ARC-V 舞網は平和ではない   作:ごごにじ

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第六話 激闘、三対三!

「ふうぅぅかぁあああーっ!」

 

 

「!?」

 

遠くから叫び声が聞こえたと思うと、凪沙が全力で突進してくる。ワタシは突然の剣幕にびくっと身構えた。

 

途中で力尽き、汗だくになりぜぇぜぇ言う凪沙。ワタシはへたり込む彼女に近づいた。

 

 

「どうしたんだ、凪沙?随分はしゃいでるじゃないか。」

 

「はっ、はしゃいでなんかない!ふ、ふひっ、風華が、急に、どっかいっちゃうからぁーっ!」

 

 

しゃがんだワタシに凪沙が泣きついてくる。

 

 

ワタシはついさっきまで精霊世界にいた。どうやらその間は、肉体もその場から消えていたようだ。

 

「急にいなくなっちゃうから、ほんとに心配したんだよぉ・・・。」

 

「凪沙。」

 

「どこにもいないし、電話も繋がんないし・・・。」

 

 

ワタシは涙ぐむ凪沙を抱きかかえて、優しく頭を撫でてあげた。

 

「悪かったよ、心配かけて。ワタシはここにいるから。どこにも行かないよ。」

 

「うん。うん・・・。」

 

「わかったら泣くな、ほら帰るよ。」

 

 

ワタシが立ち上がると、凪沙は座ったままワタシの手を掴む。

 

「無理、まだ歩けない。足痛いの。」

 

「お前・・・。」

 

 

子供か。ワタシは突然甘えだした凪沙に呆れてため息が出てしまう。かわいいから問題ないとか、そんなことは絶対にない。

 

「じゃあ、家までおぶって行ってやろうか?そんな恥ずかしいことに凪沙が耐えられるならな。」

 

ワタシは意地悪くニヤッとする。絵面を想像したのだろうか、凪沙が小声で歩く、と呟いた。

 

 

「さあほら、さっさと立った。しゃきっとしてくれ。」

 

彼女の手を引っ張り無理やり立たせる。昨日今日と色々あったせいで、さすがにワタシは疲れていた。できることなら今すぐ帰って休みたい。その思いから足が動く。

 

 

だが、その前に精霊世界で耳にしたことを真夜に伝えておきたいと思った。ワタシは凪沙に聞いてみる。

 

「なあ、真夜ってどこにいるかわかるか?」

 

「星美さん?さあ、わからない。」

 

「だよなあ。まあ、明日学校でいいか。」

 

 

わからないものはしょうがない。ワタシが諦め顔をしていると、凪沙が気にくわないといった様子で言ってきた。

 

「星美さんになにか用なの?」

 

「えっ?ああいや、たいしたことじゃないんだ。気にすんな。」

 

「・・・。風華、さっきどこ行ってたの?いきなりいなくなるなんて変だよ。」

 

 

凪沙がジト目で見つめてくる。ワタシはギクリとして言葉を濁した。

 

「ど、どこってそりゃあ、便所だよ。便所。」

 

ワタシは大声で何を言ってるんだ。ごまかす為とはいえ、悲しくなってくる。だが、まだ凪沙の追及は終わらなかった。

 

「何十分も?うそ。本当のこと言ってよ。」

 

 

言えるわけない。精霊世界でお姉さんと神社デートとか、説明のしようがなかった。

 

「そ、それは・・・。」

 

 

ワタシは凪沙の迫力にたじたじになってしまう。でも、精霊世界のことなんて言えないしなぁ・・・。

 

 

 

 

ワタシがなぜか凪沙に追いつめられる。

 

その時だった。

 

 

「!」

 

異変に気づいたワタシは進行方向に目を向ける。眼前に広がっていたのは、まだ暗くはなっていないこの街には似合わない、怪しげな黒ずくめの男たちだった。

 

まさか昨日の今日で襲っては来ないだろうと油断していたが、こいつらにそんな理屈は通用しないようだ。

 

 

「またお前たちか!」

 

ワタシは男たちに叫ぶ。今日は昨日よりさらに多く、三人も並んでいる。

 

「毎日女の尻追っかけるなんて、よっぽど女々しいやつらみたいだな、それともただのストーカーか?」

 

「黙れ、貴様に用はない。あるのはそっちの貴様だ!」

 

 

男の一人が指をさしたのは、ワタシではなく、ワタシの後ろに隠れて事態を見守っていた凪沙だった。

 

