「ったく、なんだってんだ一体。」
ワタシは思わず不平をこぼしてしまう。
ホームルームも終わりクラスメイト達がそれぞれ帰り支度や雑談をする中、どっかと椅子に腰かけて、これまでのことを振り返った。
入学式の日。校門でいきなり身体検査に引っ掛かってしまったワタシは、生徒会のメガネ女とデュエルすることになる。見事勝利するものの、その後校舎に入ったところで今度は教師に捕まり、こってりしぼられてしまった。
「まったくひでぇよな、先公ってよ。デュエル挑んでも受けてくれないんだぜ?それじゃあ抗議のしようがねえ。」
「ブレザー着れば良いだけなんじゃないかな・・・。」
「バッキャロ、ワタシの中にゃ熱いデュエリストの魂が煮えたぎってんだよ。ブレザーなんか着てたら蒸し焼きになっちまう。」
「えー・・・。」
ワタシの隣の席の女子、波川 凪沙が呆れ顔をする。濃いブルーのミディアムヘアに自然なウェーブがかかって、深海を思わせる落ち着きを纏った彼女は、ワタシとは正反対の性格だけど一緒にいると居心地の良さを感じた。何より凪沙はデュエリストだった。
「でも本当、私ビックリしたよ。朝学校に来たら門のところでいきなりデュエルしてる人がいて、しかもあの本間さんに勝っちゃうんだもん。」
凪沙はぽーっとした表情で目線を上げる。その時のことを思い出してるようだ。
あのメガネ女、本間っていうのか・・・。
いやいや、そんなことより凪沙に聞きたいことがあった。
「なあ、あのメガネ女って、勝てたらそんなに驚かれるような実力者なのか?」
「そっか、風華は舞網には引っ越してきたばかりだったよね。」
そう言うと、凪沙は立ち上がってベランダの方へ移動する。ワタシに見えるように指差しながら説明し始めた。
「あそこに大きなビルがあるでしょ?」
窓の外を見ると、舞網の市街の中でも一際高い建物があるのがわかる。
「あれはLDSっていうデュエル塾の建物なの。舞網で一番有名で、一番実績のあるところなんだ。」
「へえー、最大手ってやつか。」
「うん。それで、本間さんはそのLDSでもトップクラスのデュエリストなの。私は中学が同じなんだけど、その頃からすごい強くて有名だったんだ。だから、あの人に勝った風華は今ごろ、学校中で噂になってるんじゃないかな。」
凪沙はこっちを振り返ってにっこり笑う。
「それでか、あの時周りにいた奴らにデュエル申し込んでも誰一人受けてくれなかったのは。」
「みんな風華に勝てそうにないから逃げちゃったんだね。」
呆れたやつらだ。デュエリストが強い相手から逃げてどうする。
「あーあ、私も風華くらい強かったらなぁ。」
凪沙はもとの席に戻ると、カバンからデッキケースを取りだして大事そうに撫でた。
「私も一応LDSに通ってるんだ。全然強くないから、下の方のクラスなんだけどね。」
「凪沙はどうしてデュエルを始めたんだ?」
「私?小さいころ、テレビでエンタメデュエルの人を見たのがきっかけだったなぁ。」
その言葉にワタシは思わず身を乗り出してしまう。
「それって榊遊勝のことか?」
「うん!」
「そうか、凪沙もか。ワタシも実はそうなんだ。昔テレビで榊遊勝のデュエルを見てさ、こうビビっと来たって言うか、ズキューンと来たって言うか。」
何それ、とワタシの話にくすくすと凪沙は笑った。自分でも馬鹿な話し方だとは思うが、彼に憧れたあの日々を思い出すと言葉が止まらなかった。
「それでさ、アクションカードを取るのに空中を移動するときとかさ、こうくるっと回ったりして・・・」
ワタシは席を立って、榊遊勝の真似をしていた。魔術師のモンスターと共に華麗な身のこなしを魅せるエンターテイナーがやっていたように、人の少なくなった教室を駆け回る。
