなくて、摩利さんに捕まったんだった。

 

 

「申し訳ありません……」

 

「ああ、いや、お前が謝ることじゃないさ」

 

 

何故、深雪が謝るのかは分からないけど、取り合えずそのポジションを代われ!ぼくにも深雪をなでなでさせろ!

深雪から完全無視だからね、ぼく……。泣きそう。

 

 

「とにかく!ぼくは風紀委員やるからね!達也に出来ることがぼくにできないわけがないんだ!」

 

「……どこから来てるんだ、その自信は」

 

 

やりたくない、とは言いつつ、最終的にはんぞーくんと模擬戦をすることした、ということは、風紀委員になってもやれる、と達也が判断したと言うことだ。

どういう流れで、この状況になったのかイマイチ分かっていないけど、達也は出来ないことを引き受ける人間じゃない。

達也が勝てると思ったからはんぞーくんと模擬戦をすることにしたのだろうし、勝った後、「勝ったけど風紀委員にはならない」なんてこと言えるわけないから、達也が、仕事をしながらでも風紀委員をやれる、と思っているのは間違いない。

 

なら、ぼくにもできる!

できなくてもやる!

 

愛梨はぼくが守る!

 

 

「知らんぞ、どうなっても」

 

 

達也は、最後にそう忠告して演習室の扉を開いた。

 

 

 

 

 

「……勝者、司波達也」

 

達也とはんぞーくんの試合は、ほんの数秒で幕を閉じた。一瞬、と言っても良い。

摩利さんから、はんぞーくんは一高でも五本の指に入る遣い手で一対一で勝てる人はほとんどいない、と聞いていたからちょっと期待してたのに、やっぱり達也があっさりと勝ってしまった。

 

 

「よくもそんな精密な演算が出来るものだと、感心を通り越して、呆れてしまいますが……」

 

 

達也がどのようにして、はんぞーくんを気絶させたのか、気絶したままのはんぞーくんを放置したまま――はんぞーくんの不憫さに泣いた。ぼくも放置したけど――議論がなされ、達也が瞬間移動に近い速さで、はんぞーくんに迫り、CADを向けて気絶させた、という一連の流れで、『瞬間移動に近い速さでの移動』は、深雪の証言もあって、九重八雲直伝の体術、ということで解決した。でも、達也がはんぞーくんを気絶させた魔法が分からず、皆の頭を悩ませていたのだけど、どうやらクールビューティー先輩が答えを見つけたようである。

 

 

「振動数の異なるサイオン波を三連続で作り出し、三つの波がちょうど服部君と重なる位置で合成されるように調整して、三角波のような強い波動を作り出したのですね」

 

「お見事です、市原先輩」

 

 

どうやらあのクールビューティー先輩は市原先輩と言うらしい。

達也が使った魔法はどうでも良いけど、この情報はありがたい。

 

 

「待ってください、三つのサイオン波で、強い波動を作り出し、服部先輩を気絶させた、そこまでは分かるのですが……では、あの短時間にどうやって振動魔法を三回も発動できたんですか?」

 

「確かに。それだけの処理速度があれば、実技の評価が低いはずがありません」

 

 

愛梨の疑問に便乗する形で、達也を『成績が悪い』とディスる市原先輩。

市原先輩の毒舌に、苦笑いの達也だけど、その横にひょっこりとあーちゃん先輩が現れた。

 

 

「あの、もしかして、司波くんのCADはシルバー・ホーンじゃありませんか?」

 

「シルバー・ホーン? シルバーって、あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」

 

 

 真由美さんに聞かれて、表情がパッと明るくなったあーちゃん先輩は大変可愛らしいのだけど、どうやらあーちゃん先輩は所謂デバイスオタクであったらしく、怒濤の勢いで話始めた。

 

若干引き気味の皆だけど、そのおかげで疑問は解消された。

 

 

「いかにループ・キャストに最適化された高性能CADとはいえ、ループ・キャストはあくまでも、全く同一の魔法を連続発動する為のもの。

同じ振動魔法といえども、波長や振動数が変われば、起動式も微妙に異なります。

勿論、その部分を変数にしておけば同じ起動式を使えますが、座標・強度・持続時間に加えて、振動数や波長まで変数化するとなると……まさか、それを実行しているというのですか!?」

 

「多変数化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても評価されない項目ですからね、実技の評価が低いのとは無関係ですよ」

 

 

つまり達也は、全く同一の魔法を連続発動するループ・キャストというシステムに最適化されたCADを使い、相変わらずのチートで無理矢理可能にした、というわけだ。

 

 

「なるほど、テストが本当の能力を示していないとはこういうことか……」

 