「なにっ!」

 

「わ、私・・・?」

 

凪沙の声が上ずる。男たちは不気味に笑い声を漏らしながら近づいてくる。

 

「昨日は狙われずに済んで助かったようだが、残念だったな。今日こそ貴様のカードを奪ってやる。」

 

「えっ・・・?」

 

「ふざけんな、お前達の相手はワタシだ。纏めて相手してやるからかかってこい!」

 

「貴様には用ないんだ、とっとと失せろ!」

 

「るっせえ!こっちにだってねえよ!」

 

 

精霊世界で聞いた、世界を脅かす敵の存在。一刻も早くそいつらを見つけるためには、いつまでもこんなチンピラまがいを相手にしている暇はない。

 

「でもな、お前たちのやってることは見過ごせない。この舞網の平和のためだ、お前たちは今ここで潰す!」

 

「貴様・・・!」

 

 

男たちが立ち止まり、腕のデュエルディスクを光らせた。ワタシも凪沙を庇うように立ち、ディスクを起動させる。

 

三対一。昨日よりさらに分が悪い。さすがにヤバイかもしれないな・・・。

 

ワタシはごくりと唾を飲み込む。緊張から、嫌な汗が額に浮かんだ。

 

 

 

すると。

 

 

「そのデュエル、私も交ぜて。」

 

背後から女の声がする。振り向くと、そこにはいつの間にか見覚えのある美少女が近づいてきていた。

 

「真夜!」

 

 

凪沙を完全に無視して横につけた真夜に、ワタシは疑問をぶつけてみる。

 

「真夜。もしかしてまた見張ってたのか?」

 

「風華、私も一緒に戦う。」

 

 

答えない。図星だな。

 

 

ワタシの質問を無視して、真夜は振り返りもせず凪沙に冷たく言った。

 

「波川さん、あなたは帰って。デュエルは私と風華でやるから。」

 

「真夜、お前。」

 

余りにそっけない態度の真夜に苦言を呈そうとワタシは間に入る。だが、凪沙には必要ないみたいだった。

 

 

「ううん、私も戦う。星美さん、私、足手まといなんかじゃないよ。お邪魔虫なんかじゃない!」

 

「波川さん。あなたじゃ・・・」

 

 

なんとか帰そうとする真夜を振り切って凪沙はワタシ達の隣に並んだ。

 

「私だって、舞網で戦うデュエリスト。もう、勝負から逃げたりしない!」

 

「その意気だぜ、凪沙!」

 

ワタシは熱い勇気を見せる凪沙に檄をとばし、再び男たちの前に立ってディスクを構えた。

 

 

「仕方ない。足引っ張らないでね。」

 

真夜も認めたのか、ため息をつくと戦闘態勢にはいった。

 

 

ワタシ達が揃うのを律儀に待っていてくれた男たちが、ようやくか、と口を開く。

 

「いいだろう、ならば貴様ら全員ここで捻り潰してくれる!」

 

「へっ、やれるもんならやってみやがれ、いくぞ!」

 

 

 

 

デュエル!!!

 

 

NAGISA LP4000

VS

MAYA LP4000

VS

HUKA LP4000

VS

UNKNOWN 1 LP4000

VS

UNKNOWN 2 LP4000

VS

UNKNOWN 3 LP4000

 

 

 

 

「先攻は俺だ、手札から神の居城-ヴァルハラを発動!」

 

フードの男から始まったデュエル。フィールドに赤い垂れ幕がかかり、厳かな雰囲気の柱や石像が現れた。

 

「そして効果発動、手札から天使族を一体特殊召喚する。俺はヘカテリスを特殊召喚!」

 

上空から金色の物体が降ってくる。翼を広げた女神の像のようだ。

 

「さらに、ヘカテリスをリリースしてアドバンス召喚!現れよ、天魔神 インヴィシル!」

 

 

畳み掛けるようにカードを使う男のフィールドに禍々しい姿の天使が現れた。なんだあれ、七分袖か?

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド。」

 

 

「次は私のターン!」

 

声をあげたのは凪沙だ。カードを引いた瞬間に、男が天魔神の効果を読み上げた。

 

「天魔神 インヴィシルの効果により、フィールドの魔法の効果は全て無効になる。貴様に勝ち目はない。」

 

「そんなことない。魔法が使えなくたって、戦う方法はいくらだってあるよ!」

 

凪沙の言葉に、今日学校で生徒会長に言われたことが思い出される。そうだ、やってやれ凪沙!