「アハハ、本当に好きなんだね、風華。」
「べっ、別にそんなんじゃねーよ。・・・ただ、スゲーなって思ったからさ。」
ワタシは立ち止まって凪沙の方に向き直る。実際、幼心に見たエンタメデュエリストには当時の自分は惚れ込んでいたが、それはきっと純粋な憧れだったと思う。
「人を笑顔にさせるデュエルってスゲーってさ。ワタシもあんなふうになりたいって。でも、今のワタシじゃまだそういうデュエルなんてできない。だから、まずは自分が笑顔になれるデュエルを心がけようって思ったんだ。」
ワタシが言うと、凪沙は臆面もなく素直に口にした。
「できてるよ。私、風華のデュエル見て思ったよ、すごい楽しそうだって。」
この街で初めて出来た友達に言われ、ワタシは少し顔が紅くなるのを感じた。
「凪沙・・・。じ、じゃあ次は他人を笑顔にさせるデュエルをしなきゃな。まずは凪沙、お前からだ。」
「えっ、私!?」
「そうさ。お前さっき、ワタシが校門でデュエル申し込んだ時他のやつらと一緒に逃げただろ?」
「うっ、それは・・・。」
図星だった。凪沙も今朝、風華のデュエルを見ていたなら、その後立ち去ったということになる。
「ダメだぜ、榊遊勝に憧れたデュエリストが勝負から逃げちゃあよ。」
「でっ、でも私が風華とデュエルしても勝てっこないし。」
「バッキャロ。デュエルは勝ち負けつけるためだけにやるんじゃねえ。勝負を楽しむためにだってやれるんだ。」
ワタシはカバンを掴むと、教室の出口に向かって歩き出した。早く凪沙とデュエルしてみたい。その思いがワタシを急かす。
「ほら、早く行こうぜ。」
ワタシは凪沙に呼び掛けると後ろを見ずに教室から出た。だが、それがいけなかった。
教室を出た直後、ドンッという感触があると、ワタシはよろめいて壁に激突してしまう。同時に後ろで小さく声が漏れるのが聞こえた。どうやら誰かにぶつかってしまったらしい。
「わ、悪い。大丈夫か?」
言いながら振り返ると、やはり女子が一人膝を重ね床に座り込んでいた。ワタシはすぐに駆け寄って近くにしゃがみ、その子の顔をのぞきこむ。
「立てそうか?無理なら手、かすぜ。」
「大丈夫よ、一人で立てる。」
少女は言うと立ち上がったので、ワタシもそれに続く。そこで、立ち上がったことでその容貌をしっかりと眼にすることができたのだが、彼女の姿にワタシは思いがけずドキッとしてしまう。
大きな瞳でワタシをじっと見つめる彼女。背中辺りまである綺麗な黒髪は窓から吹く風にふわりとなびき、眉の下で揃えられた前髪が可愛さを増している。目つきは優しすぎるわけではないが決してキツくなく不思議な憂いを秘め、うっすらと色づいた唇が微かに色気を放った。
というか、めちゃくちゃこっちを見てくる。さっきから、一瞬たりとも目をそらすことなく凝視してくる。おかげでワタシも彼女をよく見ることになったのだが、あまり見つめられると照れてしまう。
「なっ、なんだ?悪かったよ、気を付けるから。あんまじろじろ見ないでくれよ。」
「・・・。」
尚も無言のままワタシを見続ける彼女だったが、ついにその表情に変化がみられた。
涙。少し紅くなったその頬を一粒の涙が伝う。
泣いた!いや、泣かせちまった!ワタシは慌ててあたふたしてしまう。
「ええ!?おっ、おい泣かないでくれよ。やっぱどっか痛いのか?だったら保健室連れてってやるから・・・」
「ち、違う。何でもない、大丈夫だからっ。」
彼女は涙をぬぐうと、落ちていた荷物を掴み駆け出して行ってしまった。追いかけることができず、ワタシは呆気にとられて立ち尽くしてしまう。
