【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い 作:ユウジン
「つまり偶々通ったらなにか面白そうだったから覗いただけってこと?」
「そ、そなります……」
一誠は現在駒王学園の旧校舎オカルト研究部教室にいた。
そして凄く居心地が悪い。まあ当たり前のことながら警戒されてるからだ。
さてケンタウロス(雌)をぶっ飛ばした次の日……一誠はリアス先輩から呼び出しを喰らった。正確には昨夜気を失ったあとレイナーレに自室に運ばれ目を覚ましたあと学校に登校……さっさと帰ろうとしたがその前に木場に捕縛され連れていかれたのだ。
だがオカルト研究部は木場を除いて全員綺麗だったり可愛い女子だ。その系統の女子は見慣れてるが女子の巣窟と言うのはあまり好きじゃない。
「そう……じゃあ何で貴方は堕天使と一緒にいたの?」
「殺されそうになったんで返り討ちにして一緒に住んでるだけです」
「ちょ、ちょっと待って……何がどうなったら最後の一緒に住んでるに繋がるの?」
「色々ありまして」
どんな色々があったら一緒に住んでるのかと聞きたかったリアス先輩率いるオカルト研究部のメンバーだったがそれは飲み込んだ。
「じゃあ……貴方は何者なの?」
そう聞かれた一誠は姫島先輩が淹れた紅茶を飲む。
「美味しいですね」
「あら、ありがとう」
ウフフと姫島先輩は返した。だが本当に上手だ。茶葉の蒸らしも淹れるお湯の温度も完璧……これなら母さんが相手でも問題はないな。
「それで質問の返事ですが……俺は人間です。少し頑丈で少し強いだけのね」
「本当に?」
リアス先輩は疑い深く見てくる。
「いや、堕天使だってすぐに見抜いたんですからわかりません?」
「確かに魔力とかはないみたいだけどね……あんなのを見たら人間とは思えないわ」
「えぇ~」
「それに上級の堕天使とか天使、悪魔は自分で正体を隠せるしね。貴方はそうじゃないの?」
「東京浅草生まれの純粋な人間です」
いや、親達がハチャメチャな超人なのでそれを受け継いでしまったため今のように少しばかり人間離れしてますけどね……
「……分かったわ。なら何で堕天使はあなたを殺そうと?」
「
そう言って一誠は出して見せる。
「
「そうらしいですね」
仕舞いつつ一誠はリアス先輩を見た。
「そろそろ行って良いですか?レイナーレが腹を空かせるんで」
「……貴方は今の状況をなんとも思わないの?」
「……何がですか?」
一誠は首をかしげたがリアス先輩はため息を吐く。
「貴方は自分を殺そうとした者と一緒にいるのよ?それがどれだけ異様に見えるか……しかも堕天使が最近怪しい動きを見せてるわ。時期から考えても彼女も一枚噛んでる可能性が高い……自称でも真実でも貴方が人間だというなら今すぐ彼女から逃げ「北郷家 家訓 第2項」……え?」
突然の一誠の呟きにリアス先輩だけじゃなく他の面子も一誠を注目する。
「【同じ釜の飯を食えば例えどんなやつでも家族だ】ってね。それにリアス先輩。俺だって馬鹿じゃないんでレイナーレが何か企んでたことくらい薄々気付いてますよ。そこまで鈍くない」
でもね……一誠は続けた。
「俺はレイナーレをもう家族だと思ってる」
そう言いきった。近付かれれば変な汗とか出るけれど……触られれば気絶しちゃうけど……それでも家族だと思っているのは本心だった。
「例え最初に敵意を持たれようが戦ったあとは関係ない。そんな矮小な出来事に一々神経は割きたくない。そんな小さいこと気にするなら今夜の夕食の献立を考える方が有意義です」
一誠にとって向けられる悪意も敵意も殺意も……所詮は相手の考えの一部にしか過ぎないことだ。そんな負の感情向けられたという事実も一誠にとってはノミより小さな出来事であるだけだった……
「俺はレイナーレを何があろうと助けようと思います」
そう言って一誠は立ち上がった。
「そう……ならなにも言わないわ」
何を言っても無駄なのを悟ったリアス先輩は一誠に一枚の紙を渡した。
「これは?」
「簡易魔方陣よ。どうせ何を言っても無駄みたいだから何かあったときはこれを持って私たちの誰でも良いから頭に強く浮かべなさい。そうしたら助けにいくわ」