 

 

「私は、氷帝家臣エッシャーを特殊召喚!このカードは相手の魔法・罠が二枚以上ある時特殊召喚できる!」

 

現れたのは氷を纏ったモンスター。だが何より赤い褌が目立つ。

 

「続いて手札からサイレント・アングラーを特殊召喚!このカードは自分フィールドに水属性モンスターがいる時に特殊召喚できる!」

 

 

連続で現れるモンスター。凪沙の水属性デッキの常套手段だ。

 

「そして、グリズリーマザーを召喚!」

 

怒濤の展開の最後を飾ったのは、水属性リクルーターとして有名なくま。くまじゃないか。

 

 

「ぐっ・・・だが、どれだけ並べても所詮ザコ、インヴィシルの敵ではない!」

 

男が苦し紛れに声を荒げる。たしかに、攻撃力の高くないモンスターを並べてもこの場面では意味はない。だが、凪沙の意図は他にある。

 

 

「ワタシは、レベル4のモンスター三体で、オーバーレイ!」

 

「なにっ!」

 

モンスター達は光の玉となり、地面に現れた星の渦に飛び込んでいく。光が稲妻のごとく天に昇ると、溢れだした光が辺りを包み込んだ。

 

 

「エクシーズ召喚!現れよ、深海の重鎮!アンカームド・メイカー!」

 

 

アンカームド・メイカー

エクシーズモンスター/効果

ランク4/水属性/水族/ATK2400/DEF/2200

 

 

飛沫をあげて飛び出してきたのは、青い鎧を身に纏ったモンスター。その手には、錨の様な形の槍が握られている。

 

 

 

エクシーズ召喚!

 

凪沙のやつ、こんなモンスターを持っていたのか!昨日戦った時には使わなかったモンスターを見て、ワタシは密かに興奮する。

 

 

「エクシーズ・・・!くっ、だが関係ない、どのみちそのモンスターには消えてもらう!罠発動!」

 

 

男が伏せてあるカードを公開する。げっ、あのカード!

 

「奈落の落とし穴!はーっはっは、消えろザコモンスターめ!」

 

青い騎士の足下に奈落に通じる穴が出現し、その中に引きずり込もうと辺りの空気が吸い込まれる。

 

それを見て、余裕そうに凪沙が微笑む。

 

 

「それはムダだよ、アンカームド・メイカーの効果。オーバーレイユニットのあるこのカードは、他のカードの効果を受けない!オルタネイティブ・バリアー!」

 

「なんだと!」

 

足下の穴を意にも介せず、騎士は空中に佇んだ。

 

 

「バトル!アンカームド・メイカーで天魔神 インヴィシルに攻撃!」

 

錨の槍が細身の天使を突き刺す。うめき声をあげながら天使は爆発した。

 

 

「ぐっ・・・!」

 

UNKNOWN 1 LP4000→3800

 

 

「よし、私はカードを一枚伏せてターンエンド。互いのターン終了時に、アンカームド・メイカーのオーバーレイユニットは一つ消える。」

 

 

見事にやりとげた凪沙の声は自信に道溢れて聞こえた。ワタシは凪沙にガッツポーズを見せて笑いかける。

 

「やるな、凪沙!」

 

「風華・・・。うん、私だってがんばるよ、デュエリストだもん。」

 

ニコッと笑う凪沙。間に見える真夜の顔が若干曇ったような気がしたが、まあいいだろう。

 

 

「何を浮かれている!次はオレのターンだ!」

 

二人目の男がカードをドローする。ワタシ達はすぐさま向き直って身構える。

 

 

「特殊な召喚法を使えるのはなにもお前たちだけではない、オレは手札から魔法カード、融合を発動する!」

 

「!」

 

 

男が発動した融合と共に、フィールドにモンスターのシルエットが浮かび渦巻きに吸い込まれていく。

 

「手札のデーモン・ソルジャーとジェネティック・ワーウルフを素材として、融合召喚!現れろ、始祖竜ワイアーム!」

 

 

空を裂き、巨大な竜が現れる。身体中に生えた角は頭の先から尻尾の先まで隙間なくその尖端を光らせた。

 

「さらに魔法発動、死者蘇生!蘇れジェネティック・ワーウルフ!」

 

男もまけじとモンスターを並べて、攻撃力の合計が軽く4000を越えてくる。

 