何だったんだ今のは、とワタシが考えていると後ろから凪沙の声がした。
「今の、星美さん・・・?」
「凪沙。知ってんのかあいつのこと?」
帰る準備の出来た凪沙は荷物を持ってワタシの後ろに立っていた。うん、と言いながら歩き出す凪沙に並んでワタシ達は帰路につく。
「星美 真夜。同じ中学の子で、デュエリストだよ。」
「へえ、あいつもか。」
良いことを聞いた、とワタシは内心つぶやいた。今度デュエルを申し込んでみよう。
「でも珍しい、あの子が人と話してるとこほとんど見たことなかったから。」
「あん?どういうこった。」
ワタシがそう言うと、凪沙は少し表情を曇らせる。
「一緒の学校になったのは中学からだけど、星美さん、小学校からずっと友達いないみたいだから。」
「なんだ、凪沙がなってやりゃあいいじゃねえか。」
「それが星美さん自身が人を全く相手にしなくて。私も散々につっぱねられちゃった。」
「ふーん、なるほどね。」
さっき真夜が見せた涙にどんな意味があるのか。ワタシの中に彼女に対するもやもやが溢れた。
学校を出たワタシ達は、その後めちゃくちゃデュエルした。帰り道の公園で、何度も何度も熱い戦いを繰り返し、凪沙がもうダメとへたりこむまでやって、さすがにワタシも多少の満足感は得られたと一息いれる。そこでやっと日も沈み空に星が輝いていることに気づいた。
「いやー、すっげえ楽しかったな、凪沙。」
「そっ、そう・・・。そうね・・・。」
「またデュエルしよう。なっ?」
ワタシは凪沙の正面に座り、彼女に笑いかけた。ワタシの笑みに凪沙もつられて笑う。
「わかった、でもまた今度ね。今日はもう帰ろう。」
時計を見ると確かに、高校一年生が出歩いている時間と言えるかは怪しくなってきていた。
「随分遅くなっちまったな。家まで送るよ、つっても歩きだけど。」
「じゃあ一緒に歩こっか。」
凪沙が嬉しそうに頬をゆるめる。よし、行こうぜ。ワタシは荷物を持って公園の出口に向かった。今度は誰かにぶつかったりしないよう、凪沙と並んで歩く。
その時だった。
突如、目の前に複数の人影が立ちふさがった。夜陰に紛れるためか、黒いフード付きのコートを被った二人の人物は、ワタシ達の行く手を阻むと腕のデュエルディスクを光らせる。
ワタシはとっさに凪沙を庇うように前に出て、不審者達に怒鳴った。
「何だ、お前たち!」
「デュエルだ。貴様には我々と今ここでデュエルしてもらう。」
「質問に答えろ、何者だって聞いたんだ!」
「知る必要はない。」
「!・・・。」
何なんだ、こいつら一体。
フードの男はワタシの言葉を軽くあしらいデュエルを強要してくる。すると、凪沙が小さな声でワタシにささやくのが聞こえた。
「に、逃げよう風華。あの人たち絶対危ないよ、関わらない方が良いって。」
「凪沙・・・。わかってる、お前は行け。ワタシがあいつら何とかするから。」
そう言ってワタシは凪沙を男たちとは逆方向に押しやり、デュエルディスクを構え前に出た。だがワタシの想いとは裏腹に凪沙が足を止めて声を震わせる。
「でっ、でも風華一人でなんて・・・!」
「いいから行ってくれ。大丈夫だ、ワタシの強さは凪沙も知ってるだろ?」
ワタシは大切な友達に優しく微笑んでみせる。もう一度ワタシが、行け、と叫ぶのを聞いて凪沙は走り出した。そうだ、それでいい。
凪沙がその場から離れたのを見て、ワタシは男達に視線を合わせた。デュエルディスクを起動させると、光のプレートが出現する。
「上等だ、二人まとめてかかって来い!」
「いいだろう、なら二対一のバトルロイヤルだ。後悔するなよ、御剣 風華。」
!
こいつらワタシを知って襲ってきてるのか!
デュエル!!
