ARC-V 舞網は平和ではない   作:ごごにじ

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第八話 動き出す運命

「風華、凪沙。」

 

 

ある日の昼休み。賑やかな教室で弁当を食べていると、真夜が突然きりだしてきた。

 

「なんだ?」

 

「何?」

 

「今度ある、ストロング石島のエキシビションデュエルのチケットが取れたの。一緒に行こう。」

 

「!」

 

 

ワタシ達は目を丸くして顔を見合わせる。すぐさま、二つ返事でOKを出す。

 

「すごい、真夜!行く行く!ねっ、風華。」

 

「あったり前だぜ、サンキュー、真夜!」

 

「・・・うん。」

 

真夜が安心したように頷く。こんなことでも一々頬を染める真夜は、やっぱりかわいい。

 

 

ストロング石島。現役のアクションデュエルのチャンピオン。三年の間敵なしの、まさしく最強のデュエリストだ。

 

そんなチャンピオンのエキシビションの相手を務めるのは一体誰なんだろう。ワタシは気になって真夜に尋ねた。

 

「なあ、対戦相手は誰なんだ?」

 

 

 

「榊 遊矢。エンタメデュエリスト、榊 遊勝の息子よ。」

 

 

 

 

 

 

舞網スタジアム。

 

LDSの所有する、この街最大のデュエルスタジアムであり、世界でも有数のリアルソリッド・ビジョン搭載施設だ。

 

 

「いやー、しかしすっげえ人数だな。」

 

エキシビションマッチの当日、ワタシは会場の大盛況ぶりに度肝を抜かれた。

 

「ストロング石島って、そんな人気出るようなやつか?」

 

「舞網ではデュエルの強さより確かなものはないからね。あの見た目でも三年無敗なら人気出るんだよ、きっと。」

 

 

さらっとひどいことを言う凪沙。真夜のがうつったのか?そう思っていると、本家はもっとひどいことを言った。

 

「あんな人がイメージキャラクター。LDSって趣味悪い。強ければ良いって訳じゃないでしょ。」

 

「おいおい、仮にもデュエルチャンピオンだぞ・・・。」

 

 

ワタシ達は入場ゲートでチケットを見せ荷物検査をして中に入る。会場の中には、ところ狭しと今日のポスターが貼ってあった。

 

チャンピオンの顔が全面に押し出されたポスターの右下には、小さく今日のエキシビションの相手、榊 遊矢の顔写真が載っている。

 

 

「ふーん、こいつが榊 遊勝の息子ね。」

 

赤と緑の髪に星のマークのゴーグルをつけた少年。これが、ワタシが昔憧れた人の子どもか。

 

ワタシは何気なく顔写真の頬をつついてみる。凪沙がポスターに近寄ってまじまじと見つめた。

 

「よく見るとちょっとかわいい子だね。」

 

「へえ、凪沙こういうのがタイプなのか。」

 

「ちっ、違うよっ?ちょっとかわいいなぁ、って思っただけで。」

 

慌てて否定する凪沙。別に否定することないのに。ワタシはその男の子には興味がまるでない様子の真夜にも聞いてみた。

 

 

「真夜はどんなやつが好きなんだ?」

 

「風華。」

 

「・・・。」

 

 

ああ、そうだった・・・。

 

ワタシを見て真夜がお得意の怪しげな笑みを浮かべる。ほんと、困ったやつ。

 

 

「どんくらい強いのかな?」

 

「さあ。まさかチャンピオンより強いことはないでしょ。」

 

「なんだよ、応援しないのか?」

 

「応援と勝敗は別。ほら、早く席に行こう。」

 

真夜はワタシの手を握って歩き出した。一人置いていかれそうになった凪沙が小走りで追いつきワタシの腕を掴む。

 

 

 

指定席を探しだし、買っておいたお菓子を食べたりして時間を潰していると、アナウンスが流れて司会の男が現れる。彼の合図により、会場にアクションフィールドが展開され、景色が一変した。

 

出現したソリッド・ビジョンの塔の上に、紹介と共に紫の髪の厳つい男が姿を見せる。あれがストロング石島か。続いて挑戦者の榊 遊矢の名前も呼ばれ、フィールドに両者が揃・・・わない。

 

「あれっ、遊矢くん?」

 

 