「バトル!ワイアームでアンカームド・メイカーに攻撃!喰い千切れワイアーム!」

 

竜の顎が容赦なく鎧を突き通す。叫びをあげて騎士がくだけ散った。

 

 

「うああっ・・・!」

 

NAGISA LP4000→3700

 

 

爆風が凪沙のフィールドを覆う。男は続けて攻撃を宣言した。

 

「さらにジェネティック・ワーウルフでダイレクトアタック!」

 

獣戦士の拳が凪沙の腹に直撃する。めり込んだように見えてちょっとドキッとしてしてしまう。

 

 

「ううっ・・・!」

 

NAGISA LP3700→1700

 

 

「俺はカードを二枚伏せてターンエンド。」

 

裏面のソリッド・ビジョンが一瞬現れる。ワタシは大きくライフを削られた凪沙を心配して声をかけた。

 

 

「大丈夫か凪沙。」

 

「うん。これくらいなんてことないよ。」

 

凪沙の目は依然自信に満ちている。余計なお世話だったかな。ワタシは隣で戦う仲間の頼もしさに嬉しくなった。

 

 

「私のターン。」

 

次に出番が回ってきてのは真夜だ。カードを引き、すぐさま行動に移る。

 

「私は手札から魔法カード、ナイト・ショットを発動。伏せられたカードを一枚破壊する。」

 

 

絵柄を相手に向けたカードのビジョンからレーザーが発射され、男の伏せカードを射抜く。

 

破壊されたのは煉獄の落とし穴のカード。ピンポイントで強力カードを除去した真夜の運命力はさすがと言える。

 

 

だが、ワタシが感心している横で、真夜は眉をひそめている。しばらく考えた後、カードを選び手に取った。

 

「・・・。私は・・・」

 

「罠発動、エクシーズ・リボーン!」

 

「!?」

 

 

突如、凪沙がリバースカードを発動させた。全員が驚き彼女の方を見ると、カードから現れた紋章が強烈に光を放つ陰から、凪沙がその効果を読み上げた。

 

「自分の墓地からエクシーズモンスターを特殊召喚して、このカードをオーバーレイユニットにする!蘇って、アンカームド・メイカー!」

 

再び、水飛沫を跳ばして青き騎士が飛び上がった。その回りには光のリングが一つ宿っている。

 

 

「凪沙・・・?」

 

ワタシは困惑して凪沙を見つめる。何で今使ったんだ、そのカード?さっきのターン、ダイレクトアタックの前に使えば攻撃を防げたはずだ。

 

ワタシが意図を計りあぐねている間、動きを止めてフィールドを確認していた真夜が再び動き出す。

 

「私は手札から、こけコッコをレベル4で特殊召喚。」

 

バサバサと羽を撒き散らしてフィールドを駆け回るニワトリ。同じ白の翼でもワタシのエースとは大違い。

 

 

「さらに、手札から星見獣ガリスの効果を発動。デッキの一番上をめくり、それがモンスターだった場合墓地へ送りそのレベル×200ダメージを与え、このカードを特殊召喚する。」

 

ほしみ?真夜ってば自分と同じ名前のカードとか使って、意外とおちゃめな面もあるんだ。

 

 

あほなことを考えているうちに真夜がカードをめくる。めくられたのはレベル2のモンスター、TGストライカー。

 

「星見獣ガリスの効果でモンスターがめくられたことで、そのレベル×200、400ダメージが与えられる。食らうのはあなた。」

 

真夜は二人目の男に指をさす。カードから光弾が放たれ男の足下で破裂した。

 

 

「ちっ・・・。」

 

UNKNOWN 2 LP4000→3600

 

 

 

「そして星見獣ガリスはフィールドに特殊召喚される。」

 

真夜のフィールドに大きな翼を持つ獣が現れた。胸にある星のエンブレムが微かな愛嬌を感じさせる。

 

「私はぴよコッコを召喚。」

 

真夜が召喚したのは殻を破ったばかりの雛鳥。ニワトリの後ろにくっついて歩く姿がとても愛らしい。

 

 

真夜のフィールドに揃った楽しげなモンスター達。だがその役目はワタシを笑顔にさせることではない。真夜はモンスターたちを指差し指示を与えた。

 

「レベル3の星見獣ガリスとレベル1のぴよコッコに、レベル4のこけコッコをチューニング!」

 

 

舞い散る羽が緑の輪になり、星になったモンスターたちを中に通す。光の道が突き抜けると、モンスターがそのシルエットを輝かせた。

 