UNKNOWN LP4000
VS
UNKNOWN LP4000
VS
HUKA LP4000
「まずは私のターン。プロミネンス・ドラゴンを召喚。」
フードの男の先攻で始まったデュエル。フィールドに現れた竜は全身から灼熱の炎を吹き出した。
「さらにカードを一枚伏せてターンエンド。この瞬間プロミネンス・ドラゴンの効果発動。貴様には500ダメージを受けてもらう。」
宙に舞い上がった竜の吐き出した火球がワタシのフィールドに降り注ぐ。
HUKA LP4000→3500
「ぐっ・・・。」
「次は私のターンだ。」
二人目の男がカードをドローする。すぐさま、一人目が示し合わせたように行動を起こした。
「トラップ発動、メテオ・プロミネンス。手札を二枚捨て、2000ダメージを与える!」
「なにっ!」
再び上空から大量の炎塊が降り注いだ。夜の暗がりが一瞬にして夕焼けの如く照らされる。
HUKA LP3500→1500
「くそっ。いきなりこれかよ、やってくれる!」
滲んだ汗をぬぐいワタシが男達を睨み付けると、二人目の男がで薄ら笑いを浮かべて言った。
「お前はこれで終わりだ。バトルロイヤルは二ターン目から攻撃できる。ワタシはプロミネンス・ドラゴンを召喚する。」
フィールドに二体目の火竜が現れる。男の言う通り、バトルロイヤルでは攻撃できないのは最初のプレイヤーのみ。敵が多いなら遅れをとるほど不利になっていく。
だが、そんなことは百も承知だ。
「バトル。プロミネンス・ドラゴンでダイレクトアタック!」
男が高らかに宣言する。この攻撃で決められると確信しているのだろう。当然、そんなことはさせない。
「ワタシは手札からジュラゲドの効果を発動!」
デュエルディスクでカードをスキャンし、手札のカードの効果を発動させる。
「このカードはバトルステップ中に、手札から特殊召喚できる!」
がら空きだったワタシのフィールドに、少し気色悪いモンスターが現れた。不気味に飛び出した目玉がワタシにニッと笑いかけてくる。おっ、おう・・・、サンキュー。
「そしてワタシは1000ライフを回復する!」
HUKA LP1500→2500
文字通りのモンスターから発射された光線がワタシを包み込む。男はジュラゲドのステータスを見て攻撃を中止した。攻撃の阻止に加えライフを回復され、相当予定は狂っただろう。
「ちっ・・・。私はカードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズにプロミネンス・ドラゴンの効果が発動する。500ダメージを受けろ!」
三度の火炎がワタシに襲いかかる。
HUKA LP2500→2000
「ふぅ・・・。」
敵の速攻を防ぎきり、ワタシはほっと息をつく。ライフは半分になってしまったが、バトルロイヤルの数の不利の中でなんとか自分にターンを回すことができただけ十分だ。ここからどれだけ反撃できるかが勝負を分ける。
「いくぜ、ワタシのターン!」
「どっ、どうしよう私・・・。」
一人公園を離れた凪沙は、その場では風華の言葉に従ったものの、やはり戻るべきではないかと立ち止まっていた。だが戻ったところで、また追い返されるだけかもしれない。そう思うと、どうしてもどうすれば良いか決めることができなかった。
逡巡する凪沙は来た道を振り返り、風華に思いを寄せる。私は一体どうしたら・・・。
焦りと葛藤で思考が滞る凪沙には、背後から何者かが近づいて来ていることに気がつくことができなかった。
「きゃあああああ・・・!!」
「!?」
悲鳴が聴こえた。デッキからカードをドローし反撃に移ろうとしていたワタシは、夜の町に響いたその声に背筋が凍った。
凪沙だ、凪沙に何かあったんだ!
くそっ、やられた。ワタシが凪沙を一人にしたから狙われたんだ。ワタシは自分の失敗に吐き気がしてきたが、それ以上に男達への怒りが込み上げてきて、喉が裂けんばかりに怒鳴りつけた。
「お前たち!凪沙に何をした!」
「知らんな。不審者でも出たんじゃないのか。」
「ふ、ふざけるんじゃねえ!!」
男のふざけた態度に全身の毛が逆立つのを感じる。許さない、ワタシの友達に手を出してただで済むと思うな。
「いいだろう、すぐにお前たちをぶっとばして凪沙の下へ行ってやる。」
ワタシはなんとか怒りに震える身体を落ち着かせながら、反撃のカードを掴みとった。
「ワタシは手札からジェスター・コンフィを特殊召喚!」
フィールドに現れた太っちょ道化師が身に合わない小さなボールの上でくるくると踊る。これでワタシのフィールドに二体のモンスターが揃った。
「さらにワタシは二体のモンスターをリリースして!」
フィールドに風が巻き起こり、下級モンスターを包み込んだ。やがてその中から、翼を広げた剣士の姿が見えてくる。
「アドバンス召喚!来い、ワタシのエースモンスター!」
舞い降りる純白のモンスター、ワタシのデッキを支える絶対的エース。
「ウインド・ブレイダー!」
風を斬り現れたその姿を見て、男達は焦りの声をあげる。どうやらワタシにこのカードを出させるつもりはなかったらしい。
「ぐっ、だがそんなモンスターを出したところで・・・」
「なめんじゃねえ!バトルだ、ウインド・ブレイダー!」
ワタシは二人目の男に狙いをつける。まずはこいつから倒す!
