美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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ぼくからのお年玉ということで、投稿!
今年もよろしくお願いします!


第六十話 美月の守護者2

達也によると、彼女は元々USNAの魔法師だったんだけど、今回の騒動で、USNAから切り捨てられてしまい、そこを真夜さんが保護してあげたらしい。

日本の戸籍を新しく作って、就職先としてぼくのガーディアンをさせることにしたのだとか。真夜さん優しい。

他にも何か色々達也が言っていたけど、適当に聞き流していたから知らない。別にぼくが知らなくても達也が知っていれば問題ないからね。

 

 

「じゃあ俺は帰るが、本当にリーナは今日から住んで大丈夫なのか?別に無理しなくてもホテルを取るぞ?」

 

「うん、部屋余ってるからちょっと掃除すれば全然使えるし」

 

 

そうしてぼくは、達也が帰った後、リーナ(アンジェリーナだからリーナと呼ぶことになった)と、水波ちゃんとの三人で、今後のことを話し合った後、空き部屋の掃除を行うことになった。

ぼくの家には元々子供部屋が二つあって、一つはぼくの部屋なのだけど、もう一つの部屋は特に何も使い道がなくて、今ではぼくの絵が置かれているだけの物置部屋と化していたからここにリーナを住まわせることにしたのだ。

リーナには、主人とはいえ、堅苦しいのは嫌だから、友達の様に接して欲しい、と頼んでおいたので、掃除は終始和やかなムードで進んだ。水波ちゃんの毒舌にリーナがやられて、それをぼくが慰める、といった感じでね。掃除自体は簡単で、部屋には絵くらいしか置いていなかったから、それほど荷物はないし、1時間もしないで終わったのだけど、その1時間の間にぼくは気がついてしまったことがある。

 

 

「もしかしたら、ぼくの勘違いかもしれないんだけど……リーナって、結構残念な娘?」

 

「はい、無駄に容姿が良い分、際立って残念な感じに仕上がっています」

 

「ワタシ怒るわよ!?」

 

 

怒ると言いつつ、もう涙目で、感情が素直に表に出てしまうタイプなのだろう。可愛い過ぎると思ってしまうぼくは悪くない。

 

 

「まあ、フォローするわけではありませんが、これでも魔法に関しては天才と言う他ありませんね。四葉の戦闘訓練でもそこだけは(・・・・・)オールS評価でしたから」

 

「そこだけは、を強調しないでよ!」

 

「え、実際そこだけでしたよね?他に何か出来ましたっけ?魔法だけのリーナさん」

 

「もう止めたげて!?リーナもうマジ泣き一歩手前だから!」

 

 

ぼくがリーナを庇うように前に出ると、半泣きのリーナがぼくの後ろから顔だけを出して水波ちゃんを睨んだ。うん、主人を盾にするという暴挙だけど、半泣きリーナが可愛いから許す!むしろぼくが守る!

 

 

「ミナミは嫉妬しているのよ!ワタシがミヅキのガーディアンになって自分はなれなかったからって!」

 

「何を勘違いしているんですか!?そんなわけないじゃないですか!」

 

「ほら、そうやってムキになってるもの!素直になれないからってワタシに当たっているんだわ!」

 

 

ぼくという盾を得て強気になったリーナが反撃に出ると、予想以上に慌てた様子で顔を赤くする水波ちゃん。あれ?あれれー?もしかして水波ちゃん、ただのツンデレだった?素直になれない妹的な感じなのかな!?