 

「シンクロ召喚!煌めけ、ミッドナイト・ステラー・ドラゴン!」

 

 

フィールドに淡い光が漏れる。真夜を護るようにその体を巻く竜は、フィールドに君臨していた荒々しい竜と睨み合う。

 

「バカめ、かかったな!罠発動!」

 

「!」

 

 

二人目の男の場でカードが表になり、その正体が公開される。

 

「深黒の落とし穴!特殊召喚されたレベル5以上の効果モンスターを除外する!」

 

「・・・!」

真夜の表情が一転して焦りの色を帯びた。まずい、ミッドナイトを失えば真夜は無防備になってしまう!

 

 

「そうはさせない、アンカームド・メイカーのもう一つの効果発動!」

 

「なにっ!」

 

「オーバーレイユニットを一つ取り除いて、このカードの効果、オルタネイティブ・バリアーをターン終了時まで相手のモンスターに移し替える!私が選択するのはミッドナイト・ステラー・ドラゴン!」

 

アンカームド・メイカーのオーバーレイユニットが星の竜に渡り、球状に広がりその姿を覆い隠す。

 

 

「波川さん・・・。」

 

真夜が驚いて目を向けると、凪沙がコクっと頷いた。

 

「・・・オルタネイティブ・バリアーによりミッドナイト・ステラー・ドラゴンは深黒の落とし穴から守られる。これで私の竜は無傷!」

 

「くっ・・・、余計な真似を!」

 

 

いいぞ凪沙、これで敵の罠を全て突破できた!

 

 

「私は装備魔法、魔界の足枷を発動。ジェネティック・ワーウルフに装備する。」

 

巨大な顔付き鉄球がワーウルフの手に繋がれる。その重さに耐えきれず、ワーウルフは膝をつく。

 

「この効果でワーウルフの攻撃力は100になる。でも、その瞬間ミッドナイト・ステラー・ドラゴンの効果が発動する。サプレッション・レイ!」

 

 

ミッドナイトの装飾品から閃光がほとばしり、ワーウルフが苦悶の叫びをあげる。

 

「モンスターの攻撃力が変化した時、その変化を無効にしてもとに戻し、変化した数値分ダメージを与える!」

 

「なんだと!」

 

「変化した数値は1900。よってあなたにはそのダメージを受けてもらう!」

 

ほとばしる閃光は結晶となり、男のフィールドに降り注ぐ。

 

 

「ぐわぁああああ!」

 

UNKNOWN 2 LP3600→1700

 

 

衝撃で吹き飛ばされ、男は地面を転がっていく。昨日もそうだったが、やはりどう見てもあの効果は本物のダメージを発生させているように見える。一体どういうことなのだろうか。

 

 

「バトル、ミッドナイト・ステラー・ドラゴンで攻撃。対象はあなた!」

 

真夜の細い指先が最初の男に向く。壁モンスターのいない男にはその攻撃を防ぐ手段はない。

 

 

「漆黒のサイレント・ハリケーン!」

 

無音の衝撃が直撃し、その男も先程同様にふっとんで地面に叩きつけられた。

 

 

「がはっ・・・!」

 

UNKNOWN 1 LP3800→800

 

 

やった、大ダメージだ!さすが真夜、容赦ないぜ。

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンド。」

 

 

猛攻をしかけた真夜がターンを終える。吹き飛ばされた男達が立ち上がることができないでいると、最後の男が進み出てカードを引いた。

 

「オレのターン。オレは手札から炎王の急襲を発動、デッキから炎属性の獣戦士族を特殊召喚する。現れろ剣闘獣ラクエル!」

 

 

炎の身の不死鳥が舞い躍り、歪んだ空間から獣戦士が飛び出してくる。

 

「さらにスレイブタイガーを特殊召喚し、効果発動。このカードをリリースして、剣闘獣をデッキに戻し別の剣闘獣を特殊召喚する。」

 

現れた虎が消滅すると、ラクエルが炎となり地中に舞い戻り、代わって青紫の鎧のモンスターが現れその鋭い翼を広げた。

 

「来い、剣闘獣アウグストル!そしてアウグストルの効果発動!手札から剣闘獣を特殊召喚できる。剣闘獣ベストロウリィを特殊召喚!」

 

見事に噛み合う男のデッキ。流れるような展開力で次々にモンスターを操っている。

 

 

「ベストロウリィの効果。フィールドの魔法・罠を一枚破壊する!」

 