司会が困惑して呼び直すが、やはり挑戦者は現れない。途端に会場がざわつきだした。

 

「なんだ、逃げ出したのか?」

 

「親子揃って卑怯ものかよ。」

 

人々が勝手なことを言い出す。んだ、あいつら。どこのチンピラだ。

 

 

民度も気になるが、ワタシはそれよりさらに気になったことを凪沙に聞いてみた。

 

「なあ、親子揃ってってなんだ?」

 

「風華知らないの?榊 遊勝は三年前、ストロング石島との王座決定戦に不戦敗したまま、行方不明になったんだよ。」

 

「あん?なんだそりゃ。」

 

「負けるのが怖くて逃げ出したって皆言ってる。舞網では有名な話なんだよ。」

 

 

そう説明する凪沙の顔はどこか寂しそうに見えた。

 

「ふーん・・・。」

 

榊 遊勝が逃げ出した、ねぇ・・・。ホントかよそれ。ワタシにはとてもじゃないが信じられなかった。

 

 

「見て。」

 

すると、真夜が石島の方を指さした。なんだろうと思い見てみると、大男の後ろに、小柄なピエロがその姿を覗かせている。

 

再び、会場中が歓声に包まれた。石島と対峙したピエロがマスクをとると、榊 遊矢の顔になる。へえ、すごい登場の仕方だな。

 

 

 

二人のデュエルが始まった。すぐさま、召喚したカバに乗りフィールドを駆け回る遊矢。チャンピオンの出したバーバリアン・キングの猛攻を防ぎきり、エースモンスターへの召喚に繋げる。さらに、バルーンとアクションカードのコンボで、ストロング石島を追い詰めた。

 

だが、あと一歩のところで攻撃は防がれてしまう。

 

 

「すごいね、あの子!ストロング石島とわたりあってるよ。」

 

「うん、今の攻撃は良かった。」

 

二人だけではなく、会場の皆が遊矢のデュエルに一喜一憂する。確かにおしかったな、今の。

 

石島の攻撃によりピンチに陥った遊矢は、カードを引くのを躊躇うように立ち尽くしている。がんばれ、まだチャンスはある。次のドローに懸けるんだ。ワタシは心の中で彼を応援した。

 

 

 

 

そして。

 

 

そして、ワタシ達、いや、世界が目撃した。逆転を懸けたドローから榊 遊矢が繰り出した、未知なる召喚法。天空に描かれた軌跡から同時にしもべを呼び寄せる、怒濤のエンターテインメント。

 

 

 

ペンデュラム召喚!

 

 

 

 

「・・・・・・!」

 

 

榊 遊矢が勝った。彼は謎のペンデュラム召喚を用い、ストロング石島を倒した。

 

誰もが皆、遊矢の活躍に驚いている。謎の召喚法。奇跡の逆転劇。驚くのは無理もない。

 

 

だが、ワタシ達が言葉を失ったのは違う理由からだった。

 

 

「真夜・・・凪沙・・・。」

 

「ええ・・・。」

 

「わ、わかってるよ・・・。」

 

 

 

 

 

藤宮が動く・・・!

 

 

ワタシ達は、バトルロイヤルからしばらくの間、襲撃事件の解決が手詰まりになっていた。藤宮はなかなか隙をみせず、神出鬼没のフードの連中に巡り会うことも出来なかった。

 

 

だが今、ワタシ達の目の前に明らかに特別な存在が現れている。あのカードは、必ず藤宮の目にもとまったはず。絶対にカード狩りの対象になるはずだ。

 

 

「チャンスだぜ、これ。」

 

「うん、うまくやればあの女を抹殺できる。早く外に出よう。 」

 

 

真夜の提案でワタシ達はざわめきの鳴りやまない会場から抜け出した。

 

 

 

 

 

わかっている、二人とも?