 

 

「ニ、ニヤニヤしないでください!本当に私は嫉妬なんてしてませんからね!?」

 

「ワタシ、知ってるんだから!ミナミが、研修終わったらミヅキのガーディアンをやりたいって四葉真夜に頼んでたの!」

 

「な!?な、ななな何のことでしょうか!?そんなデタラメを言うのは止めてもらえますか!?」

 

狼狽する水波ちゃんに、好機と思ったのか、怒濤の勢いで攻め立てるリーナに、もう湯気が出そうなくらい真っ赤になった顔のまま、ぼくの背後にいるリーナを捕まえようとする水波ちゃん。

 

 

「じゃあ水波ちゃん、直接真夜さんに聞いてみようか♪」

 

「ちょ、止めてください!大体なんで奥様のプライベートナンバーなんて知っているんですか!?」

 

「普通に教えてもらいましたー」

 

 

ぴょんぴょん跳び跳ねて、ぼくが上に上げている携帯端末を奪おうとする水波ちゃんが涙目で可愛い。

こうしている間にも、携帯端末はプルプルプルと呼び出しを続けており――

 

 

「あっ、真夜さん?すみません、急に」

 

 

――2コールもしない内に真夜さんが電話に出て、リーナが水波ちゃんを羽交い締めにして封じた。さっきまで水波ちゃんにやられていた癖に攻勢になった瞬間、これである。こんなに調子に乗って後で痛い目をみないといいのだけど。

 

 

「ほらミナミ、大人しくしてなさい」

 

「は、離してください!」

『……後ろから水波ちゃんの切羽詰まった声が聞こえてくるのだけど大丈夫なのかしら?』

 

「リーナとじゃれてるだけなので大丈夫ですよ!」

 

『そ、そう?』

 

 

もはや悲鳴に近い水波ちゃんの声に戸惑った様子の真夜さんだけど、全然問題ないので、オールオッケー。

 

 

「あの、聞きたいことがあって、水波ちゃんがぼくのガーディアンをやりたい的なことを言っていたそうなんですけど、本当ですか?」

 

 

『ええ、でもまだ研修が終わっていなかったから、先に(・・)アンジェリーナさんを付けることにしたの。メイドとしての能力はともかく、魔法技能も経験も、世界的に見てもそうそういないレベルですしね』

 

「ん?先に、ってどういうことです?」

 

 

()?それってつまり、普通に考えたら、リーナの()に誰かが来るということで。現状考えられるのは一人しかおらず――

 

 

『――研修が終わり次第、水波ちゃんは美月さんのガーディアンとして付けることにしたの。アンジェリーナさんは技能と経験はあっても、ガーディアンとしての教育は受けていないから、水波ちゃんと二人で組ませることでお互いの足りない部分を補い合えると思ったのよ』

 

「本当ですか!?」

 

 

さっきまでなんとかリーナから逃れようと、ジタバタしていたのが一転。信じられないとばかりにぼくの携帯端末に向かって叫ぶ。

 

 

「あれー、水波ちゃん、達也からぼくの話をされたときは嫌な顔をしていたらしいけど……ツンデレなのかな?ほら、遠慮しないでぼくに甘えて良いんだよ?お姉さんはいつでも大歓迎なんだから」

 

「う、うううう!もう知りません!」

 

 

ぼくが頭をなでなでしていると、沸騰しているんじゃないかというぐらいに真っ赤にした顔で、涙を堪えてプルプルしていた水波ちゃんがついに爆発し、家から出ていってしまった。

 

 

「あーあ、怒らせちゃった」

 

「なんで他人事なの!?」

 

 

ぼくのせい、みたいな目で見てくるけどリーナも共犯だからね!?嬉々として水波ちゃんのこと羽交い締めにしてたじゃん!

というか、そもそもリーナが暴露したことから全てが始まっているからね!?むしろ主犯はリーナだよ!

 

 

「ミヅキ、どうするの?」

 

「土下座してくる!」

 

 

ぼくは、それだけ言って、すぐに出ていった水波ちゃんを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……もう切ってもいいのかしら』

 

 

――真夜さんを放置したまま。




――その後の真夜さん――


(; ̄Д ̄)? 真夜「切っていいのよね?」


(゜-゜)ジー 真夜「…………」


(;´Д`) 真夜「本当に切っちゃうわよ?」


(。 >﹏<。) 真夜「本当の本当に切っちゃうわよ!?」





(つд;*)グスッ 真夜「……寂しい」


放置され、拗ねてしまった真夜さんであった。

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