真夜が直前に伏せたカードが破壊されてしまう。チラッと見えたそのカードは、攻撃の無力化。バトルフェイズを強制終了させる効果のカウンター罠だ。

 

 

「オレは剣闘獣ベストロウリィとアウグストルで、コンタクト融合!」

 

「!?」

 

 

なんだ、それ。耳慣れぬ言葉に驚いていると、男のフィールドでモンスターが幽体となりデッキに吸収されていく。

 

「二体の融合素材をデッキに戻し、融合召喚!現れろ、剣闘獣ガイザレス!」

 

 

フィールドに降り立ったモンスター。明らかに、ベストロウリィの進化形といった様子をしている。

 

ってことは・・・。

 

 

「ガイザレスの効果発動!フィールドのカードを二枚、破壊する!」

 

「なに!」

 

破壊の猛襲に真夜もさすがに声をあげる。

 

「破壊するのは貴様達のモンスター二体だ!」

 

 

ガイザレスから鋭い羽が発射され、ミッドナイトとアンカームドに突き刺さる。直後爆発が起き、二人のエースモンスターが共に消し去られてしまった。

 

 

「私は手札から、ドラゴン・アイスの効果発動!相手がモンスターを特殊召喚した時、手札を一枚捨てて特殊召喚できる!」

 

モンスターの破壊を受けて、凪沙がカードを発動する。がら空きになった凪沙のフィールドに不気味な顔の人竜が現れた。

 

「さらに、墓地へ送られたハリマンボウの効果発動。相手モンスターの攻撃力を500下げる!」

 

 

地面から現れたマンボウの口から、大量のトゲが出てガイザレスを撃ち抜く。これでガイザレスの攻撃力はドラゴン・アイスの守備力より低くなった。

 

 

「バカめ、速攻魔法、剣闘調教を発動!相手モンスターの表示形式を変更する!さらに剣闘獣ラクエルを召喚!」

 

「うそっ!」

 

 

凪沙のライフは1700。ドラゴン・アイスが攻撃表示になったら、ガイザレスとラクエルの攻撃を喰らって終わりだ!

 

「バトルだ!ガイザレスでドラゴン・アイスに攻撃!」

 

「私は手札から、ジェントルーパーの効果発動。このカードを特殊召喚し、相手の攻撃をこのカードに誘導する!」

 

「なに!」

 

 

攻撃宣言を受けて、今度は真夜が凪沙を護った。真夜のフィールドに正装の謎モンスターが現れる。ガイザレスの放った羽は方向を変え、紳士を蜂の巣にした。

 

「星美さん・・・。」

 

「別に、借りを返したとか思ってないから。」

 

真夜がそっけなく言う。だが、どこか今までの刺々しさはなくなっている気がした。

 

 

「ちぃっ・・・、ラクエルで貴様にダイレクトアタックだ。」

 

壁モンスターのいなくなった真夜に、ラクエルが殴りかかる。だが、真夜はピクリとも動かず攻撃をやり過ごした。

 

 

「・・・。」

 

MAYA LP4000→2200

 

 

「バトルフェイズ終了時、剣闘獣の効果が発動し、それぞれデッキに戻り新たな剣闘獣をデッキから特殊召喚する!来い、剣闘獣ラクエル、二体のムルミロ!」

 

 

フィールドに三体のモンスターが出揃う。そのうち青い魚型モンスターが光を放った。

 

「二体のムルミロの効果発動!モンスターを一体ずつ破壊する。破壊するのはドラゴン・アイスとワーウルフだ!」

 

ムルミロのもつ貝殻から水柱が吹き出て、ワーウルフとドラゴン・アイスがくだけ散った。これでついに、凪沙と真夜には一枚もカードがなくなってしまった。

 

 

「そして、三体のモンスターでコンタクト融合!」

 

 

今フィールドに現れたばかりのモンスターが再びデッキに戻っていく。くそ、あいつとことんやりやがる!

 

「融合召喚!現れろ、最強の剣闘獣、ヘラクレイノス!」

 

 

現れた大型モンスター。金色の武装で身を固め、爆炎を背負いフィールドに仁王立ちになる。

 

「これで貴様らは終わりだ。カードを一枚伏せてターンエンド。」

 

 

男は余程ヘラクレイノスに信頼を寄せているのか、出した瞬間勝利を宣言した。ったく、気の早いやつだ。

 

 

「いくぜ、最後はワタシのターンだ!」

 

ついに回ってきたワタシのターン。デッキに手をかけカードを引く、その瞬間。

 

 

「!」

 

ワタシの中に不思議な感覚が走った。なんだ、この感じ。

 

 

「ドロー!」

 

指先に、光が宿る。手札に加わったカードのイメージが見なくても心に伝わった気がした。

 

 

ウインド・ブレイダー・・・!