「ん?ああ、そういえば服部が気絶したままだったか」

 

 

呻き声を上げながら半身を起こしたはんぞーくん。

自分以外全員美少女の超ハーレム生徒会に所属しているわけだから、羨ましいはずなんだけど……なんだろう、涙が出てきそうだよ。摩利さん、もうちょっと優しくしてあげても良いんじゃないでしょうか。

 

「はんぞーくん、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です!」

 

 

「そうか、じゃあ、審判を頼むぞ。美月、準備しろ」

 

 

真由美さんに声をかけられて、慌てて立ち上がったはんぞーくんの肩を叩きながら、摩利さんが告げる。

この人、鬼か何かなのかな……。流石の真由美さんも苦笑いしているし。

 

 

「ふふ、美月の実力、試させてもらおうか」

 

 

好戦的な笑みを浮かべながら、手首のブレスレット型CADを弄っている摩利さんはどう見ても戦闘狂。

模擬戦挑む相手間違えたかもしれないと、ちょっと後悔。

 

 

「さっきのルールだと、武器の使用は禁止ってことでしたけど、CADって武装一体型でも大丈夫ですか?ぼく、今日、これしか持ってきてなくて」

 

 

直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる術式・回復不能な障害を与える術式・相手の肉体を直接損壊する術式は禁止。

但し、捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃はオッケーで、武器の使用は禁止だけど素手による攻撃はアリ。

 

勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。

 

 

「構わんぞ」

 

 

ぼくの覚えてた限り、武器の使用は禁止されていたけど、あっさりとオッケーが出た。

 

 

「じゃあ、ぼくだけ武器アリっていうのも卑怯だし、摩利さんも()()使ってよ」

 

 

ぼくは、摩利さんに木刀を投げ渡す。

前に摩利さんが剣術道場に通っていることは聞いていたから、武器を渡すなら木刀だと思ったのだ。

 

 

 

「こんなもの、どこに持っていたんだ?」

 

「乙女の秘密ですよ、摩利さんが勝てたら教えてあげます」

 

「ほお、面白い」

 

 

うん、ちょっと挑発し過ぎたかもしれない。

木刀をブンブン振ってやる気満々なんですけど……。

 

でも、ここまできたらやるしかない!

 

ぼくは、開き直って摩利さんと戦う決意を新たにして、CADの入ったアタッシュケースを開けた。

 

入ってるのは、黄金の剣。

 

 

「ま、まさかそれは!?その黄金の塗装、刀身に刻まれたエンブレム!そのCADは!」

 

 

ふらふらーっと、吸い寄せられるように歩いてきたあーちゃん先輩の目は、ぼくのCADに釘付け。

まあ、デバイスオタクのあーちゃん先輩にはすぐ分かったのかな。未亜ちゃんも知っていたし、いくらデバイスオタクのあーちゃん先輩とはいえ、こんな、完全趣味で作った()()のCADでも、気がつかれる、ということは多少は名が売れているようだ。

 

 

「セレネ・ゴールドのCADでは!?」

 

 

興奮した様子で詰め寄ってくるあーちゃん先輩をよしよししながら、ぼくは何となくCADを掲げて言ってみる。

 

 

「そう、これはセレネ・ゴールドの武装一体型CADにして、刀剣型CAD、その名も――『輝夜(かぐや)』だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美月、恥ずかしくないの?」

 

「ぼくのことは無視する方針じゃなかったんですか、深雪さん!?」

 

 

 

なんとなくのテンションでやっちゃったけど、もう二度とやらないと決めた。

何なの、そのニヤニヤとした顔は!皆さん、その生ぬるい目で見守るの止めてもらえませんか!?

 

 

「すごい!まさか本物をこの目で見られるなんて!」

 

 

一人、目を輝かせているあーちゃん先輩だけが、ぼくの救いだった。

 

とりあえず、この試合終わったら、お持ち帰りですね。

 

 




――そのころの三人娘――


(;゜Д゜)!!愛梨「(二年生の先輩相手に瞬殺……ッ!)」

( ☆∀☆)愛梨「(か、かっこいい!勝って尚クールなところが最高にかっこいい!)」



(///ω///)♪深雪「(私のために、戦ってくれるお兄様……私の!私のために!)」

O(≧∇≦)O深雪「(当然だけどお兄様の勝利ね!ああ、なんて凛々しいお姿!さあ、見なさい!これが私のお兄様よ!)」



(;・ω・)美月「(うわー、瞬殺とかつまらない奴……)」

(´Д`)美月「(初見殺しでドヤ顔とかマジないわー)」




報われない達也さんであった。


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