「プロミネンス・ドラゴンに攻撃、そして効果発動!」
ウインド・ブレイダーの効果。ワタシのデッキはこのカードの効果を活かすことを中心に組んである。
「攻撃宣言時にデッキをシャッフルして一枚ドローできる!」
「無駄だ。トラップ発動、魔法の筒!モンスターの攻撃を無効にしその攻撃力分のダメージを与える!」
魔法の筒!ライフを大幅に削る強力カード。だがこれで、ワタシに勝機が訪れた!
「させない!速攻魔法、痛魂の呪術を発動!ワタシへのダメージを、代わりにお前に与える!」
「なに!」
「それだけじゃない、ワタシはさらに二枚の速攻魔法を発動!」
ワタシは手札を出し尽くし畳み掛ける。この勝負、ここで終わらせる。
「虚栄巨影、そして突進!これでウインド・ブレイダーの攻撃力は1700アップする!」
ウインド・ブレイダーの剣が魔法の力を受けて輝き、天に昇るほどの竜巻を纏った。
「いけ、ウインド・ブレイダー!烈風一閃!」
放たれた竜巻がプロミネンス・ドラゴンに当たる前に、二つの魔法の筒が現れ一方がその渦を飲み込んでいく。
さらに、もう一方の筒から飲み込まれた風がワタシに向け放出される。だが、その風は方向を変え再び男へと進路をとる。
「ウインド・ブレイダーの攻撃は魔法の筒によって無効になる。だが、そのダメージは痛魂の呪術によりお前に跳ね返る!その攻撃力を2500から4200に増加してな!」
「ぐっ・・・ただでは終わらん!プロミネンス・ドラゴンをリリースしてトラップ発動、火霊術-『紅』!これでお前に1500ダメージを与える!」
プロミネンス・ドラゴンの姿が炎そのものへと変化し、解き放たれたエネルギーが竜巻と交差しこちらへ向かってくる。
互いの発動した効果が炸裂し、両者共に大ダメージを受けた。
「うっ・・・!」
HUKA LP2000→500
「ぐわああああああ・・・!」
UNKNOWN LP4000→0
男が吹っ飛び大の字になって倒れる。ワタシも度重なる閃光にさすがにくらくらしてきて思わず膝をついてしまう。
だが、これで一人倒すことができた。呼吸を整えるとワタシは一人目の男に向き直り、途中のままの効果処理を終えるためデッキからカードを引く。
「ウインド・ブレイダーの効果で一枚ドロー。」
引いたカードを確認する。来た・・・!最高のカードを引き当て、安堵の息を漏らしすぐさま発動する。
「速攻魔法発動、旋風爆破!」
公開されたカードのソリッド・ビジョンから旋風が発生し、その場で回転して球体となる。
「なんだ、そのカードは・・・!」
土壇場で発動した新たなカードを見て男が驚きの声をあげる。ワタシはデュエリストお得意の掌を突き出すポーズで効果を読み上げた。
「レベル7以上の風属性モンスターの攻撃が無効になった場合、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「なっ、なんだと・・・!」
「ウインド・ブレイダーの攻撃力と同じ4200のダメージを受けてもらう!」
渦巻く球体が螺旋を描きながら相手フィールドに突き進み破裂する。透明な爆発が残った男を吹き飛ばした。
「うわああああああ・・・!」
UNKNOWN LP4000→0
「ワタシの勝ちだあああ!」
倒れ伏す男達に堂々と宣言した。ギリギリまで追い込まれたせいか、いつも以上に声に力が入ってしまう。
本当ならここで、ワタシを襲ってきた者の正体を知るためにフードを引き剥がしてついでに二、三発殴ってやりたいところだが、相手は男二人。リアルファイトになったらさすがに分が悪いし、何より今は凪沙のことが心配だ。
ワタシは敗者達を一瞥して、凪沙が向かった方へ走り出した。
待ってろ凪沙、今助けに行く!