 

真の姿となったウインド・ブレイダーとオーガスト・ブルーム・ドラゴンは、特別な力で繋がっている。

 

たとえ離れたとしても互いに引き寄せ合いその居場所がわかる。だからそれを利用してやつらを追う。

 

わざとウインドかオーガストのどちらかを敵に渡し、尾行はないと思わせてから追いかけるの。それで敵の居所をつかむ。

 

そして私達三人で乗り込んで、藤宮を倒す・・・。

 

 

 

 

 

「わかってるって、真夜。任せときな。」

 

真夜の言葉を思い返し、決意を固める。

 

エキシビションの後、榊 遊矢は自身の通う遊勝塾へと行き、そこで詰めかけた入塾希望者の波をやり過ごしていた。夜になりようやく塾から出て来て、一人きりになった。

 

 

ワタシ達はばらばらに分かれて、遊矢の周囲を見つからないように移動する。

 

 

しばらくして、その時は訪れた。

 

見慣れたフードの男二人が、遊矢の進行方向に現れる。ワタシは急いで脇道から飛び出し、男達の前に立ちはだかった。

 

 

 

「探したぞお前たち!」

 

ワタシは男達の行く手を阻みつつデュエルディスクを起動させ、デュエルの意思を見せつける。

 

「今日こそぶっ飛ばして、奪ったカード全部返してもらう!」

 

「誰だお前は。用はない、消えろ。」

 

 

男達はワタシを無視して素通りしようとする。そうはさせまいと、ワタシはデッキからカードをとりだしディスクに置いた。

 

 

「吹っ飛ばせ、ウインド・ブレイダー!」

 

現れた翼の剣士が突風を起こし男達を足止めする。謎の力に気づいた男達が、すかさずデュエルディスクを構えた。

 

 

「・・・!良いだろう、それならお前で用を済ますとしよう。」

 

「へっ、そうこなくっちゃな。いくぜ、デュエルだ!」

 

 

 

 

予定通り風華がデュエルを始めるのを確認して、凪沙と真夜は再び動き出す。後は遊矢を見送り、目的を果たした風華と合流するだけだ。

 

だが、そううまくは運ばない。

 

 

遊矢の後方を追う凪沙に、真夜から連絡が入った。

 

 

「凪沙、私のところにも敵が来た。凪沙はそのまま見張りを続けて。」

 

「うん、わかった。」

 

 

真夜の連絡を受け凪沙は遊矢との距離を詰めようと走り出したが、すぐに立ち止まることになる。

 

凪沙の前にもフードの人物が現れ立ち塞がった。

 

 

「・・・!」

 

驚いてすぐに真夜に連絡を返そうとしたところで、さらに驚くことになる。フードの人物が自ら顔を覆うフードをとり、凪沙にその正体を明かしたのだ。

 

「なっ・・・!」

 

 

顔を見せた人物を見て衝撃が走る。なんで、この人がここに・・・!

 

 

「藤宮 凛子!」

 

 

「あら、呼び捨てだなんてひどいじゃない。波川さん。」

 

「どうして、あなたが・・・。」

 

「ふふ、私がここにいたらいけないのかしら?」

 

「っ、それは・・・。」

 

 

凪沙が言葉に詰まっていると、凛子の腕にデュエルディスクの光が出現する。それを見て凪沙は急いで真夜への連絡を再開した。

 

「真夜!藤宮が、私のところに来てるの!」

 

「・・・!わかった、すぐに行くからそれまで捕まえておいて。風華にも伝えておく。」

 

通信が途切れ、辺りが静寂に包まれる。凪沙は凛子に視線を合わせ、自らもデュエルディスクを起動させた。

 

 

「まあ、何をそんなに怯えているの?私がこうしてここに立っているのが、そんなに怖いことかしら。」

 

 

凛子はニタリと笑って尋ねてくる。その不気味な笑いが凪沙により一層恐怖心を抱かせた。

 

「ふざけないでください。・・・あなたは、カード狩りの首謀者で、アカデミアの手先。それくらい知ってるんです!」

 

「そう、知ってたのね。なら私の目的はわかっているでしょう?私のデュエルで、貴女を奪ってあげます。」

 

「そんなことさせない。ここであなたを倒して、二人の役にたってみせる!」

 

 

 

 

 

 

デュエル!!