「ありがとうございます」
礼を言って一誠は外に出た……
少し日が落ち始める中一誠はゆっくりとした足取りで家路に向かう。
(さて今夜何するかな……)
昨日は肉だったし今夜は魚かな……等と思いながら歩いていると公園の中で右往左往する少女が居た……見た感じ外国人だ。綺麗な金髪……一瞬産みの母親が思い出されたがそれは思考の外においた。
「《大丈夫か?》」
英語で話しかけると少女はパァッと顔を輝かせた。
「《英語が話せるんですか?》」
英語どころか有名な国の言語は最低でも日常会話位なら出来る。英語だったらフランクにジョークも交えながら出来る。しないけどな……
「《まあな、それでどうかしたのか?》」
「《はい、私見ての通りシスターなのですが……教会の場所が分からなくなって……》」
それを聞いて一誠は確か町外れに教会があったはずだと思い至る。
「《なら場所がわかるぞ》」
「《え?そうなんですか!?》」
「《ああ、ついてこいよ》」
「《ありがとうございます!あ、私はアーシア・アルジェントと申します》」
「《北郷 一誠だ》」
お互い自己紹介を済ませながら歩き出した……道中は特になにもなく普通に送り届けてお茶でもどうかとアーシアに誘われたが夕飯の準備も考え一誠は丁重に断った一幕はあったがそれは別に良いことだろう。
「あいつ遅いわね……」
レイナーレはリビングでテレビを見ながら腹を鳴らしていた……
「……まさかグレモリーに……いやないか」
何かされても返り討ちだろう……いやだがさわられたらアウトだ……だが下手に向かっても足手まといの可能性が高い……
「でもまさか人間にも負けるとはね……」
レイナーレは自嘲した。
自分は堕天使の中でも最下級の堕天使だ。どうしようもないほど弱く……あまつは人間にすら負けた。まああれは自称かもしれないが……
才能はなく……かといって頭が良いわけでもなく……文武において足手まといであり仲間からは嘲笑を受ける日々……今回の任務だって偶々や堕天使が居なかっただけだった。故に極秘利の計画があったのだが……それはどうなったのかは既に分からない……そんな時なのに今こんな時間をどこか楽しんでいる自分がいる……殺そうとした相手と共にいる……どうかしている……
「……はぁ!」
レイナーレは頭を降って立ち上がる。モヤモヤする。
「腹減るとろくな考えをしないわ」
そう言って調理台に向かう。帰りが遅いしこうなったら一誠が帰ってきたら度肝を抜いてやろう。そう思いレイナーレは包丁を握る。とは言えレイナーレに料理の経験は?あるはずがない。
「切って焼けばイケるわよね……」
そう言ってレイナーレは冷蔵庫の野菜室から野菜を出す……
「……てぇい!」
そして野菜を置くと己の力を乗せて野菜を文字通り叩き切る……乱暴すぎて野菜が飛び散るが気にしない。
「ふん!ふん!ふん!」
ダンダン包丁で野菜を切るというか粉にしていく。
「まあこんなもんでしょ……」
額の浮かんだ汗を脱ぐって……
「あいつも男だし肉を入れとけば喜ぶわよね」
そう言って肉を出すとさっきと同じようにやる……ダンダン包丁で叩くと切ったというよりミンチになっただけだったがレイナーレは気にしない。
「次は焼くのよね。さっきテレビで見たから分かるわ」
そう言ってフライパンを出すと強火でガンガン温める。そして油をバカみたいにたっぷり淹れると……
「もういいわよね」
そう言って切ったやつを全て入れた……だが、
「きゃあ!」
火柱が上がった。まあ当たり前である。
「こ、これがフランベってやつね!」
全然違う……フランベは本来酒を振り掛けて行うものであり油によって起きた火柱はフランベとは言わない。
「負けないわよ!」
そう言って火に負けず混ぜる……
「ウォオオオオオオオオ!!!」
だがその結果できたがったのは……真っ黒なナニかだった……少なくとも絶対に食い物ではない。
「可笑しいわ……一誠がやると美味しそうなもので出てくるのに私がやったら劇物になったわ……」
手に火傷をしてまで作ったのにこれでは別の意味で一誠の度肝を抜いてしまう。
「もう一度作って……――っ!」
レイナーレはベランダを見た。この気配はまさか……
(何であいつがここに!)