 

 

「・・・いくぜ、ワタシは速攻魔法、サイクロンを発動!お前の魔法・罠を一枚破壊する!」

 

「ムダだ、ヘラクレイノスの効果発動!手札を一枚捨てて、魔法・罠の発動を無効にして破壊する!」

 

フィールドを駆け抜ける竜巻がヘラクレイノスの斧で両断される。だが、これでやつの手札はない。もうヘラクレイノスの効果は使えない!

 

 

「ワタシは手札から、ウインド・ブレイダーの真の効果を発動!手札の速攻魔法三枚を見せることで、手札から特殊召喚できる!」

 

 

ウインド・ブレイダーの真の効果。それは手札からの特殊召喚効果だった。これで、このカードの力は何倍にも膨れ上がった。

 

「それが、ウインド・ブレイダーの新たな効果・・・!」

 

凪沙が驚きの声を発する。

 

 

「させるか!カウンター罠発動、剣闘獣の戦車!モンスター効果の発動を無効にして破壊する!」

 

「!」

 

凪沙と真夜が、一斉にワタシを案じて振り向いた。男が勝ち誇ったように声を荒げる。

 

 

「これで貴様のエースは墓地送り。死んだも同然だ!」

 

「いいや、読んでたさそれくらい!速攻魔法、爆風再花を発動!」

 

「なにっ!」

 

「レベル7以上の風属性モンスターが破壊された場合、そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する!さあ出番だ、ワタシのエースモンスター!」

 

 

戦車の砲撃で爆破されたカードのソリッド・ビジョンが周囲の爆煙を巻き込みモンスターの形へと姿を変えていく。

 

「特殊召喚、ウインド・ブレイダー!」

 

 

純白の翼から舞い散る羽が、ワタシ達のフィールドに光をもたらす。いつもならこれで攻撃、となるところだが、今回は違う。ここからがワタシの真のデュエル。

 

 

「そしてワタシは、キーマウスを召喚!」

 

現れたのは、尻尾が鍵になった白い子ネズミ。レベル1のか弱いモンスターだ。

 

「風華、そのカード・・・。」

 

 

真夜がその意味に気付き、ぱっと表情が明るくなる。ああそうさ、このカードは単なるモンスターじゃない。

 

 

「見てろ、ここからがワタシの本気だ!レベル7のウインド・ブレイダーに、レベル1のキーマウスをチューニング!」

 

 

翼の剣士が星の球となり、光の道に浮かぶ。真夜が見せたあの召喚法を、今度はワタシが使ってみせる!

 

「咲き誇る一輪の花!どこまでも高く、どこまでも美しく!」

 

 

光の柱は、華麗なる花吹雪へと変わりフィールドを彩る。

 

 

「シンクロ召喚!これがワタシの、もう一つのエースモンスター!」

 

 

「オーガスト・ブルーム・ドラゴン!」

 

 

オーガスト・ブルーム・ドラゴン

シンクロモンスター/効果

星8/地属性/ドラゴン族/ATK3000/DEF2500

 

 

舞い散る花びらの中、姿を現した新たなモンスター。輝く金色の翼は孔雀のように広がり、太陽の如く辺りを照らし出す。見ているだけで、身体に力が沸き上がってくる気がする。それほど、雄々しく力強さを感じさせるモンスターだ。

 

 

「風華、やっぱり・・・!」

 

「ああ。」

 

ワタシはこちらを見て顔を輝かせる真夜と見つめあった。そう、このカードこそ、ワタシが精霊世界に置き忘れてきたもう一枚のカード。そして、このカードを手にしたことで、ワタシは失われていた記憶を全て思い出した。

 

 

「悪かったな、真夜。あんたのこと忘れちまってた理由とか、謝りたいこと、話したいことがいっぱいあるんだ。」

 

「風華。」

 

「すぐにこいつら倒すから、ちょっと待っててくれ。」

 

 

ワタシは言うと、目の前に立ち並ぶ男達に目を向け言い放った。

 

「覚悟しろ、お前たち!このターンで全員ぶっ飛ばしてやる!」

 