 

 

NAGISA LP4000

VS

RINKO LP4000

 

 

 

 

 

「私のターン!モンスターをセット、カードを一枚伏せて、ターンエンド。」

 

先攻の凪沙は守備を固めてターンを終えた。風華の話では、強力な融合モンスターを出してくると言っていた。なら、狙い目はあそこしかない。

 

 

「すぐ楽にしてあげる。私のターン。」

 

凛子はドローしたカードをすかさず発動する。引いてきたのは、やはりあのカードだ。

 

 

「魔法カード、融合を発動。手札のモンスターを素材にして、融合召喚するわ。」

 

「今だ、カウンター罠発動、封魔の呪印!手札の魔法カードを一枚捨てて、相手の魔法の発動を無効にする!」

 

「まあ!困ったわ。」

 

凪沙の発動したカードに、凛子はおどけたように口に手をあてる。

 

 

「さらに、封魔の呪印の効果で無効になったカードと同じカードを、あなたはこのデュエル中発動できなくなる。これで融合は封じた!」

 

「そんな・・・。はぁ、仕方ありませんね。私は手札から、魔法カード手札断殺を発動します。互いに、手札を二枚捨てカードを二枚ドローするのよ。」

 

 

手札断殺・・・。風華も使っているカード。手札を入れ換えることに加え、手札を墓地に送るためにも使える。融合を封じられた藤宮が使うということは、素材になれなかったカードを捨て蘇生してくるか・・・。

 

 

凪沙は相手の手を読みながらカードを入れ換えた。同じくカードをドローした凛子が、手札を見てニヤつく。

 

「ふふ。良いカードを引いたわ。私は魔法カード、竜の鏡を発動。フィールド、墓地から融合素材を除外して、ドラゴン族融合モンスターを融合召喚!」

 

「融合カード以外でも融合を・・・!」

 

「私が除外するのは墓地のホルスの黒炎竜LV6と人造人間サイコ・ショッカーの二体。さあ見なさい、私の素晴らしきしもべの姿を!」

 

 

二体のモンスターが金の枠縁の鏡に吸い込まれ、その中で混ざり合う。新たなシルエットが浮かび上がると、鏡面が割れ炎が吹き出した。

 

「融合召喚!現れなさい、超炎竜 フォビドゥン!」

 

 

フィールドに現れたのは、身体中に着けた金属装甲に荒々しく炎を灯した二足歩行の竜。見ると、周囲に発生したエネルギー場のせいで地面が抉れ宙に浮き上がっている。

 

まさか、あれも精霊の宿るカード・・・?だとしたらこのデュエル、覚悟を決めなければ。凪沙は急に息が苦しくなるのを感じる。

 

 

「超炎竜 フォビドゥンがいる限り、フィールドの魔法の効果は無効になり、互いに罠を発動できないの。気を付けてね。」

 

「・・・!」

 

「バトルよ。伏せられたモンスターに攻撃するわ。」

 

 

フォビドゥンの手にから発せられたエネルギー波が炎を纏いモンスターを飲み込む。リバースされたモンスターは焼き付くされ消滅した。

 

 

よし、これで準備は整った。凪沙は一度心を落ち着け、墓地に送られたモンスターの効果を発動させた。

 

「私は、破壊されたグリズリーマザーの効果を発動。デッキから攻撃力1500以下の水属性モンスターを特殊召喚する。絶海の騎士を特殊召喚!」

 

「私はカードを二枚伏せてターン終了よ。」

 

二枚のソリッド・ビジョンが表示され消えた。凪沙はカードをドローし反撃を開始する。

 

「私のターン。私は絶海の騎士を守備表示に変更。この瞬間、絶海の騎士の効果が発動!デッキから水属性モンスターを一体墓地へ送る。私はハリマンボウを墓地へ!」

 

凪沙の動きに合わせフィールドにハリマンボウのカードのソリッド・ビジョンが表示される。

 

「そして効果発動!相手モンスターの攻撃力を500下げる。これでフォビドゥンの攻撃力は2800から2300に!」

 

 

発射されたトゲが竜に突き刺さり、竜が叫びをあげた。

 

「私は墓地の水属性モンスターを除外し、水の精霊 アクエリアを特殊召喚!さらに、サイレント・アングラーを特殊召喚!」

 

凪沙のフィールドに連続でモンスターが現れる。モンスターのレベルは全て4。凪沙は手を突き上げ宣言した。

 

 

「私は三体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 

光の渦にモンスター達が飛び込み、光の柱が立ち上る。中から、飛沫をあげてモンスターが現れた。

 

 

「深海の重鎮、アンカームド・メイカー!」

 

 

現れたのは凪沙のエースモンスター。エクシーズ素材を三つ必要とするわりに攻撃力の低いモンスターだが、他の効果を受けないという極めて強力な能力を秘めている。

 