そう思いつつベランダに出るとそこには黒い羽を羽ばたかせて降りてきたのは三人組だ……
「何をしているレイナーレ」
「全くだ……探したぞ」
「何してるんすか?ちゃんと殺したんすか?」
ドーナシーク、カラワーナ、ミッテルト……この三人は今回の任務に上からつけられたものであり同時に計画を知るものたちだ。
「それは……」
言えない……口調的に恐らくミスはしられていない。ならば命を助けられた上に住まわせてもらってるなど言えるはずがなかった。
「色々あるのよ」
「その色々が料理家?」
ドーナシークが言うとレイナーレは固まった。そこから見られてたか……
「ど、毒でも盛れば一発でしょ」
「確かにこの鼻を貫く刺激臭……これだけ強烈であれば多少の毒の臭いも分からないだろうな」
余計なお世話である。
「まあいいっすけどね。あと、アーシア・アルジェントが来たんで計画進めるためにも急いでくださいっすよ」
そう言って三人は消えた……
「………………」
レイナーレは肩を落とす……進めていた計画……あの三人だって今回の任務上責任者である自分を大切に扱うが所詮はその程度である。あの三人のオーラからそれを感じ取れた。そのための計画だった。今回のが成功すれば自分は一気に認められるはずである。今まで自分を嘲笑した連中を見返せる……バカにした奴をバカにしかえせる……そう思って建てた筈なのに……何故かその計画が輝いて見えない。
嘲笑われるのに慣れてた筈なのに……何でかこの瞬間は泣きたくなるほど辛く感じた……何で?モヤモヤする。
「ただいま~」
「っ!」
慌ててレイナーレは部屋にはいる。
「ん?何か燃えた臭い?」
「あ、あんたがあんまり遅いから作ったのよ……失敗したけど……」
黒いナニかを一誠は見ると頬がひきつった。そりゃそうである。
「捨てるわね」
「いや待て」
そう言って一誠は一口食べた。
口を暴れまわる刺激……固いとも柔らかいとも言えない変な食感……これは悪い意味ですごい。
「ちょ、なにしてんのよ!」
「だってお前がはじめて作ってくれた料理だぜ?食わないともったいない」
そう言って一誠は一気に全部口に入れ……飲み込んだ。
「げふぅ……」
「ば、バカじゃないの!?」
レイナーレはそう言うが一誠は笑って言う。
「ご馳走さま。レイナーレ。味はあれだけどな」
そう言い残しそのままトイレに駆け込んだ。一気に腹を下したのである。
「………………」
それを見てレイナーレはポカンとする。
「…………ねぇ一誠」
「なんだ?」
「…………私ってなんだろうね」
行きなり意味の分からない質問だと思ったが一誠はあっけらかんと答える。
「ん?お前はレイナーレだろ?堕天使で……俺の家族だ」
「……家族?」
「同じ釜の飯を食ったら家族なんだよ」
「それも家訓?」
そう聞くと一誠は頷いた。
「そうか……」
レイナーレは笑った。モヤモヤした気持ちの正体がわかった気がした……自分は誰かに自分を見てほしかった。別に特別視じゃなくていい。ただ普通に自分達は仲間だろ?とか友達だ、家族だと言って欲しかっただけだったんだ……自分の居場所が欲しかったんだ……
「ありがとう……一誠……」
「レイナーレが素直……明日辺り飴でも降るのかな」
「雨じゃあなくて飴って言ってるのは分かってるわよ!そこまであり得ないってこと!!!」
レイナーレは怒りながらも笑う……だがこのときのレイナーレは知らなかった……この幸せを……この居場所を……自ら壊そうとすることなど……勿論一誠も知るよしもなかった……