「ふざけたことを・・・。調子に乗るなよ小娘が!」

 

「信じられないならいいさ、直接叩き込んでやる!バトルだ!」

 

 

ワタシは大きく腕を振って、花の竜に掌を突き出す。

 

「オーガスト・ブルーム・ドラゴンで、ヘラクレイノスに攻撃!食らえ、シンフォニック・フェザー!」

 

金色の翼が光輝き、強烈な波動を放射する。だが光線を浴びた獣戦士も、その中を突き進み竜に一撃を加えた。

 

 

相討ち。双方共に爆破され、とてつもない衝撃が爆風となってワタシ達を包み込む。

 

止まっている暇はない。爆煙が立ち込めるなか、ワタシは自分のカードの効果を発動した。

 

「オーガスト・ブルーム・ドラゴンの効果発動!このカードの戦闘でモンスターが破壊された場合、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。」

 

「今破壊されたのはブルームとヘラクレイノスの二体。よってお前には6000ダメージを受けてもらう!」

 

 

「なっ・・・、6000だとっ!」

 

「それだけじゃねえ!オーガスト・ブルーム・ドラゴンのもう一つの効果。このカードが破壊された場合、墓地のレベル7以上の風属性モンスターを一体特殊召喚できる!」

 

「なにぃ!?」

 

「必殺、薫風大爆発!」

 

 

フィールドに花びらが飛び交い、衝撃波と共に再びワタシ達を飲み込んだ。

 

 

「どわあああああああ!」

 

UNKNOWN 3 LP4000→0

 

 

 

剣闘獣を使う男が盛大に悲鳴をあげ、遥か彼方まで吹き飛んでいった。残りのプレイヤー達も、飛ばされないように身を屈めている。

 

そして。

 

 

フィールドには翼の剣士が今一度蘇っていた。オーガスト・ブルーム・ドラゴンの効果で、再びエースがワタシの前に舞い戻ってきてくれる。いくぜ、ウインド・ブレイダー。ようやくお前の出番だ。

 

「続いてウインド・ブレイダーで始祖竜ワイアームを攻撃!」

 

 

ここで、さっきのワーウルフの破壊が効いてくる。ワーウルフがいればより確実に倒しきれるだけのダメージを与えることができたはずだ。

 

ワタシの悩みもなんのその、剣士は翼を翻し天を覆い尽くす巨竜に斬りかかった。

 

「この瞬間、ウインド・ブレイダーの効果発動!デッキをシャッフルして、一枚ドローする!続けて速攻魔法発動、突進!ウインド・ブレイダーの攻撃力を700アップだ!」

 

「くっ・・・、だがワイアームは効果モンスターとの戦闘では破壊されない、倒すのは不可能だ!」

 

 

ウインド・ブレイダーの巻き起こした疾風が竜越え男にまで届く。男は風の残撃を受け地面に押し潰された。

 

 

「ぐっ・・・!」

 

UNKNOWN 2 LP1700→1200

 

 

「不可能なんかじゃねえ!速攻魔法、疾風連撃!ウインド・ブレイダーでもう一度攻撃できる!いけえ!」

 

ワタシは出し惜しみせず手札を使いきる。これで終わらせるんだ、構うものか。

 

 

「さらに、攻撃宣言時に、虚栄巨影を発動!ウインド・ブレイダーの攻撃力を1000アップする!そして効果発動、一枚ドロー!」

 

 

もはやこの勢いは誰にも止められない。勝利の風は、ワタシの、ワタシ達の背中を押してくれる!

 

 

「速攻魔法、ご隠居の猛毒薬!これで相手に800ダメージを与える!対象はお前だ!」

 

「なっ・・・!」

 

ワタシは一人目の男に掌を向け効果を発動する。さらに逆の掌をワイアームに向けて突き出した。

 

 

「これで終わりだあああ!ウインド・ブレイダー、烈風一閃!」

 

 

遥か上空、ワイアームよりも高く飛び上がったウインド・ブレイダーが、竜巻を帯びた剣を振り降ろす。竜を貫通した凄まじいダウンバーストが男達を巻き込んだ。

 

 

 

「がはぁっ・・・!」

 

「ぐわぁあああああ!」

 

 

UNKNOWN 1 LP800→0

 

UNKNOWN 2 LP1200→0

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝った!」

 

大の字になって伸びる男達にワタシは拳を突きあげて高らかに宣言した。

 

 

 

 

 

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