 

「バトル!アンカームド・メイカーでフォビドゥンに攻撃!」

 

青い騎士の槍が竜を貫き爆発する。やった、エースモンスターを破壊出来た!凪沙の内心が喜びに溢れる。

 

 

 

RINKO LP4000→3900

 

 

だが、爆煙の向こうに見える凛子の顔は今までに見せたこともないほどの邪悪さを魅せた。

 

「罠カード発動、逆竜融合!融合モンスターが破壊された時、そのモンスターと融合素材を手札・墓地からデッキに戻し、融合召喚する!」

 

「!」

 

「墓地の超炎竜 フォビドゥンと手札の冥界の魔王 ハ・デスをデッキに戻し、融合召喚!・・・ふふふ、あっははははは!」

 

 

不気味に笑い声をあげる凜子。再び現れた超炎竜に魔王が取りつき、その姿が闇に覆われていく。装甲に禍々しい装飾が施され、身体全体が黒々と変色しその瞳が狂気を帯びた。

 

 

「現れ出でよ、超魔炎竜 ヒドゥン・フォース!」

 

 

超魔炎竜 ヒドゥン・フォース

融合モンスター/効果

星10/闇属性/ドラゴン族/ATK3500/DEF2700

 

 

 

「・・・!」

 

言葉が出ない。何、このモンスター。その迫力に圧倒される凪沙は、息を呑み後ずさった。

 

無言のままの凪沙に凛子が急かしてくる 。

 

「どうしたの?さあ、早くターン終了と言うのよ。いつまでも焦らさないで。ねえ、早く!」

 

「・・・私はカードを一枚セットして、ターンエンド。エンドフェイズにアンカームド・メイカーのオーバーレイユニットは一つ消える。」

 

 

「私のタァーン!」

 

凛子は今までとはうって変わって、ターン開始を叫んだ。同時に、超魔炎竜がどす黒いオーラを吹き出す。超炎竜とは比べ物にならないほどの衝撃が襲い、地面が粉々に砕け塵と化した。まずい、あんなのを受けたらひとたまりもない!

 

「バトル!ヒドゥン・フォースでアンカームド・メイカーを攻撃!ふふふ、あはははははは!」

 

 

放出されたエネルギーが辺りの物を次々に破壊していく。身の危険を感じた凪沙だが時すでに遅く、立ち上がることも這って逃げることも出来なかった。

 

 

 

「うあぁあああああ!」

 

 

NAGISA LP4000→2900

 

 

 

黒い波動に全身をなぶられ、凪沙は力なく地面に転がった。超魔炎竜の雄叫びと凛子の高笑いが響き渡るのが聞こえる。

 

 

たった一撃でこのダメージ・・・。ライフが尽きたわけでもないのに、凪沙自身にもう体力が残されていなかった。

 

 

「う、あぁっ・・・。」

 

「どうしたの、ほら、貴女のターンよ?カードを引かなくては。」

 

凛子が凪沙に歩み寄り、傍にしゃがんでささやいた。だが、凪沙には倒れたまま顔を見上げるのが精一杯だった。

 

「・・・うっ、ぐ・・・。」

 

「ふふ。カードの引けなくなった者は敗北となる。貴女の負けよ、波川さん。」

 

「・・・。」

 

 

凛子の言葉が胸に刺さった。二人の役に立つと決めたのに。まさか、デュエルをやり遂げることもできないなんて・・・。

 

凛子の表情から邪悪さが消えていつもの美しさに戻る。優しく微笑むと、懐からカードを一枚取り出した。カードには二色に分かれた天使の姿が描かれている。

 

 

「ありがとう、波川さん。あなたで全ての生け贄が揃ったわ。」

 

「・・・。」

 

凛子の言葉と共にカードから光が放たれ、凪沙の脳裏に焼き付く。なに・・・?頭がぼっーとする・・・。

 

 

そのまま、凪沙は意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「凪沙ぁ!」

 

 

夜の街に少女の叫び声が轟く。倒れた凪沙を抱え立ち上がった凛子は聞こえてきた声の方を振り向いた。

 

 

目の前に、二人のデュエリストが並び立つ。ともに、凛子にとって宿敵となる存在。凛子は憎しみを込めて二人を睨み付けた。

 

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